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第一章
快楽研究所 001
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「ぐぎぃっぃいいぃぃいぃ……ぅぐぅいぎぃぃぐぅぅぅんん……」
「エイサー、その数値見てみて。肉体と精神の数値がずれてるだろ。それが想像で増幅された分の快楽だ。」
「はい。リクファ様のデータからはあまり見られない兆候です」
「彼女には悪いけど、もっと幅を広げるのを試してみよう。肉体の快楽をぐっと減らして、精神の快楽度を大幅に上げてみるよ。この部分を解析すれば、リクファがなぜ限界を超えられないかがわかるかもしれない」
「理論上可能なはずですものね。改めてデータを解析し直す必要があります。興奮剤を増やしますか?」
「いや、物理的なものは無しでやるよ。そのままデータ見てて」
ハイドは、診察台の横に移動し、そこに座る、というか固定されている女性の膣内のアイテムを静かに抜き取り、替わりに薄いヒダがたくさんついている漆黒の色をした細めスティックをそのそばに並べた。
「ロンタオさん、これから物理的な快楽を最小限に抑えます。それとモニタグラスを診察台の真上からの映像に変えていきます。徐々に現実を認識しながら、一度リセットして貰って、この前のように想像の快楽でイッて貰いますね」
「あいぃ……」
太ももはしっかり固定されているが、だらりと力の抜けた足首から先が、弛緩の良さを覚えたての彼女の状況を物語っていた。
足の指にだけ頂延器具が固定され、強制的に絶頂感が引き伸ばされている。
ほぼ水平に開かれた足の間からは、絶え間なく液体が流れ続け、完全に力の抜けた両手は投げ出され、固定されてはいるが、もはや力が入らなくなっているようだ。
耳に流し込んでいる快楽増幅用の低音がかすかに漏れているが、他の装置はすべて停止させた。
「それでは、これからロンタオさんの膣にいくつかのスティックを差し込みます。そのまま全身の力を抜いて、画面に見えるご自分のその部分を、何をされているかを認識しながら集中してください」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
初めて使うこの器具は、以前開発した極微細の毛がびっしりと植え込まれたヒダが何枚もついており、神経を直接触っているような感覚に陥るアイテムだ。
とても簡単な作りだが、逆にそういうシンプルなものの方が、実際に与える快楽が強いということがままある。
この器具は、痛みのある状態の時にこすりつければ、地獄のような痛みがどんどん増幅されるが、逆に快楽を味わっている状態では、それと反対の効果が伴うらしい。
彼女は、この器具の 痛み をよく知っている。
ロンタオ・リューション。
身体的な才能と技術、天性の頭脳、そして生まれたときからの英才教育によって、世界最高峰のエージェントとして、彼の国の人間最終兵器とすら呼ばれていた。
ここに収容されてからというもの、どんな事を施そうとも、絶対に口を割らなかった彼女だったが、たまたま試したこの拷問棒によって精神が決壊してしまった。
元々ピロピロ棒って名前だったんだけども……
そして、ロンタオのそんな過去を知るのは、もう少しあとだった……
その彼女が、これから、その拷問棒を一番敏感なところに刺されるのを目にしていた。
チュルチュルチュルチュル……
どろどろになった膣に、1本目の拷問棒を差し込んだ。
「こわぃいいいいいいいいいいいいいいいんなああああああいくぅうううううう!!!」
「ハイド様、精神の快楽が跳ね上がっています。何かされましたか?」
「いや……差し込んだだけで……この器具がすごいってことなのか?」
「プロビデンス」で確認したが、快楽度数3800あたりのままで、特にさっきと変わりはない。
「ロンタオさん、身体に力が入ってますね。もっと弛緩していきましょう。アナルの方に弛緩器具を刺しますので、それを意識してください」
「いいいぃぃくくいいいはぁぁぁぁぁぁぁぅぅううぅううぅぅ」
「しっかり患部を見ていてくださいね」
2本……3本……4本……
「いやぁぁぁあぁぁこわいいいいいいいぃぃくくうういくううううううのおおぉぉぉ」
「エイサー、どうだい?」
「見たことのない反応です。肉体的快楽はむしろマイナスになっているのに、精神的快楽が止まりません」
どういうことなのだろう…
快楽には、理論だけでは測れないと思わせる結果がよく見られる。
とはいえ、これは異常と言わざるを得ない。
エイサーの解析速度でも結果が導き出されてないのが証拠だ。
改めてちゃんとしたデータ解析をするべきだろう。
「どんな感じなのだ?」
ノックもせずに入ってきたのは、いわゆる女王様の様な格好をした、ボンテージ姿のリクファだった。
まったく似合ってない。
なにかに似てるなと思ったが、何かのアニメのつるぺた魔王さまだったかな。
まぁかわいいのはかわいいのだが。
「いや……それがな、今までに見たことのない反応なんだよ。
リクがこれを使えって言ったのは、この器具のすごさを知っていたのか?
