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プロローグ
しおりを挟む――ぼとっ
駅の改札を出てすぐ、学校に向かう道すがら目の前を歩いていた同じ学校の生徒だろう男子生徒が、不自然に何の脈略も無く学生証らしきものを地に落とした。
本人は何故か本気で気付いていないらしい。疑わしい。
「……あ、あの! これ、落としましたよ?」
「えっ? あ、ありがとう……」
先に言っておくと、拾ったのは断じて私ではない。私の後ろで偶々歩いていた親切な被害者の女の子だろう。ちなみに巨乳だ。でかい。
しかしきょぬーな彼女を何故被害者呼ばわりするのか? それは――
「あ……」
「ん、助かったよ、じゃあ」
はい、見なくても声で分かります。落ちました。お一人様、ごあんなーい。
「あっ……」
男子生徒はきょぬーに一切目を奪われることも無くお礼を言い残し、爽やかに去って行ってしまった。前方不注意ですっ転んで水たまりにでも顔を突っ込んでしまえばいいのに……。
念のためちらっと確認した後方のきょぬー女子は、男子生徒が去った方角を見つめたままぽっ……とうるんだ目をしていた。完全にこーいーしちゃったんだ、状態である。
気にせず何も見なかったことにして私もその場を去る。こりゃまたベタな、と思ってもおかしくないだろうけど、この世界ではこれが日常茶飯事なのだから……。
◇◆◇◆◇
そもそもの話である。
私、佐藤千尋は転生者である。ちなみに名前の由来は、母が好きなあの某有名監督の某有名映画作品からだ。
――そう、ここは転生前に居た現代の地球とほぼ同じ。
便利な時代に転生するとはなんてラッキーと最初は私も思っていた。だが、今はどうせ転生するならファンタジーな世界にしときゃ良かったなと毎日の如く深く後悔していたりする。
――なぜか?
私が転生する経緯を説明すると長くなりそうなので、無駄な部分は割愛する。とりあえず前世で死んでしまった後、何故か神と名乗るナニかに招かれて色々と好きな条件をつけて転生出来ることになったのだ。
それでつい、好き放題言ったのはまあ後悔しては無い。問題は伝え方が悪かったのか、自称神のくせに聞き間違えられたことだ。
以下が会話の一部抜粋である。
『――して、どのような世界への転生を希望するか?』
『えーっと、美少女が沢山いて、彼女たちと仲良く出来て、ハーレムというか、女の子にモテモテになれるような世界が良いです!』
『……ふむふむ』
あ、先に言っておくと、私は前世でいわゆる世間一般人から見て百合属性持ちであった。というか、可愛い女の子が恋愛対象だった。
ただ、結局前世は周りの目を気にして積極的なアプローチは出来なかったが。それが未練として残ってしまったのか、転生できると知ってつい、色々と変だろう条件を先に列挙してしまったのだ。後悔は無い。
『他には何かあるか?』
『え! まだいいんですか! じゃあ、出来れば死んでしまった世界に近い世界が良いです! 青春を謳歌したいです!』
『……なるほど』
魂だけの精神? だけの状態のせいか、欲と未練の赴くままに理想の条件を並べ立てていく私の話を、姿形が視えない自称神が確認していく。
『……美少女が多く存在し、彼女たちと仲良く出来る、君の前世の世界に近い世界、で間違いないだろうか?』
『女の子にモテモテ! 青春謳歌! を忘れてますよ!』
『う、うむ。了承した』
若干引かれてしまった気はしたけれど、そこのラインは譲れない。神よ、頼んだぞ……!
『――ふむ。それではすべての望む条件に合致する世界へ転生するがいい』
『はい! ありがとうございます! 転生したら毎日神に祈ります!』
『うむ。良い心がけだ。では次世に幸多からんことを――』
――と。ここまでが自称神との会話である。
条件にはしなかったが、転性する気は無かった私は記憶が戻って最初は焦ったが、首尾よく女の子に転生したので胸を撫で下ろした。成長を期待して。
――最初に異変を感じたのはいつだったろうか?
幼稚園入園とほぼ同時期に記憶が戻った私は、幼いうちにマイガールを見つけて光源氏よろしく育成する気満々であった。が、それは脆くも崩れ去る。
何故か、希望通り美幼女のひしめく中に美幼男児という異物が紛れていた。最初は百合があるなら余りは薔薇よね、と謎の納得で自分自身に言い聞かせたものだ。
「ひとみちゃん!」
「ごめんねちひろちゃん、まさきくんがとられちゃうからいかなきゃ!」
「さくらちゃん!」
「ちひろ……しょうた……いまちゃんすだから……ごめん……」
「のどかちゃん!」
「ねーねーちひろー、なかたせんせーしらなーい?」
「…………」
――ガッデム! 神よハゲロ!
私が目をつけた美幼女は尽くどこぞの顔だけ鼻たれ小僧たちに全員持っていかれてしまった。しかも、ただのハーレム要員として。何て残酷な世界だ……。
ここにきて私は世界の心理を悟った。ここは、そう、この世界は――
「――ただのハーレム系ギャルゲーじゃねーかこんちくしょおおおおおおおおー!」
なんか、思ってたのと違う。つまり、そういうことである。
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