人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
367 / 935
第四部 異世界旅行 2 トカ国

352 トンネルの抜けた先

 上下の裾がボロボロになった半袖の服とロングパンツに、使い古した年季のあるマントをまとう女性。
 カズの隣に来るなり背中を反って背伸びをして胸を張り出す。
 足を組んで体に溜まった疲れを体外に出すように、ゆっくりと大きく一呼吸。

「ぐはあぁー」 

 続いて首や手足の関節をポキポキと鳴らす。

「いやぁ~助かった。さっきの場所まで歩いて来たんだが、行くも戻るも面倒になって、どうしたもんかと思ってたところだったんだ」

「そうだったんですか(なんで歩いて来たの?)」

「ああ。アタシを貧乏人呼ばわりして、おちょくってきたバカを気絶一眠りさせてやったのを見てた連中が、アタシを避けてよぉ、頼んでも馬車の乗せてくれねぇんだ」

「次の街までなら構いませんが、一応護衛として来ているので穏便にお願いします(そりゃそうだろ。俺も断りたかった)」

「分かってるって。そうそう、さっきは手助けしてくれたんだろ」

「余計な事をしましたかね。俺が何もしなくても、貴女なら大丈夫そうでしたけど」

「まあな。あの程度の連中なら、目を閉じていても相手出来たさ。あー…か、か」

「カズです」

「そうカズだな。アタシはレオラだ」

 赤い髪で男勝りの女性は『レオラ』と名乗った。

「でだ、カズが武器を持った二人を片付けたからあの程度ですんだんだ。アタシだったら、腕の五本や六本バキバキに折ってやったぜ。あははは!」

 レオラの本気な言動に、口元が引きつりそうになるカズ。

「は…はは……(こわっ! 二人合わせても腕は四本しかないんですけど、どれだけ痛め付けるつもりだったんだ)」

 暫しの沈黙が流れ、三ヶ所目の休憩場所を過ぎた頃、寝ていたビワが目を覚ました。
 寝ぼけ眼に入ってきた見慣れぬ赤い髪の人物に、ビワは少しとまどう。

「お! 起きたか」

「あ…はい……え? あの、どちら様ですか?」

 レオラはカズの横からビワの近くに移る。

「レオラだ。途中の休憩所でちょいと知り合ってよ、足がなかったもんで乗せてもらってる」

「そうなんですか? 私、寝てしまっていて。すみません」

 見ず知らずの人に寝顔を見られ、恥ずかしがるビワ。

「構わねぇさ。急に乗り込んだアタシが寝てるあんたを起こしたら、カズに怒られてたからよ。まだ寝てたって構わないぜ」

「怒るなんて言ってないですよ。起こさないでやってくれと言っただけです。そういうことだから、ビワはまだ寝てて良いよ」

「いえ、もう大丈夫です。馬車の手綱は私が。カズさんは休んでください」

「あと小一時間もすればトンネルを抜けるだろうからいいよ」

「優しいじゃねぇか。二人は夫婦か? なんならアタシが手綱を握っててやるから、二人はそっちで一発やってるか?」

「ふ、夫婦じゃありません(初対面なのに、女が一発とか言うか)」

 眠気が一気に覚め、また赤面するビワ。

「なんだ違うのか」

「違います。それに他に連れも居ますから。今は前の馬車に乗ってますが(急に何をぶち込んできてくれてんだ)」

「ふ~ん……腕にも首にもそれらしきのを付けてねぇから、性奴隷ってんでもなさそうだな」

「違います! 旅をする仲間です。一応冒険者ギルドでパーティー登録もしてあります。だからビワをそんな風に言わないでもらいたい!」

 ビワを性奴隷と言うレオラに、カズは声を上げて怒る。

「すまんすまん。男ってのは、大抵がそういった連中だと思っちまってよ。さっきの連中もそうだったろ」

「さっきの連中はそうだったかも知れませんが、俺の大事な仲間を、そういう目で見ないでください(そう思っても口には出さないだろ)」

「だから悪りいって。すまねぇな。えっとビワ」

「…はい。大丈夫…です」

 初対面から苦手意識を持つビワは、レオラから距離を取り、馬車を操作するカズの後ろに移動する。
 旅をして人に接するのに慣れてきていたが、ぐいぐいと来る人は同性でもやはり苦手。
 レラだったら平気で好き勝手に言い返すだろう、ただしカズの後ろに隠れて。

