人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 4 再会と帝都からの旅立ち

792 この半年の出来事 1 カズが行方不明になってから

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 凄い剣幕のメリアスに、半年近く一緒に暮らしていたビワだけではなく、アレナリアとレラもどん引きしていた。
 説明する前にレラが余計な事を言ったのが原因なのだが、確かにビワを心配させたのは事実。
 怒りが少しでも冷めないと、言葉がメリアスの耳に入らないだろうと、カズはされるがまま抵抗しない。

「メリアスさん落ち着いて。レラが言ったフクシアさんは違うの。確かにカズさんと一緒に来たけど、それはパフさんに雇ってもらおうと連れて来ただけなの」

 レラが勘違いさせる言い方をしたのを訂正して、フクシアについてビワが説明した。
 メリアスは早とちりした事に気付き、怒りが収まり表情は何時も通りに戻り、カズから手を離して床に落とされた。
 メリアスは凄い形相をしていた顔を恥ずかしくなり、両手で覆い隠す。

「な、なんやそうやったんか。うちてっきり……」

「誤解だとわかってくれたのなら別に。それより、これほどいてくれませんか?」

 自分の糸でグルグル巻にして、床に転がるカズに駆け寄り、急いで解きにかかるメリアス。
 力尽くで引き千切る事は出来たが、今までビワを支えてくれたメリアスに、反省していると示した。
 そして今度は早とちりしたメリアスが、自分の間違いを正す意味で、カズは何もせず糸をほどいてもらう事にした。

「……あのぅ、メリアスさん」

「ちょっと待ってや。すぐに、あとちょっとで、ほどけるさかいに」

 メリアスが自分の出した糸で、カズをグルグル巻にしたのにも関わらず、五分経ってもほどく事ができずにいた。
 これはでは一時間経っても無理だと思い、ビワが糸をほどくのを手伝い、アレナリアが続いて動いた。
 こうなった原因を作ったレラも、渋々ながら仕方ないと手伝う。
 怒ってる時に出したメリアスの糸は、織物や刺繍に使う糸とはまるで違い、太く頑丈でなうえ絡み合い、ほどくのが困難。
 動揺してメリアスは、その事を忘れていた。
 結局十五分経ってもほどく事ができなかったので、メリアスが仕事で使っている中で分厚い革を裁断するのに使う、ドワーフの鍛冶師ヤトコが作ったハサミを自室から持って来て糸を切ってカズを解放した。

「ふぅ。メリアスさんの糸は頑丈ですね(軽く引きちぎれるかと思ったけど、そうでもなかった。力を入れすぎると部屋中が糸で散乱して、片付けるのが大変だからな。ハサミで切ってもらってよかった)」

「ほんまにすんまへん。うちの早とちりで」

「ビワの事を思って、怒ってくれたとわかってますから気にしてません。スゴい顔してましたけど」

「いややわ! みんな忘れておくれやす」

「わ…私は忘れます」

「忘れろと言われても無理よ」

「無理だよねぇ。あれは夢に出てくるよ」

 ビワはメリアスの事を思い、忘れられないだろうが忘れると言ったにも関わらず、アレナリアとレラはハッキリと無理だと首を振った。
 カズとしても間近でその表情を見てしまったので、忘れるまでには何年も掛かる。
 例え数年で忘れたとしても、何かきっかけがあれば、鮮明に思い出すに違いない。

「せめてクルエルには言わんといて」

「私は言いません」

「伝えるのは、酷ね。両者共に」

「でも話したら、見たがりそうじゃない?」

「それくらいにしておけよ、レラ。あまりメリアスさんをからかうな」

 流石にずっと一緒に暮らしているクルエルに話すのは、メリアスが可哀想だと思い、四人は黙っておく事にした。
 もしメリアスの形相をクルエルが目にする時があるとしたら、人生がめちゃくちゃになりかねない駄目な男に引っ掛かってしまったりした時だろう。
 現在のクルエルのままなら、そんな事にはならないだろうので、メリアスの形相を見る事はないだろう。

