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ベイルモンド砂漠編
砂丘のはざま
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夜の砂漠で老人は鎮魂歌を歌う。先祖代々伝わってきた民謡であり、今は亡き友人達に捧げる歌である。
砂が音を吸収するのだろうか。老人は定期的にここで歌うが、魔物を引き寄せるようなことは無かった。見渡す限りの砂と満点の星空、老人は生まれてから今日までずっとこの風景を見てきたが、今でも美しいと感じる。
ふと砂丘の稜線に目をやると、見慣れない影が動いているのが分かった。目の焦点を合わせて観察する。それは、砂の上を独りでに移動する石櫃、更にその上には死神と思しき者が座り込んでいる。
ああ、ついに。と老人は思った。ついに、儂にも迎えが来たか。友よ、間もなく会えるぞ…。
老人は静かに目を閉じる。
しかしついぞ死ぬ様子は無く、やがて老人はそのまま朝を迎えた。
********
「存外、集中力が持つものだなあ。やっぱりスキルレベルが上がったお陰だろうか。」
私はアルサーヤの町から大渓谷都市イズマイルへ移動中だ。魔法の練習も兼ね、石の板を作ってその上に乗り土魔法で板の下の砂を動かしている。これなら歩かなくて済むし、ラクダに乗って尻が痛くなることもない。新しく買った黒い外套のお陰で、夜の砂漠で肌寒くなっても大丈夫。
アルサーヤから北の砂丘は、一つ一つが大きい。中には100mを超える高層ビル級の砂丘もあり、それらは避けて通るようにしている。ただ縦列に連結している砂丘も多く、その場合は仕方なく登る。
砂漠での移動で最も怖いのは方向が分からなくなること。もちろん魔物も怖いが、主要な商路には本来強い魔物は出現しない。定期的に討伐者が狩っているからだ。ラシェッド達とムズルクへ移動している最中に太陽と星の読み方を教わったので、北が分からなくなるようなことは無い。星の読み方を教わった時に、月が存在しないと気付いて少しショックだった。
おおよそ北の方向は分かっても、僅かに進路がずれるようなことはある。方位磁針がある訳ではないのだ。代わりに役立つのが、アルサーヤで購入した深緑フンコロガシだ。虫かごに入れて手元に置いている。こいつは、水の匂いを100km先から感知する凄いやつだ。迷ったら、こいつが向かおうとする方向にオアシスか町がある。
イズマイルまではラクダで15日かかる距離だ。ここのラクダの速度を考えると1200~1400kmの距離だ。一方、私のこの…石の船は、時速60km程度。今の集中力だと、魔法の連続行使は6時間、つまり一日360km移動できる換算になる。四日でイズマイルに着く予定だ。
北への移動2日目の午前中、2つの砂丘の間に隠れるように作られた集落を発見した。石造りの家が6つに天幕が4つ。今まで見てきた休憩所とは違う。あれが、シャドリーの言っていた宿場町だろう。
避けて通ろうかと考えながら、もう少し集落に接近すると奇妙なことに気づいた。人の気配がしないのだ。それに、家はよく見れば酷く損壊している。経年劣化じゃない。何かに破壊されたような壊れ方だ。
魔物に襲撃されて全滅したのではないか、と嫌な考えが頭に浮かんだ。気は進まないが、生存者がいるか確認はすべきだろう。
集落の50メートル手前で、石の船を停める。風魔法で周囲をアクティブに探知しながら家や天幕の中を調べていく。仄かに生き物が焼けた後の臭いがした。人間が焼けた臭いでないことを祈りつつ、探索を続ける。
半分ほど調べたところで、まだ覗いていない天幕から呼吸による空気振動を感知した。急いでそちらに向かう。天幕の擦り切れて薄くなった獣皮の覆いを捲ると、中には雑巾のような服を纏った二人の子供が横たわっていた。
