「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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第3章

21.さて国を救いに行こう。徒歩で。

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(勇者とはかくあるもの。そうでなければ選ばれたりそもそもしねえんだけどな)

肩の上のリスはこの状況を見下ろしながら、内心でそのようなことを思っていた。

「この鏡です」

王女が取り出したのは、ずっと肌身離さず持っていた手のひら大の鏡。

「私はこの鏡にうつる王の姿を見て逃げ出したのです。そう……」

王女は言い難い言葉をなんとか口にしようと喘ぎ……。




「さっきのビジョンで、だいたいの事態は判明した」

アルテノに、カノユキが言った。

「この国の王サラザールは賢王として名高い。だが、半年ほど前から軍事力の強化に急遽乗り出した。もちろん、魔王との戦いに戦力は必要。最初は国民もそう思っていた。だが、急激な税収の取り立て、徴兵、賄賂の横行。王はまるで別人のようになり、一瞬にして王国の政治は腐敗の様相を呈し始めた。なぜか?」

「王様が別人だから!」

「正解だ。そのことを知って王女は逃げ出した。そして、逃げ出す時に王の正体を暴くマジックアイテムを持ち出している。なかなかの行動力だ」

「ビジョンにうつってた、あの鏡ね」

「そうだ」

んー、とアルテノは思案げに、

「でも、あんな少女が一人で逃げ切れるものかしら?」

「まあ、無理だろうな」

カノユキはあっさりと断言する。

「無理無理の無理だろう。いつの間にか王と入れ替わって国政を牛耳るような相手だ。不意をつかれて一度は逃したが、二度はないと考えるべきだ」

「ならどうするの?」

「なに、簡単な話だ。前提をひっくりかえせばいい」

カノユキは窓から外を見る。アルテノはハテナマークを頭に浮かべた。

「王女は逃げたんじゃない。それが王の誤算だ。少女の目には闘志があった。父を殺された仇を討つという悲願がな。ゆえに逃げたのではない」

カノユキはひといきついてから、

「彼女は仲間を求めたんだ。つまり反撃のためにちょっと準備をしていただけさ」




「忠臣だったんですね」

「はい」

王女は無念そうに頷いた。

「商人のフラングレは王の治世に大いに協力してくれました。民のための尽くす王を経済面から支える、商人の中では少し変わり者であったかもしれません」

「そして、そいつはあんたを逃がすために犠牲になったってわけかい?」

「バネッサさん!?」

勇者が驚いた声をあげるが、当の王女は毅然と、

「いいえ、その方の言う通りです。ゆえに」

「ゆえに……なんだい?」

バネッサは問う。だが、答えなどとうにわかっている。

「ゆえに、私は許しません! お父様の仇! そしてフラングレおじ様の仇を討ちます!」





「じゃあ、もう王城に乗り込んでるんじゃないの?」

マンゴーのような果物(ポププという食べ物らしい)をスプーンですくって頬張りながら女神は言った。

「わたしたちに何かできることがあるかしら??????」

あーぱーな感じを隠そうともせずに女神は「??????」といった表情で言った。

呆れながらカノユキは言う。

「お前がそれを言うな」

俺をこの世界にひっぱりこんだのは誰だと思っている。

まったく。

嘆息をひとつ。

えー、だって。ちゃんとあの王女ちゃんには勇者を頼るように言ったし、バネッサちゃんには家出少女を探せって伝えたんでしょ? なら他に仕事ある?

あるだろうが、馬鹿。

むきー、ばかって言ったー!

もう一度嘆息。

「馬鹿だから馬鹿と言った」

むすぅ、と女神は膨れた。涙ぐんでいた。

やれやれ。

カノユキはビシと指を立てて、

「俺たちにしかできない仕事が一つだけあるだろうが」

そう断言した。

「できる……こと????」

そうだ、とカノユキは頷く。

「さっきのビジョンで勇者たちは入れ替わったニセ王を襲撃していた」

「うん」

女神は頷く。

「でもそれでいいんじゃない?」

「だめだ」

カノユキはすぐに否定する。

「普通に倒してはだめなんだ」

「えっ、そうなの?」

「もちろんだ」

カノユキは腕組みする。

「考えても見ろ。王女が王様を倒す。勇者や冒険者のちからを使ってな」

??????

女神は頭にハテナマークをうかべた。

「これは単なるクーデターだ」

「えっ!? でも王様は入れわかってて、多分魔物かなにかで、本当の王様は殺されたりしてるわけでしょ!?」

「真実はな。だが、事実としては違う。暴政を敷こうが王は王。王女が王を倒せば親殺し。勇者や冒険者は殺し屋に成り下がる」

というか、そこまでが魔王の策略なんだろうなぁ、とカノユキは察する。

頭が切れすぎじゃないかな、この世界の魔王は、とも思う。

「そんなわけで、このまま行けば、この国は四分五裂して内乱が始まる。クーデターは次のクーデターを呼ぶ。このデリケートな時期に、な」

「どどどどどどどどどうしたらいいの~!?」

お目々をぐるぐるーとしながら、女神はパニくった。

「まあ、落ち着け」

「どうして落ち着いていられましょーか! ていうか、なんで落ち着いてられるのよ、かーくんは!」

世界の危機だよ!

とアルテノは叫んだ。

一方のカノユキはしらーっとした目をして、

「……いや、ここまで言ったら分かるだろ?」

「……へ?」

女神はぽかんとした。

「俺たちが何をするべきか分かるだろうが」

カノユキはそう言って、マントをばさり、仮面をシャキン! と装着する。お気に入りの格好になれてご満悦でもある。

「そっか、勇者たちの手伝いだね!」

「全然違う」

ぐさり、とカノユキのセリフはアルテノの臓腑をえぐった。

なによなによ、とアルテノはいじけた。

カノユキは呆れた。

「手伝ってはだめだ。俺たちがするのは……そうだな」

出口の扉を開けながらカノユキは宣言するように言った。

「野次馬だ!」

いろんな奴らに声をかけろ。知り合い共全員にな!

ええー!? どゆことー!?

てんやわんやになった。
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