人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
497 / 912
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

479 夜明け前の静かな帝都

しおりを挟む
 大陸最大の面積を持つテクサイス帝国。
 大陸の西の端オリーブ王国から、東に数千キロの場所に位置する。
 テクサイス帝国の人口は従属の国を含め、オリーブ王国の数百倍もおり、所有する資源は現在分かっているだけで三百倍以上、魔導技術に関しても六十年は先を進んでいる。
 二百年以上前の大戦から数十年の時を経て、軍事よりも国の発展を重視するようになり、自国だけではなく従属の国の発展も考慮するようになった。

 最初の十年は帝国内の治安維持が目下の課題となり、冒険者ギルドとの連携が不可欠だった。
 当時の冒険者は荒くれ者が多く、帝国の考えに反発する冒険者も少なくはなかった。
 権力で強制させる事も可能ではあったが、それはせず冒険者ギルドを介し、依頼というかたちで、復旧や開拓など国の事業を冒険者にさせた。
 当然依頼の費用は国から冒険者ギルドに支払われるのだが、街が発展して動き出せば、おのずと冒険者ギルドには、資材の調達に運搬、復旧や開拓に赴く職人の護衛など、国が出していた依頼と同じ様な依頼が街から出されるようになる。
 街とはこの場合、大きな事業をする有力者となる。
 有力者が居ない街では、小さな店を持つ者達が組合を作り、国からの支援を受けて、出来るところから街を発展をさせていった。
 そのため帝都から離れた土地によっては、独特の街が作られていたりもする。
 代表的なのが女性ばかりが住む、裁縫と刺繍の街バイアステッチ。
 街が発展すれば経済が回り、国から出す依頼が減る。
 そうなれば出費は減り税収は増え、国の予算で街道の整備や、従属国の支援も出来るようになる。

 二十年が経つ頃には、大戦で破壊されて放置されたままの街道や、隔離された村や街の復旧も進むようになる。
 たが何十年経とうと復旧には人手が足りず、その土地に暮らす様々な種族と合同で復旧や開拓をするようになる。
 最初の頃は険悪だった種族の間柄も、共に復旧や開拓をするにつれて交流が深まり、種族の違いという壁が取り払われていく。
 現在帝国で様々な種族が同じ街で暮らすのは、大戦で共に戦ったからというよりは、復旧と開拓で手を取り合った方が大きいと言える。
 それでも種族差別は無くならず、ひっそりと大戦前からのように暮らす種族も少なからずいる。
 代表するところでは、妖精族フェアリーがそれにあたる。
 たが近年では帝都の治安が良くなった事で、数名の妖精族フェアリーが力のある者の後ろ楯を得て、安全に暮らしている。

 帝国領土には皇族が管理する土地があり、その殆どが差別を受けてきた種族や、数の少ない珍しい種族が暮らす場所になる。
 そういった種族を保護して守るのが、皇族の役目でありいましめであった。
 未だに酷く差別されている半人半虫をレオラが保護しているのがこれにあたる。
 ただし、レオラの場合は役目としてではなく、自ら動いた結果がそうなっただけであった。
 各々おのおの思う存分ところはあれど、それほど大きな問題もなく様々な種族が暮らすようになっているのが、現在の帝都テクサイス。



 帝都中心部にある最大のセントラル・ステーション中央駅
 帝都中から多くの魔導列車が発着し、一日の駅利用者は十数万と、帝都郊外の駅とは比べものにならないほど多い。
 商業施設と隣接しており、帝国各地から集められた様々な品々を買うことが出来る。
 買い物目的で訪れる人々も多く、魔導列車に乗って来ては、外に出ることなく買い物だけをして、魔導列車に乗って帰る人々も少なからずいる。

 夜が明ける大分前に到着した魔導列車から、ガザニアとアレナリアがホームに降り、広い駅の中へ。
 足音だけが大きく響くセントラル・ステーション中央駅の改札を出て、駅近くの道に停まっている一台の馬車を見つけ乗り込む。
 昼間は数多くの馬車が駅周辺に停まり、魔導列車から降りて来た客を待つ、所謂いわゆるタクシーの馬車版。
 深夜から明け方に到着する魔導列車の乗客は少なく、降りて来るか分からない客を待つ馬車は殆どいない。
 一台停まっていれば良い方で、二人はその一台を見つけて乗ることが出来た。

「先ずはワタシがレオラ様に帰還の挨拶に伺う。アレナリアは〝ユウヒの片腕〟四人の代表としてレオラ様に会ってもらう」

「カズ達が到着するの待ってくれないの?」

「ワタシは予定より長く村に滞在したんだ。これ以上レオラ様への報告を遅れさせるわけにはいかない!」

「……わかったわ」

「その格好での面会は失礼になる。シャワーを浴びて、衣服の汚れも落としてもらう。本来ならもっとましな服に着替えてもらうとこだが、アレナリアのサイズをすぐに用意は難しい」

