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終幕の攻防編
二重の裏
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その日、エルメイアは様々な思考も重ねながらも、心身共に疲れもあって夜8時には寝所に戻って休んだ
日付の変わる時刻、一旦目が覚め、書斎で本をパラパラめくりながら、軽く喉を潤してから再びベットに戻ろうと移動するがそこで不穏な空気を感じる
本来居るべき近習、近衛の者の気配が部屋の外にも無い
思わず「誰か」と声を掛けるが、エルメイアの求めに応じて部屋の扉が少しだけ開く
そこから顔を半分だけ、何かを探すように見せたのは何故かライナであった、エルメイアの安堵と同時にライナは
「入って宜しいですか?」と聞いた「え、ええ、どうぞ」と言ったと同時の速さでライナは部屋に
まるでそこに居ないかのように一切の物音を立てず滑り込んで入り言った
「何者か侵入しているようです、外の見回りがやられております」
「な?!」と声を挙げそうになるが、ライナに止められる
「私の後ろに、窓、扉から離れてください、それと伝心のアイテムを、矛の連中を呼びます」
「わかりました、相手は‥」
そこで、エルメイアには伝えられていなかったが、マリアから受けた警告、一時、その情報から警戒を増やしていた事を話した
「しかし、先のクルベル戦からもう二週間は経っていますが‥」
「一旦警戒させ、それが解けるまで潜入して機会を待っていた、のでしょうね‥狡猾、辛抱強く」
そこで、仕舞って置いたイヤリングを出して、ライナに渡す
「これを‥」
「お預かりします」
即座、ライナは味方に通知したが。それが終わるかどうかというタイミングで扉から「敵」が音も立てず入ってくる
が、ライナは敵がこちらを見て「何か」をする間も無く一瞬で最初の1人を斬って倒した、ドシャ、と何に斬られたかも分からない、という風のまま敵は床に落ちた。その瞬間、進入してきた後続の敵も5人、拡散して前に居るライナをはさんで包囲を展開する
身姿は明らかに例の「スヴァート」だが、過去にエルメイアを襲った連中とは明らかに違う「中身」が。完全に専門訓練を受けた「暗殺者」である
ライナはエルメイアを背後に部屋の隅に下げ軽く深呼吸したその瞬間「アレ」を使う
敵は3人前を半包囲しつつ、二人は左右に離れてエルメイアへ向かう姿勢を見せる
要は、目的の相手を殺せばそれでいいのだ、ライナを押さえて聖女を殺せればいい、寧ろ二人も要らない程だ
そして、それは分業して行われる。ライナに向かいつつ、左右二人は飛ぶ
一度に止めるのは流石に不可能、故に、聖女を真後ろに置き下がりつつ、守りながら左の1人斬り、中央の3人の内1人斬り、右の敵の剣を跳ね返して引かせる
あえて、自分、聖女のラインを一直線にして、二人の距離を重ね、敵の対象範囲を絞りつつ壁として立ちはだかって対象と自分を重ねる事で聖女から自分に攻撃対象を移す
動く相手を交錯させて動きを制限しつつ、一度に相手する人数に微妙にずらして時間を作って止めた
そして二人倒した瞬間、残り三人に向かって逆にライナから斬りつけ更に1人絶命させた
如何に暗殺訓練を受けた専門家であってもライナには遠く及ばない、彼女は生まれながらにして、それを上回る特化能力がある更に歴戦の勇士で剣士である
「武」で対するには無謀な程桁違いに強い、そして「特化装備」を物ともしない「剣」もある
二対一、この状況が既に敗戦に等しい。故に「敵」は味方の増援を待ったがそれは果されなかった。連絡を受けたカミュがいち早く聖女の部屋向かい外にまだ居た「敵」を4人倒した
外の戦闘の音で、それが両者にも分かった「グ‥」と刺客は声を挙げたが、その一瞬、意識を外に向けた瞬間ライナの伸びる影にすれ違い様に斬られて胴から半断されて絶命した
ライナは警戒したまま、周囲を見渡し、窓に少し寄って確認し、完全に安全を確かめた後、聖女に寄って背中に置いたまま味方の来援を待った
数秒して、部屋に矛とカミュが確認した後入って来てライナと無言で頷きあい「終わった」事を相互に伝えて、城の者を呼んだ
エルメイアは驚いて居たが、立って、胸を押さえて居たが真っ直ぐに前を見つめていた。以前の様に、か弱い少女ではなく「聖女」であった
だが、彼女にとって驚きだったのが「暗殺者」以上にライナであった。彼女の姿を見て声も出せず、動く事も出来なかった
何時も側に居た彼女の人外の強さと機械の様な冷たさと圧力である。初めて見た「スラクトキャバリティター」の資質に一番驚いていた
当然かもしれない、フリットやグレイですら、エリザベートですら「怖い」という感情を植えつける程の物だ
「とりあえず、聖女を別の部屋に。カミュが一緒に居てあげて‥」
「はい」と短く答え、カミュは聖女の手を取って部屋を出た
聖女が目を丸くしてライナを見ていた事を知っていた。だからそういう配慮をして、後の処理は自分らが受けた。ただ、この頃のライナはエリザベートの感じた「夜に迷った森の中で狼に出会った様な恐怖」とは質が変化していた
「武」の極まり、ライナ自身の「ソレ」のコントロールで。より冷たく、冷徹、鎌を喉元に突きつけられる様な怖さ「死神に魅入られた」かの様な絶望に近い恐怖に変質していた。気丈だったエルメイアさえも動けなくて当然である
兎に角この「事件」は聖女を守りきり終わった
首都に残る矛のメンバー総出で探索、残りが居ないか探したが、それに掛からず。エルメイアを狙った10人が全てであった
