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猶予
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更に五日、翌週にはまた事件が起きる。というか
「あの~‥晴海様、また少し大きくなってるんですが‥」と報告された
で、今回は中学生くらい?多分人間と比較すると3歳分くらい身長・体重が増加してた、身長は百四十センチ、体重も三十五㌔だった。この辺りまで来ると子供ぽい、とも云えない容姿だろう
成長続けるとどうなるんだろう?という懸念もあったがどうも寧ろ安定してるぽい。つまり
「強く成ったら成ったで凶暴になったりしないのかな?」
という部分がどこかにあったのだが、天然ぽい、無邪気さはあんまり変わらない
理屈上は説明は付く、子猫が成長して普通の猫になっても滅茶苦茶凶暴になる訳でもないし、子馬が馬になったからと言って急に草食から肉食に成る訳でもない
つまりその懸念は元々そう無い、大人に成ったからと云って種類が変化する訳じゃない、雹はそういう種別だったというだけの事で幸運でもあった
やはり内面的部分も多少向上したのだろう
「うーん、遠距離からも殴れる気がする」と言ったので、表で試したが、霊圧爪はそのまま前回戦ったカマイタチみたいに斬撃として離れた距離でも撃てるらしいが、そこまで離れて届かないらしい。精精五~六メートルくらいだろうか
ただコンクリ壁に向ってやってみたが「バチ!」とムチで撃った様な傷を付けたので打撃に近いのかもしれない、それも「飛んでって当る」でなく引っ掻いたモーションから何か発射される訳でなく、目標物に打撃痕が付くので空間斬撃みたいな感じだろう
元々使っている爪だが、実際は晴海の霊圧刀に近い効果がある、出し入れ自由のエネルギー剣で試してみたら五本指全部に発動出来るが、対ヘビ戦と同じく、自身の武器の斬撃殺傷力を上回る硬さの相手は斬れないらしい
正確には斬っては居るのだが通らず弾かれているというのだろうか、包丁で野菜を切れても、石は切れないし、刃が欠ける、のと同じ事だが、そこに使った運動エネルギーはそのままなので打撃には成る、という物理的には、尤もな効果が現実に発揮されているだけだ
六月に入り、最初の一日の事である。
本家から通知、というか書簡が来る。公式な、一般的には当然知らない事だが一応秘密なモノでもなく招待状の様な物である。ただ内容は事前に晴海も認知している
簡単に言ってしまえば本家神宮寺の会合というか
昔で云う王族とかの交流・相談会みたいな物だ
時代錯誤も甚だしいが実際問題、神宮寺並び、四家血統相続で次の御大は血族から選ばれるので、必要と云えば必要ではある、特に今年は兄・泰斗の成人年で、前例から言えば次の指名がされる
晴海は会合には出ない、そもそも特に問題無ければ後継者としては一番は年長の兄であるし、会合自体年に一度か、何か緊急事で、どちらにしても晴海には用が無いのだが今回に限ってはそうも云ってられない、晴海の状況が大きく変化しているからだ
当人は余り認知していないのだが、今の晴海は専門家の範囲では関東圏の退魔独立特化部隊の長の扱いであり、実戦の経験と成果が非常に多い。継ぐ継がないは別にして公私共に顔見せはした方がいいだろう
その見識は当然四家の一族でもあるアヤネも
「どうしても嫌だ、という事でないのでしたら出た方が良いでしょう」とした
「まあ‥そこまで嫌という訳でもないけど‥僕には余り関係ないし、どの道泰斗兄さんのが序列的に相応しいからね」
「とは思いますが《人》を見るには良いのでは?」
「どういう意味で?」
「この会合は確かに親睦・相談会も含まれますが、各家の長に近い方が出ますから継ぐ継がないは別にして後に繋がる事もありますから」
「成る程ね」
