剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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終幕の攻防編

皇帝の剣

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残ったベルフ六将がレンフィスに集まったのは更に一ヵ月後である

「まさか、全員ここに集まる事態に成るとはな」

ロベールが先ず言った、ありえない事態であり、予想外であった

「我らがここまで追い込まれる、それ自体考えておらんかったからな」

ガレスは殆ど無表情のまま、腕を組んで堂々としていた

「まあ、兵と軍と将を集めて最終正面決戦、私は悪くないと思ってる、勝ち負けはここまで来たらさほど気にならん」
「お前らしいな‥」とエリザベートの言にロベールもガレスも返した

そこは三者共同じ気持ちだったのかもしれない

「所で、最終防衛戦はどこで引くのだ?」
「ええ、王都前まで引きます、地形的優位があるので」
「だろうな‥」
「ただ、六将と言っても、ロゼット様には城に戻って貰います」
「え‥ここまで来て私を外すのですか?アリオス‥」
「申し訳ありません‥ですが「後」の事を考えた場合、誰かが後事を取らねばなりません。それが出来るのはカリス様かロゼット様だけです。ここに居る将らも、カリス様やロゼット様の意思なら従います」
「言うは心苦しいが、ロゼット様が居られても、余り決戦の役には立ちません」

ロベールの言う事も尤もである

「そしてカリス様は戦場ではそれだけの結果を出していますし配下の三姉妹もカリス様にしか使えません、そういう事です」
「そうですね‥ご尤もです。分かりました、私は「後」を承ります」
「それに、我々も死にに行く前提ではありませんし、もしもの事があった場合です」
「ハイ、承知しております」

「さて、戦略は決まっているが、戦術だが」
「まあ、総力戦、ですね、一応、武装、兵装、等も全て本国に準備を整えてありますが。ただ、向こうの疲弊、物資不足があると思うので」
「うむ、基本的に守勢、膠着を長引かせ、向こうの崩れを待ち、反撃となるか」
「はい」

「逆にこちらは補給線の長さを気にする必要は無い、という事だな」
「まあ、私は普通にやらせてもらうがな、コレほどの決戦はもう一生無いだろうし、精々楽しませて貰う」
「フ‥同感ではある」
「そもそも、この策自体、成功率が高い訳でもない。大軍を相手にするのは武人の本懐でもある」

相変わらず、ロベール、エリザベート、ガレスは純粋な「武人将」であるこう言われるとアリオスも

「真に代えがたい武将だなぁ」と感慨すら覚えた
「死にに行く訳ではない」とは言ったが一同は既に「覚悟」があったのかもしれない


そこから更に一ヶ月双方。ベルフ本国手前で進み、対峙する事になる、大陸戦争8年目の中ほどの事である‥

ベルフの王都がそう遠くない所に見える場所、草原での決戦である

連合側もほぼ全ての軍が集結し数は7万
ベルフ側も全戦力を結集した数、5万五千である

双方、軍を三つに分けた正統戦法。それら三軍に其々、ロベール、エリザベート、ガレスが置かれ戦闘開始される

「大軍となれば、これと言った小技は必要ない各々の武を発揮せよ」

そうロベールが指示したが、全くもってその通りである、ここまでの規模となるとマリアの戦術の様な軍を分けての挟み撃ちや、細かい包囲戦等連動の面で難しく更に連合側は混成軍、正統決戦での打ち合いしか無いのである

とは言え、数でも武芸者でも武装でも上回る連合側にしてみればそれ自体望む所である。特に其々の武芸者は力の発揮為所でもありそれはベルフも同じであった

しばらく接戦が続き、半日経過するが。其々最前戦に出てきた三将とそれに合わせた連合武芸者、これも対峙して当る事になる

右翼担当したロベールにチカが立ちはだかる

「フ‥チカか」
「お久しぶりですロベールさん」
「腕を上げたか?」
「そのつもりです」短く言って構えた

一方左翼ではエリザベート、ジェイドが当る

「そういえば、まだ、決着がついてなかったね」
「そうだな‥」
「もう、私じゃ及ばないだろうが、楽しませて貰う」
「つき合おう」

4者の武芸、当初は個人戦では無く、前線の戦闘の中での戦いだったが、余りの異次元の個人戦に自然と兵が離れ手が止まる

チカとロベールは余りの速さと風切りに竜巻が起こるような錯覚

エリザベートとジェイドは打ち合いで空気と大地が振動するような錯覚

両軍の前線兵が動けなくなり、近寄れなくなるのは当然ともいえた

が、この個人戦はどちらも10分の打ち合いの末、連合側が勝つ事になる
「グ!‥」とロベールが洩らし、後ろにぐらついて馬も自然と数歩下がった。右肩を打ち抜かれ、思わず声を上げた

