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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

213 休養 1 お風呂 と 食事 再開 と 紹介

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 ギルドを出たカズは、アレナリアの家へと向かった。
 道中アイテムボックス内のリストを表示させ、アレナリアの家の鍵を探し取り出す。
 家に着くと鍵を開けて中に入り、すぐにお風呂場へと直行して浴槽にお湯を張り、久方ぶりの風呂を堪能する。
 お風呂を出ると着替えてる間に排水をして、お湯が抜けきった後〈クリーン〉を使い、お風呂場内をキレイにした。
 その後カズは、以前に使っていた部屋へと移動し、アレナリアが戻るまでのんびりすごくことにした。
 部屋はしっかりと掃除してあり、ベッドからは石鹸の香りがほのかにしていた。
 誰か友人を泊めたのだろうと、カズは特に気にせずベッドで横になりくつろいだ。
 いつの間にか寝入ってしまったカズ、その隣でもぞもぞと何かが動き腕に絡みつく。
 カズは薄目を開けて、隣て動く存在を確認する。

「うふふッ。この感じ久しぶりだわ」

 アレナリアが小声でボソボソと呟く。

「……何してるの? (う~む……あたる感覚がキウイとは明らかに違う)」

「カ、カズ! 起きてたの!?」

 アレナリアが慌ててベッドから下り、カズに背を向ける。

「腕に何かが絡みついてきたら、そりゃあ起きるよ」

「か、帰ってきたら、気持ち良さそうに寝てたから……」

「夜這いするつもりだった」

 アレナリアの顔と耳が、みるみる赤くなる。

「ま、まだ夕方だから、夜這いじゃないもん。そ、それに、そんなことしない……なくもないけど……」

「なくもないのかい! (ぁぁ……そういえばアレナリアって、こういう事をするんだった)」

「だって、だって……」

「別に怒ってないから……(変わってないなぁ)」

 カズはベッドから下り、アレナリアの頭を軽く撫でる。

「もういいから、夕食にしよう。と言っても、買い物してないから、殆ど食材ないんだよね」

「なら、外に行って食べましょう。新年のお祭りで、中央広場の噴水辺りには、露店が多く出てるから」

「そうだね。それじゃあついでに、シャルヴィネさんのお店に寄って、挨拶していこうかな」

「シャルヴィネさんなら、居ないと思うわよ」

「そうなの?」

「いつだったか忘れたけど、王都に行ったって従業員に聞いたわ」

「王都に?」

「ええ。以前キッシュ達と試作してた、タマゴサンドとかを売り出しに」

「そういえば、この街の露店で、売ってるのを見かけたっけ。納得いく物が出来たんだ」

「詳しくは知らないけど、そうらしいわ。それより早く行きましょう。今日はお酒も飲むわよ」

「まぁ良いけど、程々に」

 アレナリアがカズを引っ張って、家を出て行く。
 中央広場まで行き、色々な食べた物をとお酒を買っていると、途中でギルドの受付をしているスカレッタとルグルに会い、一緒に食事をすることにした。
 四人で食事をしていると、今度はポピーと出会った。
 あとからボルタとワットが合流すると聞いたので、それなら皆で、一緒に食事をしようということになった。
 カズがポピー達三人の近況を聞くと、今ではアレナリアだけではなく、ギルドマスターのロウカスクにも訓練してもらってるとの事だ。
 皆で食事をして、かれこれ二時間程経った頃、カズは席を立ち離れようとする。

「どこ行くの? カズ」

「俺ちょっと用を足しに」

「早く戻ってよ」

 カズが用を足し、皆の所に戻ろうとして中央広場を歩いていると、豪快にお酒を呑んでいるドワーフの集団を見つけた。
 そこには見知ったドワーフの一人が居たので、カズは近くに行き声を掛けた。