こんなのがあるならもっと早くから教えてほしかったよ」
「それはたぶんそいつだから効いているのだと思うぞ」
「どういうことだ?」
「そやつはな、その拷問棒で1ヶ月以上地獄を見たからのぉ」
「はぁ?」
「おまえ、そやつがどんな奴かくらいは知っておろう。
そんな奴が、どうしてわちに従順なメス犬になっておるか、想像もできんか?」
したくなかった。
2ヶ月前ほどから、このロンタオを使って、快楽の研究をしろと仰せつかまつったのだが、初めて見た時はほとんど廃人で、なんの反応も示さなかったのだが、新たに習得させられたスキルの練習も兼ねて、徐々に人間性を取り戻すことに成功した。
半月ほど前からは、普通に食事が出来る程にはなってきたが、わたしとエイサー以外に懐くことはなく、リクファを見ると犬のように足元に転がり、従順の意を示すような、異常な光景を見せる。
リクファとしても、自分がやられた事を考えたら、今すぐにでも殺したいと思ってるに違いない。
それでも生かしているのは、彼女の持つ情報の価値はとても高い、と判断してるからだろう。
犬の様にとはいえ、生き物として扱ってるだけでも、この女帝にしては慈悲があるというもの……なのか?
「よし、わちがやってやろう。棒を貸せ」
「おまっ!勝手に!データ取ってんだよ!」
「もういいだろ。わちにもたのしませよ」
いつからかリクファは、わたしとエイサーには、素で話すようになっていた。
わたしも、それに順応して、3人の時はタメ口で話すようになっていた。
だが、これはわたしたちの関係をさらに面倒にさせていた。
この3人の時はいいのだが、以前デクスいる時に、つい「やりすぎだ!」と頭を軽くつっこんでしまったことがある。
リクファは、いつもみたいにカッカッカッと軽い笑いをしていたが、デクスの目が、いつものそれではなく、世界を取りにいくプロの目になっており、視線だけで殺されそうになった。
リクファが抑えてくれたことでその場はなんとかなったが、今後もそういう事が起きかねないので、止む終えない場合以外に直接会うのは、わたしの診療所と、この製薬工場という建前の、リクファ個人の私設収容所兼、快楽研究所だけにしていた。
この建物には、ほかにも秘密の研究施設などがあるらしいが、わたしは一切関わらないようにしている。
そもそもこの研究所にも来たくはないのだが……
そんなことを思い出している間に、リクファは彼女で遊び始めていた。
「キャンキャンキャンキャゥン!」
「これか?これが欲しいのだろ?ほれほれ喜べ!」
右手で管をロンタオの鼻に差し込み、興奮剤エクスプロージョンをぶち込んでいる……
吸い込めなかった分が鼻から流れ出し、口にドバドバと流れ込んでいる。
左手には拷問棒を何本も持ち、ぺしぺしと乳房を弾いていた。
「おもいだせ~あのときをおもいだしてイケ~~~~!」
「ご主人様ぁ!ご主人さまああぁぁぁあいいいあっくううううう」
データはもう無茶苦茶だ。
ここまでのデータで十分だとはいえ、わたしのポリシーがイライラを募らせていた。
エイサーもエイサーで、ギンギンと目を輝かせて、たのしそうにロンタオを弄ぶリクファの姿を見て、胸の前で祈るように手を組み、神々しいものを見るかのように、ふるふると涙を流してる。
なんだこの状況……
もう帰ってもいいよな……
とりあえず一旦気を取り直そうと、奥の解析室に移動し、たばこと酒を用意した。
モニタに映し出されている変態たちの饗宴を消し、公共放送のチャンネルにアクセスした。
画面にはシキヤが映し出された。
一時は引退を発表したシキヤだが、周囲の説得により、今もまだメディアに出ている。
以前より露出は減ってきたそうだが、その分執筆活動に勤しんでいた。
そして気になるのは、シキヤとなりにいる見たことのない女性だ。
シキヤとはまた違う、確かに地味ではあるのが、快活な面立ちと、溢れ出す華があった。
こういう機会じゃないとメディアなんて見ないわたしは世俗に弱い。
せっかくだし、とりあえず見てみるか。
シキヤと一緒に海外で取材したという映像が流れている。
今はこの子とコンビでやっているのかな?
