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19. テーブルセット

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「これは 気持ちいいなぁ」

「でしょう! 」

 お風呂場の堀の横に 椅子を置いてもらい、冷たい水を魔法でだして、水分補給しながらマークの話しをそうでしょう、そうでしょうと ニマニマしながら聞いていた。

「やっとわたしの気持ちが わかってくれましたか! ウンウン  」

「あぁ、この 草原の景色も いい! 」

「でしょう! 解放感もあるし、まだわたしは四歳だから 閉めきったお風呂場より この景色を選んだのよ」

「まあ~ 、気持ちは わかるが、シーナちゃんのいうことも 一理あるんだぞ」

「わかってる。 気をつけるよ、いろいろと……  」

「そうだな。でもおれには 前世の大人の思考とやらでも 四歳児でも どっちも そうかわらん。 おまえはおれのたったひとりの身内で 娘みたいな……  娘 だな。 あと二年しか一緒にいれないんだ、それまで楽しく 一緒に暮らそう。 でっだな~  、パール。 もっと 甘えていいんだぞ」

「 …… ありがとうマーク。 こんな、へんな身内でごめんね」

「おいおい、謝るならおれだろう?  あと二年で追いだすんだからな」

「それは しょうがないよ。マークのせいでもないし、できるだけのことをして 旅立つね」


 お風呂場から ザバーっと 水の流れる音がした。

 しばらくすると わたしの隣の椅子にマークがホッカホッカの顔で ドカッと 座った。
 サッと 冷たくした水を渡すと 一口飲んで、目をくわっと 開け、一気にコップの水を飲み干して

「うますぎる! 」

 ぷっ、ふ、ふ……

「よかったね」

「あぁー  ……  」

 椅子に並んで座わり、しばらく二人で草原の景色を眺めていた……


「なぁパール、冒険者になるの イヤか? 」

「 ……そんなことないよ。マークも両親も みんな 一度は冒険者になっているんだから 興味はあるし」

「そうか……  」

「 …… 頑張ってみるよ」

「おれは おまえ、パールと……  はあー 」

 頭をゆっくり左右にふり、大きく息を吐くと わたしの頭をおもむろにゴシゴシ撫でた。
 マークの力が強くてちょっと痛いけど、片目を閉じて下を向き、反抗せずに 撫でられ続けることを選んだ。
 
 マークはそんなわたしを、目を細めて 見つめていた。


 ふっと、草原の夕陽に目をやる。

「おれに……  できることがあったら、なんでも いつでもいい。 言ってくれ」

「わかった……  ありがとう」


 太陽が沈んでいき、夕陽が草原の色を 赤く、茜色に染めていく。
 

「そろそろ、戻るか……  」

「うん」


 なんとなく二人、手を繋いで 小屋にかえった……


 次の日から マークも樽風呂に入るのが 日課となった。

 しばらくしてトムさんが オレンジを持ってやってくる。
 首には 手拭いをかけている……

 はい。
 樽風呂ご所望ですね。
 マークから樽風呂のよさを聞いて 我慢できなくなったらしい。 


「ハァー  ……  なんだこれ……   最高だな! 気持ちよすぎだろう……  」

 お風呂場の堀の横にある二脚の椅子が、いつの間にか テーブルセットに変わっている。

 今はマークと二人、トムさんが樽風呂に入っている横で、貰ったオレンジを食べながら ニマニマそうだろう、そうだろうと 二人呟いていた。

 お風呂から上がったトムさんに 冷たい水を手渡す。

「あっ すまん」

 手渡された水を 一口飲んで、マークと同じように 目をくわっと 見開いて、一気に残りの水を飲んでいた。

「この 水は なんだ? 冷たいし、ものすごくうまい! 」

「あぁ、その水 うまいだろう?  おれも初めて飲んだときは驚いたよ……  パールの 魔法水」

「おいしい? トムさんだし、いいかなってね」

 マークはわたしを見て軽く頷き、トムさんに目を向け

「そういうこった。 うまいだろ ナイショだぞ」

 トムさんは目をパチパチしていた。

「おい、ナイショがずいぶん多くないか、あんまりビックリさせんなよ。 わしでは 心臓がもたんぞ」  

「おれでもそうだ。 パールには驚かされっぱなしだからな。 あ~ そういうときには クスリが いるよなぁ~ きつけグスリがさ! 」

 トムさんは眉毛をぴょんと上げて 目を丸くし 一瞬考え、ニカッと 笑うと 走ってどこかへ行く。

 しばらくすると 大きなバスケットを抱えて ニコニコしながら戻ってきた。
 バスケットの中には 麦芽酒とリンゴ そしてチーズと ナッツ数種類が入っていた。

「さすが! トムさん 。 わかってるなぁ~  」

 マークはニコニコ顔で テーブルにバスケットの中のモノを並べだし、スッと わたしの前に 麦芽酒を差し出す。
 同じようにトムさんも リンゴを スッと 出してきた。
 二人揃って ニターっと 満面の微笑みだぁー
 そうですか、そうきますか……

 麦芽酒にそっと触れ、マークとトムさんに押し返す。

 手元に残ったリンゴを ポリッと かじる。

 フッと 小さく ため息をつくと……
 聞こえてきましたよ……


「「  うまい!! 」」
















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