晴海様の神通力

篠崎流

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早駆け

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翌日の日曜午前中には晴海が得た業の事も相談し名雪やメイにも見て貰うが

「メイも似た様な事できるお?」
「私もバルクールは少しやった」

と案の定な答えが返ってきたが。それもそのはずでメイは初戦の虎との闘いで軽身功で回避・移動を行ってかなりアクロバティックな戦法を使うし

名雪は側宙やバック転回避しながらも移動・射撃や切り返しを行う、元々家にある技術か?というと微妙らしいが、現在の彼女のようにド派手な技法では元々無いそうだし

この体術自体はどこでも出来るので
「よし外に出よう」
と名雪が言い、とりあえず開発部敷地内で見せようという事になった

なんとなく高砂やレイナも興味本位で集まってたが

開発部の五階くらいのビルでも幾つか区画が分別されており建物と建物の間の狭い路で道具無しで三角飛びの要領で壁を蹴って反対側の壁をまた蹴ってと上がり三階くらいの高さに軽々登っていく。そこから手掛かり、ベランダの様なでっぱりやパイプを使い屋上にスタッと着地

下りるのも建物の壁や非常階段などを使ってひょいひょい下りてくる、最後に二階くらいからフワっと飛んで着地から衝撃を消して前転して立った

「まあ、こんな感じだ」
「じゃあメイもやるお」

と同じ様にメイも何気なしにひょいひょい登っていくただ名雪とは特徴が違い、自らの体重を制御しているため力感は殆どない軽い感じで小型動物ぽい

「名雪さんのは華麗ですけどメイちゃんのは猫ぽいですね…」
「あんなん出来ねーだろフツー…」
「バルクールかというと違う気がしますね」

ただ実際やってみると早駆けは二人の技術と大きく違う、晴海の場合、例えば壁から壁を蹴って上に上がる必要自体がない、物理的に足掛かりとか無くても空間の手元や足元に力場を作れるから

Aの壁を蹴ってBへ、と成って届かない、ギリギリ触れるでもそのまま引っ掛かりと反動を自分で構築、或いは、手足から、気砲の要領で点火すれば、再ジャンプとか宇宙空間での姿勢制御に近い事が出来る、アクションゲームで言う所の空中二段ジャンプみたいのが可能だったりする

そうして開発部のビルを上下往復して戻った

「うーん、かなり便利な業だな。私やメイとは根本から術理は違うが確かに体術的には近いモノがある。おそらく訓練すれば戦闘でも応用できるだろう」
「要は、前後左右への強制移動と同時に斬ったり撃ったりミックスする、て事か」
「メイのが近いのかもしれないお」
「どういう感じ?」

とメイは晴海から距離を取って、前にダッシュ、一歩目が地面に着く直前に軽身功を発動して、晴海の頭の上を旋回しながら飛び越え背後に回って構える

「おお…!?」
「こんな感じだお」

早駆けの基本メカニズム自体は簡単。極端に言えば、気砲と同じく霊力爆裂方向を自身の後方に出して前進推進力を得ればいいだけで、ローラーやボードの様な摩擦の少ない滑る道具に乗っても数倍速で滑って加速前進出来る訳だし

今はバルクールに近い事をやっているがこれは既に早駆けの応用になっている、本来は乗り物等を使わず、人力で直線高速移動する業であるから、平坦な道で加速移動に使うだけなら障害物のある所でやる必要は無い

応用、と云った通りで別の運用や業その物の使い方の変更も可能である

メイがやった様に飛び回っての戦闘も可能だし
高跳びしてもかなりの高度まで飛べるので障害物をショートカット等にも使える

あるいは加速継続で長距離移動でも可能、又は、教本の絵にあるように、手足に何らかの効果を付与して運用する、まだそこまでの発想と運用が無いだけで

それから霊力の消費もそう多く無い、あくまで晴海基準ではあるがスタンダードな平地ダッシュなら霊力回復力のが早いくらいなので、ずっと使い続けなければおそらく略無限に移動出来る、つまり、10くらいしか一回のダッシュ移動で使わない

