人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
465 / 912
五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

448 覚悟 と期限 と 正念場

しおりを挟む
 顔には届かないからと、カズの腹部目掛けて力を込めた拳を繰り出し、自分が悪いんだと思っているカズは、素直に痛みを受け入れることにした。

 そしてアレナリアの拳は深くカズの腹部にり込み、カズは膝から崩れ落ち──なんて事になり、ビワが介抱したりでもしたら、完全に自分の八つ当たりになってしまうからと、力を込めた拳を引っ込めアレナリアは我慢した。

「期限…そう、せめて期限を決めて。レラの故郷探しと、ビワの記憶と生まれた場所探しの両方が終わるまで待ってたら、いつになるか。それに後回しにしてるけど、カズだって元の世界に戻る方法を探してるんでしょ!」

 アレナリアはビシッと右手の人差し指をカズに向けて突き立てる。

「確かに戻りたい自分もいるが、諦めてる自分もいる。どちらかと言えば元の世界は……」

 ふと、昔の事を思い返すカズ。

「……今は、こちらの世界で暮らそうという考えの方が大きくなってる。ただ戻る方法がわかって実行出来るとしたら、その考えも変わってしまうかも知れない」

 今まで先送りにしてきた皺寄しわよせだと真摯しんしに受け、カズは誤魔化そうとせず真面目に答える。
 この世界に来てから四年近くが経過し、自分の行く末について、今の考えを。

「だから期限は、この帝国に居る間にさせてくれないか?」

「バイアステッチでの事があったとはいえ、帝国に入ってから既に五ヶ月は経ってる。帝都での情報収集に最低限でも半年以上……それを考えると長い」

「長い……か」

「ええ。帝国に居る間では長いわ。だから期限はそうね……一年」

「一年……わかった」

「このあと寄り道して、帝都に着くのが遅くなったから期限を延ばして。なんて言わせないわよ」

「り、了解……です」

「ビワとレラは、カズに何か言いたいことある?」

「私も…それで…大丈夫…です」

「あちし? あちしはどっちでも良いよ。故郷が見つかっても、戻るとは限らないもん。勝手に居なくなったから追放処分になってるか、死んだと思われてるかもだし」

「だったらレラの故郷探しはしなくていいんじゃない?」

「いやいや。目的の一つなんだから、急に無くさないで一応探してよ」

「一応なのね」

 心底アレナリアはレラの故郷を探さなくてもいいのではと思った。

「一応じゃない。おまけみたいに考えないで、ちゃんと探して」

「だったら一応とか言わないこと」

「うい~っす(でも、みんなでいる方が楽しいんだよねぇ)」

 ぐぅ~ぎゅるる~と、二度お腹の鳴る音がし、重苦しかった雰囲気は和らぐ。

「もう夕食の時間過ぎちゃったわね。すぐ食べれる物とお酒を買ってきて。カズ」

「昼間飲んだのにま…」

「口答え出来るの?」

「……はい。買ってきます」

「この街特産のミルク酒ね。果汁入りのとかもあるから買溜めもしておいて」

 反論出来る訳もなく、カズはアレナリアの言うがまま、お酒と夕食を買いに宿屋を出た。
 時間を掛けるとアレナリアを怒らせると思い、急いで買い終えてカズは宿屋に戻った。
 幸いアレナリアの機嫌は損ねてはなかっが、かビワの顔はまだ赤くなったままだった。
 買ってきた夕食とミルク酒を各種テーブルに並べ、少し遅い夕食にした。

 いつもとは逆で買ってきたにも関わらず、アレナリアにお酒を禁止されるカズ。
 もちろん反論しない。
 レラは相も変わらず楽しそうにお酒を飲み、アレナリアはやけ酒のごとくあおり呑む。
 珍しくビワもお酒が進んでいた。
 ミルク酒が飲みやすいのもあるが、先程までのやり取りを考えれば当然かも。

 夕食を取りながらチビチビとお酒飲み始めてから二時間、アレナリアが呑むのを止めようとせず、さっきまでの話を愚痴愚痴と繰り返し、負い目のあるカズは止める事が出来なかった。
 自分も大分飲んでしまったと、ビワがアレナリアを止めに入った。
 これで止めなかったら、あと何時間も呑んでいただろう。
 レラは満腹になったと、三十分程に満足して席を離れた。
 いつもなら酔ったアレナリアの話に付き合っていそうだが、夕方のやり取りを見て満足したのか、とっとと寝てしまった。
 面白がってたレラを思い返し、またぶくぶくに太ってしまえと、カズは思ってしまった。
 この後、自分がどうなるかも知らず。