「そこだと酔うか知れないから、こっちに座ると良いよ」

 人見知りするビワを、自分の横に来るようにカズは誘う。

「寝起きで馬車酔いはキツいだろ。カズの言うように、前に座っとけ。代わりにアタシが横にならせてもらうからよ」

 ゆっくりと頷き、ビワはカズの横に座る。

「乗せてもらっておきながら、寝かせてもらってすまねぇな」

「依頼者に言われては断れないですから」

「言われなけば断ったってか。アハハっ! そうだよな。好き好んで、こんな女なんか乗せねぇわ。邪魔かも知れねぇが、とりあえず次の街まで頼むぜ」

「ええ、着いたら起こしますから、どうぞ寝ててください(その方が静かだから)」

「なら遠慮なく、ちょっくら寝させてもらか。枕と毛布これ借りるぜ」

 ついさっきまでビワが使っていた枕と毛布を使用し、レオラは仮眠に入る。

「ぁ……」

「ん?」

「い…いえ(私の……)」

 トンネル中間にある休憩場所まで歩いて来ていたレオラの足元はかなり汚れ、なおかつ十数人のゴツい男衆とのケンカで、少なからず衣服にも汚れが。
 旅に出てから愛用してきた自分の枕と毛布が、見ず知らずの女性に使われ汚されてしまうのを、ビワは何も言えず黙って見ていた。
 カズなら魔法で汚れを取り除いて清潔な状態にしてくれるのだろうが、ビワの気持ち的には少し嫌だった。
 レオラが枕と毛布を借りると言ったとき、代わりを用意してくれてもと、ビワは頬を膨らめカズを睨んでしまう。

「ん? どうしたのビワ(なんかスゴく見つめられてる! しかもほっぺた膨らませて、かわいッ。あれ、拗ねてる?)」

「なんでもないですッ!」

 頬を膨らませたままそっぽを向くビワ。

枕と毛布あれのことね。ごめん。ちゃんとクリーンできれいにするから(ビワのこの表情は新鮮だ)」

「ならそれはカズさんが使って。私はカズさんの使うから」

「あ、うん。ビワがそれで良いなら(依頼者が自分から問題起こして、大勢に絡まれたあげくに、がさつな性格の女性を乗せる羽目になるなんて……)」

 一悶着ありながらも一行はトンネルを進み、反対側の出入口に作られた門が見える所までやって来た。
 馬車が通る度に開け閉めをしていたので、少し列が出来ていた。

 一行の荷馬車が列の最後尾に並ぶと、ジョキーは通行書を門の所に居る兵士に提示するついでに、進み具合と風の状態を聞きにいった。
 少しして戻って来ると、ヒューケラに聞いてきた内容を伝え、その後カズにも同じ内容を話した。

 今日は湖からの風が強く、長く門を開けておけず、数台ずつしか通せないのだと。
 しかも前日の突風で落石が起き、街に向かう道の一本が使えなくなり、数十人が大怪我をしたと。
 いつもより混んでいるのは、その影響とのことだ。
 なので現在見えている一つ目の門を過ぎるまで、あと二十分は待つのだと。
 特に急いでいたわけでもないので、一行は順番がくるまで待った。
 兵士に言われたよりも少し早くに順番が回ってきて、一行の馬車三台は一つ目の門を通る。
 一行の馬車以外にも数台の馬車が門を通ると、低く重い音が響き大きな扉が閉められる。
 次は前方に見える外側二つ目の門がゆっくりと開く。
 ブゥォーっと強い風が吹き込むも、後方の門が閉まっているため、ほんの一時的なら事だった。

 長いトンネルを通り抜けた先には、夕日に照らされた『アコヤ街』と、対岸が見えないほど広い湖が視界に飛び込んできた。
 湖から吹き上げる風はとても冷たく、吐く息も白くなる。
 ホタテ街より標高が低いのに、こちらの方がずっと寒い。
 カズはビワに上着を着るように言う。
 寒冷耐性のがある指輪アイテムを付けていても、これはこたえる寒さだ。
 白真の住む雪山と、同じくらいの寒さかも知れない。
感想 91

あなたにおすすめの小説

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)