スライムになった彼女と、彼女を騙されて食べてしまった俺の成り上がり冒険譚〜最初追放もされたしレベルも曖昧だったけど愛の力で無双したい〜

りり

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一章 異世界での希望

私は間違えたスライム後編

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「……なんなんだよお前、その姿――」

 
 なんと言われたって伝えるんだ。

 
 道を塞ぎながら、彼の目の前に堂々と姿を見せた私は一歩も後ろに下がらない。

(奥の手だってあるんだから……)

 それは土壇場で編み出した最悪の場面を想像した手紙。
 もし仮に私が彼に倒されてしまったり、誰かの手によって倒されても、ちゃんと大事な事を伝えれるように――

「……邪魔だ……どけろ」

 そんな冷たい声を発する彼を前にしても私は下がらない。
 伝えるんだ!

「ブヨんブヨん、ブヨん!」
(私が、智夏だよ!)

 何度声を発しようとしても口を無様に開けることしか出来ない。
 そんな事は知っている。
 声じゃない、心を伝えるんだ。
 大丈夫。彼ならきっと分かってくれる――!

「何言ってるか分かんねぇんだよ……このクソデカブツッ!」
「ブヨんっ!」
(え、デカブツ!?ちょっとそれは流石に傷付くよ!?)

 うん無理だよね!

 まさかの暴言に、そう言われても仕方ない姿だけど! と思いつつも、ぐぬぬぬ! と顔をしかめてしまう。
 物理的に無理なものは無理。
 これは私達の愛不足ではなくただの現実。
 それでも行動しないよりはマシだ。
 そう自分に言い聞かせ、再度口を開こうとした時、私は気づいていなかった。


 彼の攻撃に――


「くっ――!」

(あれ……ゆーくん……? ゆーくん!)

 素早く放たれた彼の足技を、私の体は無意識のうちにズボズボと吸収する。

 彼の体諸共――

「くっそ、離せっ!」
「ブヨんブヨんブヨんブヨんっ!」
(早く逃げて! 早く逃げないと!)

 どうにか排出しようと抵抗するが、思うように体が動かない。

「や、べぇ……」

 水で出来ている私の中に入り続ければ溺死してしまう。
 
(どうしよう……どうしよう……!)

 自分で招いておいてこのザマである。

 どこまでも迷惑をかけ続け、挙句の果てに命まで奪おうとしてしまっている。

 死んだ方がマシ――

(……そうだ、水を出して!)

 弱音がボロボロと湧き上がる中、私は瞬時に口からジュボジュボと水を排出をする。最後まで抗え、かっこ悪くても抗うんだ。そう意気込み、必死に水を出すがあまりにも効率が悪すぎる。この速度だときっと出し終わる前に彼が死んでしまうだろう……。

(何か、何か!)

 彼の意識が遠のいて行くのを体で感じる。
 どうしようもない現実はどうしようもないままなのだろうか。

(……いっその事、私がこの世から消えればッッッ!!)

 そう自分への怒りと共に力んだ刹那だった――

 グシャッ!!!

 そう鈍い音が響いたと同時に私の体は爆発的に飛散し、その真ん中には意識を失った彼の姿と、最初の大きさに戻った私だけが残っていた――



(何が……起きたの――?)



━━━━━━━━━━━━━━━

結原ゆいはら 智夏ちなつ(スライムの姿)

・吸収(水分を吸収し、体を大きくする)

・放出(体内の水分を放出出来る、意識的に出せるのは口、比例して体が小さくなる)

・取込み(物を取り込む事が出来る)

・飛散(体内の水分を全て飛散させる事により、一気にオリジナルまで小さくなれる)
 

 


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