不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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58.捨て犬

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「また、エッチしたいんなら、シャワーを浴びて来なよ」

「また、エッチしてくれるんなら行ってくる」

 萌は、勢いよく起き上がって、バスルームに走って行った。



 それから、萌はコツを得たように、3回ほどボクを射精に導いて疲れ果てて眠りについた。

「うーん」

 スマホのアラームが、深い眠りからボクを引きずり出した。先ほど寝たような気がしているのは事実で、完全に寝不足の頭痛がボクを締め付けた。隣には、穏やかな顔をして寝息を立てている。

「まだ、子供みたいだよな」

 萌の頬を撫でると、ゆで卵のようにツルツルで、マシュマロのようにやわらかかった。昨夜、ボクの上で必死になって腰を振っていた、同じ女の子とは思えないほどの透明さを漂わせている。朝日が、カーテンの隙間から入り込み、ボクの胸を刺している。ぼくは、今まで自分の弱さを嫌というほど味わってきた。しかし、今感じているのは、自分の弱さに対する嫌悪感だ。心のどこか片隅に、萌の弱みにつけ込んで結局は体の関係を持ってしまった。本当に、この子のことを想っていたなら拒絶する選択肢も残っていただろうに。

「ごめんね」

 ボクは、枕に埋まっている萌の頭を静かに撫でた。

「う、うーん」

 眠そうにうっすら目を開けた萌は、頭にあった手を取って胸で抱きしめた。なにも着けていない胸から、萌の暖かさが伝わって来る。

「もう、朝なの?」

「そうだよ」

「ずっと、夜が明けなくても良かったのに」

「これからどうする?」

「どうしよう?」

 寝起きだからなのか、なにも浮かばないふうに、揺れる心が透けて見えた気がした。

「萌は、どうしたいの?」

「うーん」

 目を覚めさすように、背伸びをしながらボクの顔を伺っている。

「わたし、瑞樹のお家に行きたいな」

「そっかぁ」

「ダメだって瑞樹が言ったら、また今晩、ホテルに一緒に泊まってくれる人を探さないといけないし」

 くちゃくちゃになった髪の毛の間から、捨てられた子犬のような瞳がこちらを見つめている。

「うーん」

 ボクは、時間稼ぎの言葉を吐き出して、自分が『しあわせの王子』の夢を見る。たぶん、正解ではないという忠告の言葉が頭の中で泳ぎまくっている。しかし、いつのまにか不正解という岸辺にたどり着いている。

「じゃあ、落ち着くまで、うちにいていいよ」

「ほんとに」

「ああ、でもうちではエッチは禁止だよ」

「ええー」
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