「‥既に技術でも俺を超えたか、いや‥「速さ」か‥」

チカの渾身の一撃が「見えなかった」のだ

「‥か、勝った‥」

ロベールは深い傷を受けながらも笑っていた

「そうだな、お前の勝ちだ‥もう、槍は振るえん」

そう言いつつ、ジリジリ馬を下げて返した。「あ‥」とチカも何も言えなかった、何かを言いたかったが何も出なかった

「誇っていい、もう、お前に勝てる槍士は居らぬ、さらばだ‥」と前線から引いていった

勝って嬉しい、より、悲しい、彼が去っていくのが、そんな心境だった。チカは何も言えずそのまま自分も下がった

一方ジェイドとエリザベート戦も決着が付いた。エリザベートはジェイドの一撃を受けるつもりで出した槍斧ごと体を、右肩から左脇腹まで斜め下に切り裂かれて倒れ仰向けのまま言った

「やはり私でももう及ばん、か‥が、人生最高の戦いだった‥」

致命傷である、もう助からないそれでも
エリザベートは笑っていた

「姉上!」と弟クリスが滑り込み怪我を見た、誰が見ても同じだ、もういくらも持たない

「すまんな、加減する余裕が無かった‥それほど強かったよエリザ」

が、ジェイドは左手で胸元にあった「アレ」を出しそれを二人に投げてよこした

「?」という顔をしたエリザベートとクリスに言った

「ヒーラーの石だ、使え、まだ、間に合う、念じろ、治せと」

咄嗟に理解したクリスはそれを取って念じる、その手から眩しい光が放たれ、エリザの負傷をみるみる癒す、それを見たクリスは人目もはばからず涙を流した

「ある程度は治るが、失った物は戻らん、これだけの出血だ、早く連れて戻り手当てをしろ、そしてそのまま戦争が終わるまで寝ていろ‥」

それだけ言ってジェイドは背を向けた

「ああ‥」クリスもそれしか言えなかった
そして去り行くジェイドの背中に頭を下げた

数人の部下に運ばれて下がるエリザは笑ったまま言った

「くそったれ‥何もかも完敗じゃないか‥‥ホントに惚れそうだよ‥」だがクリスも同じ気持ちだった

「ええ、私もです‥」

ロベールもエリザベートも戦線離脱となる。
この手痛い一撃は元々劣勢条件であるベルフ軍を更に追い込む

ロベールの代わりにカリス。エリザベートの代わりにアリオスが入って穴埋めするがそれで足りるハズは無く、ジリジリ劣勢が広がる

特にアリオスは手元武芸者に女人隊しかこの時居らず、全名を当てて、数でカバーするがそれでも負ける

止む無く、姫百合、ジャスリンらも両翼に参戦させるが
もはや対処療法の時間稼ぎでしかない

中央陣のガレスはその状況でも奮闘して接戦を繰り広げるが両側陣が劣ると孤立気味になり、全体のバランスも次第に崩れていく

「このままでは‥向こうの意気が落ちるまで耐えるまでも無く最短で負ける‥」

カリスはそう呟いたが打てる手が殆ど無い、一時重装備兵を並べて、攻勢を防ぐが連合側にもそれがあり。足を止めるに留まる、それほど武装でも優位性はなくなっていた

それでも全軍、最後の戦いであり、不眠不休の全てを投入した戦いを展開する、どうにかそれで凌いだのは3日だった

まず、中央陣で奮闘し続けて居たガレスが倒れる、過労だ、不眠不休の連続戦闘等彼には厳しい。そうなると全軍の崩れが一気に広がり、打ち倒される

ここでアリオスが見切りを付け全軍後退指示
王都前の人造湖まで軍を下げて、キョウカに指示を出した

「引いたか、一旦再編だな」
「ええ、もう勝敗は決している、と言ってもいいでしょう」
「これ以上無駄な戦いはしたくないですね」

マリア、アレクシア、エルメイアは続けて言う。そこにアリオスからの密書が届く

受け取って読んだマリアも向こうに合わせて一旦全軍後退、と再編、休息を指示して下がらせた

その夜、陣幕を貼って、連合側軍官の責任者らが集められる。何事かと思われたが、ここでマリアらはアリオスの「策」の全容を説明する、半数の者は知っていたが知らぬ者にとっては驚きだ