隊員は「退路、撤退を考えていないようです、何も出ませんでした」と報告した
当然の事ながら、聖女は部屋を移って眠る事など出来なかった。ずっと側についたカミュの手を握って俯いたまま朝まで過ごした
世話の物6名、近衛15名が惨殺されたがエルメイアは守って撃退し、一連の暗殺事件を終えた
しかし、これでベルフの打った策が終わった訳では無かった、同日、同刻、マリアの下にも同様の策謀が展開されていた
特に規模は倍、更に、マリア自身が過剰警備を元からしていないこともあり。また、マリアの部屋は王座の間の後ろの部屋、一階であり、向こうにしてはやりやすく厳しい状況であったと言えた
だが、こちらにも幸運な事にジェイドが居た
彼はマリアの側に置かれ、毎日呼び出されては雑談、会食、果てはベットまで引きずり込もうとするほど前から気に入られておりこの日もマリアが寝るまでつき合わされていた
だが、彼自身、進言した通り
「どこかのタイミングでマリアを狙う策があるのでは?」とも考えており、護衛のついでにそれに付き合った、それが功を相した
マリアの部屋のソファで座りながら目を閉じて集中していた彼はそれに誰よりも早く気がつく
僅かにあった、床に物を落とす振動の音2つ
多人数の外の庭の草むらをしのび足で駆ける音、それすらも彼は掴み取った
元々の「資質」もあるがマリーとパートナーと成った事で彼の元々の内面資質や「鋭さ」「冷静さ」が強化されていた
集中すると「隣の部屋で紙を落とした振動」すら感じるほど感覚が鋭く切り替えられる様になっていた
即座立ち上がり剣を抜きマリアを逆手でそっとゆすり、声を掛けて起こした「マリア起きろ」と
だがマリアは「何じゃ?一緒に寝る気になったか?」とふざけた言を返した
「バカタレ、敵だ、直ぐ出るぞ」
そこまで聞いてようやく状況を把握したマリアも飛び起き上に一枚羽織って整えた
「対象はわらわか‥!」
「狙うなら「最も消えて欲しい相手」だろうな」
「人を‥」
「いや、もうやられてる、2回、何かが床に落ちる「振動」を聞いた」
「?!!」
ジェイドは左手にマリアを抱え
「首に巻きついてろ、目も閉じてろ、恐らく、相当な数を斬らねば成らん」
「わ、分かった」
言われて素直にジェイドに抱きつき首に手を回して、ギュッと目を閉じた
「じ、邪魔にならんか?」
「手荷物が一つ増えても大した問題じゃないさ」
彼はどこでも「彼」である、これほど頼りになる奴も居ないなとマリアも心で呟いた
「ただ、叫ぶのは困るぞ「耳」が使えん」
「わ、分かった」と口もギュッと結んだ
マリアは剣の練習もしたがその才能は皆無、一応振り回せる、レベルで物の数には入らないジェイドに頼るしかないのだ
「刺客」は外窓、正面扉から同時に侵入、二人を見つけ、構えてジリジリ距離を詰めた。マリアは本当に怖かった自然と手に力が入る
だが、ジェイドは「フ‥」と笑った、何も恐れる事は無いのだ、彼にとっては
飛びかかる刺客、迎撃して大刀でボールでも打ち返すように二人叩き潰して返した、防御鎧や盾など問題にもしない
破壊力が尋常ではない、流石の刺客も一瞬たじろぐ。当然だ、飛び掛った人間が剣で打ち返され吹き飛ばされて絶命するなどなんの冗談かと思う光景だ
部屋は広い、壁を背にして移動しながら敵を正面に持ってくるそしてたいした数ではない「たった」10人だ
この時の刺客は手持ちのクロスボウも使って放つが。そんな物はジェイドには葉っぱを払うに等しい、すべて叩き落して防ぎ数歩前に出て瞬く間に3人両断した
「レベルが違いすぎる‥」
当然だろう人間の最高到達点に居る剣士だ、まともに相手になる人間すら探すのは難しい
だが、刺客は諦めない、初めから撤退路等用意してない、エルメイア側と同じだ
逆にそれが凄惨な現場を作り上げてしまう結果になった、ジェイドに向かい、手を合わせるが、剣を交わす事すら敵わない
一方的に上下左右に斬り別けられて絶命する刺客。物の一分持たずその場の10人の刺客の死体が積み重なっただけだ
「目を閉じてろ」と言われたが開けられる訳がない。見なくても酷い事になっているのは分かる、絶叫と断末魔の悲鳴と斬り潰される嫌な音しかしないのだ
ジェイドは正面の扉から堂々と、静かに刀を使って扉をそっと開け外の状況を確認しながら、出る
そこにも刺客が居たが、出てきたのが「味方」で無い事に驚いた「!?」思わず声に成らない声を挙げたが構える
その「間」にジェイドは駆け、構えすら敵に取らせず3人一刀で横に払って纏めて倒した
もうそうなると、戦いにはならなかった、ただ残りを斬るだけの作業である、こちらも1分で終わった
逃げぬ、なら斬るしかない、ならせめて、即死させるしかジェイドも無い故の全滅である
一度、回りをぐるりと見回し、全員を斬った事を確認した後、被害をカウントした
刺客20 隣室に控えた護衛6 部屋の外に控えた護衛2
世話人の女性2 外の庭に5、の被害である
が、こちらもマリアを守った
まさかこの様な惨状を見せる訳にもいかず、ジェイドはマリアを抱えたまま、一旦その場を離れてから彼女を降ろし
味方を呼んで報告して後の処理を任せ、近隣、城周辺の警戒を徹底して行えと指示して移動した
マリアに返り血すら浴びさせない様に配慮するほどジェイドには余裕だったが、その分、刀を持った右手から肩までは真っ赤だった
一通りの後始末も終えた後、マリアを上階の部屋に預け自分も戻ろうとしたが上着の裾を掴んで止められる
