人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

559 コンルの情報で悩むレラ

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 カズは嫌な顔をせずカミーリアの腕を払う事なく、思ったよりも柔らかい胸板の感触を感じながら、以前訪れたカミーリアの部屋まで妙な視線を背後に感じつつ向かった。
 部屋の前まで着くと、カミーリアは名残惜しそうにカズの腕を離して扉を開けて中に入った。

「送ってくれて、ありがとう」

「今日はゆっくり休めよ」

「大丈夫。私も皆と同じで、空腹より眠気が勝ってるみたい」

 そう言うカミーリアの目蓋まぶたは重く、今にも閉じそうになっていた。

「じゃあな、おやすみ」

「おやすみなさい」

 カミーリアの私室を後にすると、感じていた視線は消えていた。
 確認したくもあったが、レオラとアレナリアが先に行っているので、急いでアイリスの居る部屋に向かった。
 案内がいなくとも【マップ】を見れば場所は分かり、初めて謁見した部屋だった。

 カズが来るまでの間に、アレナリアが騎士達に魔力操作を教える日時や時間などを決めていた。
 騎士達が訓練を受けるか受けないかは別として、取り敢えず決めた。少なくとも、カズに飛翔魔法フライを習いたいとまだ思っている者が一人でもいるなら、アレナリアが来る意味はある。

「来ましたね、どうぞ座ってください。少しお話があります」

 カズは軽く会釈すると、三人掛けのソファーに一人で座るアレナリアの隣に移動して座った。
 アイリスからの用件は合同訓練に協力したお礼の言葉と、今までにしてくれた諸々お礼として、帝国でのフジの仮住まいを、そのままの場所で本住まいしましょうとの提案。
 レオラもこれには同意しており、書類はアイリスが作成して、現地の近くにあるキビ村にはレオラが知らせに行くと聞かされた。

「そうですか。それはありがとうございます」

 少し嫌な予感がしたが、とりあえずカズはレオラとアイリス皇女二人にお礼を言った。

「そういう事だ。明日行くぞ、カズ」

「……やっぱりですか」

「当然だ。カズのテイムモンスター従魔なんだ」

「忘れてないレオラちゃん。村に行くのに、書類を持っていってもらわないと」

「あぁ、そうだった。ならその次…は、用事があったか。なら三日後に行くぞ。時間はビワに伝える」

「わかりました(これで明日はのんびりでき……ないか。ギルドに報告に行くんだった)」

「部屋を用意するから、今日は泊まって行くといいわ」

「ビワに戻ると言ってあるので、お気持ちだけで」

「あらそう、なら仕方ないわね。レラちゃんを呼んできて」

「レラが迷惑かけませんでしたか(レラちゃんて呼んでるのか)」

「お昼頃まで寝てたみたいなのよ。だから静かだったわ。わたくし達が訓練を見学に出掛ける前にコンルが戻ってきて、レラちゃんにお話があるって。そういえば、それから会ってないわ」

「レラのやつ…(アイリス様の屋敷でも、ぐうたらは変わらないのか)」

 侍女が部屋を出て数分すると、レラとコンルを連れて戻ってきた。
 何時ものように騒がしく入ってくると思いきや、レラはコンルと共に静かに入室した。
 コンルはアイリスの隣へ、レラはカズとアレナリアの間にちょこんと座った。

「元気ないわね。お腹空いたの?」

「別に……」

「それについては、わたしから」

 レラが借りてきた猫のようになった理由を、コンルが説明すると言ってきたので、カズとアレナリアは話を聞いた。
 レラが静かな理由は空腹や眠気が原因ではなく、コンルに頼んでいた事について進展があり、それを聞いたからだと。
 カズはレオラに頼んでアイリスに謁見し、妖精族フェアリーのコンルに会ってレラの故郷について調べてもらっていた。
 その事についてレラに話したのだと。
 頼んだのはカズなのが、数日前からダンジョンに潜ってるとコンルは聞かされ、今日騎士達の合同訓練に来ると聞いていたのだが、レラと二人になる時間が取れたので、先に伝えたのだと言う。

