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第1章:全てを司りし時計の行く末
1章27話 レミーの想い
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「試合終了でえええす!!」
対戦相手の彼女――AIオートマトンであるレミーの降参の言葉と共に、クイーンハートは試合終了の合図を送った。試合会場からは歓声が湧き上がり、湊のその特異的な魔法に魅了されたのか、集まる魔法女学院の生徒達は盛大な拍手を送っていた。
しかし、湊とレミーに様子は何やらおかしく、会場の生徒達もまたその異変に気づいたのか再び静寂が包むようになった。
「湊様――」
レミーは泣きながら湊のことを抱きしめた。彼女の身体全面には短剣に付けられた深々とした傷が残っている。一部部品が破損しているのか、身体の機械部分が露出し、コードが千切れてやや火花が散っているのも見てとれた。しかし、そんなことにも注意が向かないほど、レミーは湊のことを一生懸命に抱きしめて見つめていた。
「本当にレミーなのか……でもどうして」
西暦2222年――AIオートマトンが生体として存在する人間を駆逐しようと世界各国で戦争が起き、人間はその数を減らしていった時代。一部の人間に味方する対AIレジスタンスと共に、湊は敵のAIオートマトンと戦い、そしてある時ビルの屋上へと追い詰められた。その屋上には対AIレジスタンスのAIオートマトンであるレミーと湊が残されており、レミーのみを逃し、湊はビル諸共自爆するようにその起動スイッチを押した。
しかしその最中、別世界である魔法の世界のワールドクロックが破壊され、長針を担っていたマーニャが人間の存在する西暦2222年の地球へと侵入。ビルの屋上で爆発に巻き込まれる寸前の湊の左目に突っ込んだ。それにより湊は爆発で死ぬことなく、魔法の世界と地球が融合したこの西暦22222年へと転移・タイムスリップして生きながらえていた。
湊は西暦2222年に存在した対AIレジスタンスは、この西暦22222年の世界では既に滅んでいるだろうと無意識の内に考えていた。勿論、レミーも例外ではない。湊のいた元の世界から現在まで20000年が経過していることになるからだ。
「湊様あ、湊様あ……私は、人間を守ることが、できません、でしたあ……」
レミーは泣きながら湊に一生懸命謝罪する。なぜレミーがこの時代にまで生きているのかが湊には理解できなかった。しかし、彼女の美しい青色の長髪、瞳、言葉遣い、仕草はレミーそのものである。
「本当に、君はレミーなのか」
レミーは湊の胸元にうずめた顔を持ち上げ、彼の瞳を見つめた。
「ずっと、俺を待ってくれていたのか……」
あの爆発の瞬間、レミーは湊が死んだものと考えなかったのかが不思議でたまらなかった。死んだ人間を待つAIオートマトン等存在するものなのか――
「あのビルでの爆発……」
「ああ、俺は最後の最後まで追い詰められて、最後は自爆して……」
「あの時、私の目には湊様が爆発の瞬間、消えたように見えたのです」
AIオートマトンの動体視力は異常に高い。高速カメラ並の速度で映像を取り込む彼女の目には、爆発の瞬間、湊が消えたように見えた。それは事実であり、あの瞬間、マーニャが湊を西暦22222年へと連れ帰った瞬間であるため、爆発を逃れるように時空間を越えて転移したのであった。
「さらにあの後ビルの残骸を探索しても、湊様のDNAと一致する骨等の人間の残骸が残っていなかったのです」
「そこまで君は、俺を探して調べてくれたのか」
爆破後のビルの残骸から、湊の骨やその残骸が見つけられなかったとレミーは証言した。
「だから、もしかしたら湊様は何処かで生きながらえているのではないかと……」
「本当にそれだけで、俺がずっと生きていたと思っていたのか、レミー……」
