68 / 178
68話 ミドリムシはご褒美をもらう
しおりを挟む「はぁ~ 極楽極楽」
「まーちゃん、言ってることがおっさんだよ」
「おっさんでいいから、ゆっくり楽しませてくれ。こっちの世界に来てからはあんまり風呂に入れなかったからな」
「確かに僕もそうだったね、お風呂はこっちじゃ贅沢になるもんんね」
緑がそう言った後、魔緑は黙りこむ。しばらくの沈黙のあと緑の方を見ずに呟くように尋ねる。
「なぁ、お前は今幸せか?」
「うん、今すっごく幸せ・・・・ まーちゃんは?」
「ああ、悔しいが俺も幸せだ」
その言葉のあと静寂に辺りは包まれる。
「「こっちの世界にきてよかったね(な)」」
2人の言葉が重なり驚く。
「あははははは」「くくくくく」
顔を見合わせた2人は笑い始める。
「もしかしたら居るかもしれない3人目もこんなふうに話せたらいいね」
「・・・・ああ、そうだな」
緑の言葉の後に魔緑は少しの間考え込み返事をする。
「まーちゃん、そろそろ上がろうか王様のとこにもいかないといけないし」
「ああ、憂鬱だがいかないとな」
そう言って2人のミドリムシは温泉から上がるのであった。
「緑よ昨日はご苦労であった。改めて感謝する」
王は緑から視線を魔緑に移す。
「魔緑もご苦労であった。我らが初めからお前を信じていれば大事にならずにすんだが、お前の言葉を信じて直ぐに行動できなかった事情も考慮してほしい」
「ああ、わかっているよ」
魔緑は短く返事をすると頷く。
「そうか・・・・」
再びは王は緑に向き直る。
「緑よお前には褒美を出さなければならない。何か望むものはあるか?」
「この国にダンジョンの入り口を置きたいです」
「それは褒美になるのか?」
「はい、とてもありがたいです」
「なら、許可する! 場所はどこがいい?」
「 他の国では孤児院においていたんですがこちらには孤児院はありますか?」
「残念ながら我らは数が少ない、もし孤児が出たとなれば他の家族が世話をする。その為この国には孤児院はないのだ」
「うーん、それならどこがいいでしょうか? リーフ王国の都合の良い場所でいいんですが」
「ふむ、それなら城の訓練所でもいいかの? あそこであれば常に人もいる。緑達に連絡をする際も時間を取られない」
「はい、ではそこでお願いします」
「魔緑よお前はどうする?」
「ああ、俺は緑達と一緒ならこの国を歩いても良くしてくれ。お尋ね者のままじゃ世話になったやつらに挨拶にいけやしねぇ」
「お主もそれだけで良いのか?」
「ああ、それで大丈夫だ。俺は今幸せの絶頂だからな」
そう言って魔緑は王に向かってニヤリと笑う。
「そうか・・・・ では魔緑のリーフ王国の立ち入り禁止を解除する!」
「おい、俺は緑と一緒であればと言ったぞ?」
「ああ、それは褒美だ。そして、お前の言葉を直ぐに信じれなかった事に対する詫びもいるじゃろう?」
今度は王が魔緑に向かってニヤリと笑う。
「くくくくく」「わはははははは」
王がニヤリと魔緑に笑って見せた後、2人は笑うのであった。
「じゃあここに設置しますね」
「よろしくお願いします」
訓練場のすぐ近くに騎士達か待機する場所の隣の部屋を使う事になった。
「ここには常に誰かいますので、ご用のときはすぐにお声をかけてください」
「はい、わかりました。その時は宜しくお願いします」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って案内をした騎士は頭を下げるのであった。
「よし、これでいいかな?」
緑がダンジョンの扉を設置し終わると再び謁見の間に戻る。
「緑よ設置が完了したようだな。ご苦労である」
「いえ、ダンジョンを設置するのに必要なのは魔力だけですから」
「そうか・・・・ お前たちはこれからどうするのだ?」
「そうですね、次はドワーフの国へ行こうかと思っています」
「ふむ、ドワーフの国か。直ぐに旅立つのか?」
「少しだけ、こちらの国に滞在したいと思っています」
「なら引き続きピエールが案内すればよいか・・・・ 頼めるか?」