「ふぅ~飲んで食べたわ。溜まってたのも少しは発散出来たし、これ以上は二日酔いになるから、この辺にしておくわ」

「そう。程々がちょうど良い(と言うも、結構呑んでたから、二日酔いにはなると思うが)」

「さぁ、寝ましょう」

「食べてすぐに寝ると」

「牛になるんだっけ?」

「ああ」

「変なの。でも、今はどうでもいいわ。ほら、カズは真ん中で横になって待ってる」

 隣の狭い寝室に移ると、左右の壁際にそれぞれ置いてあった一人用のベッドがくっつくられていた。

「真ん中?」

「そう。私とビワが着替えたら、隣に寝るからね」

「え? なん…」

「逆らえる立場なの」

 アレナリアの目は座り、断ることが出る雰囲気ではなかった。

「……はい(酔ってるんだ、すぐに寝るだろ)」

 二人が…と言うよりアレナリアが寝たら、長椅子に移ればと考え、二台くっつけたベッドの真ん中でカズは横になる。
 若干合わせた所が凹んでいるが、そこまで気にはならない。

「言い忘れたけど、今夜カズの方から私達に手を出したら、期限を待たずに……だからね。もちろん今夜はここで寝ること。長椅子向こうに移るのは禁止」

「手を出すって? ……その格好ッ!」

 顔を上げて着替えた二人の姿を見て、カズは驚き動揺する。

寝間着これメリアスさんが気を使って用意してくれたの。早々と役に立って良かったわ」

「と…隣…失礼します」

 着替えると言うからパジャマ的な服だと思っていたカズだが、実際は薄い生地で作られたネグリジェのような寝間着を着ていた。
 薄暗い部屋のため、透けて肌が見えるなんて事はない。(ただカズには暗視のスキルがある)
 アレナリアとビワがベッドに横になると、カズの方を向きピッタリと身体をつける。
 下着は着けているようだが、それは下だけ、上は着けてないのが腕に当たる感触で分かる。
 右腕には小さな膨らみと、あばら骨が当たり、左腕は二つの柔らかい膨らみと突起物が腕に。
 言い出したアレナリアと、それを受け入れたビワの二人の早い鼓動がカズに伝わる。
 夕食の買い出しから戻って来た時に、ビワが赤面してたのはこれの事かと、カズは悟った。

 三人の鼓動だけが部屋に響き(実際に響いてる訳ではないが)恥ずかしさからか、興奮しているからなのか、両方かは定かではないが、最初よりも熱が増してるも伝わる。
 だがそれも二十分程すると二人の鼓動は正常に戻り、熱も次第に下がった。
 お酒が多く入っていた事で、二人は早々眠りに着いた。
 カズはベッドを抜け出すことはせず、二人の覚悟を受け入れてそのままの体勢で眠ろうとする。
 本当は長椅子に移りたいが、軽くとはいえ両腕を掴まれているので抜け出すのは厳しい。
 もしアレナリアが起きたらと考えると。
 気持ち的には幸せだが、ここで手を出したら、話し合って決めた意味がない。
 男の本能たけで後先考えず動くほど理性は壊れてない。(この状況で男として行動に出ないのは、ある意味では壊れてるかも知れないが)
 蛇の生殺しならぬ、コロコロ鳥の卵とミルキーウッドの樹液で作った極上プリンを、レラの目の前に置いてのお預け状態。

「俺の腕は何も感じない。俺の腕は何も感じ……(んなわけない!)」

 目を閉じて他のことを考え、両腕から意識を外そうとする。
 少し眠気が差して眠れそうになったところで、アレナリアは膝を曲げてカズの腕を股に挟み込み抱き抱える。
 ビワは寝返りを打ち、カズの左腕にうつ伏せで乗るようなかたちになる。
 カズの左腕はビワの胸の間に挟まれ、顔は真横に。
 当然カズの目は冴えてしまう。
 両腕からなんとか意識を外していたのにも関わらず、強烈な感触がそれを呼び戻した。
 しかも今度は、両腕を完全に押さえ込まれた状態。
 アレナリアは時折もぞもぞと動き体制を変えようとするが、股からは離そうとしない。
 ビワはカズの耳元に悩ましげな寝言と吐息をかける。
 ビワに関しては、寝ている時の方が積極的だった。
 そんな事が何度もあり、明け近くに二人が寝返り離れた事で気持ちが落ち着いた。
 その後、精神的な疲れと眠気で、カズはやっと寝ることが出来た。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...