「晴海様は認知していないでしょうが、晴海様の集団はおそらく既に日本最強の退魔部隊です、この会合は各家、其れを超えた範囲の人が出席するので晴海様が何もしなくても反応が見えます」
「例えば?」
「今の晴海様はどの様な立場で実力を集団として持っているのか?おそらく分るでしょう」
「イマイチよく分らない概念だけど‥アヤネがそう云うなら行ってみよう」
「その方が宜しいでしょう」
「で~、僕とアヤネだけでいいのかな?」
「構わないと思います」
そういう流れで気乗りしないながらも招待状を携え、翌日の午後出立する事となった
会合は神宮寺の本家で無く。家が保持する別の屋敷が滋賀にある為そちらに向う、列車で現地の駅まで行き降り、そこで迎えの車等が来ている為でコレを甘受して、琵琶湖、長浜にあるホテルに案内される
外面は大きな和装旅館で古臭いのだが、屋内は無駄のないスッキリした奇麗な様相で、家具も設備も最新のモノだ。観光ホテルとしてはよくある形だが、実際に一般に開放しているものでもなく、あくまで神宮寺の所有施設である
晴海らは個室・和室に案内されて時間まで自由にしてもらって結構です、とそのまま世話人も下がった
実際、自身も来るのは初めて、手持無沙汰もあって屋内を回るが確かに一般の屋敷ではない。 あちこち護衛が居るし、ハタ目には分からないのだがおそらく武装した人員も居る
庭、駐車場を見れば、次々後続で来る高級車が入ってくるし、そこから降りてくる人間も年長で威厳のありそうな人ばかりだ
「なんだろう、この場違い感」
「まあ…各家の関係者、一部財界人等も来ますから自然仰々しくなりますよ」
「成程、それで顔見世の側面もあるのか」
「おそらく、前後半で分かれると思います」
そうアヤネが言った通り、実際前半・午後十八時に一階の大ホールでの立食パーティーに近い催し。これはどちらかと言えば公共利益部分の会合で、各家の責任者と一部財界人との
交流会というか、利益面での懇談が中心
特に京極や綾辻等はその側面が強く、認知されないのだが、今で言う大企業体に近い立ち位置なので自然とそうなってしまう
勿論アヤネも例外でない。京極は綾辻とは違って一般投資等それ程やっていないのだが何しろ「経済で双璧」と評される程の資産が有る為、繋がりを作っておこうという、財界や企業の関係者に囲まれる事になる
アヤネや、祖父も今回が初参加ではないので分かっていて、その対応も如才ないが、一時間後に戻った所で、彼女の名刺入れの類もパンパンだったが
もう一人は勿論、今回「も」参加している綾辻で時人が直接来ている、彼も慣れたモノで30分程交流した後、晴海らを見つけて話かける
「お疲れですかな」
「ええ…まあ。私はあまり関係ないと思うのですが…」
「京極ですから仕方ないでしょうな、ある程度資本に参加しているならかわす方法もありましょうが、京極はそういう側面が小さい、まして大家の孫娘ですから」
「土地や株式が大量にあるからと言っても私がどうこう出来る物ではないのですが…」
「確かその辺りは善殿の範疇でしたな。商売上の事はお父上」
「何らかの形でつながりを持っておこう、というのは分かりますけどね」
「何れにしても、アヤネさんの将来は決まっていますからな」
「え、ま…まぁ」
「ところで晴海様は今回が初めてですか?」
「そうですね。正直手持無沙汰ですけど」
「前半のこの懇談会はあまり関係無いと言えばそうですね」
「挨拶は幾人か、ですけど、特に誰かに話しかけられる事もないんですね」
「神宮寺の事は基本情報公開されていませんからな、財界の人間もあまり知らないのでしょう」
「そうなんですか?」
「左様です、我々が分家しているのも、表向きの事、今回の様な会合は我々が引き受けている側面が強い。大家に雑事はさせないという事です、あたら知られても問題がある、という事です」
「どういう事でしょう?」
