人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
461 / 912
五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

444 小さなギルドの討伐依頼

しおりを挟む
 アレナリアが先頭となってギルドに入り、ビワとレラを連れて受付に。
 カズはギルドに入る前に【アイテムボックス】から認識阻害の効果がある外套を出して羽織り中へ。
 外套はオリーブ王国の冒険者ギルドで使っていたのとほぼ同じ、効果としては中の下、それほど強くはない。
 その場に居ても気に止められない程度の効果でちょうど良い。
 もちろん目立つような行動をすれば、認識阻害の効果は意味をなさなくなる。

 アレナリアが受付で話をしている間に、カズはギルドに来ている人や出されている依頼などを見て待つ。
 建物内にはギルド職員が三人と、十代半ばくらいの若い冒険者らしき三人組と、男女二人が居た。
 エルフが珍しいのか、ちらちらとアレナリアを見ていた。
 掲示板に貼られている依頼書は、Eランク以下の雑用ばかりで、Dランクの依頼は少なく、Cランク以上の依頼は一つもない。
 一番難易度の高い依頼でも、Dランクの運搬の手伝い。
 内容は二日から三日置きに到着する、生活用品や食料を積んだ魔導列車から荷物を下ろし、倉庫や店までの運搬。
 町に必要な物が定期的に届くので、他の依頼に比べて報酬は少し良い。

 カズが掲示板を見ていたら、男三人の若い冒険者が受付で依頼書を受け取り、ギルドを出て行った。
 男女二人の若い冒険者も同じく、受付に持っている依頼書を渡し、依頼を受けていた。
 何の変哲もない、ありふれたギルドの光景に、自分達の情報は伝わってないのだとカズは安堵する。
 引き続き掲示板を見ていると、ビワとレラがカズの所に来る。
 アレナリアは受付の職員とまだ話をしていた。

「依頼は決めてきた?」

「それが……」

 ビワがアレナリア居る受付を見ると、カズとレラも一緒になって見た。

「あ、アレナリア来たよ」

 アレナリアが受付の職員と話を終え、カズ達の居る所に来る。

「どうしたんだ?」

「ちょっと依頼を頼まれちゃったのよ」

「元々ビワとレラのギルドカードを更新する目的で来たんだから、別に良いじゃないか」

「それがパーティーとしての依頼になっちゃったの。もちろんそれでも二人の期限は更新されるわ」

「なんでそうなったの?」

 アレナリアは職員との会話をカズに話す。
 ギルドカードを提示したら、Bランクならば討伐の依頼を受けてとくれと、職員が頼んできた。
 通常なら支部長が討伐してくれるのだが、現在このエイト・タウン支部を管理してるクラフトのギルドに出掛けていて、討伐出来る者がいない。
 自分達職員でも討伐出来なくはないが、主に事務仕事をしているので戦闘経験が少なく、三人で行く必要になってしまう。
 情報通りのモンスターなら討伐出来るはずだが、ギルドの仕事が止まってしまうので、行く事は出来ない。
 支部長が戻るのは三、四日先になり、町に居る冒険者はEランクばかりの若者しか居らず困っている。
 場合によってはクラフトのギルドに連絡をして、支部長に早く戻ってもらうか、冒険者の要請をするつもりだったが、そこにBランクのアレナリア冒険者が来たのでお願いした。

 内容は町の外壁外側に現れた釘蟻スパイクアントの討伐。
 その名の通り脚先が釘のように硬く尖ったありで、大きさは平均30センチ、群れの規模は最少で二十体、最大で五百体程になる。
 スパイクアント一体はそれ程強くはないが、群れの規模によって討伐ランクは変わり、調査した結果、今回は現れた群れは少なく、三十体程なのでDランクだと言う。
 動きは俊敏ではないが体は硬く、尖った脚には返しが付いている個体も存在するので注意とのこと。
 本来の討伐依頼を設定するならDランクでもいいのだが、実力の乏しい若い冒険者が受けようとしてしまうので、今回はCランクの討伐依頼として設定したのだと。

 一つギルドが懸念しているのは、興味本位でモンスターを見に行ったり、実力を試すのだと討伐を試みる若い冒険者が出てくるかも知れないと。
 なので出来るだけ早く、スパイクアントをなんとかしたいとの事だった。
 アレナリアは町に常駐する兵士に頼めばと、ギルド職員に話したが、外壁が破壊されて町に被害が及ぶ訳でなければ、兵士は動かないのだと。
 それにモンスター討伐は冒険者の仕事だと言ってきたらしい。

「住宅地なんだから戦闘が出来る人は少ないだろ。被害が出る前に動くべきじゃないのか? モンスターを確認してるなら」

「まったく頭の固い兵士ね。それにギルドも人員不足で対処出来ないなんて。頑丈な外壁かべに守られてるから仕方がないのかしら? まったく駄目ね」

「そういう意見は、職員に直接言ってやれば?」

「討伐した後にでもね。口だけで実際は討伐出来ませんでした。なんて、説得力ないでしょ」

「結局受けて来たのか(討伐依頼はいいんだが、職員が余計なフラグ立ててんだよなぁ)」

「仕方ないでしょ。しつこかったんだから。でもパーティー名を教えても知らない様子だったから、カズが心配してた事はないわ」

「そうか(ここの支部長が明日の出発前に戻って来なければの話だが。これじゃ、まるで逃亡者だ)」

 ビワとレラのギルドカードを更新する為の簡単な雑用依頼を受けて終わらせるはずがったのに、パーティーとしてモンスター討伐を受ける羽目になった。
 時間は今日一日しかないので、職員から外壁を出る許可証を受け取ると、早速スパイクアントの討伐に向かった。

