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169話 ミドリムシの交渉

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「ねぇ、あなたは私が誰だかわかるかしら?」

 そう言いながらウンディーネが話しながら龍種に近づくと干支緑達はさっと別れ、ウンディーネに道をあける。普段、干支緑達は小さな子供の姿で、温厚な様子しか見せない龍種達に非常になついていた。

 そんな干支緑達だが今は、ウンディーネからあふれ出す覇気に驚きを隠せずにいた。

「おねぇちゃん……」「おこってる……?」

 恐ろしくも感じているウンディーネの様子が普段とあまりに違う事に恐る恐る干支緑達が尋ねる。

「皆、こっちにおいで」

 ウンディーネが答える間を作らずに緑が干支緑達に声をかけ自分の元に集める。

「……う、うん……」「ねぇ……おにいちゃん……おねぇちゃんはおこっているの?」

「ううん、あれは怒っているのとはちがうんだよ……」

 干支緑の問いかけに安心させる様に優しい笑顔を見せて、答える緑。その間もウンディーネは倒れている龍種に尋ねる。

「あなたはシャイドの考えには賛成?それとも反対?」

 うっすらと目をあけて様子をうかがっていた龍種はウンディーネに質問をされるとゆっくりながらしっかり目を開け答えるはじめる。

「個人的には反対だ蟲人達の国の事なんて正直な話どうでもいい…… だが俺よりも強い者が下した判断に俺は付き従う。それは、あんたも同じじゃないのかウンディーネ?」

「半分正解で半分間違うかな…… 私も自分より強い者に従うつもりでいるけど数の力で従わせようなんてする奴にはごめんこうむるわ。だから、シェイドを倒しにいくの…… それに自分よりも強い者を見つけたし、その人は尊敬もできるわ。番になりたいくらいに……」

「なにっ! あんたよりも強いだと? しかも人だと!?」

 龍種の言葉にウンディーネは苦笑いし答える。

「あら、いけない人じゃないわね【超ミドリムシ】だったかしら……ねぇ緑」

 そういって先ほどまでまとっていた覇気を霧散させこれでもかという笑顔を緑に向ける。その様子を見た龍種が思わず驚き声を上げる。

「そういつがあんたを上回る強者なのか!? そんな得体の知れないものが!? うっ! し、失礼した。どうか許してほしい……」

 龍種は驚きのあまりに発した言葉をすぐに撤回するように謝罪する。それは再びウンディーネが先ほどまでの覇気を再びまとった事から自分が失言をしたことに気づいたためであった。

「あなた、良かったわね。相手が緑で魔緑なら簡単にあなたを見せしめに殺したかもしれないわよ」

 龍種はウンディーネの口ぶりからウンディーネより強い者が複数いると予想でき、言葉を続けることができなくなる。そんな龍種の様子をみたウンディーネはさらに追い打ちをかける。

「私だけじゃなく、サラマンダーにノームもこの人たちの家族に負けたのよ……」

 たしかにウンディーネは緑が倒したが、ノームやサラマンダーは家族総出に近かったことを考え1対1では勝ってないと苦笑いするも黙っていようと考える緑。

 だが、ウンディーネの言葉を聞いた龍種の心の中は穏やかではなかった。龍種にも相性があるがそれでも種の頂点の龍種、さらには各属性のナンバー1が複数負けたと聞き龍種は叫ぶ。