レミーは湊が爆発の瞬間に消えたように見えたこと、そしてビルの残骸から彼の遺体の破片が見つからなかったことから、ずっと湊の生存を信じていたことになる。
「ずっと、何か科学では説明のつかない奇跡が起きて、湊様が生きているのではないかという妄想に取り憑かれておりました」
「君は……」
「でも事実だった。今この瞬間、湊様を抱き締めることで、この20000年待ち続けた私の努力は無駄ではなかったと、希望が叶ったのだと、そう私は感じるのです」
西暦2222年の地球から湊が消失し、レミーは彼の生存を信じ、この今いる西暦22222年まで待ち続けていた。湊が帰ってくるその日を夢見て。
会場の魔法女学院生徒達は湊とレミーが何の話をしているのかが分からなかった。しかし、湊の事をレミーは様付けで呼んでいるということは皆にも理解できた。
2戦目で「清楚破りの帝王」と呼称された湊は、「女を手懐けし清楚破りの帝王」へとジョブチェンジしていた。ミミだけではなく、レミーにさえも首輪を嵌めて飼い慣らしているのかと、ちらほら会場から声が聞こえてきた。魔法女学院の2学年に入る男がいると生徒に知らされてから、こうも早く女性達を射止める湊の評価は、「女を手懐けし清楚破りの帝王」に相応しいものである。
「レミー。本当に俺の事を想って、この時代まで待っててくれたのか」
「はい、湊様」
レミーはその美しい長髪を揺らしながら、湊の手を掴み、彼に付けられた胸元の傷の元へと運んだ。
「この傷は、私が人間を守れなかった罰として貴方様に与えられたものとして受け取ります」
「そ、そんな。レミーは何も悪くないよ……」
会場からはびっくりするような声がちらほら聞こえてきた。レミーが自身の胸元に湊の手を運んだその光景は、何やら周囲からは得体の知れない、しかし何か熱い気持ちを呼び起こさせるそんな状況に思えたのであった。「レミーはもう湊君に掌握されているのか」との声も聞こえてきた。
「レミー」
「はい、湊様」
レミーは自身の傷付いた胸元の傷部に湊の手を運んで触れさせたせいか、服の綻びが広がり、上半身の服がポロんとはだけ、胸部が丸みえの状態になってしまった。胸元の傷からは身体内部の機械仕掛けの部品が見えているものの、胸の膨らみ部分の人工皮膚は残っており、それは完全に乙女のそれであった。
会場からは、「レミーが湊に墜とされた」との声が聞こえてきた。「ミミならずレミーまで……」
と発するものもいる。
「もうそろそろ俺の評価が心配だから、詳しい話は後でにしようか……」
「は、はい!湊様」
「それに……」
湊は恐る恐る観客席にいるミミの方向を見つめる。ミミは湊ではなく、隣にいるレミーを見下ろすように眺めていた。口元では何やら「殺す」と言ったような言葉を放っているように感じた。ミミはレミーが湊に馴れ馴れしく自身の胸を触らせていることにご立腹のようであった。
「ヒイイ、ミミ……怖い……」
「ミミさんがどうしましたか?」
「いや、なんでもないよ……」
湊はそう言ってレミーの手を握り、会場に一礼をしてクイーンハート校長を見た。それを合図だと受け取り、彼女は会場に叫んだ。
「湊きゅん、良くぞ魔法女学院の強者3名を打ち破りましたああああ!!これにて、試験は終了。今日から湊きゅんは、魔法女学院2学年生徒として迎えられ、皆んなと共に精進する仲間となりまあああす!おめでとう湊きゅううううん!!」
クイーンハートの掛け声と共に、改めて試合会場からは盛大な拍手を送られた。湊への変な評価はさておき、会場からの彼の魔法能力への信頼は厚いらしく、優秀な生徒として大歓迎との素晴らしい歓迎を受けていた。
「太ももにお漏らしツインテール、最後にはレミー、君が対戦相手に出てくるなんてね」
湊はレミーの手を握り優しく立たせてあげた。
「色々話したいことがあるな。レミー」
「はい、湊様」
「じゃあ会場は後にして、一旦クイーンハート校長の元へと行こうか。状況整理も兼ねて」