「い、一緒に寝てくれ、一人で寝れそうもない‥」と言われた
「子供じゃあるまいし‥」
「う、うるさい!」
だが、たしかにこの様な目にあっての事「まあ、そりゃそうか」とジェイドも思い、その日はそれを叶えた
マリアはベットでも、途中何かに驚いて何度か目を覚ますが、隣に彼が居る事を確認して安心してまた寝るというを三度繰り返したが次第に安定して眠った
尤も、ジェイドは寝た「ふり」のまま、警戒は続けた周囲の調査が終わるまで「完全」に終わったとはいえないからだ
結局マリアは昼まで寝続けたがジェイドは一睡もしないままだった
もう、大丈夫だろうとそっとベットを離れ、城の広間に出たが、そこで城の高官、報告を聞いて城に上がり待機していた軍官やグラムにまで土下座する勢いで頭を下げられた
「偶々俺が居ただけだ、運が良かっただけだ気にするな」といつもの様に返して止めさせた
「それより、何か出たか?」
「は‥敵は近隣の森等に潜伏、機会を待って事を起こした様です‥かなりの日数、過ごした形跡がありました、ただ、火も使わず、食い物も携帯の物だったようで」
「よくやる‥」
「それだけ、意識の高い相手だったようです‥発見されないように、という事でしょう」
「分かった、マリアの方は大丈夫だ、キッチリ寝た、後の事はそっちにまかす、だが、しばらくは様子を見ろ、精神的ショックが残るかも知れん」
「ハハ!有り難うございました!」
とそこでも一同にズラっと頭を下げられた、仕方無い事ではあるが
その後ジェイドも自分の部屋に戻って軽く3時間程眠った。起きて再び部屋の外に出て、とりあえず現場に行ってみるが。そこは既に綺麗に成っていた
ただ、マリアの部屋は高級調度品や絨毯があり、再生するのか、破棄するのか困った様子だった
グラムとバレンティアはジェイドを見つけ、更に細かい状況を聞いた後また、礼を言ったが、イチイチ止めさせるのも面倒なので「ああ」とだけ返した
マリアも起きて、食事を軽く取ったが部屋からは出てこないそうだ、まあ、昨日の今日だ、当然だろう
余計なお世話かと思ったが、マリアの部屋の調度品は掃除出来る物はして、絨毯は悲惨な状況なので破棄しろ、と指示を変わりに出した
そこでグラムは「実は‥」と報告した
「エルメイアの所にも刺客が?」
「ええ、撃退された様で、聖女は無事ですが、かなりショックを受けている模様。暫くは出られないだろうと‥」
「マリア様も少なからずショックを‥で、どうしたらいいかと、決定機関が無い状態で」
「様子を見ながらでいいだろう、俺個人の意見なら、情報公開するがな。綿密な調査報告も同時にあればよい」
「ふむ‥」
「何れにしろ政治的判断の問題だ、マリアがダメならそちらの政治官に協議させ決を出させればいい」
「しかし‥それも難しくあります」
「ええ、それで決まって、行ったとして、マリア様がその決定を良く思われない場合と、政治官は最終決定は出しにくい環境でありまして、先ほどジェイドさんが指示を出したマリア様の部屋の片付けで動けなかったのもその理由です」
「ふむ‥そういう事か、分かった俺がマリアに伝えよう、ま、たぶん判断は俺と同じだと思うが」
「では、調査結果も出しますか?」
「ああ、被害者、加害者の、姓名、今回の一連の流れ、詳細、全部あったほうがいい、尤も判断は結局マリア次第だが」
「分かりました」
そこでグラムはそれを兵らに伝えに離れた
それを見送ってジェイドは言った
「あまり強烈過ぎる王、てのも大変だな‥皆顔色を伺うようになる‥」
「ジェイドさんは彼女の父か兄の様ですね、まるで普通にやり取りする」
「ジェイドでいい。ま、マリアはソッチ面で優れているが、別に普通の少女だぞ、暴君でも無いし、部下が間違っても首を刎ねるわけじゃない、しょうがないの~とか言ってあっさり許してくれるさ」
「フフ‥なるほど」
バレンティアにはその真似が可笑しかったらしくしばらく肩を震わせていた
「ま、とは言え、びびるのも分かる、恐らく歴史の偉人伝に載る人物だからな」
「それほど明敏でありますからね、失敗は許さんイメージがありますし、そもそも今や大陸最大の国家の君主ですし」
「まあな」
「ところで「判断は俺と同じ」というのは?」
「俺なら情報公開を可能な限り詳細に、広く全国に無制限にやる、ベルフの非道、卑劣を周知させ奴らに大陸を統治する資格が無い事を示す、すっとぼけられても困るので被害者、加害者の情報も誰でも閲覧出来るようにして反論の余地を与えない 更に、これで、向こうの分裂を図り、こちらを持ち上げる」
「丁度連合的にも、こっちに一般の民なんかに、不満や不安が出ている時、更にマリアとエルメイアを持ち上げるだろうし不満に対する緩和剤、あるいは高揚、キツイアルコールになりうる」
その見識を聞いてバレンティアも目を丸くしていた
「武勇の方かと思いきや‥中々恐ろしい方ですのね‥ジェイド」
「そうでもないさ、冷静に損得考えればいいだけだ。誰でも気がつく。まあ、今は昨日のアレの後だから冷静な判断がしにくいだけさ そもそも、起こってしまった事、時間を撒き戻せる訳じゃない精々、最大限にこっちの利益に転換すればいいのさ」
「少なくとも私にはそこまで考えられませんけどね」
「ま、何れにしろ、決めるのはオレじゃない、それより、聖女の方も心配だ」
「ええ、私はあちらに居ましたから、他人事ではありませんね、しかし暗殺、しかも同時二人とはね」
「向こうから見れば一番厄介なのが「マリア」「聖女連合」だからな、盟主と知恵袋、どっちも狙うのは至極まっとうな謀略ではある」
