人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

203 落ちてきた影

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 壁を切り倒して出た先は、急斜面の砂が周りを囲んでいる場所だった。
 言うなれば、すり鉢状になった蟻地獄の底だ。
 日が傾き暗くなってきていたので、カズは【マップ】を見て、今居る場所の確認をした。
 そこはダンジョンを入った場所から、東へ1㎞程の来た辺りだった。
 試しにカズは〈ゲート〉を使い、ダンジョンの入口まで移動を試みる。
 何の問題もなく移動することができ、ダンジョンの外だということを実感したカズは、もう一つ確かめるために、ダンジョンの入口から少し離れた所で少し待った。
 しかし今度は砂嵐が起きる事はなかった。


 石室にあったアイテムも持ち出した事でか、ゴーレムを倒した事なのかは分からないけど、砂嵐が起きなくなったなぁ。
 これは攻略したってことで良いのか? まぁどちらにしても、もうこのダンジョンに入る気はしないけどさ、一通り見たわけだし。
 ダンジョン攻略なんて予定外だったけど、なんとかなったから良しとしよう。
 さてと、砂漠の入口まで戻って、落ち着ける空間内で休むか。
 【万物ノ眼】を常時発動してると、常に周囲の情報が見えるから目が疲れる。
 ダンジョンも出たし『OFF』にしておこう。
 明日第2ギルドに戻ったらフローラさんに報告して、キウイを迎えに行くための足(馬)を探さないと。
 でも新年そうそう、貸し馬車屋とかやってるのかなぁ? まぁ迎えは四日後の朝で時間もあるし大丈夫だろう。


 カズは〈ゲート〉で砂漠の入口まで行き『隔離された秘密部屋』のトレカで作り出した別空間に入って、食事を取りながら数日の事を振り返り、アーティファクトの古書を見てから就寝した。


 ◇◆◇◆◇


 夜が明けだした頃に起き、トレカで作り出した別空間内からカズは出てきた。

「ふぁ~……(さてと、とりあえず王都の第5ギルドを目指して出発するか)」

「……(…ぁ……)」

「ん? (誰の声だ……?)」

 カズが砂漠の方を見ると、上空から落ちてくる影が見えた。
 その影は減速することなく砂漠に突っ込み、大きな音と共に大量の砂が巻き上がった。
 何事かと気にったカズは、警戒しつつ落ちてきた影の元に向かう。
 近づくとその影は、巨大な鳥だった。

「ロックバード……じゃないな。調べ…」

「ゥ…ヮ……(ヒ…ト…敵……)」

「意識があるのか?」

「ヮ…ァ……(子供…だけでも)」

「子供がいるのか? おい!」

 カズは倒れて巨大な鳥の翼の下で、微かに動いる鳥を見つける。

「こっちの鳥は痙攣(けいれん)して、今にも死にそうじゃないか。とりあえず回復してやらないと」

「グゥ…ガァ! ガ……(ワタシの子供に! 近づく……)」

 巨大な鳥は頭だけを動かし、途切れ途切れのかすれた鳴き声で、カズを威嚇して睨み付ける。

「傷付けたりしないから、そう睨むなよ。確かにお前らとは関係ないけど、新年そうそう見捨てるのも気が引けるしさ。とりあえず子供から治療するから、お前は少し待っててくれ(言葉が分からなければ、助けなかったろうな。モンスターの言葉も分かる【異世界言語】も、良し悪しだな)」

 倒れている巨大な鳥の翼の下で、痙攣した雛鳥をゆっくりと抱き抱えて、カズは『大地の祝福』のトレカを使用した後に、アーティファクトの古書に新たに載った魔法〈ハイヒール〉を使った。
 すると瀕死の状態だった雛鳥は、痙攣が止まり、ゆっくりと目を開けて大きく鳴いた。

