人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
469 / 912
五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

452 お仕置きのシリピン

しおりを挟む
 小さな書店を見つけ足を止める。
 そこは最初に回った数軒とは違い、しっかりと本を棚に陳列してあり、古書は店の奥に並べてあった。
 店に客は居ないが、年配の店主が一人椅子に座り、本を読んでいるのが見えた。
 カズは店に入り、並べられた本を物色する。
 棚に並べてある本を【マップ】越しに見て、付けて来ている者の行動に注意した。
 表示された色からして敵意はないようだが、それが逆に不気味だった。

 五分程すると、付けて来ていた者が店の中へと入って来た。
 視界の端に入ったのは、頭からスッポリとフード付きの外套マントで姿を隠した人物。
 カズは視線を店の奥に向け、入って来た人物から顔を背けた。
 その人物は迷う事なくカズの後ろまで来て足を止めた。
 やはり殺気もなければ敵意もない。
 すぐ後ろまで近づいて来たので、カズは意を決して振り向こうとしたとき、その人物が声を掛けて来た。

「もうアタシに気付いてるだろ?」

  付けて来た声の主は女性。
 カズはその声に聞き覚えがあった。
 が、それが何処でかは、今一つ思い出せない。


 《 三時間前 》


 カズが一人で出掛けてから一時間程して、三人は宿屋を出て冒険者ギルドに向かった。
 アレナリアの経験上から、ギルドが空くであろう時間帯に着くよう見計らって。
 宿泊している宿屋を出てから二十分程歩き、ギルドに到着する。

 アレナリアの予想に反して、ギルドに来ている冒険者は多かった。
 だが建物内はとても静か。
 その理由はギルド内にも本が大量に置いてあり、皆それを読んでいるからだった。
 一階は受付になっており、二階の壁には棚が多く作られ、本が数百冊は並べてあった。
 棚の上には『獣・モンスター』『鉱石』『植物』『手配書』など、依頼を受ける際に役に立つ本が、分類別に分けて置かれている。
 こういった情報が書かれた本は、ギルド職員に頼んで見せてもらうのだが、ここではギルドカードを持っているだけで、誰でも閲覧出来るようになっていた。
 
 三人は依頼書が貼ってある掲示板を見に行き、カズに言われた内容の依頼があるかを探そうとしたが、依頼書は数枚しか貼ってなかった。
 その理由は掲示板の隅の書かれていた。
 掲示板に貼り出されてる依頼書は二、三日中に来た新しい依頼で、古い依頼書は二階に移動されているらしい。
 三人は二階に上がり『依頼書』と書かれた棚の所に移動すると、依頼書が束ねられたファイルが棚に並べられていた。
 一冊に依頼書が三十枚程じてあり、それが十数冊あった。

「思った以上に多いわね。手分けして探しましょう」

「そうですね」

「また調べもの。あちしもう、本は見なくていい」

「ならそうカズに言っておくわよ。わかっていると思うけど、働かなければ、夕食後のプリンお楽しみは無し」

「はう! ……わかったよぉ。もう」

 面倒臭がるレラを、アレナリアはプリンで釣って手伝わせる。
 すぐに飽きたレラは、周りの冒険者達に目を移し、何を見ているか気になり、こっそりと覗いた。

 三人と同じく、依頼書のファイルを見ている人物が二人。
 足元まである長いコートを着た長身の優男、見た目二十歳前後の新人らしき軽装の細い男性冒険者。
 帝国内で採取可能な鉱石が、イラスト付きで書かれている本を見ているドワーフ。
 手配書が束ねられたファイルを見る、柄の悪そうな三人の男。(この場所を使っているのだから、一応は冒険者なのだろう)
 他には女性ギルド職員の趣味なのだろうか、棚の一部には化粧や装飾品や衣服などの新しいファッション誌が置いてあり、それを見る若い女性が数人。(こちらも冒険者とは思えぬ格好をしていた)