「それで、レラに何を話したの?」

「それは…」

「待った」

 アレナリアの疑問にコンルが答えようと声を出すが、カズはそれを静止させた。

「おとなしいのは、レラに何か思うところがあるんだろ。とりあえず話はレラ本人から聞く。それから聞きに来ると思うがいいかな?」

「そう、わかった。とりあえずこれまでで、わたしが得た情報を伝えたわ。一応引き続き調べてみるわね」

「ありがとう。よろしく頼む」

「一応よ一応。これ以上はあまり期待しないで」

「それでも助かる。ありがとう」

 コンルにお礼を言って、カズはアレナリアを合図を送ると、隣に座るレラを抱えた。

「俺達はそろそろ失礼します」

 カズはアイリスに軽く頭を下げ、アレナリアも同じく。

「こちらこそ。騎士の皆には、良い経験になったと思うわ。アレナリアさんにはもう少しお願いしますね」

「はい。また後日うかがいます」

 レラを抱えたカズとアレナリアは部屋を出て、アイリスの屋敷を後にした。
 屋敷か数百メール離れた所で、カズは〈空間転移魔法ゲート〉を使用して帝都中央にある、ビワの待つ川沿いの家に戻った。


 夕食を作り終えたビワはリビングのソファーに座り、ほつれたアレナリアとレラの服を直していた。
 そこにカズとアレナリアの「ただいま」の声がして、三人がリビングに入ってきた。

「お帰りなさい。お疲れさま」

「ただいま。やっぱり少し遅くなったわ。夕食は済ませた?」

「いえ、縫い物をして待ってました」

「ただいまビワ」

「お帰りなさい、カズさん」

「なんか、久しぶりだね」

「温泉地で別れて以来ですものね」

「いつも家の事を任せてばかりでごめん。ビワも働いているのに(確かに稼ぎはあるけど、ビワに殆ど任せっきりで申し訳ない)」

「大丈夫です。レオラ様のお屋敷でカーディナリスさんと働くのも楽しいですし、勉強にもなりますから。それに、家事は嫌いではないので。遅くなると聞いていたので、夕食はゆっくりと作りました。なので、まだ温かいですよ」

「ビワの作りたての料理は久しぶりだ。さっそく食べるよ」

「ふふっ、すぐに用意しますね。ところでレラがおとなしいのは、何かあったんですか?」

「頼んでいたレラの故郷について、情報が得られたみたいなんだ」

「みたい…ですか?」

「レラが先に聞いてね、俺は聞いてないんだ。レラがどうしたいか、聞こうと思って」

「それで元気がないんですね」

 カズの胸の前で曲げた腕にちょこんと座るレラに、ビワが視線を向けた。

「べ、別に……ちょっと考えたいと思っただけだもん」

「俺は明明後日しあさってに、フジの仮住まいを本住まいにするのに、レオラと共に黒糖を作ってるキビ村に行かないとならいから、それを終えて戻って来るまでに自分から話すか、俺がコンルに話してもらうかを考えといてくれ。別に必ず話せって事じゃないからさ」 

「うん、わかった。考えておく」

「じゃあビワが作ってくれたごはんを、皆で食べよう」

「お風呂は汲んであります。食事の後に入って、疲れを癒してください」

「ならアレナリアが先に入って、昼間の疲れを取るといいだろ」

「カズは入らないの?」

「俺はやる事があるから最後でいい(ギルドで渡されたダンジョンマップに、他の冒険者が通れるような通路を書き込まないと)」

「ダンジョン帰りで訓練の指南役でしょ。疲れてるんだから、一緒に入りま…」

「だめッ! あちしがカズと入るの」

 思わぬレラの発言に、アレナリアとビワがレラに視線を向けた。
 ビワの視線とアレナリアの形相を見たレラが、咄嗟とっさにカズと二人で風呂に入ると言った理由を話す。

「コンルちゃんに聞いたことを、カズに話しておきたいの」

 レラの真剣な顔を見たアレナリアとビワは、カズと二人で風呂に入る事を承知したところで、四人で遅めの夕食にした。

 食後カズは三階の寝室に移り、ギルドから渡されダンジョンマップを広げて、縦穴を使う事なく地下に向かう通路の記入し始めた。
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