「ピィィーヒュー! (ワァー! お母さんお母さん。どこどこ?)」

「おいちょっと、そんなに暴れるなよ(子供の鳥ったって、人の十歳児くらいの大きさはあるんだから!)」

「ピィ…ピィィーヒュー(お母さん死んじゃうよぉ~お母さぁ~ん)」

「クァ…ァ…グガァ……(ボ、坊や……大丈夫。母はいつでも、空から見守っているわ。助かって良かった)」

「ピィ…ピィィ~(死んじゃ嫌だよぉ~)」

「助けるんだから、勝手に死ぬ流れにならないでくれる。回復するぞ〈ハイヒール〉毒も食らってるのか、じゃあ解毒薬を飲んどけ。ほれ!」

 カズはハイヒール使用すると【アイテムボックス】から小ビンを出して、中の解毒薬を巨大な鳥の口に流しこんだ。

「クアァ、クウゥ……(痛みが…傷が……)」

 倒れて動けなかった巨大な鳥は、怪我をした所を確かめながら、ゆっくりと起き上がる。

「ほら、お母さんさんも治ったぞ」

 鳴いていた雛鳥が、起き上がった巨大な鳥の元へと駆け寄った。

「すっかり明るくなっちゃったなぁ(まぁ日が暮れる前に王都の第5ギルドに着けば、転移水晶で第2ギルドに行けるから良いか)」

 カズは巨大な鳥の親子から離れ、王都に向かうため歩き出す。

「クワァ……(そこ人待って。ワタシ達を助けてくれたのはあなたですね。ありがとう)」

「気紛れでやったことだから、気にしなくて良いよ」

「クァ、クゥ(やはりワタシの話していることが、分かるようね)」

「ぁ……まぁちょっとね」

「クワァ(変わった人もいるものだ)」

「ハハ……(とうとう鳥にも言われるようになったか)」

「クゥ(ワタシに出来ることであれば、恩返しをしたい)」

「だから気にしなくて良いって、たまたま居合わせ……今度はなんだ? (次から次へと)」

「クァ(追ってきたの)」

 カズと巨大な鳥が向いた先に砂塵が舞い上がり、砂の中から多くの何かが出入りしてる影がうっすらと見えていた。
 その方向はカズがダンジョンを脱出した、蟻地獄のようにすり鉢状になった場所付近だ。

「クァ(しつこいワームどもね)」

「ワーム?」

「クゥアァ(夜に砂漠に下り休んでいたら、急に地中から襲いかかってきたの)」

「砂漠を越えてきたのか? 飛べるからって、子供の鳥には大変じゃないのか?」

「クワァ、クガァ……(仕方がなかった。産まれたばかりの子を狙って、多くの者が襲ってきたのだから。ワタシはこの子が産まれるまで、食事もとらずに面倒を見て、疲れきっていたの)」

「連れ合いは居ないのか?」

「クァ……(この子は……一度の過ちで出来た子なの)」

「……そ、そうか(聞かなきゃよかった)」

「クヮァ(まさか人に助けられるとは)」

「もう動けそうだな。それじゃあ俺は用があるからもう行く。これからは気を付けろよ。あと失った血は回復してないから、どこかでゆっくり休めよ」

 カズは背を向け、巨大な鳥の親子の元を去ろうとする。

「クァ(待って!)」

「まだ何か?」

「クァ、クワァ(まだお礼をしてない)」

「だからいいから(面倒事になるのは嫌なんだけどなぁ)」

「ピィピュ~(助けてくれた。お礼する)」

「クァ……(子供もこう言ってる)」

「お礼ったって、ここでのんびりしてたら、遠くに見えた……えーとワームだっけ? それがこっちに来て面倒になるから……あ!」

 カズが砂漠の方に目線を動かすと、遠くで見えていた砂塵が近づき、砂の中から出入りしているワームが、目視できる程だった。

「クァ…ワァグゥ(どうやらワタシが落としていた血を、たどって来たようね)」

「ピィ、ピィ~(お母さんと一緒に戦う)」

「あの群れって、砂漠から出たりはしないしょ? こっちの林とかに」

「クァ…ワァ、クゥ……(色々な物を食べて変化した個体も混じっているから、それはどうか知らない)」

「……はいはい。自分で調べれば良いんでしょ《分析》(どうせ戦うことになるんだろうなぁ)」



 名前 : サンドワーム
 種族 : 大ミミズ
 ランク: C
 レベル: 35
 力  : 703
 魔力 : 68
 敏捷 : 341
 全長 : 5m90㎝
 スキル: サンドムーヴ
 補足 : 砂漠に生息する大ミミズ。


 名前 : ポイズンワーム
 種族 : 大ミミズ
 ランク: B
 レベル: 38
 力  : 684
 魔力 : 114
 敏捷 : 363
 全長 : 4m90㎝
 スキル: サンドムーヴ
 補足 : 猛毒サソリを食べて変化した特殊個体。


 名前 : ストーンワーム
 種族 : 大ミミズ
 ランク: B
 レベル: 37
 力  : 740
 魔力 : 105
 敏捷 : 333
 全長 : 5m60㎝
 スキル: サンドムーヴ
 補足 : 石を食べて変化した特殊個体。


 名前 : メタルワーム
 種族 : 大ミミズ
 ランク: B
 レベル: 42
 力  : 924
 魔力 : 168
 敏捷 : 323
 全長 : 5m50㎝
 スキル: サンドムーヴ
 補足 : 冒険者等の装備を食べて変化した特殊個体。



「砂漠から出て来ても、おかしくなさそうなのが混じってるぞ! (突然変異が三種も居るのかよッ!?)」

「ピィ、ヒュ~(お母さん、アイツら来る)」

「クァワァ(大丈夫。怪我も治ったから、負けることはないわ)」

 起き上がり飛び立とうとした巨大な鳥が、一瞬ふらつき倒れそうになる。

「おい待てって、眩暈(めまい)してるじゃないか」

「クゥ…クァ(こ、この程度)」

「ハァー……そこで子供と休んどけよ(結局こうなるんだよねぇ。フラグ発生で、フラグ回収ね)」
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