「ホーベル」

「ん? ワシを呼ぶのは誰……おお! ルアじゃないか」

「ルアじゃなくて、カズだよ」

「そうじゃった。ここで会うということは、カズもアヴァランチに住んでるのか?」

「俺は休養がてら、お世話になった人や、知り合いを訪ねて来たんだ」

「そうか。また会えて嬉しいぞ。どうじゃ一杯飲んでくか?」

「ドワーフの酒豪には付き合えないけど、せっかくだから一杯貰うよ(とは言っても、耐性があるから殆ど酔わないんだよね。残念なことに)」

 カズはホーベルから酒の注がれたコップを渡され、それを飲み干した。

「良い飲みっぷりじゃな。どうじゃもう一杯?」

「その気持ちだけで」

「そうか。お、そうじゃった。この街にアイツも来ておるぞ」

「誰ですか?」

「カイトじゃよ。あの盗賊の採掘場にカズ達と一緒に連れてこられて、脱走しようとして捕まった」

「カイト……ああ(居たなそんなの)」

「少し前に、たまたまこの街で会ったんじゃよ。今はあっちの露店で……お、噂をすれば。おいカイト」

 ホーベルが声を掛けると、人混みの中から一人の若い男が近寄ってきた。

「ホーベル何? 僕に用? 面倒臭い配達があって、忙しいんだけど」

「相変わらずの話し方じゃのぉ」

「別にいいだろ。それで何?」

「なぁに、カズと会って話をしてたら、カイトが居たんで声を掛けたんじゃよ」

「カズ……? 誰それ?」

「ルアと言った方が分かるかのぉ」

 カイトをキョロキョロと、周囲を見渡す。

「ルアなんて、どこに居るのさ?」

「おお、そうじゃった。カイトはルアの本当の姿は知らんかったな」

 ホーベルは目の前に居るカズを、盗賊の採掘場で一緒だったルアだと説明した。

「冒険者だって! 本当にルアなのか?」

「ああ。ルアは偽名で、本当はカズだ」

「潜入捜査してると言ってくれたら、僕が協力したのに。そうすればそれが評価されて、冒険者ランクが一気に上がったはずなのにさぁ」

「カイトは冒険者だったのか? (潜入捜査をカイトになんて話したら、それを利用して、自分だけ逃げようとしたろう)」

「まぁね。今は依頼で、露店の手伝いさ。あ~あ、早くランク上げたい」

 カイトに聞こえないように、ホーベルがカズに小声で話す。

「カイトの奴、楽して成果を得ようとする考えは、全然変わっとらんぞ」

「その様ですね(だったら、彼女を紹介してやるか」

「ねぇ、僕の話聞いてる?」

「なぁカイト、強くなりたければ、訓練してくれそうな人を紹介しようか? 場所はリアーデって町なんだけど」

「訓練かぁ。強くなって楽したいけど、疲れるの嫌だし、訓練じゃあ報酬も入らないからなぁ。しかも他の町? 面倒だよ」

「教えてくれる人は、女性なんだけど」

「……え!」

「しかも美人で実力もある」

「し、仕方ないなぁ。そこまで言うなら、行ってあげなくもないけど」

「じゃあ相手には連絡しておく。彼女の名前はクリスパ。リアーデの冒険者ギルドで、サブマスをしてるから」

「美人のサブマスと二人で訓練。最高じゃん。とっととこんな依頼終わらせて、リアーデに行こう」

「まぁせいぜい頑張ってくれ(クリスパに肉体だけじゃなく、精神も鍛えてもらえばいい)」

 カイトはニヤニヤしなが、働いている露店に戻って行った。

「あの根性なしに、冒険者ギルドのサブマスなんて紹介して大丈夫なのか? しかも女なんじゃろ」

「大丈夫ですよ。一応知り合った縁なんで、これくらいはしてやりますよ」

「そうか」

「それにカイトが強くなるかはともかく、誰かを利用して自分だけが得しようとしてる性格を、少しは治した方が良いでしょうしね。でないと、いつしか盗賊の下っぱとかになってるかも知れませんし」

「確かにのぉ。騙されたあげく利用されて、使い捨てられるのが落ちじゃな。学習能力あるんじゃろか?」

「盗賊の討伐に行ったら、カイトが居たなんて事になったら、後味も悪いですし」

「カズがそんなに気にかける事もないじゃろ」

「まあ、あとは本人次第です」

「そうじゃな」

「それじゃあ俺は、そろそろ戻ります。少し用足しに離れたのに、話し込んでしまったので」

 ホーベルに軽く会釈をして、カズはアレナリア達が居る所へと戻った。

「ちょっと遅かったじゃないの! どこ行ってたのカズ」

「依頼先で知り合った人に会ったもんで、少し話してたんだよ(アレナリア呑み過ぎだろ。完全に出来上がってる)」

「ほら、早くここに座って飲みなさいよ」

 カズがアレナリアの横に座り、はす向かえに座るボルタとワットを見ると、げんなりした顔をしていた。
 カズがポピーに尋ねると、酔ったアレナリアに、訓練の事で説教をされたそうだ。
 伸び悩んでるボルタとワットに対して、アレナリアが痛いところを突き、落ち込んでしまったとのことだ。
 それからボルタとワットを元気付け、皆で食事をしてお祭りを楽しみ、数時間がたった頃、翌日朝から仕事のあるスカレッタとルグルが先に帰り、それに続きポピー達三人も、朝から依頼に行くとのことで、そこそこに切り上げていった。
 今夜のお酒と食事は、よほど美味しく楽しかった様で、アレナリアは千鳥足になるほど酔っていた。
 皆と別れたあと、カズはふらつくアレナリアを背負い、家へと戻って行った。
 いつしかアレナリアは、カズの背中で寝息を立てて、気持ち良さそうに寝ていた。
 時折寝言で、カズの名前を呼んだりもしていた。
 家に戻ったカズは、アレナリアを自室に寝かせ、自分は以前使っていた部屋で休むことにした。
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