境界線の知識者

篠崎流

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砂上の楼閣

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ブライドレス防衛戦後。フォレスのカウンター策「教皇」の宣誓から一週間後には「世界」は揺れる事となった

テスネアが自称し挙げた目標は言い掛かりに等しいと明確に打ち出した、それは同時ガーディアンの立場のグランセルナ連合が攻めに転じるという宣誓ともとれる

「どっちに付くか」という判断を迫られる事にもなるが、これに関しては、ペンタグラムを支持する者が多く、結果、グランセルナ連合側に靡く国が多く成った

先のロベルタからブライドレスの防衛戦での行動、西地域のヴァスタマーカのロンディネス家の判断と地域が丸ごと反転した事でペンタグラムに付く国、明日はわが身と考え中立のままに分かれた、全体の流れはもう、反ゼントラムの形になりつつあった

この手を打ったフォレスには想定内ではあったが早まった分、問題も多い、インファルに代理で任せて西との連合署名から帰還後、グランセルナに居る高官と責任者らで会議

つまりフォレス、インファル、プルーメらで
今後の事を話しあうが、めんどうな事態には違いなかった

「問題はここからねぇ‥」
「正直、まだやりたくない手ではある、が、ブライドレスとターニャを助けるにあまり手がなかったとも云える」
「それは?」
「んー、まず、相手の全体策に形を真似て倍にして返した、そこまではいいが、拡大が早すぎると、増えた先から相手に潰されかねない事だな」
「な、成る程、こちらに靡いて、連合に入るとしても逆にそれが小規模であれば、かえって各個撃破の的だと?」
「それもある、ペンタグラムにしろ、俺らにしろ元々大軍事国では無く、各国の連合に単身防衛を任せるのも厳しい、となると、こちらから手を差し伸べて援護が必要だ」

「ええ、けど、こっちには全方位どうにかする兵力は無いわ、広がり方にも寄るけど」
「なるほど‥」
「後は相手次第ではあるが、どう思う?」
「どうかしら‥より過激な方向に行かなきゃいいけどね、まぁ、先の宣誓からどうテスネア以外が転ぶか」
「うむ」
「それと陛下、ペンタグラム自体の負担になりませんか?評価の問題もありますし‥」
「そこはあまり心配してないなぁ」
「と言うと?」

「これは第三者から見れば「テスネアの言い掛かりに対する反撃」だからだな」
「ふむ‥」
「つまり正当防衛に当るわね、口実を作って南連合を敵と位置づけ攻めた、けど、今回の声明でそれは正しくないと反撃を出した、ペンタグラムもこの行為を容認しない、てね」
「ああ、連合の拡大からゼントラムを上回り、最終的には討伐という形を行うのも、本来は最終局面でやるはずだったが」
「相手の力がまだ十分にある内にやらざる得なかった、そういう事ですね?フォレス陛下」
「だな、こっちの拡大と各地の強化、防衛を少しづつやるつもりだったがこうなると、そうはいかん」
「そーねー、けどまあ、それ程無茶な時期、て事もないわ」
「どういう意味でしょう?」
「やっぱりペンタグラムの宣誓は効いた、て事ね」
「?」
「向こう、ゼントラムは「連合」とも云えないわ何しろ残ったのがルーチベルーサ「だけ」だもん」
「そうですね‥」

そう、インファルが指摘した通り、ゼントラム連合は二手目から四手目でピスノラとヴァスタを失っている、最初から砂上の楼閣に等しい寄り合いなのだ

「兎に角、こっちもやる事が多い「宣誓」から動きが早くなるだろうし」
「とりあえず、今はターニャの所に兵の追加かしら?」
「そうだな、ある意味、ブライドレスは前線基地に近い状況に成ったし、あそこに兵力をそこそこ置いておけば、前線側はどこにでも行ける、その後の事は、其の後の流れを見ないと何とも云えん」
「んじゃ、それで進めるわね」
「頼む、エミリアも居るし、彼女の主軍も全部回していい」
「あいよー」

