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二章 アヴァランチェ編

46 D ランク と 勉強会

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 『魔鉄鉱石』を持って、二人は一旦部屋を出ていき、十数分ほどして戻ってきた。

「お待たせカズ。ロウカスク説明書してあげて」

「ああ。では、なぜギルドで魔鉄鉱石、正確には『魔素を蓄積した物』を欲しがったかと、その価値を簡単にだが説明しよう」

 ロウカスクが椅子に座り、説明をはじめた。

「その前に、まずこれが今日カズ君が、鍛治屋組合に置いてきた鉄鉱石の代金だ」

 ギルマスから渡された金額は『大金貨二枚、金貨六枚、銀貨五枚(265,000 GL)』だ。
 500㎏あった割には少なく思える。

「品質は『上 中 下』とあるが『中と下』の物が多く『上』が少なかったそうだ。あれだけの量を持っていったら、金額が少なく思えるか?」

「まぁそうですかね」

「ただの鉄鉱石だと、そんなもんだ」

「そうですか」

「それじゃあカズ君、これが『魔鉄鉱石』の代金だ」

 ギルマスが渡してきたのは『大金貨一枚と金貨五枚(150,000 GL)』だった。

「こんなにですか!」

「カズ君、これが価値ある物の金額だ」

「……」

「調べてきたら、蓄積されてる魔素量は『中の下』と言ったところで、蓄積されてる『魔素濃度』は一割ほど多かったし、魔素が水属性の為に、その位の金額になる」

「水属性の魔素だと、何か違うんですか?」

「水属性に限らず、なんらかの属性が蓄積された物は珍しいんだ」

「と言うと、属性が無い魔素を、蓄積した物があると?」

「今でも大抵見つかるのは、ただの魔素を蓄積した物が殆どだ。属性を持たない物と言うのは、言葉通り属性が無く、魔素は蓄積しているが、何かに特化してない物。例えば、水場や火山付近など、特殊な場所から採掘されてない物だな」