二人とも8歳ほどの男の子。いや、痩せ細った子供は実年齢より幼くみえるからな、10歳ぐらいだろうか。ぱっと見外傷は無い。栄養失調で意識を失っているのか、あるいはただ寝ているだけか。
一人は黒に近い茶髪で、特徴の無い典型的な砂漠の民の顔をしている。もう一人の子は、逆にひどく印象的だ。真っ白な髪に整った顔立ち。眉毛は太く、おでこに小さな円の入れ墨が入っている。
見つけたのが死体でなかったことに安心しつつ、これからどうすべきか悩んだ。相手が大人なら無事を確認し、町までの水と食料をわけてやればいいかと考えていた。しかし、ここに残っているのはこの二人の子供だけ。交番のある地球が少し恋しくなった。
悩んで突っ立っているだけでは事態は変わらない。取り敢えず空間収納から絨毯と水の入った瓶、それに食料を取り出す。それから、二人の子供を揺すって起こす。二人ともすぐに目を開けた。どうやら寝ていただけのようだ。
茶髪の子は目を開けてからもぼおっとした表情で船を漕いでいたが、白髪の少年は素早くこちらを確認すると、警戒するようにばっと立ち上がって後ろに数歩下がり、青い瞳でこちらを睨んだ。
「あー、落ち着いて。取り敢えず水を飲みなよ。」
そう言って水入り瓶を差し出す。白髪少年はゆっくりと瓶を受け取ると舐めるように少しずつ水をとり始めた。茶髪の少年にも別の瓶を渡してやる。眠そうな顔で瓶を掴んだ少年だが、水だと分かった途端目が覚めたようだ。急がなければ水が消えてしまうとばかりに慌てて一気に水を飲み干す。
二人が少し落ち着いたのを確認したところで、乾パンを渡しつつ幾つか質問してみた。
「ここで何があったんだ?他の人は、大人達はどうした?」
少年たちは互いの顔を見合わせる。そして、茶髪の少年が質問に答えた。
「一昨日、襲われた。皆は、逃げた。」
「何に襲われたんだ?魔物?」
「そうだと思う。僕は外で叫び声が聞こえたらすぐに絨毯の下に隠れて…今までずっとここにいた。」
思いのほか落ち着いた様子で答えてくれた。逃げた人間の中に家族や仲間は居なかったのだろうか。白髪の少年にも確認してみる。
「君も同じか?」
「うん。俺も隠れてた。」
「そうか。…私は集落内をもう少し調べてみる。二人はゆっくり食べているといい。」
私は天幕を出てまだ調べていない建物を確認する。もし魔物に殺された人間の死体があったら、子供達が見つける前に処理しようと思った。
幸い、死体は無かった。食料棚らしきものを見つけたが、中は全て誰かが持ち去ったようだ。残っていたのは調理用の火に使う油だけ。油壷ごと回収しておいた。
子供達の居る天幕に戻ると、二人とも食べ終わっており、不安そうにこちらを見てきた。お腹が満たされて、これからどうすればいいのかと心配する余裕が出てきたのだろう。
「さて、これからのことだけど。何処かに頼れるアテはあるのか?」
「ない。」
「ないよ。」
まあ、そうだろうな。あー、どうするか。シャドリーが人手を探していたな。二人を雇えるか相談してみるか。
「アルサーヤの町に、もしかしたら君たちを雇ってくれるかもしれない知人がいる。取り敢えずそこまで連れて行く。もし雇ってもらえなかったら…悪いが、私がしてやれるのはそこまでた。後は自分達でなんとかしてくれ。」
2人が頷くのを確認して、外に出る。そして、3人で乗れるくらいの大きさの石の船を作る。戸惑う子供達とともに船に乗ると、南に向かって発進させた。
「おっちゃん、魔法使いだったの!?」
「ああ。そうだ、自己紹介をしてなかったな。私はアキヒコだ。君らの名前は?」
「エイベル。」
「モアディ。」
茶髪がエイベルで、白髪がモアディね。よし、覚えたぞ。
「2日以内にはアルサーヤに着くはずだ。」
「ここから2日…?」
エイベルが困惑した顔で首をひねる。だが、実際の船の速度をみて納得したようだ。
