玻璃の音、未だ響く

音村 洸

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一章

出会い

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    5月上旬、高校2年の春過ぎ。
少年は見事に5月病を発症させ、何気ない、いやむしろ何もない日々を消費し続ける毎日を送っていた。

「だるい…。彼女でもいたらな」

そう呟く彼の名は、川岸 紘(かわぎしひろ)。自宅から近い県立高校に通う、
ごく普通の高校2年生。一部を除いて。
去年まで、数名の女子と交際するも全て破局。失恋の痛みや喪失感などとうに感じないほど、心は麻痺していた。彼はスマートフォンの中のアプリを開いた。
世の中数多ある、学生が集う交流アプリのひとつだ。ルックスで誇れる様なタイプなどでは無い彼はアプリを開き、そこで気があった人と会話をして楽しむ。
もはや最近のマイブームとまでなっていた。内心情けない、と思っているのはもちろん言うまでも無い。

「さて、誰が良いかな…」

…世の中は無数の運の交差で成り立っている。だってそうだろう?この時彼がアプリを開かなければ物語は始まりすらしなかった。しかし世の中は非常だ。

…取った行動の善し悪し、正解不正解、
ハッピーエンド、バッドエンドなんて
常に後付けだ。

…そして彼は出会った。

「お、この子、話してみよっかな。何となく気があうかも?よしよし、
トークスタートっと…名前は、」


「アリア、か」

…柳村 里音(やなぎむらさとね)に。
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