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第一部 リアーデ
11 訓練 1 魔力操作 と ソーサリーカード
◇◆◇◆◇
コンコンコンと扉を叩く音がして、俺は目を覚ました。
「カズさん起きてますか? 入りますよ」
「どうぞ」
キッシュが元気良く部屋に入ってきた。
「おはようございま~す。今お目覚めですか」
「おはよう。朝から元気だね。どうしたの?」
「どうしたはこっちですよ。もう朝食の時間過ぎてるのに、降りてこないから見に来たんですよ。お寝坊さん」
「もうそんな時間なの。ちょっと寝すぎちゃったな」
「朝食はカズさんの分とってありますから、食堂に下りて来てください」
「分かったすぐ行くよ」
久しぶりに良く寝たなぁ、こっちに来てから早寝早起きで、今までは深夜アニメ見た後で寝たから、いつも起きるの昼近くだったしな。
起きて食堂に行くと、朝食を用意してくれてあったので、一人で食事をしていたら、キッシュが向かいの席に座って話しかけてきた。
「カズさん今日もギルドに行くんですか?」
「うん。午後からちょっと用事があってね」
「じゃあ、お昼まで時間あるんですね」
「あるけど、また買い出しの手伝い?」
「お買い物じゃなくて、家(宿)で使ってるお鍋に穴があいて、お母さんに『鍛冶屋さん』に持って行って、直してもらってきてって言われたんですよ」
「それで、その鍋を持っていくのを手伝ってほしいと」
「えへへ。だって鍛冶屋さん西門の近くにあるんですよ。それにお鍋けっこう重くて。お母さんが自分で行けばいいのに」
西門の近くか、ココット亭は中央広場より東にあるから、女の子がお鍋持って行くには距離があるか。
「まあそう言わないで、女将さんだって忙しいんでしょ」
「それはそうだけど……」
「そうだけど、なんだい」
「お母さん!」
いつの間にか、女将のココットが食堂の入り口にいた。
「早く行かないと今日中に直らないよ」
「だって、お鍋重いんだもん」
「昨日あれだけイノボアの肉を食べたんだから、力出るだろ。お鍋直してこないと、今日の夕食用にとっておいたイノボアの肉は、あんたの分だけ無しにするよ」
「ひどーい! 私の楽しみが……」
「まぁまぁお二人とも、お鍋運ぶの手伝いますから」
「カズ甘やかさないでいいよ」
「いや、でも宿のお手伝いするって言いましたし、時間もありますから」
食事を終えた俺は、キッシュと鍛冶屋に向かうことにした。
「さあキッシュ行こうか。鍛冶屋の場所しらないから案内してよ」
「行きましょ行きましょ。はい、これお鍋」
テーブルに置かれた大きめの鍋を【アイテムボックス】に入れて、キッシュと一緒にココット亭を出る。
「アイテムボックスって、本当に便利ですね。カズさんが居てくれて良かった」
「キッシュ、そのことはナイショ」
「分かってます。これでも口は堅いんですよ」
カズとキッシュは中央広場を抜けて西門に行き、壁沿いの細い道を入って行くと『トンカン』と音が聞こえてきた。
「あそこですよ。こんにちは。お鍋直してください」
キッシュが鍛冶屋に入って行ったので、人に見られないように【アイテムボックス】から鍋を出して持っていく。
「カズさん、お鍋を」
「はいよ」
「これです。直りそうですか?」
奥から背の低い髭モジャの人が出てきて、鍋を受け取りじっと見ている。
あれドワーフだよな? やっぱり異世界で鍛冶仕事といえばドワーフか。(偏見かな)
「夕方にはできるから、その頃受け取りにおいで」
「それで、幾らくらいですか?」
「大したことないから、銀貨二枚(2,000GL)だな」
「もうちょっと安くなりませんか?」
「姉ちゃんしっかりしてんな。じゃあ銀貨一枚と銅貨八枚(1,800GL)でいいぞ」
「ありがとう。おじさん」
「キッシュもちゃっかり値引きするんだね」
「言うだけはタダですから、言ってみないと。それじゃ私は店に戻りますね。カズさんまた夕方お願いしますね」
「了解。その頃ここに来るよ(そろそろクリスパさんと、約束した頃か)」