勿論、問題はそれだけでは無い。読めない要素も多いが、この時点で複数の問題が山積である。まず1つに、教皇の宣誓での効果が既に出ている事

元々、どこにも属さない、中立裁定の形だったが、これを崩した事にもなる、ただ、これはフォレスの指摘通り「言い掛かりに対しての反撃」ではあるが、全員がそう見る訳ではない

そして、テスネアがどう動くかだ、フォレスが渋って使わなかったのも、そもそもこれは相手を追い込む策である

テスネアが打った手を丸ごと「それはただの言い掛かりですよ」とした上で倍にして打ち返した、しかも公的な機関、ペンタグラムから。となれば、これは全否定な上、面目丸つぶれである

フォレスのカウンター戦略も時期が早い、彼は連合対連合の中、向こうを疲弊させ、ある程度削った所で、降伏か、瓦解を考えていたがそれが「頭の中」だけで終ってしまった

そしてこの状況になれば、アデルが暴走する可能性も出てくる。元々、手段を選ばない系統の人物であるが追い込んだ事で拍車が掛かる可能性も増加する、それをさせない為に、追い込むのは最後にしたかったという前提の考えあっての事である

もう一つが、フォレス自身「他の方法が無ければ」という前提でのペンタグラムからの告知、反ゼントラムであった

普段から何が起きても飄々としている彼だが、ずっとベットに腰掛考え込んでいた、それが分るプルーメも寝酒を出した後、隣に座り話し相手を続けた

「ずっと怪訝な顔をされていますが、テスネアの事ですか?陛下」
「まぁ、な」
「何か心配事でも?いえ、あるのは当然ですね」
「んー‥例の寝返り策で略決まったと云えば決まってはいるのでそれ程問題は無い、単に戦略的な事で言えば、だが」
「では?」
「オレ自身、テスネアを潰してしまえ、とは考えていない、いや、いなかった、という事だ」
「?」
「‥、つまりだ、テスネアのアデルもそうだが、周りの者も優秀だ、これを、単に敵だからという要素で殺してしまえとは思わない、なるべくなら潰さない方向で進めたいのだ」
「なるほど‥しかし、そうなると難しいですね」

「そうだな、この状況に至っては完全に向こうが誅敵だ、誰から見ても、だから討伐以外の形を作るのが難しい、オレの考えを伝えた所で「何を甘い事を」と反発されるのも目に見えている」
「わたくしはそうは思いませんが」
「全員が全員、そうではないだろう、が、仮にこちらから和解策をテスネアに投げても、受け入れる可能性は低い、最初のペンタグラム開戦の後この策を打たなかったのもその為だ」
「なるほど、ですが、フォレス様がそうお考えならば成しても宜しいかと思いますが‥陛下の御心もよく分りますし」


「うむ‥それともう一つが、基本的に軍事力なんぞ行使しないに越した事は無いという基本的な考えがある」
「それも同感ですね」
「戦いなんて無い方がいい、なんぼ偉そうな理屈を付けた所で死人を増やすのには違い無い、それは少ない方が良いに決まっている」
「ええ‥ですから、そうなさっても良いとわたくしも思います、どう転ぶかそれは分りませんが、やる前から無駄と決め付ける事もないかと」
「そうだな、プルーメの云う通りだ、だが、それも「何れの事」だ」
「‥現時点では、どのような和平交渉も相手を挑発している、としか見えない、受け取られない事ですね?」
「そう、だからタイミングも難しい」
「ある程度、向こうが折れる所まで進まなければならない?ですか」
「何れにしろ、今後の動きを見てからではある」
「そこは変わりないですね」
「ああ」