そう言うと王はピエールの方を向く。
「わかりました」
王の提案にピエールが跪き返事をする。
「そうだ、ピエール。お前はこれからどうするのだ?」
「もし、緑がいいならダンジョンの中で仕事を続けよかと思います」
「良いんですか? ピエールさん?」
「ああ、緑が許してくれるならダンジョンに永住したいくらいだ」
「むぅ、羨ましいの・・・・ 私も王を引退して緑のダンジョンでくらしたいのう」
「「ダメです!」」
「ダメかぁ~」
王の言葉に間髪入れず周りのエルフ達が王を止める。
「では緑よもうしばらくエルフの国を堪能していってくれ」
そう言って謁見は終わるのであった。
「「うわーん、緑! 心配したんだからね~」」
緑が皆でエルフの国を散策していると突然、泣きべそをかく2人のエルフの子供に抱きつかれる。
その2人のエルフは緑に抱き着いて見上げるとみるみる目に涙をため始める。
「うううう。緑に似てるけど緑じゃない~」「偽物だ~」
「「うえ~ん」」
そんな2人のエルフの子供が可愛く思え引き離すことができない緑は魔緑に顔を向ける。
「あ~ お前達。俺はこっちだ」
「「緑だ~」」
そう言って2人は緑からはなれ魔緑に抱き着く。
「こらお前達! 涙と鼻水をふけ!」
「「緑がいたー。 良かったよ」」
緑達は2人が落ち着くの待つのであった。
「もう! 本当に心配したんだからね」「そうそう! みんな緑の事を魔緑って言うし」
「あー 悪かった、悪かった」
「「全然反省してなーい!!」」
「ふふふふ」
そんな魔緑と2人の会話を聞いていた緑が笑い始める。
「あ、そうだ偽物がいる!」「緑の偽物だ!」
「わははははは、俺は緑の偽物だー お前達を食べちゃうぞー」
「「ぎゃああああ」」
ボコ!
「痛いよ・・・・ まーちゃん」
悪乗りした緑を魔緑が拳骨を落とす。
「あんまり、2人を脅かすな」
「ふふふふ、ごめんね悪乗りしすぎちゃった」
「こいつらは、俺がこの世界に来て世話になった家族の子供達なんだ」
「そうなんだ!? まーちゃんがお世話になりました」
緑は魔緑より2人との関係性を聞きお礼を言う。
「魔緑は家族なんだからそんなお礼はいらないよ!」「そうだ! いらないよ!」
2人がそう言うと緑は腰を落とし2人の目線の高さに自分も合わせる。
「「なんだよ」」
「可愛い!」
そう言って緑は2人を抱きしめる。
「「ぎゃああ! 離せ~ この偽物め~」」
「緑そのまま捕まえとけこいつらの家にいく」
「わかったよ」
魔緑がそう言うと緑達は彼らの家に向かうのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
元構造解析研究者の異世界冒険譚
犬社護
ファンタジー
主人公は持水薫、女30歳、独身。趣味はあらゆる物質の立体構造を調べ眺めること、構造解析研究者であったが、地震で後輩を庇い命を落とす。魂となった彼女は女神と出会い、話をした結果、後輩を助けたこともあってスキル2つを持ってすぐに転生することになった。転生先は、地球からはるか遠く離れた惑星ガーランド、エルディア王国のある貴族の娘であった。前世の記憶を持ったまま、持水薫改めシャーロット・エルバランは誕生した。転生の際に選んだスキルは『構造解析』と『構造編集』。2つのスキルと持ち前の知能の高さを生かし、順調な異世界生活を送っていたが、とある女の子と出会った事で、人生が激変することになる。
果たして、シャーロットは新たな人生を生き抜くことが出来るのだろうか?
…………………
7歳序盤まではほのぼのとした話が続きますが、7歳中盤から未開の地へ転移されます。転移以降、物語はスローペースで進んでいきます。読者によっては、早くこの先を知りたいのに、話が進まないよと思う方もおられるかもしれません。のんびりした気持ちで読んで頂けると嬉しいです。
…………………
主人公シャーロットは、チートスキルを持っていますが、最弱スタートです。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる