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四章 異世界旅行編 2 トカ国
348 助けた女の子に見破られ
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《 そして現時刻 》
部屋に戻ったカズは、レラとビワに何があったのかを聞いた。
「積み重なってたごろつきにガキだと言われた結果がああか。あの子を助けたのはそのついでと……(見て見ぬふりが出来ないからじゃないのか。まあ、面倒事に巻き込まれないようにしようと、考えたのかも知れないけど)」
「仕返しに来るかな?」
「……明日宿を出る時に宿代を多く払って、そのお金で冒険者でも雇ってもらおう」
「明日出発するんですか?」
「目的だった三人の服も買って、今日食材も買い足してきたから。もう留まる理由もないしね」
「あちしはいいよ。観光もしてし、でっかい穴も見たから。ビワは?」
「私も大丈夫です」
「俺は明日の朝もう一度ギルドに行って、次の街までの配達依頼がないか見てくる。サブマスにも来てくれって言われてるし」
「は!? なんでサブマスと会ってるの?」
バタンと部屋の扉が開き、アレナリアが入ってくるなり疑問をカズに投げ掛けた。
気になることがあったが、とりあえずアレナリアの質問に答える。
「キ町から持ってきた書類にグリズさんの手紙があったらしくて、ギルドに行ったら急にイパチェスさんにサブマスの所に連れて行かれたんだ」
「イパチェスって誰?」
「一昨日ギルドに行った時に、書類を渡した受付のせっかちな人。いきなりさぁ『なんで昨日来なかったの!』って言われて、そのまま付いて来いって」
「で、サブマスはなんの用だったの?」
「グリズさんが護衛の依頼を受けさせて、トンネルを通って行けるように連絡してくれたみたいなんだ。でもパーティーランクが低いから無理だろけど」
「勝手にパーティー名を付けておきながら、役に立たないわね」
「まあそう言うなよ。グリズさんだって気を使ってくれたんだから。ところでさ」
「なに?」
「そのなんだ、なんでさっきの女の子がここに居るの?」
部屋に入ってきてからも、ず~っとアレナリアの腕に抱き付いてる女の子。
「これ以上店先で騒がれると迷惑だって言われたからか、仕方なく連れてきたの。この子全然放れてくれないのよ」
「力ずくで放り出してやればいいじゃん」
「助けてあげたのに、その言い方はあんまりよレラ」
「助かったんだから、とっとと家に帰ればいいんだよ。ビワみたいに甘やかしたら、余計に付け上がる。あちしが引き剥がしてやる」
レラは立ち上り、つかつかと女の子に歩み寄る。
現在もイリュージョンで小人の姿に見えているので、飛ぶことはしない。
女の子の正面に立ち、指をさして一言、二言。
「助けてもらったのに、迷惑を掛けるのなんて最低。アレナリアからその手を離して出て行きなさい」
女の子が手を緩め、アレナリアの顔をまじまじと見る。
「アレナリアというお名前なんですね。お姉さま!」
「ぷっ……アレナリアがお姉さまだって」
お姉さまという言葉に吹き出すレラ、女の子はごそごそとポシェットからコンパクトを取り出し、それを開き中の鏡を通してレラを見る。
「やっぱりあなたフェアリーね! あの時見たのは間違いじゃなかった!」
フェアリーという言葉を聞いて、カズとアレナリアは女の子を警戒する。
「何言ってるの? レラは小人族よ(イリュージョンは掛けてあるのになんで?)」
アレナリアがすぐにフォローに入る。
「わかってます。フェアリーはとても珍しく狙われてしまうのは。だから魔法で姿を変えてるんですね。さすがですお姉さま!」
更に警戒を強めるカズは、女の子の持つコンパクトを《鑑定》する。
【キルケのコンパクト】『特級・アーティファクト』
・ この鏡を通してして見たものの真偽を暴く。
・ 使用者の魔力が低い場合それは不鮮明となる。
・ 光属性と聖属性を同時使用することで、闇属性の効果を打ち消し隠された真実を見抜くことが可能、だがそれ相応の魔力が必要となる。
「レラがフェアリーだってことを誰かに話した?」
