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夢が叶う日(5)
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side 吉積 奏汰
俺は急に生徒会会計になるやつに呼び出された。
正直生徒会に入るようなやつは嫌いだ。というか、人気投票で生徒会メンバーを決めるような仕組みが嫌いだ。
その仕組みのせいで、能力があるのかわからない、ただ人気のあるやつだけが選ばれる。
俺は1年の時から風紀委員会に入っていた。
だからたとえ抱かれたいランキング2位になっても、生徒会に入るようなことはなかった。
そうして今俺を呼び出したこいつ、齋木 葵も苦手だ。
ただチャラチャラと愛想を振りまき、頻繁に誰かと夜を共にしている、との噂だ。
S組だから容貌、成績、家柄全て優れているのではあるのだろうが、何故か気に入らない。
そんな齋木が俺に写真を見せてきた。
そこには一年以上も前に、校門まで送った中学生がいた。
よく覚えている。
最初はきょろきょろして、どこか落ち着きの無い様子が微笑ましかった。
校門まで送る間の雑談も、受け答えが丁寧で、好感が持てた。
黒髪眼鏡で、一見地味だが、眼鏡の奥の透き通るような碧眼が綺麗だったのを覚えている。
でも最後は、少し残念に思った。
俺に好きなタイプを聞いてきたんだ。
よくあることだ。どうせ一目惚れとかだろう。
そこで俺は少し揶揄い、試すように言った。
「慣れてそうな子。」
そんな話をしたからか、あの中学生のことはよく覚えている。
でも何故齋木があの中学生の写真を持っている…?
正直に見覚えがある、と言った。
そしたら齋木が信じられないようなことを言った。
「えっと~あの~、わかりません??これ、おれですよ~」
俺は思わず「は?」と返してしまった。
いや、似ても似つかない。嘘だろう。
そう思った。
しかし齋木は続ける。
「いや、見てくださいよ~!この碧眼!それにここ、首のところに~、ほくろ、ふたつ並んでるでしょ~?」
たしかに、齋木の眼をよく見てみると、あの透き通るような碧眼をしていた。
そして首元のほくろを見た。
たしかに2つ並んでいる。
ほくろを化粧品で書くことも出来るだろうが、碧眼があの綺麗な碧眼だったので、とりあえず信じてみることにした。
でもここで思い浮かぶのが、何故齋木がそんな格好をしているか、だ。
中学生のときは真面目そうな格好だったのに。
聞いてみると、どうやら俺が言った、好きなタイプ、「慣れてそうな子」を真に受けたらしい。
ということは、こいつは俺の好きなタイプになるために、あんな格好をして、あんな性格を演じてたってことか…??
でも齋木っていったら、来る者拒まず去るもの追わずの、連日寝て過ごしている、と聞いている。
ほんとにそこまでやったのか…?
それはそれで何故か腹立たしさを感じた。
「で………?
童貞処女、捨てたのか?」
そう聞くと、齋木は慌てて否定してきた。
怖かった、か…なんだか可愛らしく見えてきた。
そう聞いてどこか安心した。
そうして葵を見ているうちに、葵は俯いてしまった。
するとそのまま謝ってきた。
「騙すようなことしてごめんなさい……!本当に慣れてからまた先輩のところに来ます……。」
本当に慣れてから来る…だと?