 アレナリアとビワが真面目に依頼書を見ている間に、二階で本を閲覧する人達は入れ替り、その都度暇潰しと、レラはこそこそと覗き見しては、アレナリアとビワに注意されていた。
 幸いな事に、覗き見していた相手らには、煙たがれたり怒られたりする事なかった。
 もしかしたらレラはこの旅の間に、気配を消す能力スキルを得たのかと、勘違いしそうになる。
 が、ただ単に、小人の子供に見えているレラを、邪険にするようなひとが居なかっただけのこと。

「出されてる依頼はこれだけのようね」

「カズが言ってた依頼あったの?」

「それらしいのは幾つかあったわよ。でもね……」

「でも?」

「その話は後にしましょう。そろそろ宿に戻らないと」

「思ったより時間が掛かりましたね」

「ねえ、でもって?」

「ええ。昼前に調べ終わったのは良かったわ。さぁ行きましょう」

「でもって、何ってばさぁ」

「騒がないの。宿に戻りながら話してあげるわよ」

 棚に置かれていた依頼書を一通り見終えると、騒ぐレラを黙らせて、カズと合流する時間に間に合うように近くに、三人はギルドを出て宿屋に戻って行った。


 カズが戻るまで空腹に耐えるレラだったが、宿屋に戻ってから三十分以上待ち、流石に我慢が出来なくなってきていた。

「ねぇ、カズ遅くない? 自分からお昼に宿ここで。って言ってたのに」

「もう少し待ちましょう。カズさんが約束破るなんて思えない。ちょっと遅れてるだけよ」

「私もそう思う……けど、本当に遅いわね。カズなら相手を待たせるくらいなら、先に来て待ってる考えのはずなんだけど」

「もう先にごはん食べようよ。なんか作ってビワ」

「どうします? アレナリアさん」

「何か、ちょっと摘まめそうなのある?」

「カズさんが居ないので、何も。買いに行きませんと」

「お腹空いた。お腹空いた。お腹空いたァ!」

 空腹だと騒ぐレラが五月蝿くて、アレナリアは耳を塞いだ。

「仕方ないわね。何か買って来るから待ってなさい」

「でしたら、私が行ってきます」

「変なのが出て来てたら、ビワじゃ何も出来ないでしょ。近場で買うからすぐに戻るわ」

 アレナリアは椅子から立ち上り、オーバーコートを羽織って食べ物を買いに出ようとする。

「あ、買って来るなら、カズが戻るまで待ってる。ここの食べ物って、微妙なんだよね」

「はあ?」

 わざわざレラだけの為に食べ物を買いに行こうと準備したアレナリアを、味が好みじゃないから必要ないと、アレナリアの誠意を無下にするレラ。
 通常状態に戻っていたアレナリア態度が怒りへと傾き、指でペチンとレラのお尻を弾く。
 デコピンならぬ、尻ピン。

「痛った! 何すんの!」

「ギルドではろくに手伝わない。お腹が空けばすぐに騒ぐ。更には私の好意を邪険にして。小さな子供じゃないんだから、いい加減我慢を覚えなさい!」

「う…うぇ~ん。アレナリアがぶったぁ~」

 レラはビワの胸に飛び込み甘える。

「アレナリアさん叩いたら駄目ですよ。レラのわがままは、いつもの事なんですから」

「だからレラにはこういったお仕置もたまには必要。それに、そんなに強くはしてないわよ。ほら」

 ビワが庇ってくれてる間、レラはちらちらとアレナリアの顔色を伺っていた。
 それをビワに分からせるのに、アレナリアはタイミングを見計らい、ビワに抱き付き泣くレラを指差した。
 っは、としたレラは、ビワの胸に顔を埋めた。

「うぇ~ん。アレナリアがおこ……」

 抱き付き再度泣き出すレラを、アレナリアがビワから引っがした。

「あ……」

 アレナリアによって引き剥がされたレラの顔を見ると、そこには一滴の涙も流れた跡はない。

「嘘泣きだったのね……」

「あやや、バレちゃったか……ごめんちゃい。てへ」

 レラは片目を閉じてペロリと舌を出し『可愛いあちしを許して』と、言わんばかり態度を取る。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...