カズが質問するが、女の子は黙って答えようとしない。
「聞いてるでしょ。どうなのか答えなさい」
「はい。わかりましたお姉さま! この事は誰にも言ってないです」
手のひらを返すように、アレナリアの問には素直に答える。
「ねぇねぇカズ、あれ何?」
レラがカズの側に寄り小声で、女の子が取り出したコンパクトについて聞いた。
カズもレラだけに聞こえるように小声で話す。
「どうもあれの鏡を通して見ることで、アレナリアが掛けたイリュージョンを見破れるらしい」
「ええぇー! あんな子供が持ってる物で簡単に見破られたら、あちし狙われちゃうじゃん」
驚いて声の音量を上げるレラ。
「これが何かわかったんですか?」
「それであちしがフェアリーだって分かったんでしょ。なんなのそれ」
「確かにわたくしはこれでレラさんがフェアリーだと気付きました。でもコンパクトが何かまでは教えられません」
「じゃあいっこ聞いていい?」
「ええ、構いませんわ」
「帝国では、そういったの誰でも持ってるの?」
「わたくしも詳しくは知りませんが、同じ物はないと思います」
「そう(ならこの子を何とかすれば、あちしの自由を妨げるものはない)」
レラはカズの正面に回り込み女の子に背を向け、表情と手を動かして、あのアイテムを壊せとジェスチャーで伝える。
なんとなく言いたいことが分かったカズだが、いい大人が女の子の持つ物を取り上げて、それを壊すことなんて出来ないと、レラの目の前で指を交差させて罰点を作る。
「何をこそこそとしてるんですか? 安心してください。誰にも言いませんから。その代わり街に居る間は、わたくしと過ごしてください。こんなボロ屋より、もっと良いお部屋を用意しますから」
「悪いけ─」
「貴方には聞いていません!」
カズが話し掛けようとすると、急に怒って怒鳴る。
「─ど……(なんなんだ、このガキんちょは!)」
初対面相手にこの態度は、さすがにイラっとするカズ。
話してる間も、女の子はアレナリアか離れようとしない。
「ならあちしが言ってあげる。あちし達は明日この街を出るの。だからもうお別れなの」
「え! そうなんですか? お姉さま」
「え……あ、まぁね(私、聞いてない)」
「お姉さまが驚いてますわ。嘘なんですか?」
「本当。あんたがアレナリアを放さないから、伝えられなかったの。そうでしょカズ」
「そ、そう。元々二、三日で出発する予定だったから」
言葉に詰まりショックを受ける女の子。
それを見たアレナリアが、優しく声を掛ける。
「分かったでしょ。さぁ帰りましょう。家まで送ってあげるから」
「はい……」
とても残念そうに項垂れる女の子。
「ちょっと行って来るわ」
「分かった。気を付けて」
アレナリアはしがみついたままの女の子を家まで送るため、宿屋を出て行く。
落ち込んだ様子の女の子だが、わがままを言うこともなく素直に道案内をする。
「そうだ、まだ聞いてなかったわね。貴女の名前は?」
「あ、ごめんなさい。わたくしヒューケラと申します」
「それでヒューケラは、なんであんな所に一人で居たの? スラムが近い場所だから、貴女みたいな子が一人で居たら危険なのは分かるでしょ」
「フェア…レラさんを探してたんです」
「レラを? フェアリーは珍しいから、捕まえるつもりだったの?」
「ち、違います。見つけたのはたまたま偶然で。コンパクトを見てたら、後ろを通ったレラさんを見つけて、その…友達になってくれないかなって……」
もごもごと口ごもり、段々と小声になるヒューケラ。
「はぁ……(反省してるみたいだし、私達が街を出るまでレラのことは黙っててもらえばいいでしょ。どうせもう会うことないんだから)」
結構な時間を歩いて着いた先は、二等地にある一軒の高級宿屋。
「宿屋……この街に住んでるんじゃないのね」
「…はい」
「あとは一人で戻れるわね」
「よければお部屋でお茶でも」
「遠慮しておくわ。こんな方まで来るとは思ってなかったから、早く戻らないと暗くなっちゃう。戻ったらカズにギルドであった事を聞かないと」
ヒューケラはアレナリアにまだ居てほしく、今日の出来事を振り返る。
「……ぁ」
「もう一人であんな所をうろつかないようにね」