 歩いて十五分程の場所に、外壁の外側を定期的に調査するのに作られた扉があり、近くに兵士が二人が居た。
 アレナリアは渡された許可証を兵士に渡し、四人は外壁に作られた扉を出る。
 四人が外壁を出ると、安全の為に扉はすぐに閉められ施錠された。
 討伐が終わったら外から声を掛ければ、確認の後に解錠してれるとの事だった。

「さて、先ずはスパイクアントを見つけないと。それほど大きくない町でも、外壁沿いを調べるとしても、結構時間掛かるわね」

「それは俺が調べる(複数の魔力反応があるからそこだとは思うが)」

 カズは【マップ】を大きく表示させて、エイト・タウン周辺を対象に〈サーチ〉を使いモンスターを探す。
 モンスター反応はエイト・タウンの外壁近くに二ヶ所。
 四人が出た外壁に作られ扉の数十メートルと近い場所に、数多くの反応があった。

「ちょっと行った所に反応があるな」

「あっちね。微小だけど多くの魔力反応があるわ」

「気付いたのか?」

「一応調べてみたの。カズには敵わないけど。冒険者として活動してた頃の感覚を取り戻そうと思って、魔力感知をね(バイアステッチでは失敗しちゃったから)」

「そうか。でも、無理するなよ(バイアステッチでの事を気にし過ぎて、空回りしそうだからな)」

「え、あ…うん。ありがとう(頼ってもらったのに、期待に答えられなくて迷惑かけたのに……)」

 にやける顔を見られないように、カズから顔を背けて、モンスター反応のある方にアレナリアは先一人で歩きだす。
 外壁に沿って歩き出し、モンスターの反応がある場所の近くに来るも何も居ない。
 ただ地面には幾つかの穴が空いていた。

「どうやら地面の下に居るみたいね。刺激を与えれば出て来るかしら?」

「やってみてもいいが、上にも注意だアレナリア」

「え?」

 アレナリアは視線を地面の穴から、外壁の上を見る。
 するとそこには三体のスパイクアントが、外壁に脚を突き刺して張り付き、下を監視していた。
 四人を敵と認識したスパイクアントは、外壁に突き刺した脚を抜き、落下してくる。

「落ちて来るぞ。レラはビワと一緒に下がって」

 レラを抱き抱えたビワが、数メートル後退する。
 落下してくるスパイクアントは、尖った六本の脚をカズとアレナリアに向けてくる。

「私がやるからカズも下がってて」

「大丈夫だと思うが、油断するなよ」

「わかってるわ〈アイスショット〉」

 アレナリアが放った氷の霰弾は、落下してくるスパイクアントに命中し、アッサリと仕留める。
 地面に落ち体液を流して動かなくなると、穴からわさわさと多くのスパイクアントが出て来る。
 二十体以上ものスパイクアントが、仲間を倒したアレナリアに目掛けて走り出す、

「ヒイィ! あれ見てると、ぞわぞわってするッ」

 群れるスパイクアントを見たレラは、鳥肌を立てて顔を引きつらせると、目を背けた。
 ビワはわさわさと群れる虫を見ても、この程度なら平気らしい。

「本当は二人にもギルドカード更新するのに、少しは討伐に手を貸して欲しいのだけど」

「きしょいきしょい! あちし無理ッ!」

「わ…私もモンスターの討伐なんて……」

「う~ん……一体なら二人でなんとかなるかしら?」

 アレナリアの独り言が聞こえたビワと、抱えられているレラは首を横に振る。

「レラはトレントの森で集まってきたヒルを見ても、同じ様な反応してたっけな」

「そういえばそうだったわね」

「パーティーで受けた依頼だ。だから二人のギルドカードも更新されるわけだから、二人が倒さなくてもいいだろ」

「ええ(カズはやっぱり甘いわ。でもそれが良い)」

「ならいいじゃないか。次の時には、二人に出来る依頼を受けてもらえば」

「そうだけど、パーティーの依頼だけでランクを上げたら、簡単な雑用依頼を受けずらくなるわよ(二人のランクは、そうそう上がらないでしょうけど)」

「二人は冒険者として活動するんじゃなくて、身分証として登録してるだけだから、更新出来ればいいんだよ」

「Cランクまで上がれば更新日が伸びるんどけど、仕方ないわね。今まで通り更新していきましょう」

 アレナリアは会話しながら攻撃を繰り返し、次々とスパイクアントを撃破して、残り数体まで減らしていた。

「地中に隠れ残ってないわよね?」

「反応はない。それで全部だ」

「はい、これで終わり〈アイスブレット〉」

 残ったスパイクアントも、氷塊を高速で飛ばして倒し討伐は終了。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

処理中です...