「神宮寺は昔から皇族直轄に近く、膨大な権限を公的に持ちます、ですので、表に出ると集ってくる者も多い、そういう事を防止する為にも民では非公開部分が多い訳です」
「成程、分四家は防波堤に成っているんですね」
「左様です、公私共に」
晴海自身は前半の懇談は特にやる事もなく、そこでアヤネに「では部屋に戻りますか?」
と問われ同意して会場から出た
二時間後の二〇時に、後半の会合が始まる
正直、こちらも晴海には関係ないのだが、一応出席はする
場所は今度は二階の和室大ホールで行われ、こちらは神宮寺と四家、更に其れに連なる支家等の関係者が集まりテーブルを囲んでの会議に近くなる、人数は神宮寺以外から参加している代表者だけで十二人
とは言え、基本全員静かに聞くだけで、音頭を取るのは神宮寺の大家だ。
内容も凡そ分かっている、次の後継者の指名、それも当然で神宮寺の直系長男の泰斗に決まっているので、その報告・認知だけかと思われた。が、其れは予想を裏切る物だった
慶から伝えられたのは
「次の指名は今しばらく時間を置く」という言だけだった。
当然「どういう事でしょう?」と参加者から問われる
「東京で活動しているワシの次男、晴海を知っているか」
「多少は、情報も話も聞いています」
「確か退魔ランクに最初から恵まれた前線の士とか」
「うむ、当人の希望あって現在、都の公的組織と協力し、退魔の最前線を担当している。では資料を」
そうして参加している一同に数枚の束のファイルが配布され
全員、其れを読むのを待って次に進める。内容は晴海が東京で起こった「成果」組織、討伐した内容である
「今、各家の血族、退魔の力を持った者ら公的組織と協力し
近年増え続ける事件に直接的対処を行っている、結果も出ているし、ワシも熟考する時間が欲しい」
「ふむ…次代は強き者を、とも考えていると?」
「しかし、ご長男は秋には成人されるが」
「故に、皆の意見を聞きたい」
本来神宮寺家のトップはある年齢に成ると自動的に後継者とされ、少しづつ先代から指名された直系男子に本家の権限を委譲し、最終的には次のトップとなる。その中で経験とか手順とか統制を学び、完全移譲になる
今回に限っては、晴海という人材が直系に出た、そして既に結果と組織を持っている、その為、熟考とした
ただ、其れに賛同する者も居る。既に交流もあり協力関係にある時人である、だが、同時に同等の異論もある
「退魔の家のトップであるのだから、その力に秀でた者が継ぐべき、ですか。分からなくはありませんな、我々四家も基本そうしている訳ですから」
「だが、組織運営能力で決める事もあるし、まして神宮寺の御大が前線に出る訳ではない、必ず退魔の力が必須ではない」
「そうだ、ワシ自身も退魔ランクが高い訳ではない、が、其れはあくまで、その代に退魔の力が無かっただけのとりあえず人事でしかない」
「新たに直系にそういう結果を持った人間が出たなら、そちらに移譲すると?」
「故に、経過を見る」
一同も其々唸って考え込むが、別にそれ程異論がある訳ではない、結局最終決定は今のトップ、慶にしかない訳だから
もう一つは、本質的に現在の形がどうあれ「退魔の組織」には違いなく、その力に秀でた者が継ぐというのは尤もだとも全員にあるからだ、まして、既にその結果を提示されているし、他四家は実際そういう基準で決める事もある
例えば京極は高齢ながら最も退魔の力に秀でたアヤネの祖父が今現在もトップに居り、アヤネの両親が居るが両者は組織運営には関わるが直接は継いでいない。
「問題は晴海様のそれ以外の事ですが」
「是も問題ないでしょう、知っている者も居るでしょうが各家の血族とも直接協力しているし、共に戦っている」
「そう、私の二女・三女も預けてあるし、人柄も強さも申し分ない」
「京極としても否定する理由がないな。ワシの孫も預けているし直接話した事もある、誠実で穏健で何より私欲がない」
「それは綾辻と京極はそうでしょうが」
「そういう事ではない、関わった者の育成、影響も強く出ている」