なんだかそれを聞くといらいらする。
いらいらを隠しつつも、俯いている様子が可愛らしくて思わず頭を撫でてしまった。
齋木には童帝処女を捨てて欲しくないと思った。
それをそのまま伝えると何故か葵は涙を零した。
たぶん勘違いしてるな、そう思って、綺麗な碧眼から零れる涙を拭いながら、素直に俺の思ったことを言った。
「そうじゃないよ。いい子だね。俺のためにがんばったんだ。
その努力は認めるよ。でも、これからは俺の前では素の葵でいて。」
そうすると葵は少し頬を赤らめた。
チャラ男が好み、と答えたことも試しただけ、素の葵の方が好ましい、と言ったら、目に見えて嬉しそうにしていた。
なんだか小型犬に見えてきたな………
風紀委員の顔合わせがあることを思い出し、とりあえず奏汰先輩と呼ぶように言い、頭を最後に撫でてから葵と別れた。
俺は急に生徒会会計になるやつに呼び出された。
正直生徒会に入るようなやつは嫌いだ。というか、人気投票で生徒会メンバーを決めるような仕組みが嫌いだ。
その仕組みのせいで、能力があるのかわからない、ただ人気のあるやつだけが選ばれる。
俺は1年の時から風紀委員会に入っていた。
だからたとえ抱かれたいランキング2位になっても、生徒会に入るようなことはなかった。
そうして今俺を呼び出したこいつ、齋木 葵も苦手だ。
ただチャラチャラと愛想を振りまき、頻繁に誰かと夜を共にしている、との噂だ。
S組だから容貌、成績、家柄全て優れているのではあるのだろうが、何故か気に入らない。
そんな齋木が俺に写真を見せてきた。
そこには一年以上も前に、校門まで送った中学生がいた。
よく覚えている。
最初はきょろきょろして、どこか落ち着きの無い様子が微笑ましかった。
校門まで送る間の雑談も、受け答えが丁寧で、好感が持てた。
黒髪眼鏡で、一見地味だが、眼鏡の奥の透き通るような碧眼が綺麗だったのを覚えている。
でも最後は、少し残念に思った。
俺に好きなタイプを聞いてきたんだ。
よくあることだ。どうせ一目惚れとかだろう。
そこで俺は少し揶揄い、試すように言った。
「慣れてそうな子。」
そんな話をしたからか、あの中学生のことはよく覚えている。
でも何故齋木があの中学生の写真を持っている…?
正直に見覚えがある、と言った。
そしたら齋木が信じられないようなことを言った。
「えっと~あの~、わかりません??これ、おれですよ~」
俺は思わず「は?」と返してしまった。
いや、似ても似つかない。嘘だろう。
そう思った。
しかし齋木は続ける。
「いや、見てくださいよ~!この碧眼!それにここ、首のところに~、ほくろ、ふたつ並んでるでしょ~?」
たしかに、齋木の眼をよく見てみると、あの透き通るような碧眼をしていた。
そして首元のほくろを見た。
たしかに2つ並んでいる。
ほくろを化粧品で書くことも出来るだろうが、碧眼があの綺麗な碧眼だったので、とりあえず信じてみることにした。
でもここで思い浮かぶのが、何故齋木がそんな格好をしているか、だ。
中学生のときは真面目そうな格好だったのに。
聞いてみると、どうやら俺が言った、好きなタイプ、「慣れてそうな子」を真に受けたらしい。
ということは、こいつは俺の好きなタイプになるために、あんな格好をして、あんな性格を演じてたってことか…??
でも齋木っていったら、来る者拒まず去るもの追わずの、連日寝て過ごしている、と聞いている。
ほんとにそこまでやったのか…?
それはそれで何故か腹立たしさを感じた。
「で………?
童貞処女、捨てたのか?」
そう聞くと、齋木は慌てて否定してきた。
怖かった、か…なんだか可愛らしく見えてきた。
そう聞いてどこか安心した。
そうして葵を見ているうちに、葵は俯いてしまった。
するとそのまま謝ってきた。
「騙すようなことしてごめんなさい……!本当に慣れてからまた先輩のところに来ます……。」
本当に慣れてから来る…だと?
なんだかそれを聞くといらいらする。
いらいらを隠しつつも、俯いている様子が可愛らしくて思わず頭を撫でてしまった。
齋木には童帝処女を捨てて欲しくないと思った。
それをそのまま伝えると何故か葵は涙を零した。
たぶん勘違いしてるな、そう思って、綺麗な碧眼から零れる涙を拭いながら、素直に俺の思ったことを言った。
「そうじゃないよ。いい子だね。俺のためにがんばったんだ。
その努力は認めるよ。でも、これからは俺の前では素の葵でいて。」
そうすると葵は少し頬を赤らめた。
チャラ男が好み、と答えたことも試しただけ、素の葵の方が好ましい、と言ったら、目に見えて嬉しそうにしていた。
なんだか小型犬に見えてきたな………
風紀委員の顔合わせがあることを思い出し、とりあえず奏汰先輩と呼ぶように言い、頭を最後に撫でてから葵と別れた。
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