人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 2 魔導列車に乗って

478 二手に分かれ帝都を目指す後方組

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 目を覚ましたレラと、足を伸ばして座るビワの三人で、ゆっくりと昼の休憩を取る。
 ビワは先を行くガザニアとアレナリアから、距離が離れる事を気にして、視線を先に向けている。

「行き先はわかってるから、気にせずゆっくり休んで食べる。一人だけ馬に乗るガザニアに合わせる必要ないからさ。……ごめん、ビワ」

 疲労した表情を隠せずにいるビワを見たカズの口からは、ビワに無理させた事に対しての謝罪の言葉が自然と出た。

「何が、です……?」

「ガザニアが馬で移動する時点で、アレナリアに相手を任せて、最初から二手に分かれるべきだった。俺の判断ミスで、ビワに大変な思いさせて」

「そんな…私は平気ですよ」

 大丈夫だと言うビワたが、無理をしているのは、誰が見ても明らか。

「私よりアレナリアさんは大丈夫ですか?」

「アレナリアなら大丈夫。精神的にも体力的にもね。だからガザニアの相手を任せたんだ。後で念話で連絡をするつもり」 

 身体強化を掛けたとはいえ、休む事なく四時間以上も馬の早足に合わせて移動すれば、ビワの足はパンパンになり疲労が蓄積。
 一時間程の休憩を終えて、遠くで小さくなった二人の後を追う。
 と言っても、走るような事はせず、ビワの足に負担が掛からないようにゆっくりと。

 休憩になっても、自分優先で行動するガザニアに合わせる気にはなれなかった。
 だがレオラの元に案内してもらうには、ガザニアに付いて行くしかない。
 アレナリアには損な役回りをしてもらって、カズは申し訳ないと思う気持ちが強くあった。
 覚悟を決めて、決断する事がまだ出来ないカズは、アレナリアが望む要望を叶える事が出来ないでいた。
 約束の一年というのは、その為の期間なのだから。
 ただ一つだけカズとアレナリアの考えが一致していること、それはレオラに言いたい事が、日に日に増したということだ。

 カズ達はビワの足の具合を見ながら、ちょくちょく小休止を取りながら移動する。
 昼食後にアレナリアに念話を繋ぎ、シックス・タウン 町に着きそうになったら連絡をしてくれと言っておいた。

 そして別行動になってから三時間半後、アレナリアから念話が来た。

「『カズ聞こえる?』」

「『大丈夫。聞こえてる』」

「『もう町の外壁近くまで来たわ。そっちは、どれくらいで着きそう?』」

「『歩いて行くと、今日中には無理だな。午前中のペースが早過ぎて、ビワの足が限界だ』」

「『ならガザニアに一日町で待つように言うわ』」

「『言っても、聞く耳持たないだろ。それより列車の事は何か言ってたか?』」

「『あと三十分くらいで、帝都行きの列車が来るって言ってたわ。本人はそれに乗るつもりでいるみたい』」

「『やっぱりか。だから先を急いでたんだろ。……わかった。アレナリアはガザニアと一緒に行ってくれ』」

「『え!?』」

「『俺と離れれば、ガザニアの態度も少しはましになるだろ。とりあえずは、降りた駅を念話で知らせてくれればいい。あとはアレナリアの判断に任せる』」

「『わかった。先に行ってるわ』」

「『列車代は持ってるか? アレナリアの分だけでも、ガザニアが出してくれればいいんだが』」

「『大丈夫。持ってる。ガザニアには期待してないから』」

「『そうか。ならもう暫くガザニアの相手を頼む』」

「『ええ。私が居ないからって、ビワと……でよ』」

「『なんだって? 聞こえなかった。一瞬、念話が途切れた?』」

「『だから、先にビワと子作りしいでよね!』」

「『するか! 急に何言うんだ!』」

「『うん。わかってる。ちょっとした冗談。するなら三人一緒が良いよね!』」

「『だから何を』」

「『あ! もう町に着くわ。じゃあ先行ってるね』」

「『っ…ああ、頼む』」

 アレナリアとの念話が切れ、一部の冗談を除き、話したことをビワとレラに伝え、この日の移動は止めて野宿の準備をする。
 ガザニアが居なければ、寝床は村に向かう時同様、馬車を出して荷台で休める。
 カズがアイテムボックスを使えるのは知っているが、馬車を持っているとは思ってはないだろう。

 ガザニアが乗る馬に馬車を引っ張ってもらえれば、全員で移動出来て良かったのだが、それをガザニアに伝えたところで『それでは馬が疲れてしまい、今日中に町へ到着しない』とでも言って来る可能性が小、カズが意見したことで機嫌を悪くし、黙って馬を走らせる可能性が大。
 それがカズの見解だったので、実行に移さなかった。
 結果、ビワに負担を掛けて疲労させる羽目になりカズはスゴく…ものスゴく反省し、夕食も寝床の支度も全て一人で支度して、ビワには疲労を回復してもらう。
 この時カズは本気で小さな一軒家を手入れ、アイテムボックスに収納しようと考えた。
 ビワの疲労を見たカズは、寝る寸前まで、ダメ元でガザニアの馬に、馬車を引っ張ってもらえるか聞けばよかったと後悔した。


