人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 4 再会と帝都からの旅立ち

789 込み上げる怒り と 意図的に放出する魔力

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 アレナリアの頬にある傷跡からして、刃物のような鋭いか何か負ったのだと分かる。
 肌が変色していた事から、毒も受けたのではと考えられた。

「そのキズは?」

「前回の戦いで負ったの。治療はしたけど、毒の影響で治りが遅いみたい。でも大丈夫よ。私だって冒険者なんだから、このくらいどうって事ないわよ」

「ごめん(誰がやりやがった)」 

 カズはフツフツと怒りが込み上げてきた。
 アレナリアに傷を負わせた相手に対してもそうだが、一緒に居て守ってやれなかった自分に対しても。

「なんでカズが謝るの? 私が弱かったから、こんなケガをしたのよ」

 カズはそっと傷跡のある頬に触れ〈ハイヒール〉を使い、アレナリアの傷跡を完全に治した。
 謎の防壁魔法と、無数の雷撃でモンスターを倒し、深い傷跡を完治させる治癒魔法を目の当たりにして、アレナリアと共に戦っていた冒険者達は驚いて声が出なかった。

「ありがとう。カズ」

「あとは俺がやるから、アレナリアはみんなとここで待機してて」

「ミゼットから野盗と盗賊を、できるだけ殺さずに捕らえるように言われてるの」

「これだけの数なのに、かなり無茶な要求してきたな」

「私達も予想外だったわ。前回の倍以上だもの。なんとかモンスターだけ排除して、撤退を考えてた時にモンスターが全滅して、カズが現れたんだもの。驚いたわ」

「前回はこの半分だと、三十人くらいか?」

「そうね、そのくらいよ。モンスターは数倍だけど」

「あの中にアレナリアに傷を負わせた奴はいるか?」

「取り逃がしたから、どっかには。弓と魔法で攻撃する中距離タイプ。特徴は一度に三本の毒矢を放てる、大きな弓を持ってる長身の筋肉バカ」

 カズは先程飛んてきた矢の中に、毒矢があるのを確認する。
 そして二射目の矢にも同様の毒矢がある事を確かめ、飛んで来た方向から、毒矢を放った者を探して突き止める。
 後方に集まる者達の中に、毒矢を射ったそいつが居た。

「アイツがアレナリアの顔に傷を負わせた奴か」

「後方に集まってる連中は確実に捕らえて。逃がしたら、また野盗をどこからか集めてやって来るわ」

「アレナリアが負った以上の傷を、俺は連中に与えてやりたい(顔の肉を削いで、治癒で治してを繰り返せば、少しは反省するだろ。それでも反省しなければ……)」

「カズ」

 アレナリアは怖い顔をするカズの手を握る。
 やっと再会したアレナリアの顔を傷付けた相手に、怒り込み上げて来ていたカズだったが、アレナリアの行動で冷静になり気持ちを落ち着かせる。

「ありがとうアレナリア。大丈夫、殺すような攻撃はしない。一緒に来た冒険者に、ギルドに捕らえたと知らせに行かせてくれ」

「わかったわ。カズなら大丈夫だと思うけど、気を付けて」

「ああ。知らせに行く人以外は、ここから動かないように言っておいてくれ」

 カズはバリア・フィールドから出て、無数に倒れているモンスターの中を通り、野盗と盗賊の集まる方へ歩いて行く。
 一人で向かうカズに、三射目の矢と、魔法での火球と石礫いしつぶてが飛来する。
 射られた数十本の矢の中に、毒矢も数本混ざっている。
 カズは進める歩を止めず〈エアーバースト〉を唱え、全てを弾き返した。

 野盗と盗賊達は、弾き返されて威力を失った石礫いしつぶては避ける事すらしないが、流石に矢は盾で防御するか、持っている武器で叩き落としていた。
 中には腕や足にかすってる鈍感な野盗もいた。
 矢や威力の低い魔法での遠距離攻撃では全然効果がないと、二人を除いた六十人程の野盗と盗賊が剣や槍や斧などを手に、下卑た罵声を口々にカズ目掛けて走って行く。