カズはキッシュと別れて、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドも街の西側にあるため、鍛冶屋を出てからギルドに着くまで、大して時間はかからなかった。
中に入ると、クリスパが受付に居たのでそこへ向かった。
「こんにちは」
「カズさん、来られましたか」
「お待たせしましたか?」
「いいえ、来るまでは受付の仕事をしているつもりでしたから」
「わざわざ時間をとってもらって、申し訳ないです」
「頼まれれば新人の方を鍛えるのも、ギルドのお仕事ですから」
「そうなんですか? 確か貸しにするとか言ってたような……」(ボソッ)
「なにか言いましたか?」
「い、いいえ。なんでもないです(まずい、声に出てたか)」
「ではここを入り、先にある扉の奥に行ってください。私は支度をしてきますから」
言われたとおり進んで行くと、扉がありその奥は外だった。
裏庭のようで、周囲は4mぐらいの塀にかこまれてる。
「お待たせしました」
「クリスパさんここは?」
「ギルドの訓練場です。と言っても、そんなに広くないですから、簡単な訓練しかできないですけど。では、始めましょうか」
「はい。お願いします」
今日はいつもと違うな。
受付に居る時は、眼鏡をかけて、肩より少し長い髪を下ろしてるから清楚に見えるし、でも今は眼鏡を外し、髪を後ろで束ねていて新鮮だ!
「カズさん、聞いてますか!?」
「あ、はい。なんですか?」
「もう、しっかりしてくださいよ! カズさんが頼んで来たんですから!」
「……はい。すいません」
「では、魔力操作の訓練をします。とは言っても、大抵は子供でもできることですから、難しくはないですよ。まずは『魔力を感じる』ところからやります」
「魔力を感じるですか?」
「気を楽にして、目を閉じて想像してください。体内をめぐる血液を、それに寄り添う『爽やかなに吹く風のような』又は『熱く燃え盛る炎のように』はた又『静に流れる清流の如く』」
クリスパさん、その表現は詩人なの!?
そんな風に言われると、逆に難しくなるよ。
……でも『気、潜在エネルギー、チャクラ、未知の力』を妄想…じゃなくて想像するのは得意だ! 中二病的な感じで、わくわくする。
「手で水を掬うようにして、そこから『魔力』が涌き出てくることを、想像してください」
いつもはただの妄想なのに、今回は体の内側から『魔力』が涌き出てて来るのが分かる! 妄想じゃなく現実で。
「はい。ゆっくり目を開けて下さい」
カズは言われたとおり、ゆっくりと目を開ける。
「どうですか、ご自分の魔力は感じることができましたか?」
「はい感じました。これが魔力ですか」
「魔力を感じることができたら、次は魔力の出力を操作しましょう。はい、これを」
クリスパが折り畳んだ紙を、カズに渡してきた。
「それを開いて膨らめてください。割れてしまわないように、優しく息を入れてね」
……ゴクリ。いかん、生唾飲み込んでしまった。
指を唇にあてて『優しく息を』なんて言うから。
「どうしたんですか? 早く紙を開いて膨らめてください」
膨らませるって、これ……紙風船? こんな物もあるんだ。
「この紙風船を、何に使うんですか?」
「両手の手の平を上にして、紙風船を乗っけてください」
言われた通り両手の手の平を上にして、紙風船を乗っけた。
「そのまま紙風船に向けて、ゆっくり魔力を出してください」
魔力を出すと紙風船が動き出し、ゆっくりと浮かんだ。
「大丈夫そうですね。では、そのまま屋根の辺りまで上げてみましょう」
出す魔力を増やし紙風船を高く上げていくが、1m程上がったところで止まり、それ以上は上らなかった。
「もう大丈夫ですから、ゆっくり下ろして、顔の前で高さを保ってみて下さい」
今度は出す魔力を減らして、ゆっくりと下ろす。
手から20㎝くらいの高さで浮いている紙風船を、維持するため集中する。
高くなったり低くなったりと安定しない。
「落ち着いて。魔力をずっと出して当て続けるより、手に箱を持ち、その上に紙風船が乗っかっているように、想像してみてください」
持っている箱に、紙風船が乗っかってる……だんだん安定してきたぞ!
