緑の体だからゴブリン?花が咲いてるからドライアド?いいえ、超ミドリムシです!異世界で光合成して家族が増殖しました!

もう我慢できない

文字の大きさ
113 / 178

113話 ミドリムシのおかたずけ2

しおりを挟む

「皆さん初めましてIランク冒険者の水野 緑と言います。よろしくお願いします」

「俺は魔緑だよろしく」

 緑の挨拶を聞いた冒険者達はゴクリと唾を飲み込む。先ほどまで自分達が壊そうとしていた迷路の製作者の緑がした自己紹介は異常な能力を持った冒険者とは思えない丁寧なものであり、それが逆に冒険者達を不安にさせたのであった。

「あんたが迷路の製作者か……」

「この迷路はどうなっているんだ?」

「氷で作られてるようだが溶けている様子もない」

 冒険者達は思い思いの質問を緑にすると、そのあまりに多い質問と謎を解こうと必死になり始める冒険者達の様子に緑が慌て始める。

「あわわわわ、皆さん落ち着いてください。この迷路はですね……」

「緑まて!」

 迷路の事について話そうとし始めた緑をシャークが止める。

「おいおいお前達このバカげた迷路を見たから質問したくなるのはわかるがそれはマナー違反じゃないか!?」

「「!?」」

 シャークの言う通り冒険者同士でお互いの能力について探りを入れるのはマナー違反となっている。

 それは、冒険者達の能力は自分達の飯のタネであり基本的に中の良い者や絆の強い者達での間のみ、その能力を教え合い見知らずのしかも大勢に聞かれたからといって教えるものではない。

「なぁ、緑この迷路の頑丈さをお前が全員に教えた所でこいつらが使えるようになるのか?」

「……いいえ、残念ながらそれは無理ですね」

「なら、この迷路の話はおしまいだ。魔緑早速だが迷路を壊すのをたのむ」

「む? なんで俺が迷路を壊すとわかった?」

「お前が昨日は居なかったのにここに来たからだ。どうせお前の火の魔法で氷をとかすんだろう?」

「ああ、そうだ……」

「おい! 本当に火の魔法でこいつを溶かす事ができるのか?」

 先ほどまで火の魔法で迷路を溶かそうとしていた冒険者の1人が思わず声を上げる。

「ああ、それは単純に温度が足りなかったのだろう?」

「なんだと!? でめぇ喧嘩をうっているのか!?」

 冒険者の質問にただ答えただけの魔緑であったが冒険者は自分の魔法を馬鹿にされたと思い声を荒げる。

 そんな中、人込みをかき分け1人の冒険者が緑達の元にやってい来る。

「すまん! 通してくれ! お~い! 緑、魔緑来たぞ~!」

 そう言って緑達を囲む人垣から出てきたのはギルであった。

「「炎剣!?」」

「あ! ギルさん!」「ああ、来たか」

「俺も緑の迷路を壊すのを手伝えば良いんだな?」

「ああ、そうだ頼む。まずは通路を広げる」

 今、緑達が居る場所は城門前でシャーク達と緑が力を合わせて龍種と戦った大きな広場であり、ここには城門から直接入れるように人が1人通れるくらいで魔物が通れない通路がいくつも開けられていた。

 龍種との戦いのさ中、広場を水で満たすためにこの穴は他の冒険者の魔法により塞がれていた。スタンピードの後の処理をするために通路を埋めていた氷は除去されたが、その他の部分は緑が作り出したためにそのままになっていた。

 緑達が呼ばれたのは、その通路では大型の魔物を解体するための道具を乗せた荷車や討伐した魔物を運ぶために用意された荷車、王都を出て他の街に行く馬車などが通れないために迷路を壊すように言われたためであった。

「全部を壊すとなると時間んがかかりすぎる。まずは幾つかの通路を繋げて大きな通路を作る。その後に通路の高さをあげる」

「わかった!」

「お、始めるのか? お~い、今から魔緑とギルが迷路の通路をまとめて大きくするから2人の周りには近づくなよ~」

 先ほど魔緑に魔法の温度が低いと言われ怒っていた冒険者は【炎剣】の2つ名を持つギルに委縮してしまい様子を見ていた。

「ギル準備はいいか?」「おう!」

 魔緑とギルが声を掛け合った後ギルが持っていた剣が炎に包まれその炎が赤から青に色を変えさらに徐々に白くなっていく。

「お、炎の温度また上がったんじゃないか?」

「ああ、今は制御も上手くいって火傷をするような事も無くなったけど温度を上げるのも難しくなってな」

「お前ならすぐだろう」

「「白い炎だと……」

 2人の様子を見ていた冒険者達は思わず耳を疑った。2つ名を持つギルが魔緑の魔法の温度には叶わないと言っていおり、ギルの炎の剣の色を他の冒険者達は見たことが無かった。

「俺も準備するか」

 そう言って魔緑の前に真っ白な火の玉が現れる。それを見た冒険者達は絶句する。魔緑達の話を聞く限り炎はその色が白くなるほど温度が上がると推測させる中、【炎剣】以上の真っ白な炎を出した魔緑にもう文句を言う気になる冒険者は居なかった。

「やっぱり魔緑の炎は綺麗だな~」

「おいおい、お前達イチャツクのは仕事に後にしてくれよ」

 そう言ってシャークは魔緑の出した火の玉を見て惚けていたギルをからかう。

 3人がそんな会話をしていると緑が口を開く。

「皆、早くしないと日が暮れちゃうよ~」

「「あ!」」

「ああ、そうだなすまん……」「緑わるいな」「がはははは、じゃあ頼むぞ」

 魔緑、ギル、シャークはいつもとは立場が逆になったと思い緑に謝ると作業にとりかかるのであった。



 じゅううううぅぅぅぅ!!