セイクリッド共和区画で行われた芸術祭の取材のようだ。
実にいいコンビで、静のシキヤ、動のその子って具合で、上手くハマっている。
ラナデシ・コマキダキという名前らしい。
内容にはまったく興味がないが、この二人の絡みは見ていてとても気持ちがいい。
喩えとして伝わるかどうかはわからないが、街ブラ番組の元祖を作ったコンビのような、互いに性格は反発しているのだが、人間同士としての関係はとても良好で、互いの尊敬と愛が感じられる、そんな感じだ。
久々に心地よく笑った気がする。
がんばってるんだな、シキヤも。
ふと我に返り、診察台の映像に変えた。
なんだこの差は……
これでも同じ人間なのだから、本当に人間というものは……
「ハイド様。データ整理が完了致しました。デバイスに保存しております」
デバイスを手渡され、軽くチェックする。
「十分だね、ありがとう。いつも手伝ってくれてありがとうね」
「そんな……ハイド様とリクファ様のためですもの……」
どんどんエイサーがかわいく見えてくる。
だがロイドだ。
残念に思いつつも、この後どうするかを考える。
そうだな、そろそろシキヤにもガマンの時間から開放してあげてもいいかもな……
あの結果も見たいし、いろいろと試したいこともあるし、一度連絡して見るか。
「エイサー。シキヤにいつでもいいから連絡をくれるように頼めるかな」
「かしこまりました」
画面に流れ続けている、あの魑魅魍魎の世界を如何にして終息させるか……
大きな課題は残されているが、ひさびさにシキヤに会えると思うと、胸が軽くなる。
「連絡が取れました。スケジュール確認後、折り返すそうです」
「ありがとう。で、エイサー。これ、どうやって終わらせたらいいと思う?」
「数日は続くかと思われます」
「帰るか」
モニタの映像を消して「帰る。ほどほどにしろよ」と書き置きを残し、2匹のケモノに挨拶もせず「ヒッグス」へ戻った。
「エイサー、その数値見てみて。肉体と精神の数値がずれてるだろ。それが想像で増幅された分の快楽だ。」
「はい。リクファ様のデータからはあまり見られない兆候です」
「彼女には悪いけど、もっと幅を広げるのを試してみよう。肉体の快楽をぐっと減らして、精神の快楽度を大幅に上げてみるよ。この部分を解析すれば、リクファがなぜ限界を超えられないかがわかるかもしれない」
「理論上可能なはずですものね。改めてデータを解析し直す必要があります。興奮剤を増やしますか?」
「いや、物理的なものは無しでやるよ。そのままデータ見てて」
ハイドは、診察台の横に移動し、そこに座る、というか固定されている女性の膣内のアイテムを静かに抜き取り、替わりに薄いヒダがたくさんついている漆黒の色をした細めスティックをそのそばに並べた。
「ロンタオさん、これから物理的な快楽を最小限に抑えます。それとモニタグラスを診察台の真上からの映像に変えていきます。徐々に現実を認識しながら、一度リセットして貰って、この前のように想像の快楽でイッて貰いますね」
「あいぃ……」
太ももはしっかり固定されているが、だらりと力の抜けた足首から先が、弛緩の良さを覚えたての彼女の状況を物語っていた。
足の指にだけ頂延器具が固定され、強制的に絶頂感が引き伸ばされている。
ほぼ水平に開かれた足の間からは、絶え間なく液体が流れ続け、完全に力の抜けた両手は投げ出され、固定されてはいるが、もはや力が入らなくなっているようだ。
耳に流し込んでいる快楽増幅用の低音がかすかに漏れているが、他の装置はすべて停止させた。
「それでは、これからロンタオさんの膣にいくつかのスティックを差し込みます。そのまま全身の力を抜いて、画面に見えるご自分のその部分を、何をされているかを認識しながら集中してください」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
初めて使うこの器具は、以前開発した極微細の毛がびっしりと植え込まれたヒダが何枚もついており、神経を直接触っているような感覚に陥るアイテムだ。