そう言って湊はこの会場を去るように出て行き、クイーンハートの校長室へと向かったのであった。
対戦相手の彼女――AIオートマトンであるレミーの降参の言葉と共に、クイーンハートは試合終了の合図を送った。試合会場からは歓声が湧き上がり、湊のその特異的な魔法に魅了されたのか、集まる魔法女学院の生徒達は盛大な拍手を送っていた。
しかし、湊とレミーに様子は何やらおかしく、会場の生徒達もまたその異変に気づいたのか再び静寂が包むようになった。
「湊様――」
レミーは泣きながら湊のことを抱きしめた。彼女の身体全面には短剣に付けられた深々とした傷が残っている。一部部品が破損しているのか、身体の機械部分が露出し、コードが千切れてやや火花が散っているのも見てとれた。しかし、そんなことにも注意が向かないほど、レミーは湊のことを一生懸命に抱きしめて見つめていた。
「本当にレミーなのか……でもどうして」
西暦2222年――AIオートマトンが生体として存在する人間を駆逐しようと世界各国で戦争が起き、人間はその数を減らしていった時代。一部の人間に味方する対AIレジスタンスと共に、湊は敵のAIオートマトンと戦い、そしてある時ビルの屋上へと追い詰められた。その屋上には対AIレジスタンスのAIオートマトンであるレミーと湊が残されており、レミーのみを逃し、湊はビル諸共自爆するようにその起動スイッチを押した。
しかしその最中、別世界である魔法の世界のワールドクロックが破壊され、長針を担っていたマーニャが人間の存在する西暦2222年の地球へと侵入。ビルの屋上で爆発に巻き込まれる寸前の湊の左目に突っ込んだ。それにより湊は爆発で死ぬことなく、魔法の世界と地球が融合したこの西暦22222年へと転移・タイムスリップして生きながらえていた。
湊は西暦2222年に存在した対AIレジスタンスは、この西暦22222年の世界では既に滅んでいるだろうと無意識の内に考えていた。勿論、レミーも例外ではない。湊のいた元の世界から現在まで20000年が経過していることになるからだ。
「湊様あ、湊様あ……私は、人間を守ることが、できません、でしたあ……」
レミーは泣きながら湊に一生懸命謝罪する。なぜレミーがこの時代にまで生きているのかが湊には理解できなかった。しかし、彼女の美しい青色の長髪、瞳、言葉遣い、仕草はレミーそのものである。
「本当に、君はレミーなのか」
レミーは湊の胸元にうずめた顔を持ち上げ、彼の瞳を見つめた。
「ずっと、俺を待ってくれていたのか……」
あの爆発の瞬間、レミーは湊が死んだものと考えなかったのかが不思議でたまらなかった。死んだ人間を待つAIオートマトン等存在するものなのか――
「あのビルでの爆発……」
「ああ、俺は最後の最後まで追い詰められて、最後は自爆して……」
「あの時、私の目には湊様が爆発の瞬間、消えたように見えたのです」
AIオートマトンの動体視力は異常に高い。高速カメラ並の速度で映像を取り込む彼女の目には、爆発の瞬間、湊が消えたように見えた。それは事実であり、あの瞬間、マーニャが湊を西暦22222年へと連れ帰った瞬間であるため、爆発を逃れるように時空間を越えて転移したのであった。
「さらにあの後ビルの残骸を探索しても、湊様のDNAと一致する骨等の人間の残骸が残っていなかったのです」
「そこまで君は、俺を探して調べてくれたのか」
爆破後のビルの残骸から、湊の骨やその残骸が見つけられなかったとレミーは証言した。
「だから、もしかしたら湊様は何処かで生きながらえているのではないかと……」
「本当にそれだけで、俺がずっと生きていたと思っていたのか、レミー……」
レミーは湊が爆発の瞬間に消えたように見えたこと、そしてビルの残骸から彼の遺体の破片が見つからなかったことから、ずっと湊の生存を信じていたことになる。
「ずっと、何か科学では説明のつかない奇跡が起きて、湊様が生きているのではないかという妄想に取り憑かれておりました」
