晴海様の神通力

篠崎流

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慈愛と正義

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マンションにはメイと自分だけなのだがメイは家事はあまり頼りに成らない「見た目子供」通りでワリと子供ぽいし、三食晴海が用意する「ごっはん!ごっはん!」みたいな感じで要請してくるので面倒みてる感が凄くある

まあ、晴海も楽な相手ではあるし
アスカの場合と違い「欲求」を覚えないから

レイナとは男のダチみたいな楽さだが、メイの場合は妹みたいな感じ。まあ、どっちも年上なので感覚的な問題だが

もう一つは基本彼女も暇なので手合わせ、というか技術指導を受ける、相手は何時もレイナなのだが、メイは本場の中国拳法を多数習得していて、かなり強く、様々な武器の扱いも達者である

主に徒手での練習試合みたいのをしたが晴海程度だと全く相手にならないくらいだ。あっさり投げ飛ばされて綺麗に押さえ込まれる

子供みたいなロリっ子に子供扱いされるとそれは其れで悲しいがメイはそれを笑ったりもしない

「あたた‥ホントに強いなぁメイちゃん‥」
「メイは拳法でも師だ、少し油断し過ぎだぞ」
「だよね‥見た目が強そうに見えないからつい」
「メイは大人だぞ!」

とか言ったが相手からの印象だからコレもしょうがないのだが、普段の相手であるレイナと違い、彼女は実戦系でありながらちゃんとした技術なのでまたこれも新鮮な相手で指導者でもある

レイナも晴海も正道な剣道なのだが中国拳法の武器術てのも中々面白い、且つ実践性が高い、一般的に言う撫で斬りとか回転切りみたいな体捌きが多い

つまり避けながら攻撃と、受け流しつつも攻撃がセットになってるので名雪に近い業が多いと言う意味では対魔には有効かもしれない

ハタから見ると実戦性は低く見える、オーバーアクションなので「使えるのか?」とは思うのだが実際は攻防セットの業なので人間以外の相手にも有効だ

例えば、相手の突きに対して武器を横に払って防ぎ反らすと同時、自身も体ごと横に向けるくらい体の軸を回すので、この状態で既に振りかぶった状態になる

或いは、そのまま切り返してもいいし、そのまま回転して避けてもいい

「成る程‥拳法系てハデに見えて演舞みたいな印象があったんだけど実際はそうじゃないのか」

と晴海にも直ぐ分った というのも剣術にも似た動きがある、切り上げなんかも正対した状態で斜め上に攻撃、もしくは防ぐ動作だが其れを行うと自動的に上段袈裟切りの構えになる。つまり二撃目を一手目で作る動作が業其の物に組み込まれている訳である

徒手、八極拳の頂肘なんかもそう、右手軽く開いて軽く曲げて前に置き構え、例えば相手がパンチ等を出す、これを出した右手で上とか横に手の平で払うと自動的に肘打ちの形になる、後はそのまま突進すれば裡門頂肘や外門頂肘に成る実は効率武術の系等なのである


そんな年明けを過ごして四日目である

こういう時くらい自重してくれればいいのだが、警戒予報が深夜近く入る、と言っても早朝に近く、行動はし易い丁度三時くらいだから人も車もあまり居ない

晴海とメイが予想された範囲に向うが遅れて例に寄って「おふぁようございまふぁ~」とアスカもやってきて現場で合流する

警戒は「弱」なのだが特殊な事例で
簡易マップで荒れている。

「なにこれ?‥」
「なんだか絞れてない予報、なんですかねぇ~」

そう晴海とアスカが言った通りマップに複数の予報範囲、小円の赤がアチコチに見える、壊れた?訳ではないらしい

「メイ分る、一杯居るぽ」
「ええ~‥皆居ない時に‥」

現場は晴海らのマンションから北東10キロ程度で
向うが、その間にも状況は変化する

まず、警察組織から「E案件」としての認定が来ない、つまり事件性は現状無く、被害者・目撃情報・通報等は出ていない

もう一つは、晴海らも移動しながらもマップの複数あった赤の範囲円が、ある一定の方向に集まっていく、何か目標があるようだが、マップの表示も消えたり、また数分で現れたりとかなり不可解な表示だ