「良いですね。今度は手の平を内側に向けて間隔を広げ、その間に紙風船を留めてください」
広げてた手の間にか、どうするか……筒の両端を持って、その中に紙風船が入っていると思えば……。
紙風船がゆっくりと下がり、広げた両手の中央で安定して浮いている。
「今度はご自分でできましたね。ではもういいですよ」
カズは大きく息を吐き、魔力を出すのを止めた。
「今やってもらったのが『魔力を放出し続ける』と『放出した魔力を操作して固定し続ける』これにあたります」
「この紙風船は、小さい頃より魔力操作を覚えるために作られ、子供の遊び道具として使われてます。ですので、ここ数十年で魔力が微量な方でも、魔力操作ができる人が増えているんです」
「へぇ。それただの紙風船とは違うんですか?」
「使い古した紙で作った、ただの紙風船ですが、これを魔力に反応するように、私の魔力を込めただけですよ」
「そんなことできるんですか!?」
「少しコツが必要ですが、魔力操作に慣れればできます」
「途中で紙風船の上昇が止まったのは、何か原因が……」
「それはですね。見てて下さい」
先程やったように、クリスパが紙風船を両手に乗っけて上昇させた。
そのまま屋根よりも高い位置まで上がっていく。
「途中で止まった原因は、魔力が紙風船だけではなく、周り分散して広がってしまい、上昇が止まってしまったと思います」
「クリスパさんは分散せずに、一転集中させていると?」
「はい。でも放出する魔力量を増やし過ぎると」
パンッと音をたてて紙風船が割れた。
「このように割れてしまいます。カズさんのとき上昇が止まったのを見て、それ以上やり続けると勢い余って同じ様に割れてしまうと思い、次に移ったんです」
「そういうことですか」
「これが基本ですね。魔力を多く出し過ぎず低く過ぎず、使い続けて慣れていくだけです。子供の頃からやっていれば、簡単なんですけど」
「そうですね……精進します」
「すぐに慣れますって。そのおかげて、ソーサリーカードが庶民でも使えるようになったんですから」
「ソーサリーカードって、俺でも使えますか?」
「魔力操作ができましたから、簡単に使えますよ。ちょうどいいので、ソーサリーカードのことも試して見ますか。少し待っててください」
クリスパが建物の中に入って行き、その手には木板らしき物を持って戻って来た。
「これがこの街で売っているソーサリーカードで、等級はコモンになります。村人から冒険者まで、よく使うカードです」
「まずは試しに、このカードを使ってみましょう」
クリスパはカズに、1枚のカードを渡した。
渡されたカードには『火の絵』が書かれている。
ココット亭で女将のココットが使っていた物と同じ木板のカードだ。(10㎝×8㎝厚さ1㎝程の大きさ)
「カードの下部分に色が付いていますね。そこを持って魔力を流すと」
カードの上部辺りから火が出て来た。
『蝋燭の火』くらいの大きさだ。
「このように、カードに込められた効果が現れます。主にノーマル以下のカードは、一般の方でも危なくないように『魔力を流す所』と『効果が現れる所』に印がしてあります」
「本当だ。火が出た所に『丸い印』がしてあるんだ」
「ではカズさんもやってみましょう」
「はい」
クリスパがやったように、カズはカードの下部分を持って魔力を流す。
するとカードの上部にある印から火が出たが、クリスパが使ったときより大きな火が出た。
「同じカードでも、物によって火の大きさが違うのですか?」
カズが質問している間に、持っていたカードは火が消えて『崩れ消滅』してしまった。
クリスパのカードは、まだ火が出ている。
「カードは同じ物ですが、流した魔力量によって効果が変わったんです」
「カードが同じでも違う?」
「カードに含まれてる魔力量は同じでも、次のようにかわります。流した魔力量が『多い』と、それに応じて強く効果が発揮しますが『短く』すぐに効果が切れます。そして流した魔力量が『少ない』と、効果は弱いですが『長く』続きます」
ふむふむ『多いと短く』『弱いと長く』か、一枚のカードでも、その時に応じて使い分けれるか。
だから魔力操作は、子供の頃からやって慣れてた方が良いと。
「ただし『カード自体の耐久力』を越える魔力を流すと消滅しますし、弱すぎると何もおきません」
「クリスパさん、効果を発揮しているカードを、途中で止めて再利用することはできないんですか? 例えば今回の火を出すカードの場合だと、途中で火を消して次また使うとか?」
「一般的に使用されているカードは、ランクが低いノーマル以下なので、カードを使用した時点で消滅は確定してます。例え効果を途中で止めることができても、確定しているので、消滅することは変わりません」
「ランクが高いカードであれば、何度も使えるんですか?」
「どうでしょうか? 素材が稀少な金属等の物でしたら、カード1枚に複数の効果を持たせることができる、と聞いたことはありますが、私は見たことがありません」
『稀少な金属』に『複数の効果』新たな情報だ!