「?」
「ワシの孫は未熟であったが、晴海様に預けた一年半で劇的な成長を遂げている、既にワシの全盛期に近い強さを身に着けた」
「その様な事が?…」
「前線にあればこその事、というのもある」
「確かに、善幸殿も最前線の士でしたからな」
「そういう形があっても良い、という事だ」
そう京極に言われると納得せざる得ない。単に自分の利益で賛同している訳でもないと分かるからだ
「善殿がそこまで言われるなら特に反対はありませんな」
「事実は事実として結果がある訳ですし」
「何れにしろ、決定を延ばすというだけの事だ、長男にそのまま継承でも左程問題はないだろう」
「そう急ぐ事でもないですからね」
そういう流れで「今しばらく判断の材料を揃える」と慶はしたが、この場でも言われた通り、別に本来、神宮寺の御大が前線の士である必要性はない。昔で言う、将軍家のトップの様なモノだから武力に秀でている事は重要で無い
無論、晴海の特別な力と行動の結果もあるが、それとは別に根本的に疑念があるからでもある、それは晴海が「家」「家族」が好きでない理由でもある
こうして会合は終了し、特に何か発表や決まりがあった訳でもなく、其々の参加者も解散と成ったが。この「何も決まらない決定」の影響は小さくなかった
一応末席にて参加した晴海も特に話す事もなく、そのままアヤネと部屋に戻ったが
「なんだか可笑しな話になってたなぁ…」と当事者ではあるが、どちらかと言えば蚊帳の外で勝手にそういう流れを見ているだけだった
「まさか慶様がこういう方針を出すとは思いませんでした、が」
「が?」
「言われてみれば、尤もなのかもしれません。血統相続と言っても年功序列ではない、退魔の一族なのだから、その力の強い晴海様も候補として並べ考える」
「神宮寺の御大とか…想像も出来ないんだけど」
「でしょうね…でももう晴海様はそこに並べられても妥当な力を公私共に持っている、という事です。晴海様がどう思っているかに関わらずです」
「余計な火種に成らなければいいけど」
「あの~‥晴海様、また少し大きくなってるんですが‥」と報告された
で、今回は中学生くらい?多分人間と比較すると3歳分くらい身長・体重が増加してた、身長は百四十センチ、体重も三十五㌔だった。この辺りまで来ると子供ぽい、とも云えない容姿だろう
成長続けるとどうなるんだろう?という懸念もあったがどうも寧ろ安定してるぽい。つまり
「強く成ったら成ったで凶暴になったりしないのかな?」
という部分がどこかにあったのだが、天然ぽい、無邪気さはあんまり変わらない
理屈上は説明は付く、子猫が成長して普通の猫になっても滅茶苦茶凶暴になる訳でもないし、子馬が馬になったからと言って急に草食から肉食に成る訳でもない
つまりその懸念は元々そう無い、大人に成ったからと云って種類が変化する訳じゃない、雹はそういう種別だったというだけの事で幸運でもあった
やはり内面的部分も多少向上したのだろう
「うーん、遠距離からも殴れる気がする」と言ったので、表で試したが、霊圧爪はそのまま前回戦ったカマイタチみたいに斬撃として離れた距離でも撃てるらしいが、そこまで離れて届かないらしい。精精五~六メートルくらいだろうか
ただコンクリ壁に向ってやってみたが「バチ!」とムチで撃った様な傷を付けたので打撃に近いのかもしれない、それも「飛んでって当る」でなく引っ掻いたモーションから何か発射される訳でなく、目標物に打撃痕が付くので空間斬撃みたいな感じだろう
元々使っている爪だが、実際は晴海の霊圧刀に近い効果がある、出し入れ自由のエネルギー剣で試してみたら五本指全部に発動出来るが、対ヘビ戦と同じく、自身の武器の斬撃殺傷力を上回る硬さの相手は斬れないらしい