アルサーヤの町に着くまでの時間の半分以上を、エイベルとモアディは寝て過ごした。私が集落に着くまでも天幕内に隠れて長く寝ていたのだろうが、飢えながら不安とともに眠るのと腹が満たされて怯えずに眠るのは違うものだろう。
北に向かったはずの私が、子供二人を引き連れて現れたことに、シャドリーは一瞬目を丸くしたが、すぐ何かを悟ったようだ。
「アキヒコ、あんた…。そうか、『宿』が潰れたんだな。それで、孤児を連れて戻ったと。」
「うん。集落は魔物に襲われて、この二人だけが隠れて残っていた。それでさ、この前店に人を増やすって言っていただろう?もしこの二人でよければ…。」
「いいぜ。」
難しい顔をされるだろうと思っていたから、あっさり首肯されて拍子抜けした。
「別にあんたの頼みだからじゃないぜ。本当に丁度良いと思ったからだ。」
「ああ。」
私がそう言うと、シャドリーはエイベルとモアディの顔を見詰めた。
「ガキ2人。ここで雇ってやる。言っておくが、勘違いするなよ。情けで雇うんじゃない。だから、無能だと判断したらその時点でクビだ。日給は払うが、お前らが何処で寝泊まりして、何を食って、どうやって身を守るか、それは知った事じゃない。自分達でどうにかするんだ。いいな?」
子供達は頷く。
「今までもそうだったよ。」
「だろうな。よし、まずは品出しから教える。店の奥に入れ。その恰好で客の前に出るなよ。」
二人が言われた通り移動したところで、私はシャドリーに礼を言った。
「ありがとう。偶々助けたはいいが、それからどうすりゃいいか、扱いに困ってたんだ。」
「礼はいらんて。人手がいらんと思っていたら、本当に拒否していたぜ。…しかし、あんたは甘いな。わざわざUターンして戻ってきたのか。」
「流石に砂漠の真ん中に放置は忍びないだろう。」
シャドリーは私を甘いと言う。だが、私はそうは思わない。人が飢え苦しむのを見たのはこれが初めてじゃない。地球でも、発展途上国を巡る中で何度となく見た光景だ。彼らを皆助けたいと思うのは非現実的に過ぎる。だがら、私はあの頃も今も、自分の手が届く範囲で少し手助けするだけだ。
食料を買い足したら、改めてイズマイルに向かおう。
砂が音を吸収するのだろうか。老人は定期的にここで歌うが、魔物を引き寄せるようなことは無かった。見渡す限りの砂と満点の星空、老人は生まれてから今日までずっとこの風景を見てきたが、今でも美しいと感じる。
ふと砂丘の稜線に目をやると、見慣れない影が動いているのが分かった。目の焦点を合わせて観察する。それは、砂の上を独りでに移動する石櫃、更にその上には死神と思しき者が座り込んでいる。
ああ、ついに。と老人は思った。ついに、儂にも迎えが来たか。友よ、間もなく会えるぞ…。
老人は静かに目を閉じる。
しかしついぞ死ぬ様子は無く、やがて老人はそのまま朝を迎えた。
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「存外、集中力が持つものだなあ。やっぱりスキルレベルが上がったお陰だろうか。」
私はアルサーヤの町から大渓谷都市イズマイルへ移動中だ。魔法の練習も兼ね、石の板を作ってその上に乗り土魔法で板の下の砂を動かしている。これなら歩かなくて済むし、ラクダに乗って尻が痛くなることもない。新しく買った黒い外套のお陰で、夜の砂漠で肌寒くなっても大丈夫。
アルサーヤから北の砂丘は、一つ一つが大きい。中には100mを超える高層ビル級の砂丘もあり、それらは避けて通るようにしている。ただ縦列に連結している砂丘も多く、その場合は仕方なく登る。
砂漠での移動で最も怖いのは方向が分からなくなること。もちろん魔物も怖いが、主要な商路には本来強い魔物は出現しない。定期的に討伐者が狩っているからだ。ラシェッド達とムズルクへ移動している最中に太陽と星の読み方を教わったので、北が分からなくなるようなことは無い。星の読み方を教わった時に、月が存在しないと気付いて少しショックだった。