「遺跡から発掘さるような物であれば、繰り返し使えるかもしれませんが、私は知りません。誰かが持っていたとしても、貴重過ぎて秘密にするでしょうね」
「分かりました。ありがとうございます」
「次は販売されているソーサリーカードについて注意をします。これを」
クリスパはカズに、新たにソーサリーカードを渡した。
先程と同じで、火の絵が書かれている。
「先程と同じように、カードに魔力を流してください」
カズは言われたとおり魔力流すと、出てきた火の大きさが不安定で変だった。
急に一気に燃え上がり、持っていたカードも燃えだしたので、カズはすぐに放した。
「大丈夫ですが?」
「なんですかこのカードは?」
「驚かせてごめんなさい。実際に体験してもらった方が分かると思いまして、これが粗悪品のカードです」
「粗悪品!? これも売ってるんですか?」
「取り締まってはいるんですが、この街でもたまに見つかります。なので気を付けてください」
これはカードを買うとき、鑑定して買わないと危ないな。
コンコンコンと扉を叩く音がして、俺は目を覚ました。
「カズさん起きてますか? 入りますよ」
「どうぞ」
キッシュが元気良く部屋に入ってきた。
「おはようございま~す。今お目覚めですか」
「おはよう。朝から元気だね。どうしたの?」
「どうしたはこっちですよ。もう朝食の時間過ぎてるのに、降りてこないから見に来たんですよ。お寝坊さん」
「もうそんな時間なの。ちょっと寝すぎちゃったな」
「朝食はカズさんの分とってありますから、食堂に下りて来てください」
「分かったすぐ行くよ」
久しぶりに良く寝たなぁ、こっちに来てから早寝早起きで、今までは深夜アニメ見た後で寝たから、いつも起きるの昼近くだったしな。
起きて食堂に行くと、朝食を用意してくれてあったので、一人で食事をしていたら、キッシュが向かいの席に座って話しかけてきた。
「カズさん今日もギルドに行くんですか?」
「うん。午後からちょっと用事があってね」
「じゃあ、お昼まで時間あるんですね」
「あるけど、また買い出しの手伝い?」
「お買い物じゃなくて、家(宿)で使ってるお鍋に穴があいて、お母さんに『鍛冶屋さん』に持って行って、直してもらってきてって言われたんですよ」
「それで、その鍋を持っていくのを手伝ってほしいと」
「えへへ。だって鍛冶屋さん西門の近くにあるんですよ。それにお鍋けっこう重くて。お母さんが自分で行けばいいのに」
西門の近くか、ココット亭は中央広場より東にあるから、女の子がお鍋持って行くには距離があるか。
「まあそう言わないで、女将さんだって忙しいんでしょ」
「それはそうだけど……」
「そうだけど、なんだい」
「お母さん!」
いつの間にか、女将のココットが食堂の入り口にいた。
「早く行かないと今日中に直らないよ」
「だって、お鍋重いんだもん」
「昨日あれだけイノボアの肉を食べたんだから、力出るだろ。お鍋直してこないと、今日の夕食用にとっておいたイノボアの肉は、あんたの分だけ無しにするよ」
「ひどーい! 私の楽しみが……」
「まぁまぁお二人とも、お鍋運ぶの手伝いますから」
「カズ甘やかさないでいいよ」
「いや、でも宿のお手伝いするって言いましたし、時間もありますから」
食事を終えた俺は、キッシュと鍛冶屋に向かうことにした。
「さあキッシュ行こうか。鍛冶屋の場所しらないから案内してよ」
「行きましょ行きましょ。はい、これお鍋」
