人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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六章 異世界旅行編 4 大陸の最東端へ

880 大陸に住む妖狐族から見た歴史

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 族長リョクウがカズの強さの秘密を知ろうとした発言に、アレナリアは気分を害す。
 サンウは反論してこないが、雰囲気は少し悪くなった。

「怪物討伐と集落奪還の報酬についてなんですが」

「それなんじゃが、前の暮らしに戻るにしても、怪物に襲われた恐怖が薄れるまで、何年もかかるんじゃ。わしに出来ることならなんでもしよう。だから他の者には、何も要求せんでくれ」

「族長……おれも出来ることならなんでもする」

 カズが金銭や物品、またはこの山脈の集落の若い妖狐族の女性でも要求するとでも思っているのか? 族長リョクウは頭を下げて懇願する。
 討伐した化けムジナ怪物三体を見せられた時点で、力尽くではどうやっても逆らえないのは理解していたので、族長リョクウは誠意を込めて頼むしか方法はなかった。
 それを見たカウも頭を下げて、無理な要求はしないでほしいと。

「カズをなんだと思ってるの!」

「そんな風に思ってるなんて失礼じゃん! 逆に要求してやったら。カズ」

「そんなこと言ったらダメよ、レラ。でも困ってた皆さんの頼みを聞いたカズさんに、その言い方はするのは、とても失礼だと思います!」

 族長リョクウの言い方が気に触り、珍しくビワが声量を上げて怒る。
 カズは自分の為に怒ってくれている三人の妻を嬉しく思いながも、話が進まなくなってしまっては、また同じ様な事を繰り返す羽目になる。
 そこで目の前のレラをアレナリアの膝に移動させ、ビワの手に自分の手を重ねて三人を宥めた。

「俺達が欲しいのは情報です」

「情報?」

「ビワに関する情報がこちらにないのなら、あとは海向こうの妖狐族が住む土地。なので知っている事を教えてください。それがこちらが求める報酬です」

 敵対している妖狐族が住む島国に、カズが向かうというような発言を聞き、黙っていたサンウが口を開いた。

「行くのか? 海を越えて、奴らの所に?」

「あとはそこしかないからな」

「お前なら大丈夫だろうが、女達は捕まったら、何をされるかわからないぞ」

「そんな事はさせない。それに危険だったら引き返すさ」

「怪物を倒して集落を解放してくれた礼として、行くのはやめた方がいいと忠告はした」

「一応、聞いてはおく(お礼が忠告って……まあ、サンウだからな)」

 報酬が島国とそこに住む妖狐族の情報で済むならと、族長リョクウは妖狐族と狐の獣人族が、今の状態になった事を含めて、知る限りのことを話す。
 ただ族長リョクウが知る情報は言い伝えられたもので、間違っていても恨まないほしいと、カズの承諾を取り保険をかけた。


 昔の大戦で大陸から分離して孤立した土地に大多数の妖狐族が、少数が大陸にと分かれ現在に至る。
 大戦から二十数年後に復旧が終わり、大陸と島の行き来が出来るようになった。
 妖狐族が別れ別れになってから、再会したのは大戦から約三十年が経っていた。
 大戦後は互いに病気や怪我で数を減らしていたが、大きく違っていたのは大陸の妖狐族は少数になった事で、子孫を残す意味でも他種族と交わり、色々な国へと散らばって行った。
 妖狐族の血は薄れたが、子孫を多く残して幸せに暮らす者も居れば、夫婦生活が上手くいかずに母子家庭となり、連絡が取れなくなってしまった者も多い。
 妖精族フェアリー程ではないが、珍しい種族だからと女性や子供が捕まり、性奴隷として遠くの国で売られているという噂も少なからずあった。

 大型船が建造されると、島の食材や工芸品や武具などの貿易が増え、大陸と島の行き来が盛んになった。
 プロシジス国が出来るずっと前に、最東端の土地に暮らしていた住人と島の妖狐族との交流は長きに渡り続いた。
 他種族との交わりを好ましく思ってなかった島の妖狐族だったが、より近い狐の獣人族や人族と夫婦になって子を作り、大陸に住むようになった。
 山脈に暮らす一族の中で、カウの何代か前に人族がおり、カウの家族には少しながら人族の血が流れている。
 他にも狐や犬の獣人族の血が流れている者もいる。