「つまり、取引したと言うことですか」
「うむ、無駄に戦争を長引かせず、且つ、ベルフ本国は残すというな」

知らぬ一同は「うーむ」と考え込んだ
不愉快な者も居ただろうだが

「わたくしがこの件を容認しました。戦争が長引いて苦しむのは民です、それを悪戯に引き伸ばすのは為政者として完全に間違いです、だからアリオスとの取引を受けました」

余りにも尤もな意見を「聖女」から言われると一同も頷いて納得する、そもそも「盟主」であり、決定は優先されるのである

「和平‥という事ですか?」
「いえ、それは皇帝を倒すまで成されないでしょう」
「では?」
「先の戦闘の終わりにアリオスから密書が届いた。我々は王都前まで攻め、人を敵の城に潜入させる、その手筈はアリオスが整えた、との事だ」
「つまり、皇帝を直接殺して、終わらせるという事ですか」
「左様じゃ」
「分かりました、エルメイア様の言う事も尤もです我らも従います」
「有り難う御座います」

「そこで、これには直接城に乗り込む訳じゃが‥」
「あまり責任の多い者はまずいですな、ある意味、潜入工作員のような物ですし」
「そうじゃ、メンバーを選抜したい、だが軍の責任者や将、指揮官は困る、戦争、正面決戦も続けてこっちに目を引きつける。それでいて、武芸者で個々の力の高い者じゃ」

「なら、俺だな」とまずジェイドが手を挙げる
「それなら私も」とチカが続く
「そうなると、僕もですかね」
「じゃあ私もね」カミュ、ライナが立つ

「うーん、一応あたしも行こうかな」マリーが続いたが

何故か一同「えー」という感じだった

「いやほら、いざって時転移出来るし‥伝心術もあるし‥」
「な、なるほど‥」
「心配するな、マリーは見た目はこうだが、武芸は俺と良い勝負する」
「さ、左様ですか‥」

「何であたしの時だけ不安そうにするのよ‥」
「どう見ても強そうに見えんからな‥」
「ま、まあ、それほど心配する事も無い、向こうの手引きがあるんじゃし」
「そ、そうですね」

「とりあえず、明日にはまた戦争再開だ、向こうの王都まで押さねばならん、潜入ルートは西から回って森から背後気味に出られるとの事だ。入り口に案内を置いているとの事」
「分かりました、出立は早い方が良いですか?」
「うむ、出られるなら夜のうちのがいい」
「了解です」