テーブルに置かれた大きめの鍋を【アイテムボックス】に入れて、キッシュと一緒にココット亭を出る。
「アイテムボックスって、本当に便利ですね。カズさんが居てくれて良かった」
「キッシュ、そのことはナイショ」
「分かってます。これでも口は堅いんですよ」
カズとキッシュは中央広場を抜けて西門に行き、壁沿いの細い道を入って行くと『トンカン』と音が聞こえてきた。
「あそこですよ。こんにちは。お鍋直してください」
キッシュが鍛冶屋に入って行ったので、人に見られないように【アイテムボックス】から鍋を出して持っていく。
「カズさん、お鍋を」
「はいよ」
「これです。直りそうですか?」
奥から背の低い髭モジャの人が出てきて、鍋を受け取りじっと見ている。
あれドワーフだよな? やっぱり異世界で鍛冶仕事といえばドワーフか。(偏見かな)
「夕方にはできるから、その頃受け取りにおいで」
「それで、幾らくらいですか?」
「大したことないから、銀貨二枚(2,000GL)だな」
「もうちょっと安くなりませんか?」
「姉ちゃんしっかりしてんな。じゃあ銀貨一枚と銅貨八枚(1,800GL)でいいぞ」
「ありがとう。おじさん」
「キッシュもちゃっかり値引きするんだね」
「言うだけはタダですから、言ってみないと。それじゃ私は店に戻りますね。カズさんまた夕方お願いしますね」
「了解。その頃ここに来るよ(そろそろクリスパさんと、約束した頃か)」
カズはキッシュと別れて、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドも街の西側にあるため、鍛冶屋を出てからギルドに着くまで、大して時間はかからなかった。
中に入ると、クリスパが受付に居たのでそこへ向かった。
「こんにちは」
「カズさん、来られましたか」
「お待たせしましたか?」
「いいえ、来るまでは受付の仕事をしているつもりでしたから」
「わざわざ時間をとってもらって、申し訳ないです」
「頼まれれば新人の方を鍛えるのも、ギルドのお仕事ですから」
「そうなんですか? 確か貸しにするとか言ってたような……」(ボソッ)
「なにか言いましたか?」
「い、いいえ。なんでもないです(まずい、声に出てたか)」
「ではここを入り、先にある扉の奥に行ってください。私は支度をしてきますから」
言われたとおり進んで行くと、扉がありその奥は外だった。
裏庭のようで、周囲は4mぐらいの塀にかこまれてる。
「お待たせしました」
「クリスパさんここは?」
「ギルドの訓練場です。と言っても、そんなに広くないですから、簡単な訓練しかできないですけど。では、始めましょうか」
「はい。お願いします」
今日はいつもと違うな。
受付に居る時は、眼鏡をかけて、肩より少し長い髪を下ろしてるから清楚に見えるし、でも今は眼鏡を外し、髪を後ろで束ねていて新鮮だ!
「カズさん、聞いてますか!?」
「あ、はい。なんですか?」
「もう、しっかりしてくださいよ! カズさんが頼んで来たんですから!」
「……はい。すいません」
「では、魔力操作の訓練をします。とは言っても、大抵は子供でもできることですから、難しくはないですよ。まずは『魔力を感じる』ところからやります」
「魔力を感じるですか?」
「気を楽にして、目を閉じて想像してください。体内をめぐる血液を、それに寄り添う『爽やかなに吹く風のような』又は『熱く燃え盛る炎のように』はた又『静に流れる清流の如く』」
クリスパさん、その表現は詩人なの!?