そう、区切ってその「今後」を見守る事としたがそれは早いものだった

元々激戦区でもある、北から東での攻守の展開つまり、ゼントラム連合のベルーサへの侵攻も動く、これは「口実」が得られた事に起因する

ペンタグラムの宣誓、宣言からゼントラム連合の一角である、ベルーサへの軍事行動が正当化された事が大きい

大きな戦闘、という程では無く、小競り合いや削り戦を意図したものだが東周辺国で牽制軍が動き、領土線での睨み合いが起こる

それが一ヶ月連続で続き膠着状態に陥るが、これでベルーサも自然、ゼントラム連合からの離脱の流れに成った、あっけないほど簡単にゼントラム連合は自然瓦解の形で終結となる

云うまでもなく理由は簡単だ。ペンタグラムから告知され「誅敵」とされれば、それ以外の国から圧迫される、これに対抗するにはそれだけの力がなくては成らない、ゆえに、その「敵」の輪から逃れるか反撃して叩く

どちらもなければベルーサのやり方の様に、そこから離脱して「我々は誅敵の仲間ではない」と見せるしかない、つまり逆にベルーサの方から手を切られた

僅か半年で「ゼントラム連合」の解散
これで更にテスネアは動けなくなった、完全に戦略的包囲戦の形である

「おそらく悪化する部分が多い」とは考えていたが、良い方向への展開も多々あった。まず、ウィステリアにとっての頭の痛い要素でもある南西地、隣国等から不戦同盟の協約の要請

これも理由は単純であり、グランセルナ連合の一角でもあるウィステリアと事を構えるという形は取れなくなった事である

ペンタグラムとそのガーディアンであるグランセルナ連合と牽制であっても敵対行為は取れないという思惑、防御から攻撃に移るとあらば、露骨に敵対すれば全面反撃を受けかねない、そして、西地域からも挟まれている、という事だ

ウィステリアにしてもグランセルナにしてもこの協約は不可解ではなく直ぐにこれを受けて南西地に「蓋」をした

表面上の損得であったとしても、敵が消えるならそれに越した事もない、改めて、ちょっかいを掛けて来るというならそれこそ反撃して動けなくすれば良い

ペンタグラムの宣言から一ヶ月半の後には、ブライドレス防衛戦の際、交渉を行った二国、アステラ、オルグからも連合への参加が求められ、これも締結

南から西がグランセルナ連合として拡大する事となったが、六月末には予想外の、フォレスが意図していない部分から動く

北、東から中央への逆侵攻である、過去、中央地での飢餓の際行われた他地域からの攻めが再び起こる

そして、それが起こるのは当然ではある、テスネアは過去、中央で攻められ奪われた土地を最速で取り返した、漁夫の利で

だから他所から見れば、テスネアは誅敵である以前に潜在的に恨みのある国、まして「公的な誅敵」と成れば、そこへ仕掛けるになんらの躊躇もいらない、再び、北、東からの中央への軍事行動が発生する

その事態が更に、フォレスの意図、望まない方向への流れの一つである

「まいったねこれは‥」

本国会議でも真っ先に自身の口からそう出た

「?」
「過去の中央攻めと違って、テスネアの軍力が大きい、今攻めた所で中央の領土奪取は難しい、そして其々が勝手に動くと成ると、これを放置して傍観する訳にもいかない」
「そうね‥、この流れに便乗するかどうか?ね」
「反テスネアはいいけど、統一した攻めで無いなら、効果も薄いですね?」
「だな、各自バラバラ好き勝手動かれると逆に困る、防衛反撃食らって、疲弊されると一斉包囲攻撃できんぞ」
「では、こちらも動きますか?」
「仕方無いな、こっちも動かざる得ない」

と言うのも、テスネアを誅敵とした、包囲戦略が再び成った、が、各国バラバラの逐次参戦の中途半端な戦力で攻めても叩き返され、反撃の形になる事

それから攻める方が崩れられると、無意味に戦火が広がり騒乱の拡大にしかならない、便乗、した訳ではないが、やむなくフォレスも攻めに転じる判断から策を練ることになった

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