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五章 テクサイス帝国番外編 3.5 魔族領一人旅
776 思わぬ人物との再会
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幾つか疑問が湧いたのだが、この最北の街ギンバンに着いて探索スキルを使ったのに、反応が無かったのはどうしてだ? というのが、一番気になった。
探索スキルに引っ掛からない魔法やスキルでも使っていたのか?
はたまた魔道具や遺物を持っているのか?
この答えを知るには、滞在しているそのエルフに会えば分かる筈だ。
拘束したら直接確認したいと言っていたらしいので、あとは悩む必要はない。
「なら会わせてくれ。俺も話してみたい。傭兵組合にいるのか?」
深夜に忍び込んで寝込みを襲い、拘束して連れ出そうとしたのに、カズが会うと言った事に少し驚き、暫し黙ってどうしたものかとコナは考える。
力尽くで連れて行くのは無理だと分かり、カズ本人が会うと言っているのだから、会わせても良いのではないか? と。
ただここまで穏便に話し合いで済ませていたカズだが、探してる相手に会わせた途端に、飛び掛かったりはしないだろうか? と、少し不安があった。
もしそうなったとしたら、三人でカズを取り押さえるのは難しいが、会わせる人物に協力してもらえば問題ないだろう、と。
「会わせる。ただ五、六時間は待ってほしい」
「まだ夜明け前だからな。わかった」
場所は傭兵組合の組頭の部屋で、時間になったらモカが呼びに来る事になった。
カズは会う約束をすると、二階の奥から二番目の部屋に戻り、夜明けまで寝る事にした。
コナとモカは宿屋を出て行き、宿屋の主人ハーリギリは、モカが呼びに来るまで、二階に上がる事をしないと決めた。
余計な事をして怒らせでもしたら、一人では対処できないと分かっていたので。
寝ていてくれるなら、静かにしてれば良いだけ。
そう考えたハーリギリは、自分も少し寝る事にした。
夜が明けて日の光が街を照らし、住人がちらほらと建物から出始めた頃、カズは目を覚ました。
部屋で【アイテムボックス】からバレルボアの肉を挟んだサンドウィッチを出して朝食を取り、数時間前まで居た一階の受付部屋に移動して待つ。
新たな客は来ないが受付部屋にカズが居るので、ハーリギリは受付で待機してなければならない。
しっかりと料金を払った客ではあるが、部屋に忍び込んだカズと二人っきりいうのは、かなり気不味かった。
カズを迎えにモカが宿屋にやって来た。
宿屋の主人ハーリギリも同行して、三人でギンバン街の傭兵組合に向かう。
この日は晴れて風も弱くて過ごしやすく、住人達の多くが外に出ていた。
最北の宿屋は街の西側にあり、傭兵組合は街の北側にある。
道は歩ける程度に除雪してあったので、傭兵組合まで歩きで三十分程。
意外と子供が多いのは、雪深い地域ではやる事が少なく、他と比べて夫婦の営みが多いと聞いた覚えがあるので、そういう事なのだろうとカズは思った。
傭兵組合に着く前に、エルフを対象にして《探索》のスキルを使うが、やはりは反応ない。
この後会う人物は、探しているエルフではなく、別の人物なんだと警戒する。
傭兵組合に着くとモカが一人で入り、組頭のコナにカズを連れて来た事を伝える。
二分と経たずモカが戻り、二階の組頭の部屋にカズを案内する。
先頭モカで次がカズ、その後ろからハーリギリが続く。
「連れて来ました」
モカが一声掛けて組頭の部屋の扉を開く。
組頭のコナは部屋奥のある執務机の前に立って待っていた。
壁際にはテーブルが一台と、長椅子が二脚置かれていた。
長椅子には銀髪ショートヘアで、耳が長い女性が座っていた。
座っている位置からだと後ろ姿なので、カズからは顔が確認できない。
「名前を聞いて耳を疑ったよ。まさかと思ったけど、本当にあんただったのかい」
銀髪ショートヘアの耳の長い女性は、会った事あるような言い方をしてきた。
しかし魔族領でエルフの知り合いはいない。
だが声は以前に聞いた事あるような気がした。
「どこかで会った事ありましたか?」
「会ったのは二年くらい前になるかね。私を忘れちまったのかい?」
「二年くらい前……」
二年くらい前だとオリーブ王国から、四人で旅に出る前か出た後。
旅に出てすぐに知り合ったエルフはいない筈なので、そうなると王都オリーブに居た頃になる。
冒険者ギルドにエルフは何人も居たので、その内の誰かなのか? と、その頃の事を思い出そうと記憶の糸を辿る。
しかし魔族領に来れるようなエルフに知り合いはいない。
国の重鎮と接触出来るとしたら、王都にある各冒険者ギルドのマスター。
その中でエルフなのは第2ギルドのギルド・マスター、フローラ・クラルス・ナトゥーラだが、エルフではなく上位種のハイエルフ。
