約束の花

大戦前夜

幸せな日々

柔らかな風が頬を撫でる
風に乗って桜の香りが部屋に広がる
このままずっと寝ていたい…。
だが─────
「お父さーん！起きてー!!」
…よし、聞こえないふりをしよう。
俺はモソモソと布団にもぐった
「………」
「お父さーん？起きないとこの剣分解しちゃうよ～？」
なに!?それだけはマズい…っ!!
「はいっ!!おはようございます!!」
布団から飛び上がる
うちの娘なら本当に分解しかねん…。
「早くご飯食べて！」

椅子に座ると目の前にシチューが置かれていた
見るだけでお腹が空いてくる。
「いつもシチューばっかりでごめんね」
「いや、サナのシチューは結構好きだ。いただきます」
そう言ってシチューを口に入れる
野菜が多いこのシチューはまろやかでほんのり甘い
「うん、美味い。」
「えーそれだけ？もっと言うことないの？」
「はいはい、いつもありがとー」
「ぜんっぜん思ってないでしょ！」
「ははは…っ」
笑い合いながら食べ続ける

「美味かったよ、ごちそうさん」
俺は椅子から立って食器を片付ける
「お粗末さま、本当いつも綺麗に食べるよね」
「もったいないだろ」
「まぁ…私としては嬉しいけど」
さてと…身支度を整えるか。
俺はクローゼットから装備を引っ張りだし、黙々と支度する
「あっサナ、剣返してくれ」
「ん…ど～ぞっ…!!」
俺の身長くらいある大剣を受け取り、背に担ぐ
「…よくそんな重い剣使えるよね」
「仮にも騎士ナイトだからな」
今の軍には大きくわけて2種類の階級がある
兵士ソルジャーと騎士ナイトだ
兵士ソルジャーはC級やE級の魔剣しか扱えない者
対して騎士ナイトはB級以上の魔剣が扱える者だ
「まぁ俺はB級使うのがやっとの下っ端だけどな」
「またまた～本当は強いの知ってるよ？」
「強かったらいつも怪我してませーん」
「確かに…こりゃ1本取られた！」
「はは…っさて、俺はそろそろ行くぞ」
靴を履きながら言う
サナは少し寂しそうな顔をして
「いってらっしゃい、ちゃんと帰ってきてね！」
「ああ、帰ってくるよ。いってきます」
家を出る前に娘の頭を撫でた
「…なによ」
「なんでもないよ、またな」
ふてくされた娘を横目に任務地へと向かう