「待ってアレナリアお姉さま──」
ヒューケラを送り届けたアレナリアは、急いで宿屋に戻る。
飲食店が建ち並ぶ街の中央付近に戻って来た頃には、多くの観光客でごった返していた。
それもそのはず、日が暮れると同時にトンネルの門は閉じられ、皆お腹を満たしに来たのだから。
時刻はちょうど夕食時、どの飲食店の前にも行列が出来ている。
漂う美味しそうな匂いが鼻腔くすぐり、アレナリアのお腹も騒ぎ始める。
混み合う大通りを抜けて宿屋方面への路地に入ると、アレナリアの足は早くなった。
「あ、やっと戻ってきた」
「お帰りなさい。アレナリアさん」
「ただいま」
「何してたの? あちしもうお腹がペコペコなんだけど」
「ごめんなさい。思ったよりヒューケラが遠くから来てたものだから」
「こんなに待たされたんじゃ、アレナリアのホタテ貝の半分は、あちしのになるかな」
「自分の分だけにしなさい。また具合が悪くなるわよ。それにレラがあんまりお腹空いたって言うから、カズさん外でホタテ貝を焼いてくれてるじゃない」
ビワの告発により、アレナリアがレラを怒った。
「何が待たされたよ。レラだけ先に食べる気でいたじゃないの。私だってお腹空いてるんだから!」
「まあまあ、そう言わないで。先に食べてないんだから。それに待ってたのは確かなんだから。ね、ね」
「まったく、もう」
「にっちっち」
笑って誤魔化すレラ。
「お待たせ。焼けたぞ」
カズがホタテ貝の殻焼きを持ってきた。
「待ってました!」
「三人で先に食べててくれ。まだもう少し焼くのがあるから」
「待ってレラ。アレナリアさんが戻ってきたんだから、皆で食べましょう」
「えぇー。まだお預けなの」
「いいよビワ。アレナリアもお腹す空いてるだろ」
「ええ。でも良いの」
「せっかく焼きたてでアツアツなのに、冷めちゃうから」
「そう、なら先にいただきましょう。ビワも」
「あ…はい。お先にいただきます」
「ああ」
三人に先に食べるように言い、カズは追加の焼きホタテと、焼きデザートクラブを用意しに宿屋の裏手に戻った。
明日からはまた馬車で寝泊まりだからと、今夜の夕食は少し豪華にした。
ただしお酒は、翌日に残らない程度にして。
部屋に戻ったカズは、レラとビワに何があったのかを聞いた。
「積み重なってたごろつきにガキだと言われた結果がああか。あの子を助けたのはそのついでと……(見て見ぬふりが出来ないからじゃないのか。まあ、面倒事に巻き込まれないようにしようと、考えたのかも知れないけど)」
「仕返しに来るかな?」
「……明日宿を出る時に宿代を多く払って、そのお金で冒険者でも雇ってもらおう」
「明日出発するんですか?」
「目的だった三人の服も買って、今日食材も買い足してきたから。もう留まる理由もないしね」
「あちしはいいよ。観光もしてし、でっかい穴も見たから。ビワは?」
「私も大丈夫です」
「俺は明日の朝もう一度ギルドに行って、次の街までの配達依頼がないか見てくる。サブマスにも来てくれって言われてるし」
「は!? なんでサブマスと会ってるの?」
バタンと部屋の扉が開き、アレナリアが入ってくるなり疑問をカズに投げ掛けた。
気になることがあったが、とりあえずアレナリアの質問に答える。
「キ町から持ってきた書類にグリズさんの手紙があったらしくて、ギルドに行ったら急にイパチェスさんにサブマスの所に連れて行かれたんだ」
「イパチェスって誰?」
「一昨日ギルドに行った時に、書類を渡した受付のせっかちな人。いきなりさぁ『なんで昨日来なかったの!』って言われて、そのまま付いて来いって」
「で、サブマスはなんの用だったの?」
「グリズさんが護衛の依頼を受けさせて、トンネルを通って行けるように連絡してくれたみたいなんだ。でもパーティーランクが低いから無理だろけど」
「勝手にパーティー名を付けておきながら、役に立たないわね」
「まあそう言うなよ。グリズさんだって気を使ってくれたんだから。ところでさ」
「なに?」
「そのなんだ、なんでさっきの女の子がここに居るの?」
部屋に入ってきてからも、ず~っとアレナリアの腕に抱き付いてる女の子。