彼女ならオリーブ王国の国王と接触ができ、魔族領の事や世界を分かつ結界についても知っている可能性はある。
しかしギルド・マスターを辞めて、魔族領に来るとは考え難い。
「まだ思い出さないのかい?」
長椅子に座っていた銀髪ショートの耳の長い女性が立ち上がり、トコトコと歩いてカズの前まで来る。
「なんなら思い出すまで、ベッドの中で一戦交えようか? 以前は孫娘に止められたが、ここにはいないからね」
「孫娘? アイア…さん?」
「覚えてるじゃない」
その口調と話す内容、そして孫娘の発言で、フローラの祖母アイア・クラルス・ナトゥーラだとカズは思い出した。
アイアはエルフではなくハイエルフ。
エルフだけを対象にしていたので、探索スキルに反応しなかった理由が分かった。
「カズなら大丈夫だよ。だからあんたら二人は戻っていいよ」
「だ、そうだ。モカは仕事に戻ってくれ。ハーリギリも宿屋に戻って大丈夫だ。今度、酒をおごる。その時に説明もする」
状況がよく分からないと思いながら、モカとハーリギリは組頭の部屋から出て行った。
「説明してくれますか? アイア殿」
アイアとカズが顔見知りだと知り、コナはアイアに説明を求めた。
説明が面倒だという表情をしながらも、アイアはカズと出会った頃の話をコナに話した。
色々と端折って五分くらいで終わらせた。
そもそも孫娘のフローラの所で会ったくらいなので、話す内容はあまりない。
「孫娘さんと親しいからといって、信用出来る人物とは限らないでしょう」
「私の孫娘が人を見る目がないと言いたいのかい?」
「いえ、とんでもない。申し訳ない」
コナの態度を見ていると、アイアに頭が上がらないらしい。
傭兵組合の考えだと、実力が上のアイアには逆らえない、という事だろう。
そうすると一つ確認しなければならない事があり、カズはアイアに尋ねる。
「アイアさんは傭兵組合に登録してるんですか?」
「一応ね。こちらで街の出入りに使う身分証として。カズも登録したのかい?」
「あちら側に戻る情報が欲しかったので、知り合った元傭兵の方に、傭兵組合の事を聞いて勧められたんですよ(アイアさんに会うまでは、後悔してたけど)」
「そういえば、どうして魔族領にいるんだい? 一人だけかい?」
「あぁ…色々と事情がありまして」
カズは話を聞いていたコナに、一瞬だけ視線を移した。
アイアはその意味を理解した。
「コナに出て行ってもらうのも悪いからね。場所を変えて話を聞こうかね」
「そ、そうですか(あの事が本当か確かめたかったんだがなぁ……)」
今朝、他の街の傭兵組合から入った情報を確認したかったコナだったが、アイアに同席する事を頼めなかった。
傭兵としてのアイアは、ただの傭兵ではないと、組頭のコナだけは知っていた。
探索スキルに引っ掛からない魔法やスキルでも使っていたのか?
はたまた魔道具や遺物を持っているのか?
この答えを知るには、滞在しているそのエルフに会えば分かる筈だ。
拘束したら直接確認したいと言っていたらしいので、あとは悩む必要はない。
「なら会わせてくれ。俺も話してみたい。傭兵組合にいるのか?」
深夜に忍び込んで寝込みを襲い、拘束して連れ出そうとしたのに、カズが会うと言った事に少し驚き、暫し黙ってどうしたものかとコナは考える。
力尽くで連れて行くのは無理だと分かり、カズ本人が会うと言っているのだから、会わせても良いのではないか? と。
ただここまで穏便に話し合いで済ませていたカズだが、探してる相手に会わせた途端に、飛び掛かったりはしないだろうか? と、少し不安があった。
もしそうなったとしたら、三人でカズを取り押さえるのは難しいが、会わせる人物に協力してもらえば問題ないだろう、と。
「会わせる。ただ五、六時間は待ってほしい」
「まだ夜明け前だからな。わかった」
場所は傭兵組合の組頭の部屋で、時間になったらモカが呼びに来る事になった。
カズは会う約束をすると、二階の奥から二番目の部屋に戻り、夜明けまで寝る事にした。
コナとモカは宿屋を出て行き、宿屋の主人ハーリギリは、モカが呼びに来るまで、二階に上がる事をしないと決めた。
余計な事をして怒らせでもしたら、一人では対処できないと分かっていたので。
寝ていてくれるなら、静かにしてれば良いだけ。
そう考えたハーリギリは、自分も少し寝る事にした。
夜が明けて日の光が街を照らし、住人がちらほらと建物から出始めた頃、カズは目を覚ました。
部屋で【アイテムボックス】からバレルボアの肉を挟んだサンドウィッチを出して朝食を取り、数時間前まで居た一階の受付部屋に移動して待つ。
新たな客は来ないが受付部屋にカズが居るので、ハーリギリは受付で待機してなければならない。
しっかりと料金を払った客ではあるが、部屋に忍び込んだカズと二人っきりいうのは、かなり気不味かった。
カズを迎えにモカが宿屋にやって来た。
宿屋の主人ハーリギリも同行して、三人でギンバン街の傭兵組合に向かう。
