人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
310 / 936
第三部 王都オリーブ 3 王国に潜むの影

299 旅立つ前の駆け抜ける日々 4 旅の同行者

  三人が部屋を出ると、マーガレットは以前カズに頼んだ事の返事を求めた。

「数日で返事をすると言いつつ、随分と日が経ってしまい、すいません」

「別に構わないわ。それでお願い出来るかしら?」

「それなんですが」

「駄目なの? ビワもその気になってるんだけど」

「え!?」

「カズさんなら承諾してくれると思って、ビワには伝えちゃったのよ」

「返事を聞く前に承諾って……」

「旅には目的があった方がいいでしょ」

「そうかも知れませんが(一応目的はあるんだけどな)」

 マーガレットがカズに頼んでいた事は、国を出て旅をするカズに、ビワを連れて行くという内容だった。
 行き先はビワをの生まれ故郷、オリーブ王国より遥か東にある国だとマーガレットは話した。
 生まれ故郷に連れていかなかったのは、場所が遠いことと、ビワがマーガレット達と出会う前の事を、殆ど覚えてないという理由があった。
 ビワが故郷のことを思い出すまで待っていたところ、今回あったマナの揺らぎ騒動が切っ掛けで、ビワは何かを思い出しそうになっているとマーガレットに話していた。
 それを聞いたマーガレットは夫のルータと相談して、ビワを故郷に連れて行ってもらうよう、カズに頼んだのだった。

「俺も国を出るのは初めてなので、危険が伴うと思います。なのでやはりビワを連れて行くのは」

「カズさんがこのお願いを聞いてくれると思ったから、代わりのメイドを雇ったのよ。もし駄目なら、ホップとエビネには……。ビワにも何て言えば……」

「ちょっとマーガレットさん。それはズルいですよ」

「ええ、私はズルい女よ。ビワは大事な家族だもの。その家族が自分の忘れてる過去を思い出したいって言ってるの。それを叶えてあげたいじゃない。だからお願い」

「俺がビワの故郷まで行って、後から迎えに来るっていうのは」

「ここから故郷に向かって旅をすれば、少しずつ忘れていた記憶が戻かも知れないの」

「ビワは自分から…」

「もうすぐ来るから、本人に直接聞いてみると良いわ」

 カズが悩んでいると、そこに呼ばれたビワがやって来た。
 カズは真剣な面持ちで、危険な旅になるとビワに話し、それでも行くのかと確認を取った。
 ビワはカズに会ってから色々な人達と関わりを持ち、忘れている自分の過去と向き合おうと決心をしたようだった。

「カズさんに迷惑を掛けることは分かってます。でも私は知りたいんです。どういう経緯で故郷を出て、遠くにあるこの国までやって来たのかを」

「今更だけど聞いていいかなぁ?」

「なんですか?」

「ビワはどこでマーガレットさんと出会ったの?」

「それは……」

「嫌なら別に…」

「無理して話さなくてもいいのよ。ビワ」

 少し悩み考えるビワの気持ちを汲み取り、マーガレットも声を掛けた。

「はい…でも…大丈夫です……」

 ビワをカズを暫くじっと見た後大きく息を吸い、落ち着くと口を開き覚えている事を話した。
 珍しい獣人の亜種とだ言われ、檻に閉じ込められてどこからか運ばれて来たのが、ビワだという。
 そして檻から出され強引に連れて行かれそうになったとき、意を決して逃げ出して近くにあった馬車に隠れると、そこにマーガレットが乗り込んで来たと。
 怯えて隠れるビワを匿い、そのまま屋敷に連れ帰り保護したと、思い出して涙ぐむビワに代わりに、マーガレットが途中から話した。
 ビワを檻に閉じ込めていた者達は、追っ手が掛からないように、国をまたいで種族売買をしていたる組織だったとマーガレットは言う。
 その時の者達は衛兵に拘束され、捕まっていた他の種族も解放されたが、組織そのものは各国にあるため潰す事は困難らしい。

 当時オリーブ王国内に関しては、駆逐できたと衛兵は発表していたが、表に出てない悪党がまだいるだろうと、冒険者ギルドは危惧していたらしい。
 衛兵も分かってはいたが、発表したのは国民を不安にさせない為だったと。
 そういった事もあり、マーガレットはメイド達を一人では街に行かせないようにしていたと。
 現在のように、メイド達が街に買い出しなど頻繁に出掛けるようになったのは、マーガレットが病に倒れてからだそうだ。(その頃は呪いからきた病だとは知らないかった)
 マーガレットの話を聞いたカズは、以前潜入した採石場を思い出した。
 多くの冒険者で捕らえた盗賊の者達も、国をまたいで種族売買をする組織の一端だったのかも知れない。

