人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
230 / 910
三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

221 特殊な物件 と 同居人

しおりを挟む
 ほこりを払い落とし、いわく付きの物件からギルドに戻ったカズは、フローラの居る部屋に向かった。

「どうだった? あの物件なら、場所的にもマイヒメを連れて来れるでしょ」

「フローラさんは、どこまで知ってたんですか?」

「何の事かしら? あの物件をモルトに言って、カズさんに薦めたのは私だけど」

「誤魔化すと怒りますよ」

 フローラは広げていた本を閉じて、カズに向き直る。

「……分かったわ。それで何を知りたいの?」

「入り方が分からない地下の部屋に、庭の地中に埋まっている何か」

「そう。カズさんなら気付くと思ったわ」

「たまたまです。少し気になったから調べただけです。それと住人が居るとも、聞いてません」

「住人……もしかして」

「あちしよ!」

 突如部屋の窓が開き、レラが入ってきた。

「もうフローラったら、こんな奴(カズ)が来るなら先に言ってよ」

「もう見つかっちゃったの。誰かが来たら外に避難しなさいって、言ってあったでしょ」

「外に避難してたもん。カズが庭に出たから、出て行くもんだと思って家に戻ったんだもん。そしたらまた家に入って来ちゃったんだもん。だから秘密の場所に隠れたのに、ピンポイントで見つかっちゃったんだもん」

「これは仕方ないわね。レラのことを知られたからには、カズさんにあの物件に住んでもらわないと」

「はい!? 俺の返事聞く前に、買うことが決定ですか?」

「レラを見つけなければ、断ることもできたのよ」

「そんなの聞いてませんよ」

「あちしも聞いてないし!」

「フェアリーが住んでるなんて言えないでしょ。レラのことは、私しか知らないしね」

「モルトさんに言って、あの物件を俺に薦めたときから、既に」

「どうかしら。でもカズさんなら……ね」

 フローラはカズを見て、ニコッと笑った。

「ぅ……この人は。分かりました。ただし俺は良いとしても、レラさんの意見だって聞かないと」

「レラはどう? カズさんに住んでもらうのは嫌かしら?」

「どうせあちしのこと知られちゃったし、今まで通り住めるなら、別に良いけど」

「なら決定。すぐに契約しましょう」

「ちょっと待って。カズの魔力は大丈夫なの? 数日たったら、げっそりしてるなんてことにならないわよねぇ?」

「それなら大丈夫。きっと快適に暮らせるわ」

「フローラがそこまで言うなら」

「俺が住むことが決まったなら、その魔力を吸う事とか、話してもらえません。詳しくは知らないので」

「そうね。私が知ってることは、話しておくわ」

 フローラはいわく付きと言われた物件のことを、知る限りカズに教えた。
 あの建物は住む人の魔力を吸収することで、敷地内の状態が保たれるのだと言う。
 建物や庭の傷は、一晩経つと自動的に修復されると。
 汚れなども同じだと言う。
 それが住む者の魔力を吸う建物の正体だと。
 人が住まなくなってからは、フローラがレラに会いに行くときに、建物に魔力を補充していたと。
 レラの魔力と周囲の魔素(マナ)を毎日少しずつ吸収することで、かろうじて現状を保っていたとのことだ。
 カズが住むことで、魔力不足の心配はなくなると、フローラは安心していた。
 いいように利用されたのではと思ったカズだったが、これで住む場所の心配はなくなったので、ひとまずは良しとした。
 フローラが出してきた契約書にサインをすることで、その日から正式にいわく付きと言われた物件は、カズ所有のものとなった。

