公爵令嬢の選択

つきほ。

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番外編

番外編① 王宮に残る者たち

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王宮の中庭に、穏やかな春の風が吹き抜ける。

その風の中に、どこか寂しさを感じたのは、王太子レオンだけではなかった。

「……随分と静かになったな。」

城壁を見上げながら、レオンは小さく呟く。

そこに、ロイがやってきた。

「何を考えてるんですか?」

レオンは小さく笑い、視線を遠くへ向ける。

「いや……ただ、彼女がいなくなってから、王宮の空気が少し変わった気がしてな。」




マリアンヌが旅立ってから、王宮の体制は少しずつ変わり始めた。

ロイが新たに騎士団の指揮を執り、軍の再編が進められている。
リナはより多くの訓練を積み、正式な騎士として認められた。
書記官たちは制度改革を進め、王国の基盤を強化しようと動いている。

「王宮は確かに変わっていく。でも、まだ足りないんだ。」

レオンの言葉に、ロイは眉を寄せた。

「足りない?」

「……彼女がここにいたときのような、あの空気がな。」




王宮の人々は口にはしないが、どこか落ち着かない様子だった。

「マリアンヌ様がいれば、どう判断しただろう?」

そんな声が、時折聞こえてくる。

彼女は公爵令嬢でありながら、王宮に深く関わっていた。
冷静な判断力と、戦場で培われた経験。
そして、何よりも「必要な時に、必要な決断を下せる人間」だった。

「お前までそんなことを言うとはな。」

ロイは少し笑いながら言った。

「いや、俺も時々考えるさ。アイツならどうするかってな。」




レオンは静かに、マリアンヌが最後に立っていた場所を見つめた。

(本当に、もう戻ってこないのか?)

彼はそんな言葉を飲み込む。

彼女は、彼女の道を選んだ。
それを引き止める資格は、誰にもない。

だが、ふとした瞬間に思う。

(彼女は今、どこで何をしているのだろう。)

遠くの空を見上げながら、レオンはそっと呟いた。

「……また、会う日が来るだろうか。」

ロイは苦笑しながら、レオンの肩を軽く叩いた。

「さあな。だが、アイツならきっと――」

風が吹き抜ける。

マリアンヌのいない王宮は、変わり続けている。
けれど、彼女の影は今も、確かにここにあった。







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