この日は晴れて風も弱くて過ごしやすく、住人達の多くが外に出ていた。
最北の宿屋は街の西側にあり、傭兵組合は街の北側にある。
道は歩ける程度に除雪してあったので、傭兵組合まで歩きで三十分程。
意外と子供が多いのは、雪深い地域ではやる事が少なく、他と比べて夫婦の営みが多いと聞いた覚えがあるので、そういう事なのだろうとカズは思った。
傭兵組合に着く前に、エルフを対象にして《探索》のスキルを使うが、やはりは反応ない。
この後会う人物は、探しているエルフではなく、別の人物なんだと警戒する。
傭兵組合に着くとモカが一人で入り、組頭のコナにカズを連れて来た事を伝える。
二分と経たずモカが戻り、二階の組頭の部屋にカズを案内する。
先頭モカで次がカズ、その後ろからハーリギリが続く。
「連れて来ました」
モカが一声掛けて組頭の部屋の扉を開く。
組頭のコナは部屋奥のある執務机の前に立って待っていた。
壁際にはテーブルが一台と、長椅子が二脚置かれていた。
長椅子には銀髪ショートヘアで、耳が長い女性が座っていた。
座っている位置からだと後ろ姿なので、カズからは顔が確認できない。
「名前を聞いて耳を疑ったよ。まさかと思ったけど、本当にあんただったのかい」
銀髪ショートヘアの耳の長い女性は、会った事あるような言い方をしてきた。
しかし魔族領でエルフの知り合いはいない。
だが声は以前に聞いた事あるような気がした。
「どこかで会った事ありましたか?」
「会ったのは二年くらい前になるかね。私を忘れちまったのかい?」
「二年くらい前……」
二年くらい前だとオリーブ王国から、四人で旅に出る前か出た後。
旅に出てすぐに知り合ったエルフはいない筈なので、そうなると王都オリーブに居た頃になる。
冒険者ギルドにエルフは何人も居たので、その内の誰かなのか? と、その頃の事を思い出そうと記憶の糸を辿る。
しかし魔族領に来れるようなエルフに知り合いはいない。
国の重鎮と接触出来るとしたら、王都にある各冒険者ギルドのマスター。
その中でエルフなのは第2ギルドのギルド・マスター、フローラ・クラルス・ナトゥーラだが、エルフではなく上位種のハイエルフ。
彼女ならオリーブ王国の国王と接触ができ、魔族領の事や世界を分かつ結界についても知っている可能性はある。
しかしギルド・マスターを辞めて、魔族領に来るとは考え難い。
「まだ思い出さないのかい?」
長椅子に座っていた銀髪ショートの耳の長い女性が立ち上がり、トコトコと歩いてカズの前まで来る。
「なんなら思い出すまで、ベッドの中で一戦交えようか? 以前は孫娘に止められたが、ここにはいないからね」
「孫娘? アイア…さん?」
「覚えてるじゃない」
その口調と話す内容、そして孫娘の発言で、フローラの祖母アイア・クラルス・ナトゥーラだとカズは思い出した。
アイアはエルフではなくハイエルフ。
エルフだけを対象にしていたので、探索スキルに反応しなかった理由が分かった。
「カズなら大丈夫だよ。だからあんたら二人は戻っていいよ」
「だ、そうだ。モカは仕事に戻ってくれ。ハーリギリも宿屋に戻って大丈夫だ。今度、酒をおごる。その時に説明もする」
状況がよく分からないと思いながら、モカとハーリギリは組頭の部屋から出て行った。
「説明してくれますか? アイア殿」
アイアとカズが顔見知りだと知り、コナはアイアに説明を求めた。
説明が面倒だという表情をしながらも、アイアはカズと出会った頃の話をコナに話した。
色々と端折って五分くらいで終わらせた。
そもそも孫娘のフローラの所で会ったくらいなので、話す内容はあまりない。
「孫娘さんと親しいからといって、信用出来る人物とは限らないでしょう」
「私の孫娘が人を見る目がないと言いたいのかい?」
「いえ、とんでもない。申し訳ない」
コナの態度を見ていると、アイアに頭が上がらないらしい。
傭兵組合の考えだと、実力が上のアイアには逆らえない、という事だろう。
そうすると一つ確認しなければならない事があり、カズはアイアに尋ねる。
「アイアさんは傭兵組合に登録してるんですか?」
「一応ね。こちらで街の出入りに使う身分証として。カズも登録したのかい?」
「あちら側に戻る情報が欲しかったので、知り合った元傭兵の方に、傭兵組合の事を聞いて勧められたんですよ(アイアさんに会うまでは、後悔してたけど)」
「そういえば、どうして魔族領にいるんだい? 一人だけかい?」
「あぁ…色々と事情がありまして」
カズは話を聞いていたコナに、一瞬だけ視線を移した。
アイアはその意味を理解した。
「コナに出て行ってもらうのも悪いからね。場所を変えて話を聞こうかね」
「そ、そうですか(あの事が本当か確かめたかったんだがなぁ……)」
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