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129話 ミドリムシの入学式

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「「しゅっぱつしんこー!」」

 干支緑達はお気に入りの1匹のムカデの魔物に全員で乗り学校に向かう。

「キャー! 魔物よー!」「助けてー!」

「「しゅっぱつしんこー」」

 干支緑達はお気に入りの1匹のムカデのモンスターに全員で乗り学校に向かう。

「キャー! 魔物よー!」「助けてー!」

「なんだあの魔物は逃げろー!」

「だれか警備の人を呼んでー!」

 だが、向かう途中で干支緑達の乗る魔物に驚く者が多く、学校までの道に案内のためにいた学校の関係者から魔物をしまうように言われ徒歩で向かう。

 学校に着くと入学式が始まり、その間干支緑達は緑に言われたとおり我慢し、大人しくしている。

 何とか干支緑達は我慢し続け、入学式が終わるとピエールが干支緑達の元にやって来て声をかける。

「おーい、干支達ー、こっちに来てくれるか―」

「「はーい♪」」

 呼ばれた干支緑達は、ピエールの元に集まる。

「お前達朝からやってくれたな…… 案内の者達から話は聞いたぞ。ムカデの魔物に乗って来るとは緑達は何も言わなかったのか? まぁ今更言ってもしかたがない。これからのあ話をしよう。まずは冒険者クラスで勉強することになる。頼むから他の冒険者達をケガさせないでくれよ。あと、魔物を出すのも魔法もつかわないでくれよ」

「「はーい!」」

 返事だけは良い干支緑達を見るピエールはヤレヤレと頭をふる。ピエールは冒険者の校舎までの地図を渡すと職員室に向かう。

「頼むから問題を起こさないでくれよ」

 そう言ったピエールを見送った干支緑達は貰った地図を頼りに冒険者育成クラスの校舎に1列になって向かいはじめる。

 干支緑達が校舎に近づくにつれて周りには冒険者達が目立つようになる。冒険者達は初めてあった者同士で話たり、もともと知り合い同士で話しながら教室に向かっていると嫌でも干支緑達が目にとまる。

 ベテランやランクの高い冒険者達なら干支緑達の姿を見るだけで緑の身内と容易に想像できるが、今から学校に通うのは冒険者になる前の者達であり、そんな事など知りもしない。

「おい、何で俺達が向かう教室にあんな子供もむかっているんだ?」

「向かう教室をまちがっているんじゃねぇか?」

「校舎につけばわかるだろう」

 そんな会話の中、干支緑達は目的の校舎の前に着くと喜びの声を上げる。

「「ついたー」」

 そんな光景をほほえましく見ている冒険者達は内心、干支緑達が間違って来てしまったと思っておりすぐに気づき違う校舎に向かうだろうと思っていた。

 だが、干支緑達はもう1度ピエールから渡された地図を確認すると校舎の中に入っていく。冒険者育成クラスは入学前にその能力を測定しクラスが冒険者ランクに様にわけられていた。干支緑達が向かった教室はSクラスの教室でありその教室の扉を勢いよく開ける。

「「こんにちわー」」

「sクラスに入っていったぞ!?」

 干支緑達の姿を見ていた冒険者達は驚きの声を上げる。

 教室の中の者達はさらに驚き様子を見ていた。

 sクラスに判定された者達は学校に入れるだけで全員が有望視させる者達でありその自負もしていた。そんな者達は傲慢になりがちであるが、その中でもさらに一握りの性質が善良なもの達だけ緑のダンジョンの学校に入れたために干支緑達を見て優しく話しかける。

「僕達はダンジョンに住んでる子達かな? ここは冒険者になる人が勉強をするところだからお家にかえろうね~」

「「かえらなーい、べんきょうしにきたのー」」

「「え!?」」

「「ほら、名前もかいてあるー」」

 そう言って干支緑達は黒板に書かれた座席表に自分達の名前があることを指さす。

「子です」「丑です」「寅です」卯です」「巳です」「午です」「未です」「申です」「酉です」「戌です」「亥です」

「「よろしくおねがいします!!」」

 干支達の言葉を聞き、周りで様子を見ていた他の冒険者達も驚き集まって来る。

「君達、今の話は本当かい?」

「「本当です!」」

 そう言ってニコリと笑う干支緑達を見て困惑する冒険者達。そんな中、1人の冒険者が口を開く。

「本人達がああ言っているんだ、先生がくれば本当かどうかわかるんだそれまでは、クラスメイトとして接しようじゃないか」

 クラスに居た者達は、干支緑達が嘘や勘違いしてるとも思わず、これから一緒に勉強するクラスメイトとして接しようと話すと干支緑達に質問を始める。

「皆はどこに住んでるの?」「「ダンジョンー!」」

「なんで冒険者になるの?」「「おにぃちゃんがぼうけんしゃだからー♪」」

「ちなみにお名前は?」「「水野 緑ー♪」」

「「!?」」

 3つ目の答えを聞いたクラスメイト達は驚きお互いの顔を見合う。

「お兄ちゃんって1人だけ?」

 そう恐る恐る尋ねるクラスメイト。

「「ううん、魔緑おにぃちゃんもいてるー」」

 その答えを聞くと全員が目を瞑り深く息を吸って吐き、一度落ち着くとそろえて声を上げる。

「「チーム【軍団レギオン】の家族だこの子達!!」」

 そこから干支緑達は質問攻めにあう。チーム【軍団レギオン】は普段どんな訓練をしているのか、普段何をたべているのかなど日常生活の質問から戦闘訓練や倒した魔物の事など数々の質問をされ無邪気に答えていく。そんな中、教室の扉が開き2人の人物が入ってくる。

 その2人を見た干支緑達は声を上げる。

「「ピエールさんとゴードンさんだ♪」」

「さっそく打ち解けてるみたいだな」「さすが選びぬかれた者達だ干支緑達を馬鹿にしたような態度をとってないようだな」

 ピエールとゴードンがそう言うと話していた全員が自分の席に着席する。

「私はエルフのピエール」「俺はドワーフのゴードンだ」

「「よろしくお願いします!!」」

 2人が名乗ると生徒たち全員が声をそろえ挨拶をするのを見て頷く。その直後にピエールが1歩前に出て話はじめる。

「まず、初めに注意することを伝える」

 いきなり教師の2人が名乗った後に行きなり注意することを話すとなり生徒達は緊張した顔つきで話を注意深く聞く。

「もう、知ってると思うがこのクラスに居る子供達の事だ」

 ピエールの言葉に生徒たちの視線が11人の干支緑達に集まる。

「こいつらの能力は本当にデタラメだ。お前達もチーム【軍団レギオン】の事は知っているだろう?そいつらはその家族だ。お前達も聞いたことがある様々な話は本当の事だ。むしろ普通とは逆に伝わるにつれて話が小さくなっている場合もあるくらいだ」

 ゴードンがピエールの言葉の後に話始めると、生徒達は目をキラキラと輝かせさせて話を聞くがその次のピエールの言葉でそれまで和やかな雰囲気が凍り付く。

「その子達1人1人は戦闘力以外でsランクになったチームを超える戦闘力を持っている」

 さらにゴードンが続ける。

「そいつらが本気になったらピエールも俺も含めてこの教室の者達は5分もかからず全員が死ぬことになるだろう……」

 その言葉を聞いた生徒達は青い顔をして干支緑達を見るのであった。
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