「枝分かれ」する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

文字の大きさ
23 / 23
第3章

23.ギランを討つ

しおりを挟む
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


ギランは絶叫する。

「ここまで、ここまで周到に何年も準備してきた計画が、こんな、こんなくだらぬことでえ!」

暴れ始める。

周りの壁や柱をたたきこわし始める。

ゴーレムのように強靭で、ドラゴンのように暴力的に。手がつけられない。

「王に成り代わり! 戦争を煽り! 人間どもの力を削ぎ! たとえバレたとしてもクーデターを捏造し内乱状態に持ち込むという我が策が! こんな小童の戯れにいいい!?」

「うわ、あぶな!」

「かーくん、下がって! 下がって! 弱いんだから!」

アルテノがカノユキの首根っこを引っ張って、必死に後ろへと下げた。

カノユキ。今だレベル1。

「ならば、せめて貴様も道連れだ!」

「ふっ、相手を間違えるな。魔王軍の将よ」

カノユキは余裕のある態度で言った。

「む!?」

闇雲にカノユキを追いかけようとしたギランの動きがとまる。

カノユキは堂々と言う。

なお、内心は(ひええええええええ)である。

が、ギランは堂々としたカノユキの態度に感じるものがあったのか、聞く態勢になった。

「策など捨てて人間の剣と戦え、ギラン。いいや、魔王軍の賢将よ。お前の力と、人間の力。最後に正々堂々とぶつけあうべし」

「!?」

ギランは目を見開く。

ついでにその言葉を聞いた勇者たちとかも「はっ」とした表情になる。

アルテノは、これはひどい、と内心思っていた。

「ふっ。そうであったな」

そう言うとギランは玉座の間へと視線を戻す。

そこには勇者一行、そして王女たちがいる。

自らが打倒し、魔王へと首級を持ち帰るべき相手だ。

ならば、自らがとるべき態度は決まっている。

「最後に将として戦える機会をもらえたことを感謝する。名は、なんという」

「カノユッキーだ」

「そうか、カノユッキー。黒衣の賢者よ。感謝する」

そう言って、玉座の間へと戻っていった。

黒衣の賢者て……。

カノユッキーはちょっとうれしがって、照れていたりした。

が、

「もう、ぼんやりしてる場合じゃないでしょ、かーくん!」

急にアルテノが手を引っ張ってきた。

「なんだなんだ?」

「なんだじゃなーい! もう、周りを見たら、分かるでしょ?」



わけが分からず、キョロキョロとカノユキは手を引っ張られながら、周りを見回す。

「あれ、そういえば誰もいないぞ?」

おかしいな、冒険者や一般市民を100人は連れてきたはずなのに。

そんなことをつぶやくが。

「もう逃げたに決まってるじゃない!」

ヒィン、と女神は涙目になっていった。

「……は?」

「勇者と六勇将の直接対決だよ! 巻き込まれたら死んじゃうんだから!」

と、その言葉にカノユッキーが答える前に、

どぅん!

そんな衝撃波があたりを包み込んだのであった。




王国歴241年。

今回の一件、サラザール王国の国王が暗殺され、魔王軍にのっとられていたことは、大陸各国において大きな衝撃となった。
それまでの軍事力を中止とした戦争から、謀略をも用いた本格的な戦争へと発展したことを意味し、魔王軍との戦いがより混迷を極めることは明白であった。
とはいえ、人類はやはり大きな希望を見出していた。
城から脱出した王女をいち早く保護し、魔王六勇将ギランを速やかに討伐した勇者一行、そしてそれを助けた灼熱の旅団。
魔王軍の驚異が迫る中で、彼らは人類の胸に常に希望の火をともしていたと言えよう。

……ところで、この話には少し気になる点がある。
後日、勇者たちにこの一件について報奨が与えられた。
だが、勇者は「今回わたしたちがしたことは大したことではないのです。いいえ、むしろ詰めの甘さを痛感しました」と言って、なぜか夢見る少女のような表情を浮かべて報奨を固辞したと言う。
後年において歴史学者は、勇者の慎ましい人柄が出ているエピソードとして、この話をとりあげる。
だが、一部の学者の間には、他の説をとりあげるものもいる。すなわち、勇者たちは六勇将の策にはまるところであったが、誰か別の者に助けてもらった、というものだ。現に、当時の冒険者記録を見ると、冒険者たちが、とある誰かに招集されて王城へと赴いたという記録が読み取れる。
だが、その目的が何だったのか、未だに判明せず、また、その招集した誰なのかもはっきりとしない。今では、一部のマニアックな学者たちが唱える学説ということになっている。



しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

sayosamonji
2022.08.13 sayosamonji

読んでいくとじわじわ面白いです。

解除

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。