人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

701 送別会

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 リビングに入ったレオラは、アレナリアとレラの向かい側のソファーに座り、アスターは後方で立って待機する。
 剣は携えているが、服装は紺のロングパンツに白のシャツと、焦げ茶色の革製ジャケットを羽織り、渋い中年男性が着そうな服装をしていた。
 レオラの趣味だろうかと思えたが、カーディナリスがとも考えた。
 別に服装を気にする事はないので、ありふれた格好をして来たのだろうと、カズは気にも留めない。
 女性の服装を気に掛けないカズが、元の世界で独り身の原因の一つがこれだと、気付いているのかいないのか。 

「そんなところにぼっ立ってないで、アスターもこっちに座れ」

「わたしはここで大丈夫です」

「そんな所に突っ立てたら、皆が気になるだろ」

「承知しました」

 レオラに促されてアスターも座るも、ソファーではなく部屋の隅に並べてある木製の椅子。

「ばあとビワが料理を作る間に、昨日の話でも聞かせてくれ。姉上のところの騎士はどうだ? あの合同訓練から少しは成長はしたか?」

「教えていたのは魔力操作。モンスター相手の戦闘方法は知らないわ」

「やはり実戦経験を積ませなければ、そうそう成長はしないか。飛ぶだ何だと言っていた連中はどうなった?」

「それはカズに聞いて」

「どうなったカズ?」

「飛翔魔法を覚えたいと言ってきた騎士は五人だったけど、魔力操作の精度で習得出来る可能性のあったのは、カミーリアとネモフィラの二人。カミーリアが辞退したので、教えたのはネモフィラだけです」

「ネモフィラ……誰だったか?」

 パッと思い浮かばなかったレオラが、カズにどんな人物だったか尋ねた。

「小柄で細身の剣を使ってる」

「おお! 素早い動きをするあいつか。それで飛べるようにはなったのか?」

「一応は習得しましたよ」

「そうかそうか。それは会ってみるのが楽しみだ」

 レオラは何か悪巧みでもしてるような笑みを浮かべる。
 ここでその意図を聞くと、面倒になるかも知れないと感じ、誰もツッコムことはしなかった。
 リビングでレオラと話をしている間に、キッチンではビワとカーディナリスが食事の用意を進めていた。
 カーディナリスは食材をアイテムポケットが付与された手提げバッグから出し、ビワに作る料理を説明しながら並べていく。

 ステックサラダとマッシュドポテトに、オニオンとコーンの二種類のスープ。
 レオラ好みバレルボアを使った香草焼き。
 バレルボアの挽き肉を使ったソースを絡めたパスタと、チーズたっぷりのグラタン。
 コロコロ鳥の肉を使った唐揚げと、果物の盛り合わせに、手軽に摘める数種の木の実、などなど。
 そこにカズが作ったバレルボアの角煮と、タレを付けた吊るし焼きを。

 料理の量が多いのは、レオラ達も昼食前ということと、人数に合わせて用意しているとカーディナリスは言う。
 人数に合わせてと言うが、それにしては多過ぎるんじゃないかと思っていたが、それは後々分かることになる。

「食事が出来る前に、いくつか伝えておこう。先ずはこの家だが、カズ達が戻って来た時に、いつでも使えるよう現状を維持しておくことにする。戻って来たら好きに使ってくれ」

「それはありがたいですが、長いと二、三年先にはなると思いますよ」

「構わない。ここを出てから使ってなかったんだ。月一で手を入れておけば、使い始めた頃のような状態にはならないだろ」

「これで帝都に来ても、宿に泊まらずに済むわね。カズ」

「だな。宿より住みなれたこの家の方がいいか」

「お! 永住する気に」

「なってません。旅から戻って来た時の事を言ってるだけです」

「つれない奴だ。戻って来たら、ビワを置いてってくれても構わないぞ」

「殴りますよ」

 握り拳をレオラに見せるカズ。

「ご容赦くださいカズ殿。レオラ様も冗談がすぎますよ」

 カズが本当に殴るとは、アスターは思ってない。

「まだ時間もあるし、軽くやるか?」

「やめてくださいレオラ様!」

 レオラ主人が本気で言っているのではないとアスターも分かってはいるが、八割が冗談で二割は本音だろうと思い、これ以上余計な事を言う前に、カズに失礼な発言をしたと謝罪する。