とても簡単な作りだが、逆にそういうシンプルなものの方が、実際に与える快楽が強いということがままある。
この器具は、痛みのある状態の時にこすりつければ、地獄のような痛みがどんどん増幅されるが、逆に快楽を味わっている状態では、それと反対の効果が伴うらしい。
彼女は、この器具の 痛み をよく知っている。
ロンタオ・リューション。
身体的な才能と技術、天性の頭脳、そして生まれたときからの英才教育によって、世界最高峰のエージェントとして、彼の国の人間最終兵器とすら呼ばれていた。
ここに収容されてからというもの、どんな事を施そうとも、絶対に口を割らなかった彼女だったが、たまたま試したこの拷問棒によって精神が決壊してしまった。
元々ピロピロ棒って名前だったんだけども……
そして、ロンタオのそんな過去を知るのは、もう少しあとだった……
その彼女が、これから、その拷問棒を一番敏感なところに刺されるのを目にしていた。
チュルチュルチュルチュル……
どろどろになった膣に、1本目の拷問棒を差し込んだ。
「こわぃいいいいいいいいいいいいいいいんなああああああいくぅうううううう!!!」
「ハイド様、精神の快楽が跳ね上がっています。何かされましたか?」
「いや……差し込んだだけで……この器具がすごいってことなのか?」
「プロビデンス」で確認したが、快楽度数3800あたりのままで、特にさっきと変わりはない。
「ロンタオさん、身体に力が入ってますね。もっと弛緩していきましょう。アナルの方に弛緩器具を刺しますので、それを意識してください」
「いいいぃぃくくいいいはぁぁぁぁぁぁぁぅぅううぅううぅぅ」
「しっかり患部を見ていてくださいね」
2本……3本……4本……
「いやぁぁぁあぁぁこわいいいいいいいぃぃくくうういくううううううのおおぉぉぉ」
「エイサー、どうだい?」
「見たことのない反応です。肉体的快楽はむしろマイナスになっているのに、精神的快楽が止まりません」
どういうことなのだろう…
快楽には、理論だけでは測れないと思わせる結果がよく見られる。
とはいえ、これは異常と言わざるを得ない。
エイサーの解析速度でも結果が導き出されてないのが証拠だ。
改めてちゃんとしたデータ解析をするべきだろう。
「どんな感じなのだ?」
ノックもせずに入ってきたのは、いわゆる女王様の様な格好をした、ボンテージ姿のリクファだった。
まったく似合ってない。
なにかに似てるなと思ったが、何かのアニメのつるぺた魔王さまだったかな。
まぁかわいいのはかわいいのだが。
「いや……それがな、今までに見たことのない反応なんだよ。
リクがこれを使えって言ったのは、この器具のすごさを知っていたのか?
こんなのがあるならもっと早くから教えてほしかったよ」
「それはたぶんそいつだから効いているのだと思うぞ」
「どういうことだ?」
「そやつはな、その拷問棒で1ヶ月以上地獄を見たからのぉ」
「はぁ?」
「おまえ、そやつがどんな奴かくらいは知っておろう。
そんな奴が、どうしてわちに従順なメス犬になっておるか、想像もできんか?」
したくなかった。
2ヶ月前ほどから、このロンタオを使って、快楽の研究をしろと仰せつかまつったのだが、初めて見た時はほとんど廃人で、なんの反応も示さなかったのだが、新たに習得させられたスキルの練習も兼ねて、徐々に人間性を取り戻すことに成功した。
半月ほど前からは、普通に食事が出来る程にはなってきたが、わたしとエイサー以外に懐くことはなく、リクファを見ると犬のように足元に転がり、従順の意を示すような、異常な光景を見せる。
リクファとしても、自分がやられた事を考えたら、今すぐにでも殺したいと思ってるに違いない。
それでも生かしているのは、彼女の持つ情報の価値はとても高い、と判断してるからだろう。
犬の様にとはいえ、生き物として扱ってるだけでも、この女帝にしては慈悲があるというもの……なのか?