おおよそ北の方向は分かっても、僅かに進路がずれるようなことはある。方位磁針がある訳ではないのだ。代わりに役立つのが、アルサーヤで購入した深緑フンコロガシだ。虫かごに入れて手元に置いている。こいつは、水の匂いを100km先から感知する凄いやつだ。迷ったら、こいつが向かおうとする方向にオアシスか町がある。
イズマイルまではラクダで15日かかる距離だ。ここのラクダの速度を考えると1200~1400kmの距離だ。一方、私のこの…石の船は、時速60km程度。今の集中力だと、魔法の連続行使は6時間、つまり一日360km移動できる換算になる。四日でイズマイルに着く予定だ。
北への移動2日目の午前中、2つの砂丘の間に隠れるように作られた集落を発見した。石造りの家が6つに天幕が4つ。今まで見てきた休憩所とは違う。あれが、シャドリーの言っていた宿場町だろう。
避けて通ろうかと考えながら、もう少し集落に接近すると奇妙なことに気づいた。人の気配がしないのだ。それに、家はよく見れば酷く損壊している。経年劣化じゃない。何かに破壊されたような壊れ方だ。
魔物に襲撃されて全滅したのではないか、と嫌な考えが頭に浮かんだ。気は進まないが、生存者がいるか確認はすべきだろう。
集落の50メートル手前で、石の船を停める。風魔法で周囲をアクティブに探知しながら家や天幕の中を調べていく。仄かに生き物が焼けた後の臭いがした。人間が焼けた臭いでないことを祈りつつ、探索を続ける。
半分ほど調べたところで、まだ覗いていない天幕から呼吸による空気振動を感知した。急いでそちらに向かう。天幕の擦り切れて薄くなった獣皮の覆いを捲ると、中には雑巾のような服を纏った二人の子供が横たわっていた。
二人とも8歳ほどの男の子。いや、痩せ細った子供は実年齢より幼くみえるからな、10歳ぐらいだろうか。ぱっと見外傷は無い。栄養失調で意識を失っているのか、あるいはただ寝ているだけか。
一人は黒に近い茶髪で、特徴の無い典型的な砂漠の民の顔をしている。もう一人の子は、逆にひどく印象的だ。真っ白な髪に整った顔立ち。眉毛は太く、おでこに小さな円の入れ墨が入っている。
見つけたのが死体でなかったことに安心しつつ、これからどうすべきか悩んだ。相手が大人なら無事を確認し、町までの水と食料をわけてやればいいかと考えていた。しかし、ここに残っているのはこの二人の子供だけ。交番のある地球が少し恋しくなった。
悩んで突っ立っているだけでは事態は変わらない。取り敢えず空間収納から絨毯と水の入った瓶、それに食料を取り出す。それから、二人の子供を揺すって起こす。二人ともすぐに目を開けた。どうやら寝ていただけのようだ。
茶髪の子は目を開けてからもぼおっとした表情で船を漕いでいたが、白髪の少年は素早くこちらを確認すると、警戒するようにばっと立ち上がって後ろに数歩下がり、青い瞳でこちらを睨んだ。
「あー、落ち着いて。取り敢えず水を飲みなよ。」
そう言って水入り瓶を差し出す。白髪少年はゆっくりと瓶を受け取ると舐めるように少しずつ水をとり始めた。茶髪の少年にも別の瓶を渡してやる。眠そうな顔で瓶を掴んだ少年だが、水だと分かった途端目が覚めたようだ。急がなければ水が消えてしまうとばかりに慌てて一気に水を飲み干す。
二人が少し落ち着いたのを確認したところで、乾パンを渡しつつ幾つか質問してみた。
「ここで何があったんだ?他の人は、大人達はどうした?」
少年たちは互いの顔を見合わせる。そして、茶髪の少年が質問に答えた。
「一昨日、襲われた。皆は、逃げた。」
「何に襲われたんだ?魔物?」
「そうだと思う。僕は外で叫び声が聞こえたらすぐに絨毯の下に隠れて…今までずっとここにいた。」
思いのほか落ち着いた様子で答えてくれた。逃げた人間の中に家族や仲間は居なかったのだろうか。白髪の少年にも確認してみる。
「君も同じか?」
「うん。俺も隠れてた。」