「強いて言えばマリア様が重要ではあったという事ですね規模から見て」
「だな、道も兵も知略もほぼ西から出ているからな、ここを潰せれば、という期待があったのだろう、兎に角マリアはこのまま上階に置いた方がいい。これで終わりか分からん、その辺の配慮も欲しい所だな」
「了解しました」
一方の聖女は落ち着いてはいたのだが、かなりショックであり、ずっとカミュとアンジェが交代で付いて居た、こういった精神的ダメージは何時抜けるか分からないのだ
特にアンジェも一度経験しているだけにその気持ちはよく分かる
何れ立ち直るだろうが、その意味で、内々に処理しようと、フリットらも当初配慮して分からない様に動いたのだが、まさか潜入して、その時が来るまで長期潜伏、機会を見て事を起こすとは意外であった
無論、前後の事情を見る限り、その配慮は続いていたのだが「もうないだろう」と気が緩んだ側面は否めない
反面、一度目の「聖女暗殺未遂」から何があっても聖女に武芸者護衛を付けたマリアの慧眼である、それがピタリと嵌るとは恐れ入った
ただ、例の「スヴァート」だが戦場で見る物と多少違っていた。中身も専門家であったし、回収した遺体や鎧を見る限り改良が図られていたのは見て取れた
チェインメイルもリングメイルに変えられ、稼動部にも布皮等補強、屋内潜入に不向きと「クリス」の意見も受けての、より、「静か」な物にして今回、屋内潜入をやってのけたのが見て取れた
銀の国では夕方近く一連報告をジェイドから受けたマリアがのそのそ部屋から出て来る「俺と同じ」とジェイドが言った通り、マリアの判断、指示も同じだった
「全部の情報を公開せよ、向こうが自ら材料をくれたのじゃ、こっちが不愉快な目に会った分、10倍にして返してやれ!大陸全部にこの謀略を周知させてやれ!」
と政務官らに告知
「コピーもありったけ作れ!、総出でやれ。寝ずにやれ!それが向こうの二撃目を防ぐ効果が出る!」と怒鳴った
昨日の出来事がマリア自身もそうとう腹に据えかねていたのであろう、半分八つ当たり気味に指示を出して、ズカズカ部屋に戻った
「ジェイドの指示」を受けて徹底調査もしておいてよかったなぁと政務官らも胸を撫で下ろした
一連の流れを見て「こんなんだから、びびる部下が多いんだろうが‥」とジェイドも溜息をついたが
一方マリアは、ジェイドを部屋に置いて、ここぞとばかりに世話させて甘えまくった
「飯くらい自分で食えよ‥」
「いいから食わせろ、わらわはまだ病人じゃ」
「どこがじゃ」
「お前は酷いショックを受けたか弱い少女に掛ける優しさはないのか!」
「うるせー、口に物入れて怒鳴るな、顔に吐きかけるな!」
夜には「おい風呂に入れろ」
寝る前には「まだ寝れんぞ、本を読め」
寝たと思えば「まだ、怖いぞ一緒に寝ろ」
といった感じのやり取りが後三日続いた
まあ、今くらいはいいだろうと甘い顔をしたのが間違いである「戦ってるほうがまだ楽だ‥」とジェイドに言わしめた
すくなくともマリアは大丈夫そうだ
この「情報公開」と「一連の暗殺未遂事件は」マリアのあの剣幕もあり、銀の国の政治官、政務官、兵らまで参加して拡散される
ダイナミックに大陸全土に作りまくって撒かれた資料も、あらゆる詳細と情報が公開され、大陸全土、上から下まで知られる事になる
それがベルフにも届いたのは更に一週間後である
しかもただの「話」で無く、書面、レポート、しかも図解付きで展開するという、とんでもない状況である
こうなると「言いがかりは止めろ」「どこに証拠がある」とも反論出来ない完全に逆手に取られた
クロスランドでの将会議の場でアルベルトは
「何が問題なんだ?失敗したことか?戦争ではよくあることだろう」と平然と言った。あまりのアホっぷりにエリザベートにすら説明される
「我らが大陸侵攻で勝って、評価が下がらないのは「正統な正面決戦」での武力領土奪取だったからだ、戦場でやったのなら兎も角、相手領土に乗り込んで寝首をかいたんだぞ」
「軍や戦場の知略で勝てないから暗殺等、情けないとしか思われん、しかも相手は20前の小娘二人の盟主。更に、歴史に名が残る程「聖女の名に相応しい聖女」「銀の国200年に一度の善政の名君」だぞ、一般人から見たら「聖者の忙殺を図った愚か者」だ、身内にすら後ろ指差されるほどマヌケな事態だ、しかも内々に処理出来たのなら兎も角、証拠も詳細も叩き付けられたのだ」
「ぬぐ‥」
「実際、こっちの元々の領地の住民にすら陰口を叩かれてますけどね」
「成功したなら兎も角‥」
カリス、シャーロットも呆れてモノが言えない状態なほどガックリしていた。当然アリオスもロベールも呆れた
やはりロベールは
「成功したなら兎も角‥」とシャーロットと全く同じ事を言った
「後の善政で評価を取り返す事もできましょうが‥」
「完全に「ただの」悪者だな」
「元々宜しくない評価が地に落ちましたね」
「それでも「正面からブチ破る正統な覇王の強さ」あっての事」
「ええ、こりゃ終わりましたね」
アリオスはそう言ったがロベールは
「気持ちは同じだが口に出すのは控えろ」
「そうですね‥壁に耳ありですからね」
「しかし、どうしたものか」
「もう、傍観でいいんじゃないでしょうか‥」
と二人も以降何も言えなかった
しかも「暗殺」は良いとしても。その手段もお粗末である、最善は向こうに居る兵なり近習の者なりを、買収するなりして、向こうの人間にやらせるのが証拠も掴まれ難く
失敗しても大して痛くない、にも関わらず、それを直接配下の者にやらせ、撃退された上に証拠すら与えてトボケル事すら出来なくなったのである