「少し話が脱線したわね。それでカズさん返事は?」

 カズが答えるのを黙って見るマーガレットとビワ。

「危険だと感じて守りきれない思ったら、すぐに連れて戻りますから。それで良いビワ?」

「はい!」

「ありがとうカズさん。良かったわねビワ」

「はい」

 空間転移魔法ゲートを知らないマーガレットは、カズの言ってるの意味がよく分かっていなかった。
 ビワはゲートを通った事があり、カズから貰った装飾品数珠にも付与してあるので、すぐに戻ると言った意味を理解していた。

「三日後の主人の仕事に途中まで同行するのよね」

「はい。そうです」

「ならビワは当日、こちらと一緒に行くといいわ。街でカズさんと合流すればいいでしょ」

「はい。そうさせていただきます奥様。ありがとうございます」

「じゃあそういうことだか、三日後にねカズさん」

「分かりました」

 結局はマーガレットに言いくるめられ、ビワを連れて行くことになった。
 他のメイド達とは、次いつ会えるか分からないので、しっかりと別れの挨拶をした。
 少しは寂しがってくれるかと思っていたカズだったが、以外と全員がさっぱりしていた。
 オリーブ・モチヅキ家の人達に別れを告げカズは、ルータからの依頼内容を報告をするため、屋敷を後にする。
 貴族区と街を隔てる門を通るとき、常駐する衛兵がカズを見る表情は、あれから一ヶ月が経ってもやはり渋いものだった。
 これでもう長い間この門を通る事はないだろうが、次に通る事がある時は少しはましになっていればと、カズは思い貴族区を出てギルドに戻りフローラに報告した。

「ご苦労様。残ってる依頼があるなら終わらせておいて」

「それは大丈夫です。今、受けてる依頼はないので」

「ならいいわね。それと明日、そうね……夕方くらいに家に行くわ」

「分かりました」

 旅の支度とトラちゃんの食料を買いながら、少し街をぶらついて家に戻ることにするカズ。
 ダイエットしているレラ用にも、果物を多く買っておいた。
 トラちゃんに食料を届けて、ルータからの仕事依頼を伝えに倉庫街へ戻る。
 街で売っているイノボアの肉と、野菜と果物を多めに運び、仕事のことを話した。
 トラちゃんは初仕事がもらえ、少し嬉しそうだった。
 カズに糸を売ったお金で食料の代金を払おうとしたが、これから必要になるからと言い、カズは受け取らなかった。
 このやり取りはこれでもう四度目、モンスターにしておくのは惜しいほど律儀だ。
 仕事内容を伝えて食料を届けたカズは、倉庫を出て家に戻る。
 といっても、トラちゃんが住む倉庫は、カズとレラが住んでる家の真裏、しかも特殊な家の効果範囲に入っている。
 元はその倉庫も特殊な家にした人物が使用していたと、最近思い出したと言っていたフローラからカズは聞いていた。
 長い間使用されてなく、今年になってからは、カズに色々と面倒事を持ち込まれ疲れていたので、すぐには思い出せなかったと、冗談半分にフローラは話した。
 家の持ち主であるカズが気付かない原因の一つは、倉庫街に古びて使用されてない倉庫は幾つもあったので、家の真裏にそんな倉庫があっても、カズは気にしていなかった。
 翌日そのフローラが、家の所有者を変更する為にやって来る。

「お腹すいたよぉ、カズ」

「一言目がそれか」

「お帰り~」

「今、飯作るから。少しは元の体型に戻ってきたみたいだし、食べる量を増やしたらどうだ」

「……少しだけでしょ。だったらいつもと同じでいい」

「いいから食べな。旅に出るんだから、無理して体調崩したら大変だろ」

「旅? 依頼でどっか行くの?」

「まだ言ってなかったっけ。三日後に王都を出るんだよ」

「へ? 聞いてないよ」

「ごめん。最近やる事多くて、言うの忘れてた。今になってだけど、レラはここに残る? この家はフローラさんが管理してくれるから、このまま今のように住んでも大丈夫だけど」

「行くわよ。それに忘れたの、あちしの故郷を探してくれるんでしょ」

「そうだったな」

 ダイエットを程々にして、今日はお腹いっぱい食べて満足げに寝るレラであった。
感想 91

あなたにおすすめの小説

裏スキルで最強異世界攻略~異世界召喚されたのだが、勇者じゃないと追い出されたので新しい国を造りました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
いつものようにヤンキーに絡まれて逃げていたら、いつの間にか異世界召喚されてました。でも、スキルが『農民』しかなかったから、いらないと追放されました。 エブリスタ、カクヨム、ノベリズム、ノベルアップ、小説家になろうにも掲載しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…