「そうか。…私は集落内をもう少し調べてみる。二人はゆっくり食べているといい。」
私は天幕を出てまだ調べていない建物を確認する。もし魔物に殺された人間の死体があったら、子供達が見つける前に処理しようと思った。
幸い、死体は無かった。食料棚らしきものを見つけたが、中は全て誰かが持ち去ったようだ。残っていたのは調理用の火に使う油だけ。油壷ごと回収しておいた。
子供達の居る天幕に戻ると、二人とも食べ終わっており、不安そうにこちらを見てきた。お腹が満たされて、これからどうすればいいのかと心配する余裕が出てきたのだろう。
「さて、これからのことだけど。何処かに頼れるアテはあるのか?」
「ない。」
「ないよ。」
まあ、そうだろうな。あー、どうするか。シャドリーが人手を探していたな。二人を雇えるか相談してみるか。
「アルサーヤの町に、もしかしたら君たちを雇ってくれるかもしれない知人がいる。取り敢えずそこまで連れて行く。もし雇ってもらえなかったら…悪いが、私がしてやれるのはそこまでた。後は自分達でなんとかしてくれ。」
2人が頷くのを確認して、外に出る。そして、3人で乗れるくらいの大きさの石の船を作る。戸惑う子供達とともに船に乗ると、南に向かって発進させた。
「おっちゃん、魔法使いだったの!?」
「ああ。そうだ、自己紹介をしてなかったな。私はアキヒコだ。君らの名前は?」
「エイベル。」
「モアディ。」
茶髪がエイベルで、白髪がモアディね。よし、覚えたぞ。
「2日以内にはアルサーヤに着くはずだ。」
「ここから2日…?」
エイベルが困惑した顔で首をひねる。だが、実際の船の速度をみて納得したようだ。
アルサーヤの町に着くまでの時間の半分以上を、エイベルとモアディは寝て過ごした。私が集落に着くまでも天幕内に隠れて長く寝ていたのだろうが、飢えながら不安とともに眠るのと腹が満たされて怯えずに眠るのは違うものだろう。
北に向かったはずの私が、子供二人を引き連れて現れたことに、シャドリーは一瞬目を丸くしたが、すぐ何かを悟ったようだ。
「アキヒコ、あんた…。そうか、『宿』が潰れたんだな。それで、孤児を連れて戻ったと。」
「うん。集落は魔物に襲われて、この二人だけが隠れて残っていた。それでさ、この前店に人を増やすって言っていただろう?もしこの二人でよければ…。」
「いいぜ。」
難しい顔をされるだろうと思っていたから、あっさり首肯されて拍子抜けした。
「別にあんたの頼みだからじゃないぜ。本当に丁度良いと思ったからだ。」
「ああ。」
私がそう言うと、シャドリーはエイベルとモアディの顔を見詰めた。
「ガキ2人。ここで雇ってやる。言っておくが、勘違いするなよ。情けで雇うんじゃない。だから、無能だと判断したらその時点でクビだ。日給は払うが、お前らが何処で寝泊まりして、何を食って、どうやって身を守るか、それは知った事じゃない。自分達でどうにかするんだ。いいな?」
子供達は頷く。
「今までもそうだったよ。」
「だろうな。よし、まずは品出しから教える。店の奥に入れ。その恰好で客の前に出るなよ。」
二人が言われた通り移動したところで、私はシャドリーに礼を言った。
「ありがとう。偶々助けたはいいが、それからどうすりゃいいか、扱いに困ってたんだ。」
「礼はいらんて。人手がいらんと思っていたら、本当に拒否していたぜ。…しかし、あんたは甘いな。わざわざUターンして戻ってきたのか。」
「流石に砂漠の真ん中に放置は忍びないだろう。」
シャドリーは私を甘いと言う。だが、私はそうは思わない。人が飢え苦しむのを見たのはこれが初めてじゃない。地球でも、発展途上国を巡る中で何度となく見た光景だ。彼らを皆助けたいと思うのは非現実的に過ぎる。だがら、私はあの頃も今も、自分の手が届く範囲で少し手助けするだけだ。
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