「何で点滅するんだろう?」
「おそらくですが、こちらとあちらの境界を頻繁に移動しているのかも~」
「じゃあ故障ではないんですね?」
「多分‥ですが」
「あってると思う。メイもずっと補足出来てない」

そうしてマップを頼りに近くまで来て目視ではなく確認した、街の中心からやや離れた一般の中学校に赤丸が集合する、かなり広範囲表示の赤円なのだがワールドビューで建物の中だろうとは分った

「こうなったら行くしかないね‥これほど沢山集まるのは異例だし援護を待っていられない」
「数は不明だけど少なくとも二十くらい?混在しすぎてメイでも分らない」
「だ、大丈夫なんでしょうか‥私達だけで‥」
「僕も不安は大きいけど‥放置は出来ない」
「わ、わかりました」

そう覚悟を決めてワリと広い学校の校庭内に侵入と同時「E案件」として通報も入れる、幸い、こういう状況なので他の人的被害も起こらない、深夜の学校なんて人が来る事はないし

注意深く探索しながら校舎内にも侵入、緊急事態なのでドアノブは壊させてもらう

其々、サーモグラスを掛けて一階から継続探索を始めるが、この時点でマップ表示は最小化して画面から消す。 平面ストリートビューで大雑把な探知情報だしもうあまり意味がない

が、探索から五分も経たずにメイが捉えた。「これ上だお、凄い多いかも‥」と言った為、さっさと下階での捜査を切り上げて、全員で上に上がった

場所は屋上で上がりきった場所、階段の踊り場で外と中を遮蔽している鉄扉の小さな窓からコッソリ覗いた

「なんだこれ‥」と晴海も思わず口に出る

そう、広い屋上野外で以前討伐した小鬼よりやや大きい人型くらいの鬼が既に大量に居る、目算で二十一か二。 と言っても集まって何か静かにしている訳でもなく乱闘中らしい

「誰かと戦っている?」
「仲間割れでしょうか?」

これだけ相手が大量で暴れていると確認すら取れない、誰か相手が居るのか、仲間割れなのか、が、そんな中でも観察しているとある程度は把握出来た

そう、鬼共は「誰か」と戦闘しているらしい、複数の鬼が円になって、その円の中心に次々飛び掛っている、囲んで多勢が少数に仕掛けている

そして、その中から飛び掛った鬼が吹き飛ばされて晴海側の方向に飛んできて、一時、囲みが乱れ、目視直線ラインで確認出来た

仲間割れ、には違い無い、円の中心に居る、襲撃を受けているのはおそらく人型だが人ではない

鬼共が一般成人男性くらいの背丈であるなら相手は細い子供くらい、半分強くらいの大きさで一人だろう

鬼を百七十くらいと推計すると、相手は百二十センチでなんとも形容し難い見た目だ、人にも見えるが、妖怪とも明白に言えない

白っぽい、陶器で作った人形の様な女性体、この場合小さい子だろうか、一応、人間の顔にも近くあるのだが髪等もなく、髪の代わりに後ろに流した様な、蔓の様な白い糸の様な髪に近いモノが頭部に生えている

既存する知識で言えば「小さな雪女」みたいな感じ、めちゃ白くてツルツルした質感で細身、かなり人間の女性体に近くはある

あまりの異例事態に晴海らも硬直した。恐怖とかでもなく、妖怪の仲間割れなんて始めてだし、干渉していいのかどうかの判断すらし難い

「どうしよう‥」
「な、仲間割れなら‥終るまで待った方が」

と女性陣二人も言って晴海も頷き、放置観戦を決め込んだ

が、所詮多勢に無勢、相手の女の子ぽい妖怪は徐々に被弾していくらしく、囲みから鬼全員が集って殴りつけていくらしい、打撃音が聞こえる、それで鬼共は屈んだ状態に集まる、おそらく蹂躙されているのだろう