「これ以上店先で騒がれると迷惑だって言われたからか、仕方なく連れてきたの。この子全然放れてくれないのよ」
「力ずくで放り出してやればいいじゃん」
「助けてあげたのに、その言い方はあんまりよレラ」
「助かったんだから、とっとと家に帰ればいいんだよ。ビワみたいに甘やかしたら、余計に付け上がる。あちしが引き剥がしてやる」
レラは立ち上り、つかつかと女の子に歩み寄る。
現在もイリュージョンで小人の姿に見えているので、飛ぶことはしない。
女の子の正面に立ち、指をさして一言、二言。
「助けてもらったのに、迷惑を掛けるのなんて最低。アレナリアからその手を離して出て行きなさい」
女の子が手を緩め、アレナリアの顔をまじまじと見る。
「アレナリアというお名前なんですね。お姉さま!」
「ぷっ……アレナリアがお姉さまだって」
お姉さまという言葉に吹き出すレラ、女の子はごそごそとポシェットからコンパクトを取り出し、それを開き中の鏡を通してレラを見る。
「やっぱりあなたフェアリーね! あの時見たのは間違いじゃなかった!」
フェアリーという言葉を聞いて、カズとアレナリアは女の子を警戒する。
「何言ってるの? レラは小人族よ(イリュージョンは掛けてあるのになんで?)」
アレナリアがすぐにフォローに入る。
「わかってます。フェアリーはとても珍しく狙われてしまうのは。だから魔法で姿を変えてるんですね。さすがですお姉さま!」
更に警戒を強めるカズは、女の子の持つコンパクトを《鑑定》する。
【キルケのコンパクト】『特級・アーティファクト』
・ この鏡を通してして見たものの真偽を暴く。
・ 使用者の魔力が低い場合それは不鮮明となる。
・ 光属性と聖属性を同時使用することで、闇属性の効果を打ち消し隠された真実を見抜くことが可能、だがそれ相応の魔力が必要となる。
「レラがフェアリーだってことを誰かに話した?」
カズが質問するが、女の子は黙って答えようとしない。
「聞いてるでしょ。どうなのか答えなさい」
「はい。わかりましたお姉さま! この事は誰にも言ってないです」
手のひらを返すように、アレナリアの問には素直に答える。
「ねぇねぇカズ、あれ何?」
レラがカズの側に寄り小声で、女の子が取り出したコンパクトについて聞いた。
カズもレラだけに聞こえるように小声で話す。
「どうもあれの鏡を通して見ることで、アレナリアが掛けたイリュージョンを見破れるらしい」
「ええぇー! あんな子供が持ってる物で簡単に見破られたら、あちし狙われちゃうじゃん」
驚いて声の音量を上げるレラ。
「これが何かわかったんですか?」
「それであちしがフェアリーだって分かったんでしょ。なんなのそれ」
「確かにわたくしはこれでレラさんがフェアリーだと気付きました。でもコンパクトが何かまでは教えられません」
「じゃあいっこ聞いていい?」
「ええ、構いませんわ」
「帝国では、そういったの誰でも持ってるの?」
「わたくしも詳しくは知りませんが、同じ物はないと思います」
「そう(ならこの子を何とかすれば、あちしの自由を妨げるものはない)」
レラはカズの正面に回り込み女の子に背を向け、表情と手を動かして、あのアイテムを壊せとジェスチャーで伝える。
なんとなく言いたいことが分かったカズだが、いい大人が女の子の持つ物を取り上げて、それを壊すことなんて出来ないと、レラの目の前で指を交差させて罰点を作る。
「何をこそこそとしてるんですか? 安心してください。誰にも言いませんから。その代わり街に居る間は、わたくしと過ごしてください。こんなボロ屋より、もっと良いお部屋を用意しますから」
「悪いけ─」
「貴方には聞いていません!」
カズが話し掛けようとすると、急に怒って怒鳴る。
「─ど……(なんなんだ、このガキんちょは!)」
初対面相手にこの態度は、さすがにイラっとするカズ。
話してる間も、女の子はアレナリアか離れようとしない。
「ならあちしが言ってあげる。あちし達は明日この街を出るの。だからもうお別れなの」
「え! そうなんですか? お姉さま」
「え……あ、まぁね(私、聞いてない)」
「お姉さまが驚いてますわ。嘘なんですか?」
「本当。あんたがアレナリアを放さないから、伝えられなかったの。そうでしょカズ」