「洗ってる時間がないから、服はクリア 魔法でキレイにする(どうせ子供用しかないって言いたいんでしょ! 小さくて悪かったわね!)」

 アレナリアは心の中で叫んだ。
 他にも服は持っているが、着ているもの以外は、全部ビワが持つバッグの中に入っているので、現在替えの服は無い。

「香水は…冒険者では持ってないか。こちらで用意する」

「外でレオラと会うのとは違って面倒ね」

「レオラ様は帝国の第六皇女で在られる。本来なら会う事さえ難しい御方(ましてや、素性もよく分からない冒険者に…)」

「私にそれを言わないでほしいわね。接触して来たのはレオラの方なんだから(やっぱり皇女なのは本当なのね)」

「っ……わかっている。だからこうしてレオラ様の元にお連れするようにしている(あの軟弱者を置いてこれたから、とりあえずはよしとしよう。あとはアレナリアがレオラ様に余計な事を言わなければ)」

 ガザニアは少々不安もあったが、アレナリアの言葉よりも、守護騎士である自分の言葉をレオラは信じる、と。

「アレナリアはこの宿で支度をして待て。時間になったら迎えに来る。受付でワタシの名を出し、これを渡して部屋を用意してもらえ」

「紙? わかったわ」

 アレナリアはガザニアから紋章が入った名刺のような小さな紙を受け取り、一人馬車を降りた。
 馬車はアレナリアが降りると走り出し、二つ先の角を曲がり見えなくなった。

 宿屋と言うよりは、高級ホテルのようなたたずまい。
 七階建ての宿屋の壁や床は、大理石のような見た目の石材が使われており、今まで通って来た街の建物より立派な造りをしていた。
 この宿屋が特別大きいわけではなく、周囲の建物全てが大きく立派だった。
 道も車道と歩道が別れており、街路樹も植えれている。
 アレナリアは『至高の紅花亭』と書かれた宿屋の中に入り、受付にあった呼び鈴を鳴らした。
 作りもそうだが、夜明け前にも関わらず、高級宿屋が開いている事にもアレナリアは驚いていた。
 一分もしないうちに、ピシッとしたスーツを着た男性従業員が、眠そうな顔もせず出てきた。
 男性従業員は一瞬表情を曇らせようとしたが、何事もなかったかのように、受付で待つ薄汚れた一人の小さなアレナリア人物に、穏やかな口調で話し掛けた。

「いらっしゃいませ。ご予約はありますでしょうか?」

 こんな時間に宿泊の予約が入ってないのは承知しているが、受けた日付の間違いがないとも言い切れない。
 地方の貴族が急きょ訪れた可能性がないわけでもない。
 そのため男性従業員は、初手の判断を誤らない様に注意し、失礼のない対応をする。

「ないわ。一緒に来た人にここを紹介されて、これを渡すように言われたの」

 アレナリアは受付に一枚の小さな紙を置き、渡してきたガザニア相手の名前を出した。
 男性従業員が紙を手に取って、そこに短く書かれた文字を読み、裏返して紋章を確認すると、表情を一変させ、部屋まで案内すると受付から出てきた。
 男性従業員に付いて行くと、近くの壁に手を触れて魔力を流した。
 するの正面の扉が横に開き、中は2メートル四方の何もない小部屋。

「え……? (この部屋は何? 私、誰かの使用人か奴隷だとでも思われてるの?)」

 アレナリアが馬鹿にされたと思い、文句を言おうとしたとき、男性従業員が先に狭い小部屋に入り、アレナリアを招いた。

「足元にお気をつけてお入りください」

「ここは何?」

 当然のごとく疑問に思っていたアレナリアは、男性従業員に質問を投げ掛けた。

「こちらでお部屋のある上層階まで、ご案内いたします」

「……?」

 アレナリアの反応を見た男性従業員は、小部屋を『昇降機』という帝国が作り出した魔道具だと答え、その用途を説明した。

「そんなものが……」

 驚いているアレナリアは、男性従業員に高級感漂う部屋に案内された。
 最上階でないが、大きなベッドがある寝室が二部屋に、リビングには五人が余裕で座れるソファーと大きなテーブル、更に様々な調理器具が用意されたキッチンと、シャワーだけではなく二人が足を伸ばして入れる程の湯船付きの風呂場まであった。
 外見からしても、明らかに豪商や貴族が利用する高級宿屋なのは分かる。
 一泊金貨何十枚するのか、考えるだけでも恐ろしい。
 部屋を見たアレナリアは、手持ちのお金に不安を残しつつも、ガザニアが案内した宿屋なのだから、支払いは大丈夫だろうと、とりあえずシャワーを浴びて、衣服の汚れを〈クリア〉の魔法で落とし、迎えが来るまで仮眠を取ることにした。
 まだ暗いので、カズへの念話連絡は後程とした。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...