 プロシジス国での出来事が起きたのは四十数年、島の妖狐族が狐の獣人族を術で操り、妖狐族を捕らえて島に連れて行こうとした。
 反抗する妖狐族や、他種族と夫婦となった者達は殺され、子供は島に連れて行かれた。
 現在山脈で暮らす妖狐族達は、賑やかな街での生活に慣れなず、人里離れた土地を転々と移り、最終的に山の近くで暮らしていた事で、大きな被害は出なかった。
 街から逃げて来た妖狐族の話で、島の妖狐族がした事の重大さを知り、山脈の奥に住み着いた事の始まり。
 当時、数日掛けて野草採取をしていたので、寝泊まり出来る小屋が山脈には数ヶ所あり、全てではないが現在集落を作る元となった場所。
 逃げて来た妖狐族を追い、島の妖狐族が山にまで来たが、荒れて薄暗く魔素マナが濃い山脈の奥までは追って来なかった。

 落ち着いた頃合いを見計らい、当時三十代だったリョクウと数人が山を下りて街に情報を求めに行くと、妖狐族は忌み嫌われ、狐の獣人族は迫害されていた。
 プロシジス国は島の妖狐族を危険な種族と定めたが、元々大陸に住んでいた妖狐族と区別がつかない事から、妖狐族は見つけ次第捕らえて、島の妖狐族かの有無を調べる方針になった。
 しかし島の妖狐族と、大陸に住んでいた妖狐族の判別ができず、冤罪で牢に入れリたり、強制労働に送られたり、殺された妖狐族は多く、大戦後より増えた大陸の妖狐族は、これを切っ掛けにまた数を減らした。

 操られていたとはいえ、多くの者を殺した狐の獣人族は、国からの追放となったが、全ての狐の獣人族がプロシジス国を出て行き、他の国で暮らせる程の余裕はない。
 近隣の国ではどうしても怨みをもつ者が追って来る可能性がある事から、プロシジス国を出た狐の獣人族は、遠く離れた土地に旅立った。
 それでもプロシジス国に残り、ひっそりと隠れて小さな村や貧民街で暮らしている狐の獣人族も居る。
 その殆どが妖狐族を捕らえて、怨みを晴らそうと思いを同じとする。
 そして妖狐族と狐の獣人族を狙う、キツネ狩りという組織が生まれ、現在プロシジス国内では、妖狐族と狐の獣人族を見つけても、表立った大きな騒ぎは起きない。
 プロシジス国と妖狐族と狐の獣人族とキツネ狩りの組織。
 住人達はこれに巻き込まれないようにしている。


 現在の島国の内部事情に関しては不明。
 そこに住む妖狐族に関しては、未だに他種族と交わった妖狐族を探しに来ている事だけ。
 結果からすると族長リョクウの知る情報は、何も分からないと言っても過言ではない。

「長々と話した割に、何の約にも立たないのね」

「何せ他者とは関わらないようにして、長年この山奥で暮らしていたからのぉ。必要品を手に入れるために、姿を変えて山を下り、村や街に行った若い者達なら、うわさ話程度のことなら知ってるかもしれんが」
 
「そのうわさ話程度の報告は聞いてないの? 族長でしょ?」

「怪物の報告も、全てわしのところに報告されておらんのは、前の話を聞いてわかっておるじゃろ。詳しい話は、長男のウゴに話してるんじゃよ。ここに来てサンウの話を聞いて、今のわしはもう、お飾りの族長なんだと理解したわい」

「だとすると、次期族長のウゴに聞けば、島国とそこに住む妖狐族に関して、少しは分かるってことなのね?」

「断言はできんが、わしよりは知っておる……かのぉ?」

 自分の息子の事なのに、ハッキリと言い切らない族長リョクウ。
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