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勇者への道を閉ざされた天才勇者
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この国で子供が一番憧れる職業は『勇者』と呼ばれるものだ。勇者は人間を超えた力を持ち、どこからともなく発生する魔物から人々を守るヒーロー的存在。
初代勇者は魔王から世界を救ったという話だが、昔過ぎて今では完全なるおとぎ話だ。それでも未だに勇者という言葉は残り続けている。
勇者になりたい少年少女は小等部の頃から訓練にいそしむ。もちろん俺もだ。そして俺には才能があった。それもちょっとしたものではなく、数千年に一人と言われる程のだ。毎年開かれる年齢別の勇者大会で俺は中等部3年まで一度も負けることなく毎年世界一位。
勇者に必要なものは圧倒的な力。そして俺は最強だった。
そして高等部へと進んだ。誰もが俺が歴史に名を残す勇者になることを疑っていなかった。むしろ俺の方が疑ってなかった。
高等部に入る年、15歳になった少年少女には魔力が開花する。そして高等部からは戦闘に魔法の使用も許可されていく。
だが俺には魔力がなかった。誰もが持っている魔力が俺には一切。
「残念だ、ロイド。お前は俺を超える勇者になると思っていたのだが。もう勇者は諦めるべきだ」
幼いころから俺を弟子として育ててくれた先生は悲しそうにそう言った。
「勇者だけが全てじゃないさ」
父さんはそう言って俺を慰めた。
「ちっ!クソが!」
俺をライバル視していたゲイルがそう言い捨てて去っていった。
「ロイドの剣の腕はすさまじいんだから、魔力がなくたって、、、」
落ちこぼれでいつも俺の後ろを着いて来ていたセトはその先は言わずに俯いた。
「こんなことで諦めるなんて腰抜けだ!最後まで勇者を目指せ!」
幼馴染の女の子ミユキは目に涙を浮かべながら俺にそう言った。その顔を見て俺は勇者の道を諦めることに決めた。
中等部までは剣の腕だけの勝負だったために俺に勝てる者はいなかった。それどころか一太刀入れることさえできなかった。同学年とは格が違ったのだ。剣の腕だけなら現役ナンバーワン勇者『剣聖』でさえも俺には勝てなかった。
それでも魔力を使った戦いと使っていない戦いでは大人と子供ぐらいの差が出る。そう、今までのはただの遊びでしかなかったのだ。そして俺の遊びの時間は終わった。それだけだ。
勇者を目指す俺たちは初等部の頃から勇者学校に入学している。だがみんながみんな勇者になれるわけはない。だからそうやって諦めていく生徒のために普通科も用意されている。
俺は高等部に上がるのと同時に普通科への編入を決めた。
父さんのいった通り勇者が全てではない。世の中には多種多様な職業がある。選択肢が一つ減っただけに過ぎない。
そう今俺が学校へ向かっているこの魔導列車の運転手でもいいし、空を飛ぶ魔導飛空艇のパイロットでもいい。料理人、役人、実業家だって悪くない。未来は明るいばかりだ。
俺が通っているのはイームス国立勇者学園。国で最も優秀な者たちが集まる学校だ。潰しはいくらでもきく。
「ロイド!ちょっと待ってよ!なんで先に行っちゃうのさ!」
後ろからセトが走ってくる。
「もうクラスも違うんだからいつまでも俺にくっついててもしょうがないぞ?俺以外の友達も作らねーと」
「それはそうだけど。置いてくなんてひどいよ!」
セトは俺の幼馴染だ。いっつも落第ギリギリで俺以外の友達もいなく、からかわれることも多かった。だから俺がいなくなった後が心配でもあったが、もう俺が助けられる事はない。
「あ、ミユキちゃん!」
そう言えばもう一人いたか。セトが手を上げた先にはミユキが歩いていた。俺たち3人は物心がついた頃からの幼馴染だ。
「よう、ミユキ」
「ふん!」
俺が普通科に編入することを決めた時から一言も口をきいてくれない。まあそれもそうか。そもそも俺が勇者になると言って勇者学校入学を決め、二人は俺に付いてきたようなものだ。そんな俺が早々に諦めたのだ。無責任だと言われてもしょうがない。
だがまあミユキは勇者科でも優秀な方だった。きっと勇者になれるだろう。だからそこまで心配もしていなかった。
「とりあえずセト。これからはクラスは変わるけど、俺とお前は親友だ。何か困ったことがあったら言えよ」
「うん、ありがとう。ロイド」
そして俺たちは進級式に出席する。校庭に並ぶが前とは違い俺の列は2人とは離れたところだ。
「諸君!中等部から高等部への進級おめでとう!」
教頭の挨拶だ。本当なら学園長の挨拶なんだろうが、学園長のじいさんは滅多に顔を出さない。だからイベントごとの挨拶は教頭が担当している。本人はノリノリだ。それでもまあどうせいつもと変わらない退屈な挨拶だ。そう思っていた。だがその思いは次の一言でかき消える。
「今年は奇跡の年となった。勇者科で歴代最強の魔力量を持った勇者が現れたのだ!名前はセト!セト・ハーティアである!」
「「「「「うおおおおおおお!!!!!」」」」
学校中がセトへ拍手を送り、尊敬のまなざしで見ていた。
突然注目を浴びたセトはバツの悪そうな感じで俺に助けるような視線を向けるが、俺は咄嗟に目をそらしてしまう。
