人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

608 捕縛 と 警告 と 暫しの様子見

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 トコトコと階段を下りる足音が聞こえてきたので、座るのに邪魔にならないよう隣に置いた毛布をたたみ、一旦ソファーの背もたれに掛けておいた。
 寝間着姿のアレナリアがリビングに現れ、カズの向かい側のソファーに座り、手で口元を隠してあくびをした。

「眠ければもう少し寝てたらどうだ?」

「ヒューケラの面倒をみてたから、このくらいの時間に目が覚めちゃうのよ。早起きしてるビワの気持ちがわかるわ」

「家事はビワまかせだからな。またすぐに、長く寝るようになるだろ」

「たぶんね。私もそう思う」

「ぐうたらを認めたら、レラみたいに食っちゃ寝になるぞ。ってか、アレナリアもその気があったったな」

「レラと一緒にしないでくれる。私は一応働いてるんだから。……たまにだけど」

 レラが起きて来ていれば言い返して、また口喧嘩にでもなるだろうが、レラはまだ寝ている。
 ビワがコンソメスープを仕込んでおいた鍋を火に掛け、朝食が出来たところで、匂いを嗅ぎつけたレラが目を覚まして二階から下りて来る。
 キッチン側のテーブルに移動して椅子に座り、並べられた朝食を頂く。
 コンソメスープは沢山作り、残っても夕食のポトフを作るのに使用するとビワが言うので、三人共お代わりは一杯だけにした。
 
 レオラの屋敷に行く時間は、正午が良いとビワが教えてくれた。
 なので午前中アレナリアはレラに魔力操作と、風魔法を裏庭で教え、ビワは部屋の掃除や洗濯やら家事をする。
 カズは三階に上がり、隠し部屋から持って来た妖狐に関する複製本を読む。

 正午に間に合うようにと、三階から下りて来ないカズをビワが呼びに来る。
 本に夢中だったカズがビワに呼ばれて一階に下りると、アレナリアとレラがサンドイッチ一つと、朝食で食べなかった特製プリンで、早めの昼食を取っていた。
 カズは本を読んでいただけなのでお腹は空いてないと、麦茶を一杯だけ飲んで軽めの昼食を済ませた。

 戸締まりをして川沿いの家を出て、四人は乗り合い馬車でレオラの屋敷に向かう。
 移動中周囲を警戒するが、取りあえず尾行されたり、監視されてる気配はなかった。

 レオラの屋敷に着くと、何時ものように裏口へ。
 訪問する連絡はしてないので、先ぶれとしてビワ一人で屋敷に入ってもらった。
 八分程するとビワではなく、グラジオラスが一人で出て来て、カズ達を屋敷内に招き入れてくれた。
 その事からレオラは在宅しているのだと分かった。
 グラジオラスに案内され、レオラが居る執務室に案内してくれた。
 エレベーター昇降機は使わずに階段を上がり、何時もの執務室に向かう。
 書類仕事公務を終えたレオラが、執務室一階のテーブルで昼食を済ませたところだった。
 部屋には一緒に昼食を取っていた守護騎士のアスターとガザニア、それと食器を片付けに来ていたカーディナリスと、先に屋敷に入ったビワが居た。

「片付け終わりましたら、飲み物をお持ちします」

「急がなくて構わないぞ。ばあ」

 食器を乗せたワゴンを押し、カーディナリスが執務室を出ようとする。

「私もお手伝いします」

「あらそう。ありがとうビワ」

 数日仕事を休んだので、せっかく来たのなら手伝いをと、カーディナリスの代わりにビワがワゴンを押し、二人はレオラの執務室を出て行く。

「急に訪ねて来てすいません」

「なぁに。今日のノルマは終わらせた。この時間を選んだのはビワだと聞いた。的確に昼食後の空いた時間に着くとは、なかなかやる。やはりここの専属として、ずっと働いてほしいものだ」