「スヴァート」の力を過信した故
更にそれに頼りすぎた故の結果である
日付の変わる時刻、一旦目が覚め、書斎で本をパラパラめくりながら、軽く喉を潤してから再びベットに戻ろうと移動するがそこで不穏な空気を感じる
本来居るべき近習、近衛の者の気配が部屋の外にも無い
思わず「誰か」と声を掛けるが、エルメイアの求めに応じて部屋の扉が少しだけ開く
そこから顔を半分だけ、何かを探すように見せたのは何故かライナであった、エルメイアの安堵と同時にライナは
「入って宜しいですか?」と聞いた「え、ええ、どうぞ」と言ったと同時の速さでライナは部屋に
まるでそこに居ないかのように一切の物音を立てず滑り込んで入り言った
「何者か侵入しているようです、外の見回りがやられております」
「な?!」と声を挙げそうになるが、ライナに止められる
「私の後ろに、窓、扉から離れてください、それと伝心のアイテムを、矛の連中を呼びます」
「わかりました、相手は‥」
そこで、エルメイアには伝えられていなかったが、マリアから受けた警告、一時、その情報から警戒を増やしていた事を話した
「しかし、先のクルベル戦からもう二週間は経っていますが‥」
「一旦警戒させ、それが解けるまで潜入して機会を待っていた、のでしょうね‥狡猾、辛抱強く」
そこで、仕舞って置いたイヤリングを出して、ライナに渡す
「これを‥」
「お預かりします」
即座、ライナは味方に通知したが。それが終わるかどうかというタイミングで扉から「敵」が音も立てず入ってくる
が、ライナは敵がこちらを見て「何か」をする間も無く一瞬で最初の1人を斬って倒した、ドシャ、と何に斬られたかも分からない、という風のまま敵は床に落ちた。その瞬間、進入してきた後続の敵も5人、拡散して前に居るライナをはさんで包囲を展開する
身姿は明らかに例の「スヴァート」だが、過去にエルメイアを襲った連中とは明らかに違う「中身」が。完全に専門訓練を受けた「暗殺者」である
ライナはエルメイアを背後に部屋の隅に下げ軽く深呼吸したその瞬間「アレ」を使う
敵は3人前を半包囲しつつ、二人は左右に離れてエルメイアへ向かう姿勢を見せる
要は、目的の相手を殺せばそれでいいのだ、ライナを押さえて聖女を殺せればいい、寧ろ二人も要らない程だ
そして、それは分業して行われる。ライナに向かいつつ、左右二人は飛ぶ
一度に止めるのは流石に不可能、故に、聖女を真後ろに置き下がりつつ、守りながら左の1人斬り、中央の3人の内1人斬り、右の敵の剣を跳ね返して引かせる
あえて、自分、聖女のラインを一直線にして、二人の距離を重ね、敵の対象範囲を絞りつつ壁として立ちはだかって対象と自分を重ねる事で聖女から自分に攻撃対象を移す
動く相手を交錯させて動きを制限しつつ、一度に相手する人数に微妙にずらして時間を作って止めた
そして二人倒した瞬間、残り三人に向かって逆にライナから斬りつけ更に1人絶命させた
如何に暗殺訓練を受けた専門家であってもライナには遠く及ばない、彼女は生まれながらにして、それを上回る特化能力がある更に歴戦の勇士で剣士である
「武」で対するには無謀な程桁違いに強い、そして「特化装備」を物ともしない「剣」もある
二対一、この状況が既に敗戦に等しい。故に「敵」は味方の増援を待ったがそれは果されなかった。連絡を受けたカミュがいち早く聖女の部屋向かい外にまだ居た「敵」を4人倒した
外の戦闘の音で、それが両者にも分かった「グ‥」と刺客は声を挙げたが、その一瞬、意識を外に向けた瞬間ライナの伸びる影にすれ違い様に斬られて胴から半断されて絶命した
ライナは警戒したまま、周囲を見渡し、窓に少し寄って確認し、完全に安全を確かめた後、聖女に寄って背中に置いたまま味方の来援を待った
数秒して、部屋に矛とカミュが確認した後入って来てライナと無言で頷きあい「終わった」事を相互に伝えて、城の者を呼んだ
エルメイアは驚いて居たが、立って、胸を押さえて居たが真っ直ぐに前を見つめていた。以前の様に、か弱い少女ではなく「聖女」であった
だが、彼女にとって驚きだったのが「暗殺者」以上にライナであった。彼女の姿を見て声も出せず、動く事も出来なかった
何時も側に居た彼女の人外の強さと機械の様な冷たさと圧力である。初めて見た「スラクトキャバリティター」の資質に一番驚いていた
当然かもしれない、フリットやグレイですら、エリザベートですら「怖い」という感情を植えつける程の物だ
「とりあえず、聖女を別の部屋に。カミュが一緒に居てあげて‥」
「はい」と短く答え、カミュは聖女の手を取って部屋を出た
聖女が目を丸くしてライナを見ていた事を知っていた。だからそういう配慮をして、後の処理は自分らが受けた。ただ、この頃のライナはエリザベートの感じた「夜に迷った森の中で狼に出会った様な恐怖」とは質が変化していた
「武」の極まり、ライナ自身の「ソレ」のコントロールで。より冷たく、冷徹、鎌を喉元に突きつけられる様な怖さ「死神に魅入られた」かの様な絶望に近い恐怖に変質していた。気丈だったエルメイアさえも動けなくて当然である
兎に角この「事件」は聖女を守りきり終わった
首都に残る矛のメンバー総出で探索、残りが居ないか探したが、それに掛からず。エルメイアを狙った10人が全てであった
隊員は「退路、撤退を考えていないようです、何も出ませんでした」と報告した
当然の事ながら、聖女は部屋を移って眠る事など出来なかった。ずっと側についたカミュの手を握って俯いたまま朝まで過ごした
