人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
385 / 912
四章 異世界旅行編 3 セテロン国

369 放置された巣窟 と 惨状

しおりを挟む
 ≪ 三日前 ≫


 カキ街の冒険者ギルドでは、探していた盗品を持ち主に返却する準備をしていた。

「あ、班長。頼まれてた盗品返却の書類出来ましたよ」

「お、ご苦労。こういった武器や装備は、冒険者や国の兵士が持ってなんぼなんだがな。趣味だかは知らんが、金に物を言わせて飾るだけのために買い集めないでもらいたいもんだ」

「きっとお抱えの冒険者にでも持たせようとしたんですよ」

「それなら飾られるよりはましだが、金持ちのすることはわからん」

 返却書類を持ってきたギルドの女性職員と話をするのは、受付職員のまとめ役をする年配の男性職員。
 このギルドでは、受付担当する職員達からは、班長と呼ばれている。

「班長が来て一ヶ月ですか。もう街には慣れましたか?」

「十五年経ったとはいえ、元々はこの街で暮らしてたんだ。何の問題もない」

「そうですか。ところでこの盗品を持って来られた方は誰なんですか?」

「運搬依頼で湖を渡ってきた低ランクパーティーだ。依頼内容と違うから追加報酬を出せと、がめついちびには参った。盗品を持ってなければ、追い出してやったのに」

「冒険者なんてそんなもんですよ。三種類とも盗品が見つかったんだから、良かったじゃないですか」

 思い出して苛立つ班長を宥める女性職員。

「まあそうなんだが、今回は高く付いた。盗品の方はしたかないが、盗賊が使ってた船の方は、持ち主の領主様に高く引き取ってもらわんと」

「冒険者にはギルド職員の辛さがわからないんですよ。だから簡単に追加報酬なんて言うんです。班長なら領主様とうまく交渉出来ますよ。わたし尊敬してますから(はぁ、上司にゴマをするのも大変。本当にどっちががめついのか)」

「ま、まあな」

 女性から尊敬してると言われ、機嫌か良くなる班長。

「あんな連中のことを言ってもしょうがない。もうとっくに街を出て、旧街道を行ってるだろ」

「旧街道……?」

 女性職員が不思議そうな顔をした。

「旧街道を知らないのかね? 湖沿いを南行った川沿いの道だ。広くはないがね」

「旧街道は知ってますが、今は使えないですよ」

「使えない?」

「はい。何時出来たのかわたしは知りませんが、水路に流す水の量が多過ぎて川の水量が減ってしまい、下流の村は住めなったと聞いてます」

「何時頃の話だ?」

「わたしもギルドで働くようになって知ったので、詳しくは(今知らないって言ったでしょ。班長も年だから、きっとボケてるのね」

「そうか、そんな事になってたとは。がめつかったとはいえ、あのパーティーに悪いことしたか」

「旧街道と水路のどちらに行ったとしても、先はに進めないので引き返して他の道を探してるか、こちらに戻って来ますよ」

「そうだな。ギルドに来たら詫びてやればいいか。しかし水路があるのに、先には行けないのか?」

「班長それも知りませんの? 水路の先は谷があって進めませんよ」

「そうなのか」

「そうですよ。しっかりしてください(その先はどうなってるか、わたしも知らないんだけど)」

「一度周辺の状況を調べておいた方がい…」

「あ、班長。そろそろお客様が来る時間ですよ」

「何! もうそんな時間か。今から来る金持ちには、おべっかを使わないとならないから嫌なんだ。まったく嫌だ嫌だ、ああ腰が痛い」

「根を詰め過ぎないでくださいね(嫌ならもう辞めればいいのに。あ、でもそうすると、面倒なお金持ちの相手をわたし達がしないといけないのよね。ならこのまま居てもらってもいいかしら)」

 班長にねぎらいの言葉を掛けるも、本心ではうやまおうともしない女性職員。
 この時、旧街道を外れ進んでいるカズ達は、本来なら諦めて引き返す谷に石橋を架け渡っていた。