そんな風に言われると、逆に難しくなるよ。
……でも『気、潜在エネルギー、チャクラ、未知の力』を妄想…じゃなくて想像するのは得意だ! 中二病的な感じで、わくわくする。
「手で水を掬うようにして、そこから『魔力』が涌き出てくることを、想像してください」
いつもはただの妄想なのに、今回は体の内側から『魔力』が涌き出てて来るのが分かる! 妄想じゃなく現実で。
「はい。ゆっくり目を開けて下さい」
カズは言われたとおり、ゆっくりと目を開ける。
「どうですか、ご自分の魔力は感じることができましたか?」
「はい感じました。これが魔力ですか」
「魔力を感じることができたら、次は魔力の出力を操作しましょう。はい、これを」
クリスパが折り畳んだ紙を、カズに渡してきた。
「それを開いて膨らめてください。割れてしまわないように、優しく息を入れてね」
……ゴクリ。いかん、生唾飲み込んでしまった。
指を唇にあてて『優しく息を』なんて言うから。
「どうしたんですか? 早く紙を開いて膨らめてください」
膨らませるって、これ……紙風船? こんな物もあるんだ。
「この紙風船を、何に使うんですか?」
「両手の手の平を上にして、紙風船を乗っけてください」
言われた通り両手の手の平を上にして、紙風船を乗っけた。
「そのまま紙風船に向けて、ゆっくり魔力を出してください」
魔力を出すと紙風船が動き出し、ゆっくりと浮かんだ。
「大丈夫そうですね。では、そのまま屋根の辺りまで上げてみましょう」
出す魔力を増やし紙風船を高く上げていくが、1m程上がったところで止まり、それ以上は上らなかった。
「もう大丈夫ですから、ゆっくり下ろして、顔の前で高さを保ってみて下さい」
今度は出す魔力を減らして、ゆっくりと下ろす。
手から20㎝くらいの高さで浮いている紙風船を、維持するため集中する。
高くなったり低くなったりと安定しない。
「落ち着いて。魔力をずっと出して当て続けるより、手に箱を持ち、その上に紙風船が乗っかっているように、想像してみてください」
持っている箱に、紙風船が乗っかってる……だんだん安定してきたぞ!
「良いですね。今度は手の平を内側に向けて間隔を広げ、その間に紙風船を留めてください」
広げてた手の間にか、どうするか……筒の両端を持って、その中に紙風船が入っていると思えば……。
紙風船がゆっくりと下がり、広げた両手の中央で安定して浮いている。
「今度はご自分でできましたね。ではもういいですよ」
カズは大きく息を吐き、魔力を出すのを止めた。
「今やってもらったのが『魔力を放出し続ける』と『放出した魔力を操作して固定し続ける』これにあたります」
「この紙風船は、小さい頃より魔力操作を覚えるために作られ、子供の遊び道具として使われてます。ですので、ここ数十年で魔力が微量な方でも、魔力操作ができる人が増えているんです」
「へぇ。それただの紙風船とは違うんですか?」
「使い古した紙で作った、ただの紙風船ですが、これを魔力に反応するように、私の魔力を込めただけですよ」
「そんなことできるんですか!?」
「少しコツが必要ですが、魔力操作に慣れればできます」
「途中で紙風船の上昇が止まったのは、何か原因が……」
「それはですね。見てて下さい」
先程やったように、クリスパが紙風船を両手に乗っけて上昇させた。
そのまま屋根よりも高い位置まで上がっていく。
「途中で止まった原因は、魔力が紙風船だけではなく、周り分散して広がってしまい、上昇が止まってしまったと思います」
「クリスパさんは分散せずに、一転集中させていると?」
「はい。でも放出する魔力量を増やし過ぎると」
パンッと音をたてて紙風船が割れた。
「このように割れてしまいます。カズさんのとき上昇が止まったのを見て、それ以上やり続けると勢い余って同じ様に割れてしまうと思い、次に移ったんです」
「そういうことですか」
「これが基本ですね。魔力を多く出し過ぎず低く過ぎず、使い続けて慣れていくだけです。子供の頃からやっていれば、簡単なんですけど」
「そうですね……精進します」
「すぐに慣れますって。そのおかげて、ソーサリーカードが庶民でも使えるようになったんですから」
「ソーサリーカードって、俺でも使えますか?」
「魔力操作ができましたから、簡単に使えますよ。ちょうどいいので、ソーサリーカードのことも試して見ますか。少し待っててください」
クリスパが建物の中に入って行き、その手には木板らしき物を持って戻って来た。
「これがこの街で売っているソーサリーカードで、等級はコモンになります。村人から冒険者まで、よく使うカードです」