本来は終わるまで待てばいい、どうせ妖怪同士の争いだ、が「晴海」はその場面を見て冷静では居られなかった

「ドクン」と心臓が高鳴り、怒りの後、瞬時に冷徹な感情に支配された、余程怖い顔をしていたのだろうアスカも

「ぼっ、ぼっちゃん?」と問いかけたが反応なし

晴海は無言で、しかし氷の様な空気と表情のまま霊圧刀を発動させて、目の前の扉を普通に静かに開けて外に歩いて出た

「な!?嫡子!?」
「坊ちゃん!?」と二人も呼び止めたが全く耳に入っていない様で

相手の鬼集団に向けて無言で射撃刀を発動させて横に払って飛ばした

これに気づいていない、気にもして居なかった連中が纏めて三匹、背中を見せて屈んでいた状態で頭が切り飛ばされた

マヌケな話しだが、そこでようやく鬼共も驚き囲って噛り付いていた「娘」を放棄して立ち上がり、晴海にジリジリ醜悪な顔で接近する

そこで「娘」の惨状を見た、そうこれまで人間であった被害と同じく「捕食」されていたのである

片手と両足、脇腹と頭部分が棄損し、仰向けのまま横たわって目だけで、晴海の方を見る「娘」

これで晴海も完全にブチ切れた、が、アヤネと始めて挑んだ戦いと同じ状態「野生に戻る」と言ったが、それと同じ状態の為、怒り等表現しないし怒鳴りもしない

ただ静かに「消えろ‥目障りだ」だけ言って火焔刀を構築し、普通に歩いて一番手前に居る鬼を片手唐竹割りで、脳天から股まで縦一閃に切り裂いた、そうして一匹目が焼かれながら暴れ周り消失

こうなると状況の云々に関わらず鬼も晴海に仕掛けるが、晴海はまるで小枝でも払うかの様に、横に縦に飛び掛って来る鬼を無慈悲に冷徹に次々焼き斬り殺した

三分、も掛かってない、13匹あっという間に駆逐し、鬼も慄いて残りも屋上からダイブするように走って逃げたが逃げられたのは残った八匹の内半数

屋上の柵を飛び越える前に射撃刀で狙撃され半数も焼き切り殺されたからだ

「敵」が全て居なくなった屋上から呆然と立ち尽くす晴海
我に還ったのは十秒後くらいだろう

が、自分がやった事をまるで覚えて居ない訳ではない、霊圧刀を収めて、ハッとして、直ぐに「娘」の所に駆け寄り屈んで様子を見た

間近で見ると最初の感想と見た目は一致する、小さな雪女の様なとも言うが西洋の人形とか地球外生命体ぽくもある、全てが白く、色素の薄い感じの人型であるが生物感も薄い、何か布風のモノを纏っては居るが半裸に近いのだが人間の女性の様に欲を覚える様な体でもなく、陶器人形ぽい、ただ芸術的な印象はある

髪も肌も口も白くやや青を足した様な薄さで、目も白の強い青という感じでビー玉みたいな透明度がある

相手は言語を持つのか謎だが「喋れる?」と問うたが、娘は口を一応開いてパクパクさせている言語を持たないのか、あまりの惨殺体に近いので声も出ないのかは分らない、が、確かに話そうとはしている

晴海は直ぐにポケットからケースを出し回復アンプルを打つ、効果があるのか分らないが「半分生物」であるならやってみるしかない

実際、肉体はあるし、人間の血とはやや色は異なるが流血も見られる、おそらく、娘はその特徴があるはずだ

本来ならそんな救護をする必要も無い、だって「妖怪」「敵」なのだから、だからアスカもおっかなびっくりだが制した

「い、いいんですか?!‥助けて、妖怪ですよ‥?」と
「分ってる‥けどこのまま見捨ててはいけない‥こんな酷い状態の子」
「そ、そうですけど‥」
「責任は持つ‥回復して襲ってくるなら仕方無い‥でもせめて逃がしたい」