 ≪ そして時は戻り現在 ≫


 岩と石に囲まれた迷路から広くなった場所に出た一行は、馬車から降り周囲を見渡す。
 日が傾き始めてから〈ライト〉を使い出した光の玉が照らしたのは幾つもの洞穴。
 この場所が岩場の洞穴を利用して作られた住居だった所だと分かった。
 ただそれだけなら、ひっそりと暮らす住人だったのではと思えたが、周囲を見て回ることで、そうではないとすぐに分かった。
 幾つかの洞穴には鉄格子が取り付けられ、その中には小さな白骨死体が。

「ここも長い間使われてないみたいね。それにどう見てもこれは……」

「あ…あれって、子供の……」

 あまりの惨状に震えるビワ。
 何かを感じたのか、一番に飛び出して行きそうなレラも、今回は三人と一緒に行動していた。

「カズ……あそこ」

 アレナリアが指差す所には、またも白骨死体があった。
 それも一人や二人なんてものではない、狭い檻の中に鎖に繋がれた六人が重なるようにして……。
 同じ様な所が他にもあり、中にはミイラ化してる死体も。
 鉄格子がない洞穴には、朽ちた寝具や酒ビンが転がり、錆び付き変色した枷や鎖が、岩壁に打ち込まれた杭にぶら下がっていた。
 子供らしき骨の中には、黒くまだら模様がついたものも。

「ぅ……」

むごいわね」

 ビワは口元を押さえ涙ぐみ、アレナリアは顔を歪ませ、レラはカズの腕にしがみつく。

「あちしより若い小さい子供のばっかり……」

「レラとビワはもう見ない方がいいわ。馬車に戻りましょう」

 アレナリアは二人を気遣う。

「大丈夫…です。このままにするのは…か、かわいそう」

「そうね。でも岩場ここじゃ埋めてあげられないわ」

「火葬してとむらってあげたては…どうですか」

「ここでするなら、それしかないわね。周囲の魔素マナも淀んでるし、これ以上放置すると……よく今まで嫌なものが発生しなかったわね。カズもそう思うでしょ」

「火葬…弔う…淀み……」

「どうしたのカズ?」

 三人のやり取りを聞いていたカズは、急に黙り考え込む。

「ね、ねぇカズ。アレナリアが聞いてるよ。急に独り言なんて言わないでよ。なんかあちし怖いよ」

 珍しく怯えるレラ。

「あ、ごめんちょっと考え事してた」

「こんな時に考え事なんてしないでよ!」

 レラは大きな声を出し、怖さを吹き飛ばそうとする。

「カズ、しっかりしてよ。先ずはビワの体調が気掛かりだから、一度馬車に戻りましょう」

「そうだな。ごめんビワ」

 四人は一旦馬車に戻り、青ざめるビワを横に寝かせる。

「一通り調べながら、亡骸は俺が集めて灰になるまで火葬するよ。アレナリアとレラは、ビワの様子を見てて」

「大丈夫カズ? あんなの見て気分悪くならない?」

「あぁ、大丈夫(でもないけど。ここは俺一人でやった方が)」 

「カズ…さん。みんな一緒に……」

「寂しくないようにだね。分かってる」

「ありが…とう……」

「ビワ寝ちゃった」

「今はそれが良いわ。レラも顔色悪いわよ。ビワと一緒に横になってなさい」

「そうする」

 寝てるビワの隣で横になるレラ。
 カズは一人馬車を離れ、鉄格子を壊して子供達の骨を回収していく。
 黒くまだらになった骨は、回収する前に《分析》して調べた。


黒色斑点こくしょくはんてん病』

 ・初期症状は体のどこかに、黒いまだら模様が現れる。主に草木を触る手に多い。
 ・病状の進行は遅く命の危険は少ないが、骨にまで感染すると長くは持たない。
 ・皮膚までなら痛みはないが、骨に感染してしまうと激痛が襲う。
 ・黒色斑点こくしょくはんてん病は森に住む生き物がかかりやすく、決して珍しい病気ではない。
 ・治療には『白色はくしょくの苔』を煎じた薬を飲むのが有効。


 治療されずに放置されたのか……他にも同じ様な黒い斑の骨があったな。
 セテロンにはこんな悲惨な場所ばかりじゃないだろうな。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...