「まずは試しに、このカードを使ってみましょう」
クリスパはカズに、1枚のカードを渡した。
渡されたカードには『火の絵』が書かれている。
ココット亭で女将のココットが使っていた物と同じ木板のカードだ。(10㎝×8㎝厚さ1㎝程の大きさ)
「カードの下部分に色が付いていますね。そこを持って魔力を流すと」
カードの上部辺りから火が出て来た。
『蝋燭の火』くらいの大きさだ。
「このように、カードに込められた効果が現れます。主にノーマル以下のカードは、一般の方でも危なくないように『魔力を流す所』と『効果が現れる所』に印がしてあります」
「本当だ。火が出た所に『丸い印』がしてあるんだ」
「ではカズさんもやってみましょう」
「はい」
クリスパがやったように、カズはカードの下部分を持って魔力を流す。
するとカードの上部にある印から火が出たが、クリスパが使ったときより大きな火が出た。
「同じカードでも、物によって火の大きさが違うのですか?」
カズが質問している間に、持っていたカードは火が消えて『崩れ消滅』してしまった。
クリスパのカードは、まだ火が出ている。
「カードは同じ物ですが、流した魔力量によって効果が変わったんです」
「カードが同じでも違う?」
「カードに含まれてる魔力量は同じでも、次のようにかわります。流した魔力量が『多い』と、それに応じて強く効果が発揮しますが『短く』すぐに効果が切れます。そして流した魔力量が『少ない』と、効果は弱いですが『長く』続きます」
ふむふむ『多いと短く』『弱いと長く』か、一枚のカードでも、その時に応じて使い分けれるか。
だから魔力操作は、子供の頃からやって慣れてた方が良いと。
「ただし『カード自体の耐久力』を越える魔力を流すと消滅しますし、弱すぎると何もおきません」
「クリスパさん、効果を発揮しているカードを、途中で止めて再利用することはできないんですか? 例えば今回の火を出すカードの場合だと、途中で火を消して次また使うとか?」
「一般的に使用されているカードは、ランクが低いノーマル以下なので、カードを使用した時点で消滅は確定してます。例え効果を途中で止めることができても、確定しているので、消滅することは変わりません」
「ランクが高いカードであれば、何度も使えるんですか?」
「どうでしょうか? 素材が稀少な金属等の物でしたら、カード1枚に複数の効果を持たせることができる、と聞いたことはありますが、私は見たことがありません」
『稀少な金属』に『複数の効果』新たな情報だ!
「遺跡から発掘さるような物であれば、繰り返し使えるかもしれませんが、私は知りません。誰かが持っていたとしても、貴重過ぎて秘密にするでしょうね」
「分かりました。ありがとうございます」
「次は販売されているソーサリーカードについて注意をします。これを」
クリスパはカズに、新たにソーサリーカードを渡した。
先程と同じで、火の絵が書かれている。
「先程と同じように、カードに魔力を流してください」
カズは言われたとおり魔力流すと、出てきた火の大きさが不安定で変だった。
急に一気に燃え上がり、持っていたカードも燃えだしたので、カズはすぐに放した。
「大丈夫ですが?」
「なんですかこのカードは?」
「驚かせてごめんなさい。実際に体験してもらった方が分かると思いまして、これが粗悪品のカードです」
「粗悪品!? これも売ってるんですか?」
「取り締まってはいるんですが、この街でもたまに見つかります。なので気を付けてください」
これはカードを買うとき、鑑定して買わないと危ないな。
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前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。
そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。
偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。
チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
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Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
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