「そ、そう。元々二、三日で出発する予定だったから」
言葉に詰まりショックを受ける女の子。
それを見たアレナリアが、優しく声を掛ける。
「分かったでしょ。さぁ帰りましょう。家まで送ってあげるから」
「はい……」
とても残念そうに項垂れる女の子。
「ちょっと行って来るわ」
「分かった。気を付けて」
アレナリアはしがみついたままの女の子を家まで送るため、宿屋を出て行く。
落ち込んだ様子の女の子だが、わがままを言うこともなく素直に道案内をする。
「そうだ、まだ聞いてなかったわね。貴女の名前は?」
「あ、ごめんなさい。わたくしヒューケラと申します」
「それでヒューケラは、なんであんな所に一人で居たの? スラムが近い場所だから、貴女みたいな子が一人で居たら危険なのは分かるでしょ」
「フェア…レラさんを探してたんです」
「レラを? フェアリーは珍しいから、捕まえるつもりだったの?」
「ち、違います。見つけたのはたまたま偶然で。コンパクトを見てたら、後ろを通ったレラさんを見つけて、その…友達になってくれないかなって……」
もごもごと口ごもり、段々と小声になるヒューケラ。
「はぁ……(反省してるみたいだし、私達が街を出るまでレラのことは黙っててもらえばいいでしょ。どうせもう会うことないんだから)」
結構な時間を歩いて着いた先は、二等地にある一軒の高級宿屋。
「宿屋……この街に住んでるんじゃないのね」
「…はい」
「あとは一人で戻れるわね」
「よければお部屋でお茶でも」
「遠慮しておくわ。こんな方まで来るとは思ってなかったから、早く戻らないと暗くなっちゃう。戻ったらカズにギルドであった事を聞かないと」
ヒューケラはアレナリアにまだ居てほしく、今日の出来事を振り返る。
「……ぁ」
「もう一人であんな所をうろつかないようにね」
「待ってアレナリアお姉さま──」
ヒューケラを送り届けたアレナリアは、急いで宿屋に戻る。
飲食店が建ち並ぶ街の中央付近に戻って来た頃には、多くの観光客でごった返していた。
それもそのはず、日が暮れると同時にトンネルの門は閉じられ、皆お腹を満たしに来たのだから。
時刻はちょうど夕食時、どの飲食店の前にも行列が出来ている。
漂う美味しそうな匂いが鼻腔くすぐり、アレナリアのお腹も騒ぎ始める。
混み合う大通りを抜けて宿屋方面への路地に入ると、アレナリアの足は早くなった。
「あ、やっと戻ってきた」
「お帰りなさい。アレナリアさん」
「ただいま」
「何してたの? あちしもうお腹がペコペコなんだけど」
「ごめんなさい。思ったよりヒューケラが遠くから来てたものだから」
「こんなに待たされたんじゃ、アレナリアのホタテ貝の半分は、あちしのになるかな」
「自分の分だけにしなさい。また具合が悪くなるわよ。それにレラがあんまりお腹空いたって言うから、カズさん外でホタテ貝を焼いてくれてるじゃない」
ビワの告発により、アレナリアがレラを怒った。
「何が待たされたよ。レラだけ先に食べる気でいたじゃないの。私だってお腹空いてるんだから!」
「まあまあ、そう言わないで。先に食べてないんだから。それに待ってたのは確かなんだから。ね、ね」
「まったく、もう」
「にっちっち」
笑って誤魔化すレラ。
「お待たせ。焼けたぞ」
カズがホタテ貝の殻焼きを持ってきた。
「待ってました!」
「三人で先に食べててくれ。まだもう少し焼くのがあるから」
「待ってレラ。アレナリアさんが戻ってきたんだから、皆で食べましょう」
「えぇー。まだお預けなの」
「いいよビワ。アレナリアもお腹す空いてるだろ」
「ええ。でも良いの」
「せっかく焼きたてでアツアツなのに、冷めちゃうから」
「そう、なら先にいただきましょう。ビワも」
「あ…はい。お先にいただきます」
「ああ」
三人に先に食べるように言い、カズは追加の焼きホタテと、焼きデザートクラブを用意しに宿屋の裏手に戻った。
明日からはまた馬車で寝泊まりだからと、今夜の夕食は少し豪華にした。
ただしお酒は、翌日に残らない程度にして。
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