「じゃあレラは家に戻ったら、カズさんに魔力を補充する部屋への入り方を教えてあげて」

「本当に大丈夫なの?」

「心配なのは分かるけど大丈夫。あとは自分の目で確かめなさい」

「分かったわよ。あちし先に戻るから。カズも早く来なさいよ」

 レラは窓から出て、先に戻っていった。

「これからレラのことよろしくね。それとあの家の管理も。数日かけてゆっくりでいいから」

「フローラさんの思い通りになったわけですか。こんな遠回りなやり方しないで、一言相談してくれても(数日かけて? 掃除と草刈りのことかな?)」

「一応自分の目で直接見て、住むかどうか決ためてほしかったから。そういうことにしておいて」

「まぁ結果、俺は住む所とマイヒメを呼べる場所ができたので、良しとしますが」

「カズさんのそうやって受け止めてくれるとこ好きよ。ありがと!」

 優しく笑うフローラを見て、カズは顔を赤くする。

「な、なに言ってるんですか。そんな笑顔を見せたって、毎回フローラさんの都合通りにはなりませんから。今回は別ですけど」

「そういうところよ!」

「も、もうレラが待ってるので、俺行きます」

 今は分が悪いと思い、カズは急ぎギルドを出て、レラの待つ家に戻っていった。
 カズと入れ替り、今度はモルトがフローラの所にやって来た。

「赤い顔して慌てて出ていきましたが、カズ君はどうしたんですか?」

「お礼を言っただけよ。気にしないで」

 モルトは首を傾げる。

「? そうですか。それでカズ君に薦めた物件は、どうなりましたか?」

「住むことに決めたわよ。これがその契約書」

「では、今までの管理していた方へ、報告に行きます。以後あの物件は、所有者が変わるまで、フローラ様の管理下ということで」

「ええ。それでお願い(カズさんを利用したかたちになって、悪いことをしたわ)」

「カズ君もよく住む気になれたもんです。フローラ様から実情を聞かされても、儂は住もうとは思いませんでした。疲れを癒す自宅で、魔力を多く消費するなど」

「そうね。本当にカズさんには、面倒事を押し付けてるようで申し訳ないわね」

「カズ君も毎回よく承諾してくれます」

「本当ね。私、凄く助かっちゃう。ずっとこのままここに居てくれないかしら」

「フローラ様。その言い方は、カズ君を利用してるようで、どうかと」

「あら! 私ったら。いつも断らずに、頼み事を引き受けてくれるカズさんを見てたら、つい」

「カズ君はフローラ様の大変さを分かってるので、断らずに引き受けてくれるんですよ」

「分かってるわ。これは私の甘えね。優しい人だわ。でも、危ういとも言えるわね」

「それは同感です。ですから儂も何か手助けができればと、つい協力してしまいます」

「私もよ。もう少し自分の得することを考えても、良いと思うけど」

 フローラとモルトの気持ちを知らずにいるカズは、現在レラの待つ家に戻っていた。

「遅い。早く来なさいよ!」

「ごめんごめん。それでどこ行くの?」

「さっきの部屋」

 カズはレラと初めて会った部屋にいく。
 レラに言われ、本棚から一冊の本を取り出した。

「その本の最後のページを開いて、そこに一滴血を垂らす」

「え!?」

「何よそらくらい。早くしなさいよ」

「もうちょっと説明くらいして」

「もう。その本が魔力を補充する部屋に行く為の鍵なの。分かったら言われたことやる」

 カズはナイフを【アイテムボックス】から出して、指先を少し切り、血を本に垂らした。

「あとは本に魔力を込めれば、部屋に移動できるわ。あ、ちょっと待って」

 レラがカズに触れる。

「何?」

「こうやって触れてないと、一緒に行けないの。いいから早く魔力を込める!」

「分かったよ」

 手に持った本に魔力を込めると、建物中央地下にある部屋に転移した。

「ちょっと暗いわよ! 何とかしなさい」

「移動した先が暗いなら、そう言ってよ」

「忘れてたの。ここに入ったのずっと前だったから。その時はフローラと一緒だったもの」

「次からは思い出してから行動して〈ライト〉」

 カズはライトの魔法を使い、部屋を照らした。
 部屋の中央には台座があり、その上部に長方形の窪みがと、20㎝ほどの水晶玉があった。
 広さは六畳ほどで、台座と水晶以外は何もなかった。

「そこの窪みに本を置いて」

「こう」

 カズが台座の上部にある窪みに、鍵となる本を置くと、ピッタリとはまった。

「あとはその水晶に触れて、魔力を補充すれば良いと思うわ」

「やってみるよ」

「ただし気を付けなさい。今の家の状態からだと、かなり魔力を持っていかれると思うから、危ないと思ったら、水晶から手を離しなさい」

「忠告ありがとう」

「べ、別にカズのために言ったわけじゃないもん。フローラに言われたからだもん。ほら早くやりなさいよ」

 レラに促(うなが)され、カズは水晶玉に触れて少しずつ魔力を流した。
 次第に水晶玉は、カズの流す以上の魔力を吸収しようとする。
 カズはそれに応じるよう流す魔力量を増やしていく。
 それと同時に、減る魔力量を数値で見るため、ステータスの魔力値のみを表示して確認した。

 【魔力】 : 4155/4500

 流す魔力量を増やして少しすると、突如水晶玉が光だした。

 【魔力】 : 3881/4500

「レラさん。なんか光ってるけど大丈夫なの?」

「知らないわよ! フローラに聞いてこなかったの」

 カズは危険だと思い、水晶玉から手を放そうとしたとき、水晶玉から壁に向けて、幾つか映像が投影された。

「なになに!? なんか映ってるわよカズ」

「俺に言われても。って、これ家の中と庭だよね」

「あ、本当だ」

 壁に映し出されたのは、雑草だらけの庭と、数ヶ所の建物内部の映像だった。
 カズはそのまま水晶玉に魔力を流し続けると、壁に映された映像に変化が表れた。
 ほこりだらけで薄汚れていた建物はキレイになり、庭の雑草はみるみる短くなっていった。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

スキル『倍加』でイージーモードな異世界生活

怠惰怠man
ファンタジー
異世界転移した花田梅。 スキル「倍加」により自分のステータスを倍にしていき、超スピードで最強に成り上がる。 何者にも縛られず、自由気ままに好きなことをして生きていくイージーモードな異世界生活。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...