「「マジで氷が解けている・・・・」」

 今は魔緑とギルは幾つかの並んだ通路を両端から中心に向かってつなげるために魔法と剣を振るっていた。その2人の様子を見て冒険者達は迷路の一部が溶けていることに驚き、同時に自分たちの魔法の炎の温度が低かったことを痛感していた。

「緑、実をくれ」「はいまーちゃん」

「緑悪い俺もくれ」「はい、ギルさん」

 2人の様子を見て驚いていた冒険者達であったがその後に見る更なる光景で驚きはすぐに上書きされる。

『『なんだこいつ……!? ドライアドか何かか?』』

『『だが兄弟と思われるもう1人は強力な火の魔法を使っているしな…… 仮にドライアドならここまで強力な火の魔法は使えないはず……』』

 2人がせっせと氷の迷路を切っている間、緑はタライに水をためてそこに浸かっていた。しかもそ様子を見ている冒険者達が不思議そうにしている間に、緑の髪の隙間に小さな実がなる。その実はわずかな間に大きくなり甘い良い香りを放ち始める。

 完熟になったと思われる実を緑は自分の頭部より収穫すると袋の中に入れる。

「やっぱり緑の実は美味いな~ これで魔力も回復するんだから信じられないな!」

「あ、馬鹿、おまえ……」

 緑の実を食べながら魔力を回復させているギルが思わずこぼす。

「「なに! 魔力が回復するだと!?」」

 体力を回復させたり傷を治すアイテムなどはあるが魔力を回復させるアイテムは貴重で高額であり、魔緑とギルが先ほどから頻繁に食べているのを見ていた冒険者達が驚きの声を上げる。

「なぁ、あんた緑と言ったか。頼むその実を1ついや、半分、かけらでもいい少し食わしてくれないか!?」

 驚きの声を上げた冒険者が次々に緑に頼みこむ。

「良いですよ」

 そう言って緑は袋より実を取り出す。それを見た冒険者達が殺到しようとするがシャークが止める。

「おい、お前ら仕事をする前に何をしてるんだ!」

「いや、シャークさん……」

 シャークの言葉に気まずそうにする冒険者達。

「は~ 仕方ねぇな」

 ため息を吐きながらシャークは緑に謝り実を受け取る。

「緑すまんな」

「大丈夫ですよ」

 緑はニコリと笑い返事をするとシャークに実をいくつか渡す。

「おい、お前ら4人づつに分かれろ、チームとか関係なしだ、さっさと並べ」

 その声に冒険者達は一瞬で4人づつに分かれる。それを見たシャークが4人にまとまった冒険者達に1つづつ実を渡していく。

「いいか、綺麗に4等分しろよ喧嘩なんかしたら没収するからな!」

 実を配られた冒険者達は実を4等分にするとそれぞれ口にする。魔力が余っている者達に至ってはどれほど回復するか確かめるためにわざわざ魔力を消費して食べる者が出るほどであった。

「本当に回復した……」「おいおい俺に至っては魔力が半分以上回復したぞ」

「「何!?」」

 わざわざ魔力を消費した者達の中でも魔力の量が多い者の言葉に冒険者達は驚く。そこからは冒険者達が緑の周りに集まる。

「あんた俺達のチームにはいらないか?」
「俺達のチームの方がいいぜ!」
「私達のチームにはいらない?」

 驚きで思考回路がマヒしている冒険者達は緑を自分達のチームにと勧誘をし始める。

「お前ら馬鹿か? むしろ緑のチームに入れてもらうようにするだろう?」

 その様子を見ていたシャークが呟く。

「「あ!!」」

 そう言うと今度は自分達を緑に押し売ろうとする冒険者達だがシャークがさらに言葉を続ける。

「それと一言いっておくがな。一昨日のスタンピードでそいつのチームはチームを分割した上で3匹の龍種を倒しているからな……」

「龍種を3匹……」

 それを聞いて思わず言葉を漏らしたあと冒険者達は誰も口を開こうとはしなかった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護
ファンタジー
主人公は持水薫、女30歳、独身。趣味はあらゆる物質の立体構造を調べ眺めること、構造解析研究者であったが、地震で後輩を庇い命を落とす。魂となった彼女は女神と出会い、話をした結果、後輩を助けたこともあってスキル2つを持ってすぐに転生することになった。転生先は、地球からはるか遠く離れた惑星ガーランド、エルディア王国のある貴族の娘であった。前世の記憶を持ったまま、持水薫改めシャーロット・エルバランは誕生した。転生の際に選んだスキルは『構造解析』と『構造編集』。2つのスキルと持ち前の知能の高さを生かし、順調な異世界生活を送っていたが、とある女の子と出会った事で、人生が激変することになる。 果たして、シャーロットは新たな人生を生き抜くことが出来るのだろうか? ………………… 7歳序盤まではほのぼのとした話が続きますが、7歳中盤から未開の地へ転移されます。転移以降、物語はスローペースで進んでいきます。読者によっては、早くこの先を知りたいのに、話が進まないよと思う方もおられるかもしれません。のんびりした気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ………………… 主人公シャーロットは、チートスキルを持っていますが、最弱スタートです。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...