今セトが受けている尊敬のまなざしは、ついこの間まで俺が受けていたものだったから。そうか、もう俺には本当に居場所がなくなってしまったんだな。
初代勇者は魔王から世界を救ったという話だが、昔過ぎて今では完全なるおとぎ話だ。それでも未だに勇者という言葉は残り続けている。
勇者になりたい少年少女は小等部の頃から訓練にいそしむ。もちろん俺もだ。そして俺には才能があった。それもちょっとしたものではなく、数千年に一人と言われる程のだ。毎年開かれる年齢別の勇者大会で俺は中等部3年まで一度も負けることなく毎年世界一位。
勇者に必要なものは圧倒的な力。そして俺は最強だった。
そして高等部へと進んだ。誰もが俺が歴史に名を残す勇者になることを疑っていなかった。むしろ俺の方が疑ってなかった。
高等部に入る年、15歳になった少年少女には魔力が開花する。そして高等部からは戦闘に魔法の使用も許可されていく。
だが俺には魔力がなかった。誰もが持っている魔力が俺には一切。
「残念だ、ロイド。お前は俺を超える勇者になると思っていたのだが。もう勇者は諦めるべきだ」
幼いころから俺を弟子として育ててくれた先生は悲しそうにそう言った。
「勇者だけが全てじゃないさ」
父さんはそう言って俺を慰めた。
「ちっ!クソが!」
俺をライバル視していたゲイルがそう言い捨てて去っていった。
「ロイドの剣の腕はすさまじいんだから、魔力がなくたって、、、」
落ちこぼれでいつも俺の後ろを着いて来ていたセトはその先は言わずに俯いた。
「こんなことで諦めるなんて腰抜けだ!最後まで勇者を目指せ!」
幼馴染の女の子ミユキは目に涙を浮かべながら俺にそう言った。その顔を見て俺は勇者の道を諦めることに決めた。
中等部までは剣の腕だけの勝負だったために俺に勝てる者はいなかった。それどころか一太刀入れることさえできなかった。同学年とは格が違ったのだ。剣の腕だけなら現役ナンバーワン勇者『剣聖』でさえも俺には勝てなかった。
それでも魔力を使った戦いと使っていない戦いでは大人と子供ぐらいの差が出る。そう、今までのはただの遊びでしかなかったのだ。そして俺の遊びの時間は終わった。それだけだ。
勇者を目指す俺たちは初等部の頃から勇者学校に入学している。だがみんながみんな勇者になれるわけはない。だからそうやって諦めていく生徒のために普通科も用意されている。
俺は高等部に上がるのと同時に普通科への編入を決めた。
父さんのいった通り勇者が全てではない。世の中には多種多様な職業がある。選択肢が一つ減っただけに過ぎない。
そう今俺が学校へ向かっているこの魔導列車の運転手でもいいし、空を飛ぶ魔導飛空艇のパイロットでもいい。料理人、役人、実業家だって悪くない。未来は明るいばかりだ。
俺が通っているのはイームス国立勇者学園。国で最も優秀な者たちが集まる学校だ。潰しはいくらでもきく。
「ロイド!ちょっと待ってよ!なんで先に行っちゃうのさ!」
後ろからセトが走ってくる。
「もうクラスも違うんだからいつまでも俺にくっついててもしょうがないぞ?俺以外の友達も作らねーと」
「それはそうだけど。置いてくなんてひどいよ!」
セトは俺の幼馴染だ。いっつも落第ギリギリで俺以外の友達もいなく、からかわれることも多かった。だから俺がいなくなった後が心配でもあったが、もう俺が助けられる事はない。
「あ、ミユキちゃん!」
そう言えばもう一人いたか。セトが手を上げた先にはミユキが歩いていた。俺たち3人は物心がついた頃からの幼馴染だ。
「よう、ミユキ」
「ふん!」
俺が普通科に編入することを決めた時から一言も口をきいてくれない。まあそれもそうか。そもそも俺が勇者になると言って勇者学校入学を決め、二人は俺に付いてきたようなものだ。そんな俺が早々に諦めたのだ。無責任だと言われてもしょうがない。
だがまあミユキは勇者科でも優秀な方だった。きっと勇者になれるだろう。だからそこまで心配もしていなかった。
「とりあえずセト。これからはクラスは変わるけど、俺とお前は親友だ。何か困ったことがあったら言えよ」
「うん、ありがとう。ロイド」
そして俺たちは進級式に出席する。校庭に並ぶが前とは違い俺の列は2人とは離れたところだ。
「諸君!中等部から高等部への進級おめでとう!」
教頭の挨拶だ。本当なら学園長の挨拶なんだろうが、学園長のじいさんは滅多に顔を出さない。だからイベントごとの挨拶は教頭が担当している。本人はノリノリだ。それでもまあどうせいつもと変わらない退屈な挨拶だ。そう思っていた。だがその思いは次の一言でかき消える。
「今年は奇跡の年となった。勇者科で歴代最強の魔力量を持った勇者が現れたのだ!名前はセト!セト・ハーティアである!」
「「「「「うおおおおおおお!!!!!」」」」
学校中がセトへ拍手を送り、尊敬のまなざしで見ていた。
突然注目を浴びたセトはバツの悪そうな感じで俺に助けるような視線を向けるが、俺は咄嗟に目をそらしてしまう。
今セトが受けている尊敬のまなざしは、ついこの間まで俺が受けていたものだったから。そうか、もう俺には本当に居場所がなくなってしまったんだな。
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