と選抜メンバーも決定

ジェイド、マリー、チカ、カミュ、ライナに護衛、専門家10人程である

本当は参加したい武芸の者も居るのだが、正面決戦も継続しなければならず。軍や隊を預かる者は自重した

その選抜メンバーは指示された森西への道に深夜到着、そこには。全身黒尽くめの一団とショートボブの黒髪の少女が待っていて一同を出迎えた

「道案内と任されました、八重と申します、どうぞこちらへ」

殆ど直立不動、返答も待たずに森の獣道へ入っていった


翌日、午前中から「正面決戦」は再開される。作戦通り、王都まで一気に押す攻勢が展開される

既に、数の上では63000対30000であり、意図した攻勢は達成される、そこでわざと膠着戦を作り。時間を稼ぎつつ、全軍を釘付けにするという物である

一方、潜入部隊はそれに合わせて城の裏手から侵入。王座の間を目指した

城内は殆ど途中まで無人、全戦力を結集した点。そしてアリオスらが既に残った城の者も誘導、捕縛して閉じ込めた為である、意外な程あっさり、王座の間手前まで辿り着いた

そこで待っていたのはアリオスの部下のキョウカ、イリアであった、最後に残っていたであろう、城の護衛兵もその場に打ち倒されていた

これに驚いていたのはライナである当然だろう、イリアは走ってライナに抱きついた

「ライナ!」
「まさか、また、会えるなんて‥」

お互い自然と涙が溢れ出す。もうずいぶん長い間会っていない、そして最後に分かれた「あの日」以来の再会である

「では、私はこれで」キョウカは下がって言った
「有り難う、キョウカさん」
「いえ、後は直進するだけで、皇帝の居るのも確認しています」
「了解した」


キョウカはそのまま去って行った。アリオスはこの時点でイリアを返す事を決断しイリアを送った

イリア自身は最後までアリオスの下に居るつもりだったが。それは受け入れられなかった為である

一同はそのまま誘導に従い、王座の間に踏み込んで構えた
中は広い、皇帝は近習の者とやり取りしていたが踏み込まれてそちらを見た

「何だお前ら‥」
「敵か!」と護衛の者が叫ぶ

皇帝も王座を立ってギロリと見る。迫力のある50過ぎの中年、体も大きく、一種八将のような武芸者にも見える程迫力がある

「まだ、戦争は終わっていないハズだが、どこから入ったのか‥」と

そこで一同の中に八重らを見つける

「そうか‥裏切りか。たしかアリオスの部下だったな」

八重は一切無視して下がった

「私の役目はここまでです、後は好きにしてください」とだけ言って早々に部屋を出た

ジェイドは中の人間を全て一瞬で数えた

「皇帝、護衛10、近習2余裕だな」

そう呟いて前に出て抜く

「皇帝ベルフ、首、取らせて貰うぞ」
「フン、若造が」

とベルフも剣を抜いた、どうやら皇帝は武にも自信があるらしい、それに合わせて、護衛兵も剣を抜く、しかし

「タイミングが早いが丁度いいとも言う、オイ、あれを出せ」
「は、はは!」と兵が1人走り、右奥にある扉に

巨大な頑丈な扉だ、それに掛かっている鍵を外し開け放って離れた、開けられた扉から「何か巨大な者」が出て来る。その姿はライナもカミュもジェイドも見覚えがある

「人造魔人」
「闘技場に出せるくらいだから居るんでしょうね‥」

思わずライナが呆れて言った

「フン、戦争で使おうかと思ったが、今と成っては貴様らに使ってやろう」
「人造魔人か‥俺も2度会ったな、まさかこういう餌があるとはな」と、ジェイドは寧ろ嬉しそうに不敵に笑った

「ジェイドってやっぱ、戦うの好きよね‥餌って何よ‥」
「もう、戦う事も無いと思っていたからな、嬉しくもある」

ジェイドもマリーもまるで緊張感が無い

「じゃあ、皇帝は私が貰っていいですね」とチカが無表情に言って構える

「単身であの化け物と戦うの?ジェイド‥」
「譲ってくれるか?ライナ、カミュ」
「え、ええ、いいですけど‥」
「しょうがないわね、他の雑魚は掃除してあげるわ」

「わるいね」とジェイドは構え

ゆっくりと歩み寄る魔人に対峙した

皇帝は不愉快であった、まるで余裕なガキ共の態度にである
「なめおって‥」と、獣がグルル、と鳴く様に言う


チカが前に出て、皇帝の近衛がそれに合わせて立ちはだかり動く。が、同時動いたハズなのに近衛は剣を振るう前に3人チカに突き倒されて転がった

そこにライナとカミュが横から襲い掛かり更に4人倒す「な?!」と言った途端残り3人の首も飛んで転がった。実力が違い過ぎた

「掃除」とやらは30秒で片付いた


「一応礼節をもって、一対一で相手します」
「3人でも足りんくらいだ、ひよっこ共」とチカとベルフは打ち合う

一瞬で決着が付くかと思われたがベルフは「自信がある」だけに強かった、チカの攻撃も防いで返すほど

伊達に「覇王」等呼ばれて居らず、八将に勝るとも劣らない強さだった

「強い‥!けど!」とチカは小さく叫んだ後、槍をねじ込んだ

それは皇帝の胸を貫き、チカが槍を抜いた後、片膝を床についた

「ぐ‥!」と血を吐いた後、もう一方の膝も付いて、剣を落とした後 チカを見上げた。チカはそれを見下ろし、吐き捨てた

「ロベールさんより二段落ちる」と冷たく言う

無念そうに皇帝は前に倒れ絶命した

一方、魔人と当ったジェイドは20合打ち合った後。魔人の左足を両断、倒れ掛かる所へ横切りを浴びせ。首を飛ばし、後、右手に持った刀を床をかすめる様に払って付いた血を拭って