「褒め言葉として、ビワには伝えておきます」

「だろうな。で、何から話す」

「その前に、忘れない内にこれを」

 カズは【アイテムボックス】から、ミツモモが詰まった箱を二箱出した。

「甘い匂いがするが、なんだそれは?」

「ちょっとミツモモを大量に買うはめになってしまって、おすそわけです」

「ミツモモか! この匂いかすると、熟す手前で収穫したのだろ。実に良い手見上げだ」

「喜んでもらえたのならよかったです」

「夕食に皆で食べる事にしよう」

 ミツモモの詰まった箱を、カーディナリスの居る厨房に持って行くよう、レオラはガザニアとアスターに指示する。
 二人は一箱ずつ持ち、執務室を出て一階の厨房に向かった。

「さて、先ずはパラガスの事から話そう」

 問題の件について、レオラから口火を切ってきたので、カズは本の街に向かう時の事を話す。

「本の街に向かうのに、中央駅から列車に乗るまで付けて来ましたが、あれからどうなりました? 形跡はなかったですけど、留守の間に家に侵入したりしましたか?」

「侵入はしてない。その前に見張りをさせてたグラジオラスが捕らえた」

「そうですか。ありがとうございます」

 カズはグラジオラスに会釈をして、感謝の言葉を告げる。

「レオラ様に言われた事ですし、自分も女性を狙う卑劣な者を放ってはおけません」

「捕らえたのグラジオラスだが、アスターとガザニアにも、交代で見張りをさせたんだ。さすがにずっとは無理だからな、侵入しそうな時間帯をしぼった」

「さすがですね。それで捕まえたそいつは?」

「雇われた地方の冒険者だった。ギルドに連れて行き、知ってる事を洗いざらい吐かせた。利用されてただけだったようだが、罰としてランクを最下位に落として、帝都から追放の処分をくだした。この先も冒険者を続けるかはわからないが」

「それだけですか?」

「カズの言いたいことはわかる。だが、使いっ走りを何人捕まえても、元凶をなんとかしなければ意味がない」

「まあ、そうですが」

「今回パラガスには第六皇女としてではなく、使用人の主人として警告しておいた」

「そんだけなん? レオラっちなら、そんな奴の店なんか、潰しちゃえばいいじゃん」

「ビワに被害が出てるならそれも出来るが、監視や尾行程度では警告がせいぜいだ。権力を振りかざしては、皇族の信用問題になる。アタシだけなら構わないが、アイリス姉上に飛び火させるわけにはいかない」

「世知辛いわね。なら以前同様ビワの送り迎いをした方がいいのね」

「そういう事になる」

 レオラから話を聞き、現状ではビワが付け狙われる事がないとは言い切れず、パラガス・ノイアがこのまま諦めて引き下がるか様子見となった。
 なんとも歯がゆい状態に、カズは渋い顔をしてしまう。
 表情の変化に気付き、レオラ自身も同じ気持ちなのを理解してもらうのに「これが今できる精一杯だ」とカズに言う。

「レオラ様の立場では仕方ない事よ、カズ」

「わかってる。すみません、レオラ様」

 カズの気持ちを汲み、頭を下げようとするのを、レオラは手を少し上げ、その必要はないと応える。
 カズが謝罪として下げかけた頭を上げたのを見て、アレナリアがビワの仕事についての話をする。

「それでレオラ様、ビワはいつから仕事に?」

「ビワの都合で構わない。ただ、ばあの事を考えると、早い方がいいんだが」

「ならビワが戻って来たら、聞きいてみましょう」

「うむ」

 まだ少しカズの雰囲気が良くないと感じたレオラは、話題を隠し部屋の事へと変える。

「そうだカズ。本の街に行ったろ。例の件はどうなった?」

「それは……」

 部屋にグラジオラスが居たので、話していいものかと、カズは口ごもる。

「ああ、そうだった。グラジオラス少しの間席を…いや待て、そうだ! ガザニアとアスターと共に、中庭でレラに剣の使い方を教えてやれ」

「いいじゃないか。行って来いレラ」

「えぇ~」

「どうせ本の街ではサボってたんだろ。身を守れるように訓練しろ」

 カズは【アイテムボックス】から、レラ専属のナイフを出して渡した。
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