正確には斬っては居るのだが通らず弾かれているというのだろうか、包丁で野菜を切れても、石は切れないし、刃が欠ける、のと同じ事だが、そこに使った運動エネルギーはそのままなので打撃には成る、という物理的には、尤もな効果が現実に発揮されているだけだ
六月に入り、最初の一日の事である。
本家から通知、というか書簡が来る。公式な、一般的には当然知らない事だが一応秘密なモノでもなく招待状の様な物である。ただ内容は事前に晴海も認知している
簡単に言ってしまえば本家神宮寺の会合というか
昔で云う王族とかの交流・相談会みたいな物だ
時代錯誤も甚だしいが実際問題、神宮寺並び、四家血統相続で次の御大は血族から選ばれるので、必要と云えば必要ではある、特に今年は兄・泰斗の成人年で、前例から言えば次の指名がされる
晴海は会合には出ない、そもそも特に問題無ければ後継者としては一番は年長の兄であるし、会合自体年に一度か、何か緊急事で、どちらにしても晴海には用が無いのだが今回に限ってはそうも云ってられない、晴海の状況が大きく変化しているからだ
当人は余り認知していないのだが、今の晴海は専門家の範囲では関東圏の退魔独立特化部隊の長の扱いであり、実戦の経験と成果が非常に多い。継ぐ継がないは別にして公私共に顔見せはした方がいいだろう
その見識は当然四家の一族でもあるアヤネも
「どうしても嫌だ、という事でないのでしたら出た方が良いでしょう」とした
「まあ‥そこまで嫌という訳でもないけど‥僕には余り関係ないし、どの道泰斗兄さんのが序列的に相応しいからね」
「とは思いますが《人》を見るには良いのでは?」
「どういう意味で?」
「この会合は確かに親睦・相談会も含まれますが、各家の長に近い方が出ますから継ぐ継がないは別にして後に繋がる事もありますから」
「成る程ね」
「晴海様は認知していないでしょうが、晴海様の集団はおそらく既に日本最強の退魔部隊です、この会合は各家、其れを超えた範囲の人が出席するので晴海様が何もしなくても反応が見えます」
「例えば?」
「今の晴海様はどの様な立場で実力を集団として持っているのか?おそらく分るでしょう」
「イマイチよく分らない概念だけど‥アヤネがそう云うなら行ってみよう」
「その方が宜しいでしょう」
「で~、僕とアヤネだけでいいのかな?」
「構わないと思います」
そういう流れで気乗りしないながらも招待状を携え、翌日の午後出立する事となった
会合は神宮寺の本家で無く。家が保持する別の屋敷が滋賀にある為そちらに向う、列車で現地の駅まで行き降り、そこで迎えの車等が来ている為でコレを甘受して、琵琶湖、長浜にあるホテルに案内される
外面は大きな和装旅館で古臭いのだが、屋内は無駄のないスッキリした奇麗な様相で、家具も設備も最新のモノだ。観光ホテルとしてはよくある形だが、実際に一般に開放しているものでもなく、あくまで神宮寺の所有施設である
晴海らは個室・和室に案内されて時間まで自由にしてもらって結構です、とそのまま世話人も下がった
実際、自身も来るのは初めて、手持無沙汰もあって屋内を回るが確かに一般の屋敷ではない。 あちこち護衛が居るし、ハタ目には分からないのだがおそらく武装した人員も居る
庭、駐車場を見れば、次々後続で来る高級車が入ってくるし、そこから降りてくる人間も年長で威厳のありそうな人ばかりだ
「なんだろう、この場違い感」
「まあ…各家の関係者、一部財界人等も来ますから自然仰々しくなりますよ」
「成程、それで顔見世の側面もあるのか」
「おそらく、前後半で分かれると思います」
そうアヤネが言った通り、実際前半・午後十八時に一階の大ホールでの立食パーティーに近い催し。これはどちらかと言えば公共利益部分の会合で、各家の責任者と一部財界人との
交流会というか、利益面での懇談が中心
特に京極や綾辻等はその側面が強く、認知されないのだが、今で言う大企業体に近い立ち位置なので自然とそうなってしまう