そう、それは苛められている小動物を助けた様な感覚だろう、非常識な行いには違い無い、この娘が強い妖怪なら襲い掛かってくる、助けなどしてはいけないのだ

それは晴海が慈愛と正義があるからだ、猛獣だからと言って敵意も無い、動けもしない相手に止めを刺す事も彼には出来なかった

「わ、わかりました‥効くかどうか分りませんが‥やってみます」とアスカも一歩下がって印を結ぶ

「で、出来るの?」
「妖怪を治す、なんて始めてですが‥試してみます」
「わかった‥頼むよ」

そうして晴海も立って下がりアスカに任せた

アスカは左で親指と人差し指で輪を作って立て、右手で同じ様に形を作りその両手の輪を合わせて他の指を広がるように合わせて唱える

「のうもぼたや・のうもたらまや・のうもそうきゃ・たにやた~なしやそにしやそ・のうまくはたなん・そわか」
「命!」

と渇を入れると「娘」の体がぼんやり光る
おそらく効果があったのだろう

幸い、介入が早かったので娘の体のどこかが完全に無くなっているという訳でもなく、かじられた箇所も徐々に塞がる

「効いた?!」
「みたいですね‥ただ、明王の延命持仙秘法はそれ程即効性はありません、そもそも人ではないので恩恵がちゃんと発揮されるかも謎です‥」

そうして五分待ったが傷は塞がった様だが娘は正に人形の様に仰向けで動けなかった、ただ晴海を見たり、アスカを見たりと、意思か意識はあるらしい

ここで外に覆面パトカーやバンも校外の道路に少しずつ現れ出したので移動する事になった

「つ、連れて行くんですか‥?」
「このまま置いて行ったらそれはそれで不味いんじゃないかと‥」
「連れてっても不味いお。どう説明する」
「うーん‥とりあえず隠しておこう、そんで事件の詳細を伝えて撤収命を出す」
「いいのかなぁ‥」
「そ、その後は?」
「後はこの子の自由でいいと思う‥どこかに逃れるなりアッチに戻るなり」
「わ、わかりました‥」

そうしてまだ動けない娘を晴海が抱っこして、階下に移動し、あまり問題ないだろう倉庫のロッカーに入れる、通じるかどうかも謎だが一応

「僕らは行くよ、動ける様に成ったらそのまま逃げて、僕の言ってる事が分るなら、何か示して」とだけ言って

多分理解する能力なり知能なりはあるんだろう、娘は震える不自由な右手で晴海の陣羽織の袖を掴んで力無く引っ張った

おそらくいくら「可哀相だな」と言っても出来るのはここまでだ、置いて行って公人側に任せてもモルモットにされかねないし、アッチにそのまま戻してもまた襲われかねない、晴海が連れ帰っても後の処置も出来ないから

気持ちは判る、がコレは偽善に近いのかもしれない、だが、現実には縛りがあり晴海が全ての責任を負えない、というよりそれで済む問題でもない。だからコレがギリギリ出来る事だった

そうして、集まって来た警察の上官に通報の内容、既に討伐し残りは逃げた事と、学校施設の破損は入り口に入る時に壊したシャッタードアだけで、それ以外の被害、敵無し、として任せた

まあ、一応屋上の現場検証はするのだが基本的に妖怪の死体は残らないのでまずあまり意味が無い、大体仲間割れであり、人間の側の被害はゼロだし、どういう事があったのか?
くらいの軽いモノだ

そうして三十分程で、公人組織も引き上げて
隠した「アノ子」も見つからずに散会となった

ただ胸を撫で下ろして、晴海も帰り掛けに
階下の倉庫に行って見たが、もう「娘」の姿も無かった

「僕の言った事は分ったみたいだね‥」
「みたいだお」
「でも‥困りますよぼっちゃん‥あまり無茶な事をしては‥」
「ごめん」

と謝意を述べて晴海らも帰路についた
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