世話の物6名、近衛15名が惨殺されたがエルメイアは守って撃退し、一連の暗殺事件を終えた
しかし、これでベルフの打った策が終わった訳では無かった、同日、同刻、マリアの下にも同様の策謀が展開されていた
特に規模は倍、更に、マリア自身が過剰警備を元からしていないこともあり。また、マリアの部屋は王座の間の後ろの部屋、一階であり、向こうにしてはやりやすく厳しい状況であったと言えた
だが、こちらにも幸運な事にジェイドが居た
彼はマリアの側に置かれ、毎日呼び出されては雑談、会食、果てはベットまで引きずり込もうとするほど前から気に入られておりこの日もマリアが寝るまでつき合わされていた
だが、彼自身、進言した通り
「どこかのタイミングでマリアを狙う策があるのでは?」とも考えており、護衛のついでにそれに付き合った、それが功を相した
マリアの部屋のソファで座りながら目を閉じて集中していた彼はそれに誰よりも早く気がつく
僅かにあった、床に物を落とす振動の音2つ
多人数の外の庭の草むらをしのび足で駆ける音、それすらも彼は掴み取った
元々の「資質」もあるがマリーとパートナーと成った事で彼の元々の内面資質や「鋭さ」「冷静さ」が強化されていた
集中すると「隣の部屋で紙を落とした振動」すら感じるほど感覚が鋭く切り替えられる様になっていた
即座立ち上がり剣を抜きマリアを逆手でそっとゆすり、声を掛けて起こした「マリア起きろ」と
だがマリアは「何じゃ?一緒に寝る気になったか?」とふざけた言を返した
「バカタレ、敵だ、直ぐ出るぞ」
そこまで聞いてようやく状況を把握したマリアも飛び起き上に一枚羽織って整えた
「対象はわらわか‥!」
「狙うなら「最も消えて欲しい相手」だろうな」
「人を‥」
「いや、もうやられてる、2回、何かが床に落ちる「振動」を聞いた」
「?!!」
ジェイドは左手にマリアを抱え
「首に巻きついてろ、目も閉じてろ、恐らく、相当な数を斬らねば成らん」
「わ、分かった」
言われて素直にジェイドに抱きつき首に手を回して、ギュッと目を閉じた
「じ、邪魔にならんか?」
「手荷物が一つ増えても大した問題じゃないさ」
彼はどこでも「彼」である、これほど頼りになる奴も居ないなとマリアも心で呟いた
「ただ、叫ぶのは困るぞ「耳」が使えん」
「わ、分かった」と口もギュッと結んだ
マリアは剣の練習もしたがその才能は皆無、一応振り回せる、レベルで物の数には入らないジェイドに頼るしかないのだ
「刺客」は外窓、正面扉から同時に侵入、二人を見つけ、構えてジリジリ距離を詰めた。マリアは本当に怖かった自然と手に力が入る
だが、ジェイドは「フ‥」と笑った、何も恐れる事は無いのだ、彼にとっては
飛びかかる刺客、迎撃して大刀でボールでも打ち返すように二人叩き潰して返した、防御鎧や盾など問題にもしない
破壊力が尋常ではない、流石の刺客も一瞬たじろぐ。当然だ、飛び掛った人間が剣で打ち返され吹き飛ばされて絶命するなどなんの冗談かと思う光景だ
部屋は広い、壁を背にして移動しながら敵を正面に持ってくるそしてたいした数ではない「たった」10人だ
この時の刺客は手持ちのクロスボウも使って放つが。そんな物はジェイドには葉っぱを払うに等しい、すべて叩き落して防ぎ数歩前に出て瞬く間に3人両断した
「レベルが違いすぎる‥」
当然だろう人間の最高到達点に居る剣士だ、まともに相手になる人間すら探すのは難しい
だが、刺客は諦めない、初めから撤退路等用意してない、エルメイア側と同じだ
逆にそれが凄惨な現場を作り上げてしまう結果になった、ジェイドに向かい、手を合わせるが、剣を交わす事すら敵わない
一方的に上下左右に斬り別けられて絶命する刺客。物の一分持たずその場の10人の刺客の死体が積み重なっただけだ
「目を閉じてろ」と言われたが開けられる訳がない。見なくても酷い事になっているのは分かる、絶叫と断末魔の悲鳴と斬り潰される嫌な音しかしないのだ
ジェイドは正面の扉から堂々と、静かに刀を使って扉をそっと開け外の状況を確認しながら、出る
そこにも刺客が居たが、出てきたのが「味方」で無い事に驚いた「!?」思わず声に成らない声を挙げたが構える
その「間」にジェイドは駆け、構えすら敵に取らせず3人一刀で横に払って纏めて倒した
もうそうなると、戦いにはならなかった、ただ残りを斬るだけの作業である、こちらも1分で終わった
逃げぬ、なら斬るしかない、ならせめて、即死させるしかジェイドも無い故の全滅である
一度、回りをぐるりと見回し、全員を斬った事を確認した後、被害をカウントした
刺客20 隣室に控えた護衛6 部屋の外に控えた護衛2
世話人の女性2 外の庭に5、の被害である
が、こちらもマリアを守った
まさかこの様な惨状を見せる訳にもいかず、ジェイドはマリアを抱えたまま、一旦その場を離れてから彼女を降ろし
味方を呼んで報告して後の処理を任せ、近隣、城周辺の警戒を徹底して行えと指示して移動した
マリアに返り血すら浴びさせない様に配慮するほどジェイドには余裕だったが、その分、刀を持った右手から肩までは真っ赤だった
一通りの後始末も終えた後、マリアを上階の部屋に預け自分も戻ろうとしたが上着の裾を掴んで止められる
「い、一緒に寝てくれ、一人で寝れそうもない‥」と言われた
「子供じゃあるまいし‥」
「う、うるさい!」
だが、たしかにこの様な目にあっての事「まあ、そりゃそうか」とジェイドも思い、その日はそれを叶えた