「君は……」
「でも事実だった。今この瞬間、湊様を抱き締めることで、この20000年待ち続けた私の努力は無駄ではなかったと、希望が叶ったのだと、そう私は感じるのです」
西暦2222年の地球から湊が消失し、レミーは彼の生存を信じ、この今いる西暦22222年まで待ち続けていた。湊が帰ってくるその日を夢見て。
会場の魔法女学院生徒達は湊とレミーが何の話をしているのかが分からなかった。しかし、湊の事をレミーは様付けで呼んでいるということは皆にも理解できた。
2戦目で「清楚破りの帝王」と呼称された湊は、「女を手懐けし清楚破りの帝王」へとジョブチェンジしていた。ミミだけではなく、レミーにさえも首輪を嵌めて飼い慣らしているのかと、ちらほら会場から声が聞こえてきた。魔法女学院の2学年に入る男がいると生徒に知らされてから、こうも早く女性達を射止める湊の評価は、「女を手懐けし清楚破りの帝王」に相応しいものである。
「レミー。本当に俺の事を想って、この時代まで待っててくれたのか」
「はい、湊様」
レミーはその美しい長髪を揺らしながら、湊の手を掴み、彼に付けられた胸元の傷の元へと運んだ。
「この傷は、私が人間を守れなかった罰として貴方様に与えられたものとして受け取ります」
「そ、そんな。レミーは何も悪くないよ……」
会場からはびっくりするような声がちらほら聞こえてきた。レミーが自身の胸元に湊の手を運んだその光景は、何やら周囲からは得体の知れない、しかし何か熱い気持ちを呼び起こさせるそんな状況に思えたのであった。「レミーはもう湊君に掌握されているのか」との声も聞こえてきた。
「レミー」
「はい、湊様」
レミーは自身の傷付いた胸元の傷部に湊の手を運んで触れさせたせいか、服の綻びが広がり、上半身の服がポロんとはだけ、胸部が丸みえの状態になってしまった。胸元の傷からは身体内部の機械仕掛けの部品が見えているものの、胸の膨らみ部分の人工皮膚は残っており、それは完全に乙女のそれであった。
会場からは、「レミーが湊に墜とされた」との声が聞こえてきた。「ミミならずレミーまで……」
と発するものもいる。
「もうそろそろ俺の評価が心配だから、詳しい話は後でにしようか……」
「は、はい!湊様」
「それに……」
湊は恐る恐る観客席にいるミミの方向を見つめる。ミミは湊ではなく、隣にいるレミーを見下ろすように眺めていた。口元では何やら「殺す」と言ったような言葉を放っているように感じた。ミミはレミーが湊に馴れ馴れしく自身の胸を触らせていることにご立腹のようであった。
「ヒイイ、ミミ……怖い……」
「ミミさんがどうしましたか?」
「いや、なんでもないよ……」
湊はそう言ってレミーの手を握り、会場に一礼をしてクイーンハート校長を見た。それを合図だと受け取り、彼女は会場に叫んだ。
「湊きゅん、良くぞ魔法女学院の強者3名を打ち破りましたああああ!!これにて、試験は終了。今日から湊きゅんは、魔法女学院2学年生徒として迎えられ、皆んなと共に精進する仲間となりまあああす!おめでとう湊きゅううううん!!」
クイーンハートの掛け声と共に、改めて試合会場からは盛大な拍手を送られた。湊への変な評価はさておき、会場からの彼の魔法能力への信頼は厚いらしく、優秀な生徒として大歓迎との素晴らしい歓迎を受けていた。
「太ももにお漏らしツインテール、最後にはレミー、君が対戦相手に出てくるなんてね」
湊はレミーの手を握り優しく立たせてあげた。
「色々話したいことがあるな。レミー」
「はい、湊様」
「じゃあ会場は後にして、一旦クイーンハート校長の元へと行こうか。状況整理も兼ねて」
そう言って湊はこの会場を去るように出て行き、クイーンハートの校長室へと向かったのであった。
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