勿論アヤネも例外でない。京極は綾辻とは違って一般投資等それ程やっていないのだが何しろ「経済で双璧」と評される程の資産が有る為、繋がりを作っておこうという、財界や企業の関係者に囲まれる事になる
アヤネや、祖父も今回が初参加ではないので分かっていて、その対応も如才ないが、一時間後に戻った所で、彼女の名刺入れの類もパンパンだったが
もう一人は勿論、今回「も」参加している綾辻で時人が直接来ている、彼も慣れたモノで30分程交流した後、晴海らを見つけて話かける
「お疲れですかな」
「ええ…まあ。私はあまり関係ないと思うのですが…」
「京極ですから仕方ないでしょうな、ある程度資本に参加しているならかわす方法もありましょうが、京極はそういう側面が小さい、まして大家の孫娘ですから」
「土地や株式が大量にあるからと言っても私がどうこう出来る物ではないのですが…」
「確かその辺りは善殿の範疇でしたな。商売上の事はお父上」
「何らかの形でつながりを持っておこう、というのは分かりますけどね」
「何れにしても、アヤネさんの将来は決まっていますからな」
「え、ま…まぁ」
「ところで晴海様は今回が初めてですか?」
「そうですね。正直手持無沙汰ですけど」
「前半のこの懇談会はあまり関係無いと言えばそうですね」
「挨拶は幾人か、ですけど、特に誰かに話しかけられる事もないんですね」
「神宮寺の事は基本情報公開されていませんからな、財界の人間もあまり知らないのでしょう」
「そうなんですか?」
「左様です、我々が分家しているのも、表向きの事、今回の様な会合は我々が引き受けている側面が強い。大家に雑事はさせないという事です、あたら知られても問題がある、という事です」
「どういう事でしょう?」
「神宮寺は昔から皇族直轄に近く、膨大な権限を公的に持ちます、ですので、表に出ると集ってくる者も多い、そういう事を防止する為にも民では非公開部分が多い訳です」
「成程、分四家は防波堤に成っているんですね」
「左様です、公私共に」
晴海自身は前半の懇談は特にやる事もなく、そこでアヤネに「では部屋に戻りますか?」
と問われ同意して会場から出た
二時間後の二〇時に、後半の会合が始まる
正直、こちらも晴海には関係ないのだが、一応出席はする
場所は今度は二階の和室大ホールで行われ、こちらは神宮寺と四家、更に其れに連なる支家等の関係者が集まりテーブルを囲んでの会議に近くなる、人数は神宮寺以外から参加している代表者だけで十二人
とは言え、基本全員静かに聞くだけで、音頭を取るのは神宮寺の大家だ。
内容も凡そ分かっている、次の後継者の指名、それも当然で神宮寺の直系長男の泰斗に決まっているので、その報告・認知だけかと思われた。が、其れは予想を裏切る物だった
慶から伝えられたのは
「次の指名は今しばらく時間を置く」という言だけだった。
当然「どういう事でしょう?」と参加者から問われる
「東京で活動しているワシの次男、晴海を知っているか」
「多少は、情報も話も聞いています」
「確か退魔ランクに最初から恵まれた前線の士とか」
「うむ、当人の希望あって現在、都の公的組織と協力し、退魔の最前線を担当している。では資料を」
そうして参加している一同に数枚の束のファイルが配布され
全員、其れを読むのを待って次に進める。内容は晴海が東京で起こった「成果」組織、討伐した内容である
「今、各家の血族、退魔の力を持った者ら公的組織と協力し
近年増え続ける事件に直接的対処を行っている、結果も出ているし、ワシも熟考する時間が欲しい」
「ふむ…次代は強き者を、とも考えていると?」
「しかし、ご長男は秋には成人されるが」
「故に、皆の意見を聞きたい」
本来神宮寺家のトップはある年齢に成ると自動的に後継者とされ、少しづつ先代から指名された直系男子に本家の権限を委譲し、最終的には次のトップとなる。その中で経験とか手順とか統制を学び、完全移譲になる
