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165話 ミドリムシと子供達
しおりを挟む「お! なんか斥候に出てくれてるレイの子供から連絡が来たみたいやね」
「ふむ、どんな連絡のなのかのう?」
「蟲人の方、訳してください」
3姫達が斥候として先頭を進んでいるレイの子供達からの連絡を蟲人に訳す様に頼む。
ヒカリ、クウ、レイの子供達との意思疎通は蟲人達を介してするために、今蟲人が居ないこのグループではウィスプの国の蟲人が付いてきており、その通訳をしていた。
「なんといっているのんだ?」
「わざわざ、レイの子供達が連絡をよこすなんてなんなのかな?」
そう言うのはノームと腐緑。3姫が居るグループには腐緑が入ることが満場一致で決まっていた。
「なにやら、この先に村があるそうなんですが……その村には子供しかいないそうなんです」
「怪しいねぇ……」
蟲人の通訳を聞いた腐緑が呟き、その言葉に珊瑚が尋ねる。
「あの。ふーちゃん何が怪しいんですか?」
「確かに怪しいな……」
珊瑚の質問に腐緑が答える前にノームも頷く。
「それは、この先の村は戦争の最前線からかなり離れているけど、今って戦争中だよね? そんな時に村に子供だけのこすかな?」
腐緑は、【水野 緑】の中でも性格に難はあるものの知性は1番と思われていた。【水野 緑】が一度見た本の内容などは一言一句覚えており、もとが中学生とは思えないほどの知識と知性を持ち、その2つ連結し時折鋭い言葉を口にするのであった。
「ちなみにその村はなんの蟲人の村なんだろう?」
腐緑にそう尋ねられた蟲人は自分が悪いわけでもないのに申し訳なさそうに返事をする。
「それが……連絡では、その村の蟲人達が何の蟲人がわからないと……そのためにこちらに指示を仰ぎたいと連絡してきたそうです」
蟲人の返事を聞いた腐緑は、蟲人が何の蟲人か聞いたにも関わらず、わからないと言われると直ぐにその村に行ってみようと言う。
「そっか、それじゃあ疑問点は置いておいてとにかく行ってみよう。琉璃ちゃん、凛ちゃん、珊瑚ちゃん打ち合わせ通りにね」
腐緑がそういうと3姫が頷くのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
レイの子供達が報告した村の入り口に立つ3姫とノーム、その後ろに腐緑が控えている。彼女達の姿を村の者が見つけ駆け寄ってくる。
「「こんにちわ~」」
そう挨拶したのは、小さな子供達であった。
「「こんにちわ~」」
その挨拶に腐緑達も挨拶をかえし、それを確認すると凜が子供達に尋ねる。
「なぁ、誰か大人の人を呼んで来てくれへんかな?」
「「今はいないのー」」
「1人もおらへんの?」
「お父さんたちは狩りに行ってて、お母さんたちも食べ物を取りに森の中にいってますー」
そう言った凜の質問に子供達の中でも少しだけ背の高い少年が返事をする。琉璃がその返事を聞いた上でさらに少年に質問をする。
「今は戦争中なのに大人がいないのかのう?」
そんな琉璃の言葉に少年だけではなく、他の子供達も加わりニコリと笑い返事をする
「「うん、直ぐに帰って来るって言ってた」」
その言葉の後に今度は、少年の背丈に近い少女が口を開く。
「大人の人がきたら村長のお家に案内するようにいわれてるので皆様、村長の家で待っても耐えますか?」
「え、いいんですか? 知らない人を村の中にいれるなんてすっごく危なくないですか?」
「大丈夫です。戦争してるけどこんな端っこの村にまで敵はこないって村長やお父さん達が言ってました」
そう言って少女は無邪気な笑顔を見せる。
「なら、村長のお家に案内してもらえるかな?」
「「は~い」」
そう返事をした子供達は腐緑達を村長の家に案内する。
「本当に子供しかおらへんやん……」
「すっごく危ないと思います……」
腐緑達が村長の家に案内される道中にも大人の姿は見られず、思わず凜と珊瑚が呟く。そんな中、腐緑達が村長の家に行く途中にも他の子供達が遊んでいるのが見られると、腐緑と3姫にそれまで話す事のなかったノームが話かける。
「ねぇ、お姉ちゃん僕も遊んできていい?」
その言葉に返事をしたのは腐緑でありノームの言葉に返事をする。
「こら、みんなと一緒にいなさい。知らない人が来たらみんなビックリするかもしれないしょう」
「は~い」
ノームは返事をすると残念そうに下を向く。
そんなやり取りを見た子供達の先頭を歩いていた少年が口を開く。
「大丈夫ですよ、村の皆も一緒に遊んでくれると嬉しいと思います」
それを聞いた腐緑とノームはアイコンタクトを行い、ノームに腐緑が遊びに行く許可をだす。
「う~ん、こう言って貰えているから行ってきていいよ。ただし、村の人達にご迷惑はかけてはだめだよ」
「は~い」
そう言ってノームは村の中で遊んでいる子供達に向かって走っていく。
ノームが走っていくのを見届けてから腐緑達は子供達を先頭に村長の家を目指し再び歩き始める。そこかしばらく歩くと案内していた子供達が歩みを止める、そこには周りの家より大きな家があった。
「どうぞ入ってください」
先ほどの少女がそう言って家のドアを開ける。
「ではここで靴を脱いで中におはいりください」
その家では【水野 緑】の前世の日本の様に玄関で靴を脱ぐ。
家の中に入り子供達の後を付いていくと腐緑達は人が十数人は入れる部屋に通される。
「じゃあ、お茶をいれてきます~ どうぞそれを床にひいて皆さまは好きなところにお座りください」
そう少女が言うと子供達が座布団の様な物を全員に配り始める。全員が座るのを確認すると少女はお茶を入れに部屋の端にある台所の様な場所に少女が向かう。少女がお茶にを入れにいったその後は他の子供達から腐緑達は質問攻めにあった。
「お姉ちゃん達は何の獣人さんなの?」「あ、ずるーい、私も聞きたい何処からきたんですか?」
そんな質問に答えていると台所に向かった少女が戻ってくる。
「みんな、そんなに1度に聞くとお姉さん達がこまるから!」
「「ごめんなさ~い」」
少女の言葉に子供達が声をそろえて謝ると少年が口を開く。
「皆は、遊びに行った子と遊んでおいで」
「「は~い」」
そう返事をすると、少年と少女の2人を残して他の子供達が家を出ていく。
「しばらくすると大人の人も帰ってくると思います。それまでお茶でも飲んでてください」
そういって全員の分のお茶を出すと少女も床に座布団の様なものをひき腰を下ろす。
「すいません、みんな村の外から人が来るのが珍しくて……」
「いやいや、そんな気にすることないよ。みんないい子達だよ」
「そう言ってもらえるとありがたいです」
「お茶いただくね」
腐緑がそう言うと皆でお茶を飲む。それからしばらくの間話をしていると不意に大きな音がする。
ガチャン!
それは、出されたお茶が入ったコップを落とす音であった。
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