が、別の意味で問題はある

「霊力は兎も角、肉体的負担はあるね…」
「飛んだり跳ねたりだしな、足とか、靴とかも凄い摩耗しそうだね、二人はどうしてるの?」
「着地とか停止時に減速すればいいお」
「受け身を使えばそうでもない」

との事らしいが、メイの場合そもそも自身を軽くしているので飛ぶのと着地する事の反動ダメージがあまり発生してない

名雪の場合、手足で着地時に掛かる圧をそのまましゃがむようにし前転受け身とかで接地した部位、足とかから全身に逃がしているが、晴海に出来るかというと微妙であるのだが

「平地の移動ならスケートとかボードとか履いてしまえばよいのでは?」
「その手もあるね」

何れにしろ両方有効な体術ではあるので継続して習う事になるが、単に早駆けだけでなく、戦闘でも高い次元の受け身や体捌き、軽身功での回避や裏取り等、有益でしかない訳だし

ただなんかレイナやマコトも覚えたいらしく何時の間にか参加してたが

ハタから見てるとド派手なバク宙とか前、横、後ろ受け身なのだが実際自分でやってみると、かなり技術的精度の高い受け身ではある

例えば、大きく手を突いて側転してから、立ち体勢に戻るがここまでは名雪のオリジナルの回避で、そこから反動の二回転目を小さく頭を足側に丸める様に回って最小回転で戻って更に回転の反動で横に飛ぶとか、膝立ちで撃つとかで後者はかなり合気道に近い回り受け身である

「ド派手な回避業かと思ってたけど違うんだなぁ…」
「こんなにジャンプして後ろに倒れて避けたら逆に痛いんじゃないかと思ってたけど、凄くスムーズで全然痛くないんですね!」

というのがレイナとマコトの感想である

「倒れ方にコツがある。直立から真下にしゃがむ様にしてから順番に後ろに倒れる様に回れば回避しつつの射撃も、距離を取ってのポジションの調整からの構えも可能だ。これは柔術だけでなく、一部軍隊の射撃術でも元々ある」
「成程ね…射線から自動で逃げられてしかも優位に反撃出来る訳か」
「バク宙撃ちも自分が反転する感じではない、それだと逆に失敗する」
「そうなん?」
「両手に持った武器を万歳から後ろに投げる様な感覚でその反動を使って武器の重さを中心に回る」
「おおう!?出来た⁉」
「慣れれば片手持ち構えでも出来るようになる」

とか言って二時間くらいの練習でレイナも近いアクションが出来る様に成ってたが元々運動神経は抜群ではあるから可能ではあるんだろう

そうして夕方までみっちり教を受けて、其々解散となり、パトロールや本部待機行動などに入るが、この辺りは一応割り当てはあるが、基本自主的な行動に任せている部分もある。

ある程度本部から遠い半径に移動しながら警戒網以外の線量計での捜索がメインに切り替わっているのと、車両免許持ちで、ある程度個人で対応出来る人員も半数になるからで

レイナ・マコト・名雪・菜摘・支部の獅童と開発部のバイク隊が四方に散って動いていて残りは徒歩なのもあり本部周りに待機している事が多い

晴海も早駆けで試しに遠方捜査に参加もしてみるが霊力の負担は略無くても、自身の足での移動も含まれるので、速度と距離は出るが、継続して何時間もと成ると肉体的負担もそこそこある

一応先に言われた通り、ローラースケートとかも試してみたが地を滑って移動する分には悪くない、一回蹴って発動させたまま進むとかなりの速度と距離が稼げるしこちらは略肉体的負担はないし、状況次第で着脱できるし