今回に限っては、晴海という人材が直系に出た、そして既に結果と組織を持っている、その為、熟考とした
ただ、其れに賛同する者も居る。既に交流もあり協力関係にある時人である、だが、同時に同等の異論もある
「退魔の家のトップであるのだから、その力に秀でた者が継ぐべき、ですか。分からなくはありませんな、我々四家も基本そうしている訳ですから」
「だが、組織運営能力で決める事もあるし、まして神宮寺の御大が前線に出る訳ではない、必ず退魔の力が必須ではない」
「そうだ、ワシ自身も退魔ランクが高い訳ではない、が、其れはあくまで、その代に退魔の力が無かっただけのとりあえず人事でしかない」
「新たに直系にそういう結果を持った人間が出たなら、そちらに移譲すると?」
「故に、経過を見る」
一同も其々唸って考え込むが、別にそれ程異論がある訳ではない、結局最終決定は今のトップ、慶にしかない訳だから
もう一つは、本質的に現在の形がどうあれ「退魔の組織」には違いなく、その力に秀でた者が継ぐというのは尤もだとも全員にあるからだ、まして、既にその結果を提示されているし、他四家は実際そういう基準で決める事もある
例えば京極は高齢ながら最も退魔の力に秀でたアヤネの祖父が今現在もトップに居り、アヤネの両親が居るが両者は組織運営には関わるが直接は継いでいない。
「問題は晴海様のそれ以外の事ですが」
「是も問題ないでしょう、知っている者も居るでしょうが各家の血族とも直接協力しているし、共に戦っている」
「そう、私の二女・三女も預けてあるし、人柄も強さも申し分ない」
「京極としても否定する理由がないな。ワシの孫も預けているし直接話した事もある、誠実で穏健で何より私欲がない」
「それは綾辻と京極はそうでしょうが」
「そういう事ではない、関わった者の育成、影響も強く出ている」
「?」
「ワシの孫は未熟であったが、晴海様に預けた一年半で劇的な成長を遂げている、既にワシの全盛期に近い強さを身に着けた」
「その様な事が?…」
「前線にあればこその事、というのもある」
「確かに、善幸殿も最前線の士でしたからな」
「そういう形があっても良い、という事だ」
そう京極に言われると納得せざる得ない。単に自分の利益で賛同している訳でもないと分かるからだ
「善殿がそこまで言われるなら特に反対はありませんな」
「事実は事実として結果がある訳ですし」
「何れにしろ、決定を延ばすというだけの事だ、長男にそのまま継承でも左程問題はないだろう」
「そう急ぐ事でもないですからね」
そういう流れで「今しばらく判断の材料を揃える」と慶はしたが、この場でも言われた通り、別に本来、神宮寺の御大が前線の士である必要性はない。昔で言う、将軍家のトップの様なモノだから武力に秀でている事は重要で無い
無論、晴海の特別な力と行動の結果もあるが、それとは別に根本的に疑念があるからでもある、それは晴海が「家」「家族」が好きでない理由でもある
こうして会合は終了し、特に何か発表や決まりがあった訳でもなく、其々の参加者も解散と成ったが。この「何も決まらない決定」の影響は小さくなかった
一応末席にて参加した晴海も特に話す事もなく、そのままアヤネと部屋に戻ったが
「なんだか可笑しな話になってたなぁ…」と当事者ではあるが、どちらかと言えば蚊帳の外で勝手にそういう流れを見ているだけだった
「まさか慶様がこういう方針を出すとは思いませんでした、が」
「が?」
「言われてみれば、尤もなのかもしれません。血統相続と言っても年功序列ではない、退魔の一族なのだから、その力の強い晴海様も候補として並べ考える」
「神宮寺の御大とか…想像も出来ないんだけど」
「でしょうね…でももう晴海様はそこに並べられても妥当な力を公私共に持っている、という事です。晴海様がどう思っているかに関わらずです」
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