 ◇◆◇◆◇


 翌朝目を覚まし空を見ると、どんよりとして今にも雨が降りだしそうな天気。
 気温は少し低く、薄着では若干肌寒く感じるほど。
 朝食は温かいコーンスープを用意して、二人が起きるのをカズは待つ。
 焚き火の片隅で、コトコトとコーンスープを温めていると、その甘い匂いでレラが目を覚ましきた。
 前日の疲れから、珍しくビワが起きて来ない。
 無理に起こすのはかわいそうなので、先にレラの朝食を出して、カズはコーンスープを一杯だけ飲み、ビワが起きるのを待った。

 ポツポツと雨が降りだしてきたので、焚き火に砂を掛けて消して馬車に入ると、ビワが目を覚ました。
 余程疲れていたのか、はたまた寝過ぎでなのか、目を覚ましてから一、二分、あお向けのまま呆けている。

「お~いビワ」

 ビワの目の前で手を振り、起きているか確かめるも返事はなく、目も一点を見つめたまま動かない。
 ならばと、毛布からちょこっと出ている尻尾の所に移動し、そこから毛布に潜り込んで、ぎゅッとビワのモフふわの尻尾にしがみつく。

「ひゃッん!」

 身体をビクっとさせたビワが毛布をいで起き上がり、尻尾を左右に大きく動かし、しがみついてるレラを振り払った。
 その勢いは強く、レラは馬車から放り出された。
 ビワは尻尾を正面に回して、大事そうに抱きかかえる。

「うひゃあ。外まで飛ばされるなんて思ってなかった。濡れちったよ」

「レラが急に尻尾を強く掴むからよ」

「目を覚ましてもビワが反応しないから、ちょっと敏感なところを刺激してだけじゃん」

「ちょっと疲れて、ぼんやりしてただけよ。もうこんなお越し方やめてよね」

「わかってるわかってる」

 分かってなさそうな軽い返事をするレラを見て、気を付けないと、またやられるとビワは感じた。

「ほら拭いとけ」

 雨で濡れたレラに、カズはタオルを掛けた。

「ありがとカズ」

「まだ疲れてる? 足はどう?」

「もう大丈夫です。長く寝過ぎてしまってごめんなさい。食事の用意は、私がすることなのに」

「いいから、いいから。昨日無理させたんだ。ゆっくり休んで」

「これ以上寝てたら、レラみたいなぐうたらさんなっちゃいます」

「そりゃそうだ」

「あちしがなんだって!」

 良からぬことを言われたと、巻き付かせたタオルから顔を出して、レラが二人に詰め寄る。

「気にするな何でもない。ただ本当のことを言っただけだ。それよりお腹空いてないか、ビワ?」

「それほどでは」

「だったらコーンスープと、パンの一つだけにでもする?」

「今はコーンスープだけで」

「わかった。さっき温めたのをアイテムボックスに入れてあるから、すぐ用意するよ」

「ありがとう。カズさん」

 ビワが毛布を畳んで服装を直し、髪と尻尾の手入れをしている間に、カズはコーンスープが入った鍋と、木製のコップを【アイテムボックス】から取り出す。
 レラも飲むと言ってきたので、木製のコップにコーンスープをお玉で入れて、二人に渡した。
 次第に降っている雨が強まり、気温も少し下がったことで、コーンスープのとろみと甘みが身体に染み渡る。

「ところで、アレナリアさんから連絡はありましたか?」

「どこかの駅で降りて一泊したのか、夜通し列車に乗ってたのか、連絡はまだ来てない。もしずっと列車に乗ってたなら、遅くとも今日中には連絡が来ると思うんだけど」

「ならそれまで町に入っていた方がいいですよね?」

「帝都方面に向かう列車の時間もわからないからね。昼前には入りたいね」

「寝過ぎてしまってごめんなさい。すぐ行きましょう」

 ビワは急いで出発しようと、木製のコップに入ったコーンスープを飲み干す。

「そう慌てなくて大丈夫。町の外壁の所まで、ゲートで移動するから。雨も降ってるし、昨日の今日でビワも大変でしょ。ガザニアも居ないし、ぱぱっと行っちゃおう」

「いいねえ。あんな所まで雨の中行きたくないからね」

「よく言うよ。こういう時だけ、自分から進んで鞄の中に入るだろ」

「あ、バレた」

「じゃあ、レラはいつものごとく」

「また小人族設定か。めんど~」

「人口の多い所に行くんだ。安全の為だからそう言うなよ」

「は~い」

 久しぶりに変装せず素のままで数日間過ごしたレラは、また小人族として行動をしなければならないのが、面倒で仕方なかった。
 その一番の難点は、自由に飛び回れず、移動が徒歩になることだった。
 この事をカズが知ったとしても、素のままで肩掛け鞄に入っての移動や、カズの肩や、ビワに抱きかかえられての移動をしてるのだから、徒歩どうのこうのは関係ない。
 突っ込まれることが分かっているからこそ、レラは渋々言うことを聞いた。
 三人は馬車から降り、カズが馬車を【アイテムボックス】に収納し〈ゲート〉でシックス・タウンの外壁近くに移動した。
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