「う~ん。そうなると、水場や火山付近などで採掘すれば、各種属性を蓄積した物が取れると言うことなら、多少珍しい適度じゃないんてすか?」

「そんな簡単に見つからないから、各種属性の魔素を蓄積した物は、珍しく価値があるんだ」

「それなら、属性を持たない、ただの魔素を蓄積した物は、良く見つかるんですか?」

「いいや。そっちも滅多に見付からないさ」

「なら見つけた俺は、運が良かったと?」

「そういうことだ」

「あと『魔素濃度』って?」

「『魔素濃度』は、その物にたいして、どれたけ魔素を蓄積しているか、魔素の濃さだな」

「魔素の濃さ?」

「例えば、5までしか魔素が蓄積されない物が、6蓄積されていたら、濃度が上がったと言うわけだ」

「『魔素濃度』が上がると、どうなるんですか?」

「武器にした場合に、通常よりも更に強化出来るようになったりと、物によって様々だ。これは作る職人に聞かんと、オレはそこまで詳しくないんでな」

「なるほど」

 とりあえず、魔素を蓄積した物は、価値があると覚えておいて、そんな物を見付けたら必ず分析して、採取出来る物はしておいた方が良いな。

「だからカズ君、こういう物を見付けたら、ギルドに報告してくれるとありがたい」

「一応覚えときます」

 今回の要件は終わったようなので、二人がまた何か言ってくる前に、部屋から出て行こうと思う。

「カズ君待った!」

 遅かったか。

「な、なんですか? まだ用事が?」

「つれないな。さっきアレナリアと相談したんだが、カズ君のランクを上げても良いだろうとな」

「ランクを!」

「功績を見れば当然だと、アレナリアに言われてな。オレはもう少し待っても良いと思ったんだが、今回の功績を考えたら、Eランクのままってのもおかしいからな」

「それじゃあ、遺跡の……」

「それはまだ無理だ。ランクを上げると言っても、一つ上の Dランクだからな」

「ですよね~」

 ハァー。そう上手くいかないか。

「カズ君が、なんで遺跡やダンジョンに行きたいかは知らないが、まずは知識を身に付けた方が良い」

「知識ですか?」

「そうだ。オレやアレナリアと出会ってから、数日しか経ってないが、話を聞いてると、まるで子供程度の知識しかないように思える」

「子供程度ですか……」

「いや、言い方が悪かったすまん。ただ以前にアレナリアにも言われたろ、知識が乏しいと」

「えぇ」

「それだけのステータスがあるのに、魔法に関することや、今回話した魔素のこと等も知らなかったしな」

「……確かにそうです」 

「そこでだ、やっぱりアレナリアに教わった方が良いだろう」

「なにっ!」

 アレナリアが驚いた様に反応して、目をキラつかせた。

「今までのように、依頼を受けながらで良いから、時間帯を決めて、ギルドの一室で教われば良い」

「やっぱりそうですか……」

 アレナリアを見ると、明らかに喜んでいるようだ。

「だからと言って、アレナリアと一緒に住んで、朝から晩までやる必要はないからさ」

「なにぃぃぃ! お前は、たまに良いことを言ったと思ったら、余計なことを付け加えなくても、せっかくカズがその気に……」

 今度は一転、アレナリアがロウカスクに掴みかかって、睨み付けている。

 そうだよな……このままだと、元の世界に帰る方法を探すのにも、支障が出てくるだろうし、せめて魔法の知識だけでもか……
 最初は一人旅に出るだけだったのに、今は冒険者兼、旅人になってるし、ここで一度知識を身に付けた方が良いか。
 『急がば回れ』って言うしな。
 でも勉強苦手なんだよな。

「分かりました。先を考えるとその方が良いですし、アレナリア頼めるかな?」

「えっ! カズがお願いするなら、私は構わないわ」

「よろしくアレナリア」

「任せておけ! 私の知識はお前のものだ! 手取り足取り教えてやるわ! だから一緒に……」

「いやそれはいい、宿代も前払いしちゃったから」

「そ、そうか……」

「何をしょんぼりしてるんだ。これで毎日カズ君と会える訳だから、アレナリアも満足だろ。望みが叶って」

「ロウカスク! お前は、毎回毎回一言余計だと言ってるでしょ!」

「それじゃあカズ君、ソーサリーカードの作り方は、アレナリアに色々と教わった後にしよう」

 そうだな。
 作り方を聞いても、実際作れるように、理解出来ないと意味ないからな。

「了解しました」

「ならそれまで、お預けだ」

 さて、スキルの異世界言語と、全魔法&スキル会得があるから大丈夫だろうけど、教えてもらうことを、覚えていられるかだな。
 この歳になって、また勉強することになるとは。(でも今24歳か)

「……ズ……カズ君」

「んっ? はい?」

「ボーッとしてどうした?」

「ちょっと考え事をしてただけで、なんでもないです。それで何か?」

「どうせだったら、今日からアレナリアに教わったら、どうかと聞いたんだ。今回の報酬で、暫くの宿代は大丈夫だろ」

「まぁそうですね。これだけあれば、依頼を受けるにしても、近くの場所を選べば、時間も掛かりませんし」

「私なら、いつでも大丈夫よ!」

「場所は資料室を使うと良い。職員しか来ないから、絡まれる心配もないだろう。表向きは、資料整理をしているってことにしておけば」

「何から何まで、ありがとうございます」

「カズ君には色々と借りがあったから、これでチャラってことにしてもらえれば良いさ。じゃあ勉強会がんばれよ」

「はい」

 こうして俺は、これから毎日空いたら時間を、魔法のことや魔素のこと等を、アレナリアに教わっていくことになった。
 依頼を受けて勉強して、たまに薬草を調合したり、気晴らしに都市外に出る依頼を受けて、採掘きた鉱石や、採取した薬草を少しずつ溜め込んだりと、毎日が過ぎていく。

 先払いした宿代分の日数がきたら、また直ぐに十日分を先払いして、なんとかアレナリアが誘ってくる、共同生活を断っていった。
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