 野盗と盗賊の行動で、カズは狙いを後方の二人に定め、隠蔽と隠密のスキルを解き、ダダ漏れしないように抑えていた魔力制御を止めて、少しだけ魔力を解放すると同時に《威圧》を使う。
 走っていた六十人程の野盗と盗賊が、意識を失いバタバタと倒れる。
 後方の二人も腰を抜かして座り込み、ブルブルも震えているものの、辛うじて意識を保っている。
 ギリギリ気を失わないがところを見ると、後方の二人はレベル50程度だと考えられる。
 分析すればステータスを調べる事が出来るが、どうでもいい賊二人を調べる気にはなれなかった。
 カズは倒れている野盗と盗賊の間を抜け、今回この集団を仕切っていと思われる二人の所に歩を進める。

 カズが隠蔽と隠密を解き魔力制御を止め、少しだけ魔力を解放して周囲が濃い魔力に覆われると、冒険者達は青ざめて腰を抜かした。
 冒険者達は帝国の守護者ミゼットの本気を見た事はないが、明らかにそれ以上だと思える、異常なまでの魔力を感じ取っていた。
 魔法を主体とする三人の冒険者は、特に敏感に感じ取っていた。
 だからこそアレナリアは冒険者達以上の衝撃を受け、レラは「うぁッ!」と声を上げた。
 フジも驚きと恐怖で、その場にうずくまってしまった。
 膨大な魔力が向けられる対象が、自分ではないと分かってはいるが。

 バイアステッチに居る冒険者や、魔力の感受性が高い住人、アラクネなんかは特に敏感だった。
 屋内に居る者は外に出て、南南東の空に目を向ける。
 屋外に居る一部の者も、同様に魔力を感じ取った方角に目を向けていた。
 何が見えるわけではないが、確認しずにはいれなかった。
 唯一即座に行動を起こしたのは、帝国の守護者の称号を持ち、バイアステッチの冒険者ギルドマスターのミゼットだった。
 野盗と盗賊の対処に向かったアレナリアと冒険者達が、前回と同様に撃退した、もしくは拘束したと報告に戻って来るのを待っていたが、向かった方向から異常な魔力を感じ取ると自然と体が動いていた。
 サブ・ギルドマスターのニラに一時的にギルドを任せ、ギルドマスターのミゼットはバイアステッチを飛び出し、野盗と盗賊の対処を任せたアレナリアと、同依頼を受けた冒険者達の所に急いだ。

「毒矢と魔法を使うのは、お前だな」
 
 後方で余裕の顔を見せてた二人の前まで来たカズは、その片割れがアレナリアを傷付けた筋肉バカだと確信した。

「約束でお前らを殺すような攻撃はしない。だから大人しく拘束させろ」

 穏便に話をしているカズだが、目の前の筋肉バカの自慢の筋肉を力付くで引き千切り、その口に無理矢理押し込んでやりたかった。
 しかし怒りに任せて行動しては駄目だと、気持ちを冷静に保つ。

「死ねバケモノ!」

 筋肉バカが大きな弓を拾い、立ち上がり毒矢三本を同時に射る。
 カズは飛んで来るその毒矢を掴み、バキッと握り折った。

「二度は言わない〈アースバインド〉」

 地面に生えている草が、あり得ない長さに伸び、二人に巻きついて拘束した。
 二人と同格のBランク程度の冒険者でも、筋力を強力させるスキルや魔法を使っても、簡単には引き千切れない頑丈さ。
 その辺に生えている雑草なのに。

「このままギルドに連行する。素直に聞かれた事を話すことだ。逃げるような素振りを見せたら……」

 カズが二人、特に筋肉バカを睨みつける。

「見せたら……な、なんだ?」

「気を失わない程度に痛みを与える。それでも反抗するなら、手足を切断する。安心しろ。すぐ元に戻してやる」

 筋肉バカに怒りが込み上げて、それに呼応して漏れ出している魔力が膨れ上がる。
 魔力が膨れ上がったカズの視線が、筋肉バカの全身に刺さる。
 横に居るもう一人の賊は、拘束してカズが睨めつけた直後に白目を向き気を失っていた。

「ふ、ふざけんなッ! どこの誰だか知らねぇが、そんなに怒ってんのは、あのチビエルフがてめぇの女だろ!」

「……」

「黙るって事は図星か! オレ達を捕らえた情報が仲間に渡れば、真っ先に狙うのはチビエルフだ!」

「……」

「顔に見栄えのある傷があったろ。オレがやってやった傷だ! ではははッ! 何とか言ってみろやッ! クソがッ!」
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