マリアはベットでも、途中何かに驚いて何度か目を覚ますが、隣に彼が居る事を確認して安心してまた寝るというを三度繰り返したが次第に安定して眠った
尤も、ジェイドは寝た「ふり」のまま、警戒は続けた周囲の調査が終わるまで「完全」に終わったとはいえないからだ
結局マリアは昼まで寝続けたがジェイドは一睡もしないままだった
もう、大丈夫だろうとそっとベットを離れ、城の広間に出たが、そこで城の高官、報告を聞いて城に上がり待機していた軍官やグラムにまで土下座する勢いで頭を下げられた
「偶々俺が居ただけだ、運が良かっただけだ気にするな」といつもの様に返して止めさせた
「それより、何か出たか?」
「は‥敵は近隣の森等に潜伏、機会を待って事を起こした様です‥かなりの日数、過ごした形跡がありました、ただ、火も使わず、食い物も携帯の物だったようで」
「よくやる‥」
「それだけ、意識の高い相手だったようです‥発見されないように、という事でしょう」
「分かった、マリアの方は大丈夫だ、キッチリ寝た、後の事はそっちにまかす、だが、しばらくは様子を見ろ、精神的ショックが残るかも知れん」
「ハハ!有り難うございました!」
とそこでも一同にズラっと頭を下げられた、仕方無い事ではあるが
その後ジェイドも自分の部屋に戻って軽く3時間程眠った。起きて再び部屋の外に出て、とりあえず現場に行ってみるが。そこは既に綺麗に成っていた
ただ、マリアの部屋は高級調度品や絨毯があり、再生するのか、破棄するのか困った様子だった
グラムとバレンティアはジェイドを見つけ、更に細かい状況を聞いた後また、礼を言ったが、イチイチ止めさせるのも面倒なので「ああ」とだけ返した
マリアも起きて、食事を軽く取ったが部屋からは出てこないそうだ、まあ、昨日の今日だ、当然だろう
余計なお世話かと思ったが、マリアの部屋の調度品は掃除出来る物はして、絨毯は悲惨な状況なので破棄しろ、と指示を変わりに出した
そこでグラムは「実は‥」と報告した
「エルメイアの所にも刺客が?」
「ええ、撃退された様で、聖女は無事ですが、かなりショックを受けている模様。暫くは出られないだろうと‥」
「マリア様も少なからずショックを‥で、どうしたらいいかと、決定機関が無い状態で」
「様子を見ながらでいいだろう、俺個人の意見なら、情報公開するがな。綿密な調査報告も同時にあればよい」
「ふむ‥」
「何れにしろ政治的判断の問題だ、マリアがダメならそちらの政治官に協議させ決を出させればいい」
「しかし‥それも難しくあります」
「ええ、それで決まって、行ったとして、マリア様がその決定を良く思われない場合と、政治官は最終決定は出しにくい環境でありまして、先ほどジェイドさんが指示を出したマリア様の部屋の片付けで動けなかったのもその理由です」
「ふむ‥そういう事か、分かった俺がマリアに伝えよう、ま、たぶん判断は俺と同じだと思うが」
「では、調査結果も出しますか?」
「ああ、被害者、加害者の、姓名、今回の一連の流れ、詳細、全部あったほうがいい、尤も判断は結局マリア次第だが」
「分かりました」
そこでグラムはそれを兵らに伝えに離れた
それを見送ってジェイドは言った
「あまり強烈過ぎる王、てのも大変だな‥皆顔色を伺うようになる‥」
「ジェイドさんは彼女の父か兄の様ですね、まるで普通にやり取りする」
「ジェイドでいい。ま、マリアはソッチ面で優れているが、別に普通の少女だぞ、暴君でも無いし、部下が間違っても首を刎ねるわけじゃない、しょうがないの~とか言ってあっさり許してくれるさ」
「フフ‥なるほど」
バレンティアにはその真似が可笑しかったらしくしばらく肩を震わせていた
「ま、とは言え、びびるのも分かる、恐らく歴史の偉人伝に載る人物だからな」
「それほど明敏でありますからね、失敗は許さんイメージがありますし、そもそも今や大陸最大の国家の君主ですし」
「まあな」
「ところで「判断は俺と同じ」というのは?」
「俺なら情報公開を可能な限り詳細に、広く全国に無制限にやる、ベルフの非道、卑劣を周知させ奴らに大陸を統治する資格が無い事を示す、すっとぼけられても困るので被害者、加害者の情報も誰でも閲覧出来るようにして反論の余地を与えない 更に、これで、向こうの分裂を図り、こちらを持ち上げる」
「丁度連合的にも、こっちに一般の民なんかに、不満や不安が出ている時、更にマリアとエルメイアを持ち上げるだろうし不満に対する緩和剤、あるいは高揚、キツイアルコールになりうる」
その見識を聞いてバレンティアも目を丸くしていた
「武勇の方かと思いきや‥中々恐ろしい方ですのね‥ジェイド」
「そうでもないさ、冷静に損得考えればいいだけだ。誰でも気がつく。まあ、今は昨日のアレの後だから冷静な判断がしにくいだけさ そもそも、起こってしまった事、時間を撒き戻せる訳じゃない精々、最大限にこっちの利益に転換すればいいのさ」
「少なくとも私にはそこまで考えられませんけどね」
「ま、何れにしろ、決めるのはオレじゃない、それより、聖女の方も心配だ」
「ええ、私はあちらに居ましたから、他人事ではありませんね、しかし暗殺、しかも同時二人とはね」
「向こうから見れば一番厄介なのが「マリア」「聖女連合」だからな、盟主と知恵袋、どっちも狙うのは至極まっとうな謀略ではある」
「強いて言えばマリア様が重要ではあったという事ですね規模から見て」
「だな、道も兵も知略もほぼ西から出ているからな、ここを潰せれば、という期待があったのだろう、兎に角マリアはこのまま上階に置いた方がいい。これで終わりか分からん、その辺の配慮も欲しい所だな」
