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第4章

81.ケイオセその2(新章27話)

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体長は30~40cmくらいだろう。カタツムリのように飛び出した目はどこか人間らしく、重い一重瞼である。顔のほとんどを占める大きな口と小さな手足、モップのような赤い毛で全身が覆われ、申し訳程度に悪魔のような羽が付いている。

あの後何度も踏みつけてみたが一向に起きる気配も無く、仕方なくケイオセが起きるまで、休憩を取りながら待ってはいたのだが、

「へっ・・あれっ・・・えっ・・・どっ・・・・どうもデース・・・」

起きた。そして人語を喋る以上、やっぱりこいつは魔人なんだろう。ステータス上知力が低いのでモヤモヤ感は否めないが、というか意味不明なステータスすぎるから釈然としないが。

ケイオセはというと、右手で頬を掻きながらめちゃくちゃキョドっている。

「いやっ。っはは。何でしょうね。その・・・お早うゴザース」

顔面の毛の生えていない部分の汗が凄い。そして臭い。刺激臭なんだけど、一体何なんだろう。何日も風呂入ってない奴が、生ごみに突っ込んだような。そんな不快感。

そういえば固有スキルに悪臭ってあったな。あれか。不憫だが敵としてはかなり厄介な能力だ。自分では気になってないっぽいし。

「えへへ。その、えっと、こんな所まで、どったんすかね?へへ」

何だろうこの既視感、まるで昔の自分を見ているような、ダメ人間臭・・・いや僕は風呂入ってたよ。前世でもね、いやでも、なんだろうこの、圧倒的同情感。

「ははは、あっ、えっと・・・その、なんかスマセン」

「・・・・・・」

どうしようか。ステータス的にもこう・・・

「第7剣技積雲」

【ボフゥ!!!】

ケイオセが吹っ飛んだ。ものすごい吹っ飛んだ。異様に軽いなこの魔人

「ちょっとユリアちゃん!なにいきなり攻撃してんの!しかも初の第7剣技!」

「第7剣技は空に浮かぶ雲の如く殺気をなくし攻撃する無拍子の攻撃です。まだまだ未完成の技ですが威力は保証します」

「違ぁう!相手が闘う気ないのに攻めたら駄目ですって!仮にも魔人なんだから!しかもあのコミュニケーションを必死にとろうとしている感じを一刀両断って、血も涙も無しですか!」

「すみません。あまりにも臭くってつい。レン様のと同じ臭いが不快で仕方なく・・・」

「ユリアの呪い嫌い!!」

なぜ僕はあの魔人側に立っているんだろう

「まあまあ、その、仲良くてきなね?」

そしてこいつは当然無傷と。ユリアが軽く舌打ちしている。ねぇユリア、それ本当にスキルのせいだよね?さっきの攻撃と言動の前半だけ素っぽい感じがしているんだけど。

それにしてもケイオセは凄いな。吹っ飛ばされてはいるものの外傷一つない。物理魔法攻撃無効なんてめちゃくちゃなスキルがあるんだから仕方がないだろう。

「えっと、ケイオセさん?」

「はっ!?はっ!?何で名前!?えっ会ってた系っすか?まじっすか?さーせん」

「いえ、そうじゃないんです。まあ理由はさて置き、結構話せそうなのでとりあえずお話しませんか?」

「あっ?自分なんかと?いいすよ。すみませんその、臭いすけど・・・エヘ」

なんだろう。最初はコミュ力の低いタイプなのかと思ったけど、表面上卑屈なだけな気もする。かつての僕と同属というよりはむしろ・・・

「ええと、外の世界からこの国に来たのは、あなたで間違いないですよね?理由とかお聞かせ願いますか?」

「あっその・・・まあ何でしょ。秘密と言いますか、シークレット的な。言ったらその、魔王様に怒られるってか、セブンズの皆にまたボコボコにされるというか、はい、なんで、すません。NGで!」

このビビりまくってる感じ。強いものにはとにかく弱く、弱い者にはとことん強い圧倒的な三下感が半端ない。・・・・・そしてこの短い会話の中で重要な情報がぽろっぽろ。本当にこれで魔人か?

「えっと、魔王様の配下なのはわかりました。それで、セブンズというのは?」

「えっあぁ、そうだっ、あっ言っちゃいけねぇ奴、やべぇ・・・えっと・・・その・・・あれっす。すいません。ええっと・・・秘密と言うか、その」

「さっさと言えよ、お前の口臭で肺が腐る」

「ユリアちゃん!落ち着いて!あぁケイオセ君ビビらないで!ねっ落ち着いて。ユリア謝って。今冷静に話し合えるチャンスなんだから。ケイオセ君ごめんねぇうちの子なんか今怒りっぽいみたいでねぇ。本当この通り。普通に。普通にお話しよう。ごめんね」

「グズッ・・・はい・・・でも自分魔人じゃないんで、神の方の魔神なんで、そこんところ敬う感じで対応してしっかり謝罪してくれないと、こっちも満足できないかななんて・・えへへ」

「・・・・・・クリーン」

あっイラっとして攻撃してしまった。なんだこれ、固有スキルの効果かな?ケイオセ見てると攻撃したくなる・・・・・いやそれよりも目の前の不思議生物が言うには、自分は魔人じゃなくて魔神であるらしい。

・・・・・魔神!?・・・・・・

ケイオセは悪臭を放ちながら回っている。

どうすればいいんだろう。もう僕までパニックです。

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4章書き終わってるのであとは滞りなく投稿しますたぶん。
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