「申し訳ない。カズ殿」

「別に気にしてない。いつもの事だから」

「いつも……レオラ様は、そんなにしてるのですか」

「人聞きの悪い。たまにだ。見ていた通り、カズもなれたもんだろ。だからそう、かしこまらず楽にしろ」

「はあ。しかし」

 本当に良いのだろうかという表情をするアスター。

「グラジオラスだと言っても楽にしないだろ。カザニアだとだ。わかるだろ。それでアスターにした。ばあを屋敷まで送るに、誰か連れて来ないとならないらかな」

 このレオラの発言から、カーディナリスと一緒に帰るつもりはないらしい。

「わかりました。しかしそういう考えであれば、あと二人くらい護衛の騎士を増やされてはどうです」

「増えればお前達の負担が減るだろうが、目ぼしい者がいない。学園で良さそうなのはいたか?」

「多少腕の立つ学生はいますが、それは実戦を経験してない、教科書通りの動きです」

「だろうな。それがそのまま騎士になる。だから目ぼしい者が見つからない。アタシが新たに騎士を増やさない理由だ。それなら実力と信用のある冒険者を側に置いた方がマシだろ」

 レオラの話を聞き、アスターは新たな側近が増えない理由が分かった。
 例え自分達と同程度の実力を持つ女性騎士が増えたとして、束になってもレオラ主人の足元にも及ばないと分かっている。
 それでも皇女として、側近の騎士をあと数人は増やして欲しいというのが、アスターの内心。
 他の皇族は多いと六十人以上の騎士が仕えており、少なくとも十数人仕える騎士がいる。
 第五皇女アイリスにも、現在十七人の仕える騎士が居る。
 仕える騎士が三人だけという少数なのは、皇族の中で第六皇女レオラだけ。

「お前が何を考えてる事はわかるぞ。今のところお前達の仲間を増やす気はない」

「ダメ…そうですか」

 アスターの考えてることは、レオラにはお見通しだった。
 脱線した話を戻し、次にレオラが話すのは冒険者パーティー名について。

「帝国を出るなら変えた方がいい。グリズの名を知る国の役人に目をつけられたら、常に監視されかねないぞ」

「国の内情を帝国に流す。俺達が帝国に属する冒険者だと?」

「ただ帝国から流れて来た冒険者パーティーなら気には止められないだろうが、帝国の守護者の称号を持つグリズの名がパーティー名に入っていれば話は別だ」

 グリズに名付けられてから、そのまま使っていたパーティー名を、結局変えるのを忘れ、新しいパーティー名を考えてなかった。

「元々パーティーを登録したのは、冒険者じゃないビワとレラに身分証となるギルドカードを所持出来るようにと、グリズがしたんですよ」

「そういえばそうだったか」

「俺はパーティーを解除しても構わないんですが、それだとビワとレラのギルドカードが使えなくなるんじゃ?」

「期限以内に個々のランクに応じた依頼を受ければいいだけだが、ビワとレラには少し難しいか。だとすると、パーティー名を変える他あるまい。帝国を出る前までに考えておけ」

「わかりました(名前考えるの苦手なんだよなぁ)」

「書類は出発前にサイネに言って、受け取っておけ。パーティーを組んでる者が変わると、パーティー名を変える冒険者はわりといるもんだ。まあ、殆どはランクの低い連中だがな」

 帝都を立つ前に全て終わらせたのに、新たな課題が出て来てしまった。
 それでも帝国を出国するまでなので、まだ日時に余裕はある。
 くれぐれも悪目立ちがしないパーティー名を、四人で相談して考えることにした。
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