「了解しました」
一方の聖女は落ち着いてはいたのだが、かなりショックであり、ずっとカミュとアンジェが交代で付いて居た、こういった精神的ダメージは何時抜けるか分からないのだ
特にアンジェも一度経験しているだけにその気持ちはよく分かる
何れ立ち直るだろうが、その意味で、内々に処理しようと、フリットらも当初配慮して分からない様に動いたのだが、まさか潜入して、その時が来るまで長期潜伏、機会を見て事を起こすとは意外であった
無論、前後の事情を見る限り、その配慮は続いていたのだが「もうないだろう」と気が緩んだ側面は否めない
反面、一度目の「聖女暗殺未遂」から何があっても聖女に武芸者護衛を付けたマリアの慧眼である、それがピタリと嵌るとは恐れ入った
ただ、例の「スヴァート」だが戦場で見る物と多少違っていた。中身も専門家であったし、回収した遺体や鎧を見る限り改良が図られていたのは見て取れた
チェインメイルもリングメイルに変えられ、稼動部にも布皮等補強、屋内潜入に不向きと「クリス」の意見も受けての、より、「静か」な物にして今回、屋内潜入をやってのけたのが見て取れた
銀の国では夕方近く一連報告をジェイドから受けたマリアがのそのそ部屋から出て来る「俺と同じ」とジェイドが言った通り、マリアの判断、指示も同じだった
「全部の情報を公開せよ、向こうが自ら材料をくれたのじゃ、こっちが不愉快な目に会った分、10倍にして返してやれ!大陸全部にこの謀略を周知させてやれ!」
と政務官らに告知
「コピーもありったけ作れ!、総出でやれ。寝ずにやれ!それが向こうの二撃目を防ぐ効果が出る!」と怒鳴った
昨日の出来事がマリア自身もそうとう腹に据えかねていたのであろう、半分八つ当たり気味に指示を出して、ズカズカ部屋に戻った
「ジェイドの指示」を受けて徹底調査もしておいてよかったなぁと政務官らも胸を撫で下ろした
一連の流れを見て「こんなんだから、びびる部下が多いんだろうが‥」とジェイドも溜息をついたが
一方マリアは、ジェイドを部屋に置いて、ここぞとばかりに世話させて甘えまくった
「飯くらい自分で食えよ‥」
「いいから食わせろ、わらわはまだ病人じゃ」
「どこがじゃ」
「お前は酷いショックを受けたか弱い少女に掛ける優しさはないのか!」
「うるせー、口に物入れて怒鳴るな、顔に吐きかけるな!」
夜には「おい風呂に入れろ」
寝る前には「まだ寝れんぞ、本を読め」
寝たと思えば「まだ、怖いぞ一緒に寝ろ」
といった感じのやり取りが後三日続いた
まあ、今くらいはいいだろうと甘い顔をしたのが間違いである「戦ってるほうがまだ楽だ‥」とジェイドに言わしめた
すくなくともマリアは大丈夫そうだ
この「情報公開」と「一連の暗殺未遂事件は」マリアのあの剣幕もあり、銀の国の政治官、政務官、兵らまで参加して拡散される
ダイナミックに大陸全土に作りまくって撒かれた資料も、あらゆる詳細と情報が公開され、大陸全土、上から下まで知られる事になる
それがベルフにも届いたのは更に一週間後である
しかもただの「話」で無く、書面、レポート、しかも図解付きで展開するという、とんでもない状況である
こうなると「言いがかりは止めろ」「どこに証拠がある」とも反論出来ない完全に逆手に取られた
クロスランドでの将会議の場でアルベルトは
「何が問題なんだ?失敗したことか?戦争ではよくあることだろう」と平然と言った。あまりのアホっぷりにエリザベートにすら説明される
「我らが大陸侵攻で勝って、評価が下がらないのは「正統な正面決戦」での武力領土奪取だったからだ、戦場でやったのなら兎も角、相手領土に乗り込んで寝首をかいたんだぞ」
「軍や戦場の知略で勝てないから暗殺等、情けないとしか思われん、しかも相手は20前の小娘二人の盟主。更に、歴史に名が残る程「聖女の名に相応しい聖女」「銀の国200年に一度の善政の名君」だぞ、一般人から見たら「聖者の忙殺を図った愚か者」だ、身内にすら後ろ指差されるほどマヌケな事態だ、しかも内々に処理出来たのなら兎も角、証拠も詳細も叩き付けられたのだ」
「ぬぐ‥」
「実際、こっちの元々の領地の住民にすら陰口を叩かれてますけどね」
「成功したなら兎も角‥」
カリス、シャーロットも呆れてモノが言えない状態なほどガックリしていた。当然アリオスもロベールも呆れた
やはりロベールは
「成功したなら兎も角‥」とシャーロットと全く同じ事を言った
「後の善政で評価を取り返す事もできましょうが‥」
「完全に「ただの」悪者だな」
「元々宜しくない評価が地に落ちましたね」
「それでも「正面からブチ破る正統な覇王の強さ」あっての事」
「ええ、こりゃ終わりましたね」
アリオスはそう言ったがロベールは
「気持ちは同じだが口に出すのは控えろ」
「そうですね‥壁に耳ありですからね」
「しかし、どうしたものか」
「もう、傍観でいいんじゃないでしょうか‥」
と二人も以降何も言えなかった
しかも「暗殺」は良いとしても。その手段もお粗末である、最善は向こうに居る兵なり近習の者なりを、買収するなりして、向こうの人間にやらせるのが証拠も掴まれ難く
失敗しても大して痛くない、にも関わらず、それを直接配下の者にやらせ、撃退された上に証拠すら与えてトボケル事すら出来なくなったのである
「スヴァート」の力を過信した故
更にそれに頼りすぎた故の結果である
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