 カズは約半年前に、帝都冒険者ギルド本部の地下で起きた事から、現状に至るまでの事を三人の妻に話さなければならないと、メリアスに頼んで部屋を借りる事にした。
 ビワが寝泊まりしている部屋なら、好きに使ってくれて構わないという事だったので、四人はビワが使っている部屋に移動した。
 どういう経緯でビワ一人が、バイアステッチに来たのかや、アレナリアとレラがフジと共に行動している事。
 カズだけではなく、アレナリアやビワやレラも、離れ離れになっていた間の事を、話したいと考えていた。
 ビワの部屋に入り扉を閉めると、三人同時にカズに抱き着く。
 アレナリアは右からでビワは左から、レラは右肩に乗り顔にがっしりと。
 人目がなくなったので、夢でも幻でもないと再度確認する。

「カズだよね?」

「ああ」

「幽霊じゃないよね? カズ」

「ちゃんと生きてるよ。レラ」

「夢じゃないですよね? カズさん」

「現実だよ。ビワ」

 アレナリアの頭を撫でて、ビワは肩を抱き、レラには顔を傾けて応える。
 そのまま五分程互いの心音を聞き、心が穏やかになると話をするために離れ、二脚ある椅子にはカズとビワが座り、アレナリアとレラはベッドに座る。
 最初に話し始めたのは、カズではなくアレナリア。

 レオラと冒険者ギルド職員のサイネリアとネモフィラから、カズが消えてしまった事を聞かされてからの事を。
 まだブーロキアの仲間が潜伏しているかも知れない事から、カズと一緒に暮らしていた三人を危険から遠ざけるために、ビワがバイアステッチに移り暮らして、アレナリアとレラはキビ村近くのフジが住む森に移った事を。
 カズが行方不明になった事で、アレナリアがパーティーの代表リーダーになり、フジの仮の主人とギルドで登録されている。
 カズの行方の手掛かりが全く無いので探す事ができず、それでもフジに乗り帝国中を移動して、今までに行った場所をレラと共に回り探していた。
 二ヶ月前からミゼットに頼まれ、野盗や盗賊の討伐をするようになった。
 
 レラは大きさは憧れか欲望かアイテムを使い大きくなり、アレナリアに戦い方を習い討伐依頼を手伝えるように頑張っていた。
 それでも不安があった事で、始めはビワの所で持たせていたが、少し前からフジと共に行動する事で、今回のように戦闘の手伝いをするようになってきていた。
 バイアステッチではパフ手芸店と冒険者ギルドだけではなく、大通りの店や露店にビワやアレナリアと買い物に行ったりもしているので、顔はそれなりに知られている、と。
 バイアステッチ内で出歩く時は、大きさは憧れか欲望かアイテムを使いアレナリアと一緒に行動しているので、義姉妹や見習い冒険者なんて思っている人は多いらしい。
 女性が人口の殆どを占めているバイアステッチでは、他の街に比べてレラが危険な目に合う事はほぼないから、近場なら一人で出歩くようになっている、と。

 流石に本来の姿で出歩いていたら、妖精族フェアリーという珍しさと容姿から、連れ去られる可能性は高いと、可愛らしいを強調して自慢げにレラは語る。
 アレナリアは毎度の事だと呆れ顔をして、ビワは苦笑い。
 変わらないレラを見て微笑ましく思い、カズの口角は上がり笑う。
 バイアステッチでは有名な、アラクネのメリアスとクルエルと親しい事から、手を出すような愚かな者はバイアステッチにはいない。

 ビワはバイアステッチに来てからの事を話すも、居候しているメリアス宅では家事をして、朝になるとパフ手芸店に働きに行き、数日に一度会いに来るアレナリアとレラと過ごす。
 バイアステッチに来てからの一ヶ月は、表面上明るくしていたが、心ここに非ずの状態で、夜は涙で枕を毎夜濡らしていた。
 二ヶ月経つと家事と仕事に積極的に取り組み、悪い事を考えないようにと、周りから見ても分かるくらい無理していた。
 三ヶ月が過ぎた頃になって、周囲の皆と笑顔で向き合える様になってきて、カズが戻って来る事を信じて待ち続けていた。
 半年経った今でも、悪い夢を見る事があり、数日前も汗だくで涙を流し、夜中に目を覚ましていた、と。
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