「ふう!」と息を吐いた
まるで「いい汗かいた」と言いたげな程である

「あちゃ~、もう人造魔人でも余裕かぁ‥」
「そうでもない、結構苦戦したぞ?」
「たった今三枚に下ろした人の言うセリフですか‥」

何時でも何処でも、マリーとジェイドである

「あんまりやる事なかったわね‥」
「強すぎなんですよ皆‥」
「ホントに‥」とライナとカミュ、イリアに言われた

やる事がなかったのは一同に着いた護衛もであるが
兎に角これで終わったとの思いでむしろ喜んでいた

マリーは即座、伝心術を使い、アレクシアに一連の結果を伝え、マリアにそのまま話して戦闘停止の指示を告知する。同時、敵側、ベルフ軍にも伝え、止めさせる

「どういう事か」とざわめいた
「どうも、納得し難い様ね、あちらさんも」マリーが言った為
「しょうがないな‥」とジェイドはベルフに近づいて刀を振り上げる

数分後、城のバルコニーに出て、皇帝の首を上げてジェイドは叫んだ

「貴様らの皇帝の首は俺たちが取った、戦闘を停止しろ!」と、これほど、説明のいらない示しは無い

「ああ‥」とベルフ軍もそこでようやく事態を飲み込み、戦闘停止する事になる

「ヤレヤレ」と王座の間に戻ったジェイドだが。一方一同は深刻な顔をしていた

特にマリーは皇帝の遺骸の側に傅いて何かを調べていた

「どうした?」
「ええ、皇帝のこの剣、エンチャント武器ね‥」
「うん?」ジェイドも見るがエンチャント武器独特の「玉」が無い

「宝玉は無いが‥」
「刀身中央に挟むように埋め込まれているわ」
「何か問題が?」
「すっごい魔力があるわ、触らない方がいい、アレクシアも呼ぶわ」
「そんなに珍しくて危ない物なのか?」
「かも」

「分かった、誰にも触らせるな、と周知させてくれ」と護衛兵に伝えその情報も外の居る全員に示され求めに応じて、アレクシアも飛んでくる

マリーとアレクシアは何やら相談しながら術を掛けてはまた相談するという事を繰り返した。何なんだ?と思っていたがそのうち一定の結果が出る

「所謂、全体資質強化ねこれ」
「ええ、多分‥」
「しかも、内面にも利くタイプ」

どうも言われてもよく分からないので

「何なんだソレ?」とジェイドが聞く
「えーと‥持った人の全体能力、つまり、力とか技とか全部上乗せされる魔術が掛かってる」
「ええ、しかも内面的要素も」
「何が危険なんだ?さっぱり分からん」
「うーん、ジェイドなら問題無いわね」
「持っていいわよ」
「オイ、人体実験かよ!」

「違うわよ、内面資質が「悪」じゃない人は問題ないって事」
「はぁ?」
「全体資質の強化魔法、つまり、その者が欲深いとか野心が高いとかだとそれが強化されるって事、だからジェイドが持ってもなんも悪い事は起きないって事」
「おい‥それって‥」

「ハァ‥酷い喜劇ね、皇帝の覇王の資質がエンチャントのお陰だなんて」
「全くね」
「ああ、でも、あれね、元々「そう」じゃないと大して意味ないか」
「ええ、何れにしろ、この「乱」はあったと思うわ」

「しかしどっから出てきたのかしら、この剣‥」
「わっかんない‥出土品、じゃないわよね?」
ま、それは後でいいだろ、これからやる事が山積みだ‥」
「そうね」

「まあ、剣はお願いねジェイド」
「俺持ってるのかよ‥」
「エルメイアでも大丈夫じゃない?あたしらでも」
「でもそれデカイし」
「とりあえず対抗魔法の石を作るわ、それでセットで押さえ込む、後、メルトに持って帰って破棄か破壊か、まあ、色々裏も探るけど」
「ええ、それは任せるわ、マリーのが適任だし」

その出土品でない「魔法剣」がどこから齎された物なのか?それは無論気になるが、今はそれ以上にすべき事があり、まずソレに精励する事にした
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