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28話 ミドリムシの果物屋さん

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 孤児院に行った翌日緑は、自分達が孤児院に何ができるか考える。



 まず、定期的な金銭の援助をするのは自分がどのくらい生きるかわからないが自分の死後はそれも途絶えてしまう事を考えると得策ではない。他の支援をする人間を集めるにしても支援する人間に見返りが無ければそれも続かない。



 緑は自分が以前の世界で施設の中で育ったことを思い出すがこちらの世界の孤児院の環境は自分がお世話になった施設と比べるとはるかに悪い。



 そんな事を考えている時に緑は思いつく。



「そうだ学校だ・・・・」



 緑は国が主体になって学校を立ち上げさせそこに寄付をする人間は優先的に孤児院で教育を受けた子供達を確保できる形にすれば国や貴族や商人も納得できるのではないかと考える。



 また、緑はもうすぐ王様から直々にIランクの称号を受ける予定がある。その時に進言してみてはどうかと考える。この世界の識字率がどの程度かわからない緑は学校で教えてしまえばいいと考えるのであった。



 翌日緑は、冒険者ギルドに行き依頼ボードを見つめるのであった。緑が依頼ボードを見つめていると採取の依頼があり、それは珍しい事に果物の採取依頼で数が1000個となっていた。



 詳しく見ると城で出される料理に使われる果実をたくさん集めたいとの事で量は多ければ多いほど良いとされていたため緑はすぐに依頼主を訪ねる事にした。



 依頼主は城の料理長だったので緑はすぐに城に行く。



 城の入り口に着き門番に依頼の事を話すと少し待つように言われるのであった。



 門番の1人が城の中に確認に行きすぐさま戻ってくると、緑達は城の中の一室に通され待つように言われ部屋の中を見ながら時間を潰す。



 緑が少しの間、部屋の中を眺めて待っているとドアがノックされ1人の男が入ってくる。



 その男は体中に傷の跡があり筋骨隆々のまるで冒険者の様な体格をしているが服装はまさに料理人であった。



「俺はこの城の料理長をしているアルフって言うもんだ。お前があの依頼のを受けてくれた冒険者か? 見たところ果物はまだ持ってきてないようだが? 今から説明をしてくれるのか?」



「初めまして水野緑と申します。説明というか実際に見てもらって選んでもらおうかと思っています」



 料理長は緑が名乗った瞬間目を見開き、すぐさま見定めるような目つきに変わると実際に見るとはどうするのか尋ねる。



 尋ねられた緑はすぐさまダンジョンの扉を開きアルフを中に招き入れるのであった。



 初めは警戒したアルフであったが緑がダンジョンの説明をすると納得し扉の中に入る。中に入ったアルフを迎えたのは蟲人の5人を筆頭に数十匹の彼等の子供達が待っていた。



「「いらっしゃいませ」」



 蟲人達とその子供達に歓迎の挨拶をされるアルフであったが、その光景に絶句する。数十匹とは言え世間一般ではモンスターと言われる彼らが統率され言葉は発しないが自我を待っており、尚且つ統率者と一緒に歓迎の礼をする姿は自分の常識を覆される。



 その後アルフは自分の常識が何だったのかと思い知らされる。アルフは王都では果実を探し尽くしたと思い様々な場所から果実を取り寄せてはいたが緑のダンジョンにはアルフがまだ見たことの無い果実で溢れていた。



 これは、緑の超ミドリムシの能力でもともとあった果物を大きくしたり、さらに甘味や味を濃くしたものであった。



 また、緑が前の世界で食べたものや聞いたものを超ミドリムシの能力で無理やり作った物もありそれは、こちらの世界に無いものがたくさんある。



 しかし、そんな事を知らないアルフは自分にはまだまだ知らない物があると勘違し、同時に緑と関係をもてばそれらが手に入ると思う。



「依頼達成の報告をしておく!とりあえず、最初の依頼の通り1000個お果物を選ばせてもらう。それ以降に関しては、追加報酬としてギルドを通して礼をする」



 そう言うとアルフは右手を出し緑に握手を求める。それを見た緑は力強くアルフの手を握り返すのであった。その後アルフはダンジョンで1500個ほどの果実を緑より受け取り本来の依頼の過剰分を追って追加の報酬を出し、元の3倍の報酬を払うことを約束する。



 アルフはその後、緑が出店する予定の店で出そうと思っている料理を振舞われ、料理の改善点などを緑達と話し合うのであった。



 数時間後、緑達はまた会うことを約束し分かれる。



 その日から緑は頻繁にアルフと会うことになり、緑はアルフの料理を習い、アルフは緑から果実だけでなく他の農作物も売ってもらい、料理の指導と作物を交換する。



 そんな日が続き王都にジェスターのギルドマスターのピエールが着いたとシャークに言われシャークと緑のチームはピーエルが泊っている宿に向かうのであった。



 シャークが宿の一室のドアをノックるするとドアが開きピエールが中に入るように言う。緑とシャークが中に入るとそこはピエール1人では広すぎる部屋を見て緑は驚く。



 だが、ピエールは緑とシャークのチームが中に入るのを確認するとすぐに緑にダンジョンの扉を開き中の店で紅茶を出してくれと頼むのであった。



 全員でダンジョンに入り、緑が全員の分の飲み物を用意する。ピエールが出された紅茶を一口飲むと体の疲れが癒される。体の疲れが抜けたピエールが緑に尋ねる。



「緑、その小さな少年は新しい家族か?」



 その言葉を聞いた緑とシャークのチームは胡蝶が家族になった経緯をピエールに説明する。胡蝶と家族になった話の経緯が終わると胡蝶の中の執事が出てきて挨拶をする。



 そこから、胡蝶の中の子供の人格と執事の人格の話をするとピエールが話をするのに2人の人格の名前が一緒だと紛らわしいため、執事の人格にも名前を付けるように言う。



 話し合った結果執事の人格の名前はファントムと名付ける事になる。その後ピエールと緑のチームは数日後に控えたIランクの正式発表の打ち合わせをするのであった。

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