「ウンディーネあんただけでなく、サラマンダーにノームもだと!?」

 龍種の叫びを聞き真剣な眼差しで頷く。その様子を見て龍種は目を瞑りしばらく考え込む。

 緑達が龍種の様子を見ていると、傷ついた体のまま起き姿勢を正し首を垂れる。

「龍種が頂点の時代は終わりを告げたのだな…… 私もあなたの軍門に入らせてはいただけないだろうか……?」

 龍種が緑に向かってそう言うと真っ先に動いたものがいた、それは干支緑であった。

 干支緑達は、自分達で作った傷が癒える実を龍種の口に押し込んだ。

「たべてたべて」「おいしいよ」「たくさんあるからだいじょうぶ~」

「うぷ、こら子供達よ何をするんだ! ぐふ、げほ……」

 突然押し込まれた果物に驚く龍種だがすぐに異変に気付く。

「こ、これは……傷が癒えたのか!?」

 そう、言うと龍種は体を動かし体の状態を確かめた後、思わずこぼす。

「なんだこの果物は…… 体の傷が一瞬で癒えた…… こんなものを私に使って良かったのか?」

 そんな龍種の質問に答えるかの様に干支緑達の髪の隙間から実が成り、それをさらにだべさせようと干支緑達が龍種の顔付近に集まる。

 干支緑達がさらに実を口に押し込もうとする龍種が声を上げる。

「こら、よさないか私の傷は完治した! これ以上こんな実を食べてはもったいない!」

 それでも無理やり実を口に押し込まれる龍種、抵抗は空しく口に押し込まれた実を龍種は噛みつぶす。先ほどの傷を癒す実とは違う押し込まれた実の味に声を上がる。

「!? う、美味い。なんという美味さだ……」

 その言葉を聞きウンディーネは笑い始める。

「ふふふふ。ええ、とっても美味しいでしょう?」

 そう言ったウンディーネは龍種に笑顔を向ける。その笑顔をみた龍種は思わずしばらくの間惚けてしまう。龍種が知っていたウンディーネは龍種のナンバー1という事もあり、以前見た時は非常に厳しく威厳のある様子をしていたが、今の表情を見てなんと無邪気で純粋なのかと驚いた。

 そんな龍種をみて緑が口を開く。

「この大陸で一部の龍種と蟲人の行った行為は、許されるものではありません……」

「確かに、我等や蟲毒の蟲人に被害を受けた者達にとってはそうだな……」

 そう言ってを瞑る。しばらくの間目を瞑っていた龍種が目を開く。

「たしかに……命令とはいえ無慈悲に事をした自覚はある……ならば断罪されても仕方がない……」

 そう言うと龍種は再び目を瞑り微動だにせず続ける。

「さぁ、どのような罰も受け入れる、強者主義の行動をしてきたのだ自分より強者の意向に従おう」

 そう言って断罪の時を待つ、すると龍種の体に細い糸の様な物が巻き付き始める。それは、緑と干支緑達の髪であった。龍種は髪に巻き付かれても一切抵抗することもなく事の成り行きに身を任せる。

 しばらくして髪が巻き付き終わると同時に龍種は浮遊感を感じる。自分はどうなるのだろうかと龍種が考えていると浮遊感が無くなり、地面におかれる。

「もう、目をあけてください」

 そう言われて龍種が目を開けるとそこには豊かな森が広がっていた。目を瞑る前も森であったが目をあけた後の森は先ほどの森とは違い活力に満ちていた。

 同じ森でも活力の無い森は枯れ木や枯れ葉が目立っており、それも季節柄の落ち葉や枯れ木ではなく明らかに不自然なものが多かった。

「おお、なんと豊かな森だ」

 そう言った龍種は森の豊かさに驚いていた。先ほど目を瞑たった龍種は自分は殺されるものだと思い覚悟を決めて目を瞑っていたが、目を開けると豊かな森に運ばれていた。この際、どうなっても良いと思いながら質問をする。

「しかし、お主達はいったい何者だドライアドと思ったが強さがその域から逸脱している。【超ミドリムシ】とはドライアドの上位種なのか? 私は、この森の肥料にでもされるのか?」

「いいえ、貴方達にはここに住んでもらおうかと思っています」

 あなた達という言葉に気づいた龍種は自分の周りを見渡すと自分以外の龍種が居る事に気がつく。その者達は1度は顔を見た事のある者や付き合いの多い仲の良い者達もいた。

 その者達の傍には龍種を倒した子供にそっくりな者達がおり、それに加え人族やエルフやドワーフ、獣人、蟲人達の姿が見られら。

 その様子を見ていまいち状況が分からない龍種だがそれをわかったかのように緑が声を大きくして話始める。

「皆さん、お待たせしました。これから皆さんの処遇をお話します」

 緑がそう話すと他の龍種が攻撃を仕掛けた。それは火水風土聖闇のそれぞれのブレスが放たれたがそれは緑に届くことはなかった、なぜなら緑の前にはそれらのブレスを受けても全く揺るがない結界が張られていた。

 緑に向かってブレスを放った龍種達はその光景を見て唖然とするが、直ぐに別の感情に支配される。

 それは、ブレスを放った龍種達にお返しとばかりにブレスが撃ち返され、それを受けた龍種が瀕死の状態に陥ったためであった。

「ブレスを撃ちたいなら、撃つが良い……だが撃ったからには撃ち返されることも念頭においておけよ!」

 そう言って緑の後ろから、魔緑とサラマンダーが前に出る。 

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