その日の実験パトロールを終えて23時には本部に戻って
私室の端末を開くと高砂からメールが来ている

内容は先の事件で頼んでいた少女の事だが、ある程度精神面でのケアも進み、会談可能だと判断されたので会うなら案内する、との内容である

勿論OKを出し、翌日の学校の帰りに高砂と合流、そのまま警察病院に覆面パトカーで移動しつつ情報を貰う

個室病室で先の事件の少女と面会し晴海自身と一対一で会談。晴海も内容を誤魔化さず自身が初めにアヤネから教えられたように、なるべく正確に教えた

《説明しても信じる人はまずいない》のだが彼女は誘拐の現場もその後の討伐も見た。見てしまったのでその必要があるし、自身で見た事だから冗談とも嘘とも思わなかった

そうして事実を伝えた後、ECMという組織と晴海自身がやっている事、現在の彼女の現状を説明し、組織への加入を勧めるが結論から言えば、コレを承諾する

一つに、このまま日常に戻るとしても彼女自身が非常に霊力が多い事、であれば再度狙われる可能性がある。自衛出来る訳がないし危険である事

二つに、直接の親族が居ない事。社会保障制度を利用して一人で生きていけなくはないがそれも不確定だし、金が出てもやって行けるかも謎

「そういう訳で、僕としてはECMに席を置いて欲しいと思ってる、このまま日常生活に戻しても危険があると思うし」
「でもあんなのと戦うなんて…」
「それは大丈夫。年齢が年齢だし、いきなり出来るとも思ってない、このままだと何れにしろ難しい生き方になるから、ウチに席を置けば一定の給与が発生するし生活の問題と、自衛の問題は少なくとも消える」

「なるほど…」
「それに君は生まれつき霊力が多い、そういう絶対的な才能があるという事なら其れを活かしてみない?とも考えてる」
「わかりました…考えて見ます」

そう一応の納得を得られ、結果的に翌日の午後、ECM施設に案内されて手続きを取って組織の所属の扱いにした、別に何か労働しろ、という事でもない。

どこに居ようと可能性は0ではないのだが、少なくとも何らかの金銭的補助を出して1人でやれ、という事だとその分1人の時間が多く成る、それだけ霊力が多いとなるとその分狙われる可能性が増える。 

けどECMの所属で住処が此処であれば再度の襲撃のリスクは減るし、何かあっても対応はし易いという意図があっての事だ

彼女は加賀美奈央 まだ中学3年の15歳

なので何れにしろ事件の云々に関わらず当面の措置としてそう誘ったが。彼女も熟考の上で了承し、此処にいる訳で、前提条件も勿論同意した

妖怪という存在に対しての秘密と、対抗する組織が居る事の秘密部分の漏洩しない事だが。これも確約する。ただ、晴海が思う程その意思は弱くはないらしい

「何れにしろ、まだ中学生なので此処で何かしろという義務は決めないので普通の学校行って、自由にしていいよ」

としたのだが

「でも私、才能があるんですよね?だったら仇討ちしたい」

とこれも譲らず、戦える人員として修行すると示した、晴海と同じく昼間は学生としての行動をし、夜からは自分も活動するとしたので、ちゃんと装備講習と適正を見て業の指導も
組織に任せる事となった

霊力という絶対的才能の面で言えば確かにかなり稀だ
線量計で正確に測ったら素体で220前後あるので、術を覚えればかなり強い訳だし

戦闘的な面で子供でも問題無い。極端に言えば撃ち合いだの殴り合いだの出来なくても召喚符を覚えるだけでも戦力になる、実活動やパトロールなどでも誰かと共同で動けば問題無い

そういう流れで当日から講習、装備の解説、パトロールでの行動やルールの把握等、積極的に受講する事となった

まあただ晴海が想定していた事は少々異なるが。晴海は当面は雑務でもしてもらって、ある程度の期間所属員として給与を出して家も確保し、何らかの技術とか資格とかを得て貰う

その後、何年後とかに、日常に戻るかの希望を聞くつもりだったが思ったよりも彼女は前向きというか、意思が強いらしい

最年少で素体で霊力が高いという事で今後どういう指導するかでまあまあ揉めたが、やはり比較的万能で先に覚えても後でどうとでも応用が利くアヤネに指導は任せる事になったが
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