「よし、わちがやってやろう。棒を貸せ」
「おまっ!勝手に!データ取ってんだよ!」
「もういいだろ。わちにもたのしませよ」
いつからかリクファは、わたしとエイサーには、素で話すようになっていた。
わたしも、それに順応して、3人の時はタメ口で話すようになっていた。
だが、これはわたしたちの関係をさらに面倒にさせていた。
この3人の時はいいのだが、以前デクスいる時に、つい「やりすぎだ!」と頭を軽くつっこんでしまったことがある。
リクファは、いつもみたいにカッカッカッと軽い笑いをしていたが、デクスの目が、いつものそれではなく、世界を取りにいくプロの目になっており、視線だけで殺されそうになった。
リクファが抑えてくれたことでその場はなんとかなったが、今後もそういう事が起きかねないので、止む終えない場合以外に直接会うのは、わたしの診療所と、この製薬工場という建前の、リクファ個人の私設収容所兼、快楽研究所だけにしていた。
この建物には、ほかにも秘密の研究施設などがあるらしいが、わたしは一切関わらないようにしている。
そもそもこの研究所にも来たくはないのだが……
そんなことを思い出している間に、リクファは彼女で遊び始めていた。
「キャンキャンキャンキャゥン!」
「これか?これが欲しいのだろ?ほれほれ喜べ!」
右手で管をロンタオの鼻に差し込み、興奮剤エクスプロージョンをぶち込んでいる……
吸い込めなかった分が鼻から流れ出し、口にドバドバと流れ込んでいる。
左手には拷問棒を何本も持ち、ぺしぺしと乳房を弾いていた。
「おもいだせ~あのときをおもいだしてイケ~~~~!」
「ご主人様ぁ!ご主人さまああぁぁぁあいいいあっくううううう」
データはもう無茶苦茶だ。
ここまでのデータで十分だとはいえ、わたしのポリシーがイライラを募らせていた。
エイサーもエイサーで、ギンギンと目を輝かせて、たのしそうにロンタオを弄ぶリクファの姿を見て、胸の前で祈るように手を組み、神々しいものを見るかのように、ふるふると涙を流してる。
なんだこの状況……
もう帰ってもいいよな……
とりあえず一旦気を取り直そうと、奥の解析室に移動し、たばこと酒を用意した。
モニタに映し出されている変態たちの饗宴を消し、公共放送のチャンネルにアクセスした。
画面にはシキヤが映し出された。
一時は引退を発表したシキヤだが、周囲の説得により、今もまだメディアに出ている。
以前より露出は減ってきたそうだが、その分執筆活動に勤しんでいた。
そして気になるのは、シキヤとなりにいる見たことのない女性だ。
シキヤとはまた違う、確かに地味ではあるのが、快活な面立ちと、溢れ出す華があった。
こういう機会じゃないとメディアなんて見ないわたしは世俗に弱い。
せっかくだし、とりあえず見てみるか。
シキヤと一緒に海外で取材したという映像が流れている。
今はこの子とコンビでやっているのかな?
セイクリッド共和区画で行われた芸術祭の取材のようだ。
実にいいコンビで、静のシキヤ、動のその子って具合で、上手くハマっている。
ラナデシ・コマキダキという名前らしい。
内容にはまったく興味がないが、この二人の絡みは見ていてとても気持ちがいい。
喩えとして伝わるかどうかはわからないが、街ブラ番組の元祖を作ったコンビのような、互いに性格は反発しているのだが、人間同士としての関係はとても良好で、互いの尊敬と愛が感じられる、そんな感じだ。
久々に心地よく笑った気がする。
がんばってるんだな、シキヤも。
ふと我に返り、診察台の映像に変えた。
なんだこの差は……
これでも同じ人間なのだから、本当に人間というものは……
「ハイド様。データ整理が完了致しました。デバイスに保存しております」
デバイスを手渡され、軽くチェックする。
「十分だね、ありがとう。いつも手伝ってくれてありがとうね」
「そんな……ハイド様とリクファ様のためですもの……」
どんどんエイサーがかわいく見えてくる。
だがロイドだ。
残念に思いつつも、この後どうするかを考える。
そうだな、そろそろシキヤにもガマンの時間から開放してあげてもいいかもな……
あの結果も見たいし、いろいろと試したいこともあるし、一度連絡して見るか。
「エイサー。シキヤにいつでもいいから連絡をくれるように頼めるかな」
「かしこまりました」
画面に流れ続けている、あの魑魅魍魎の世界を如何にして終息させるか……
大きな課題は残されているが、ひさびさにシキヤに会えると思うと、胸が軽くなる。
「連絡が取れました。スケジュール確認後、折り返すそうです」
「ありがとう。で、エイサー。これ、どうやって終わらせたらいいと思う?」
「数日は続くかと思われます」
「帰るか」
モニタの映像を消して「帰る。ほどほどにしろよ」と書き置きを残し、2匹のケモノに挨拶もせず「ヒッグス」へ戻った。
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