迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

文字の大きさ
25 / 221

25. 厨房で待つ

しおりを挟む
 厨房は今日のメインの仕事が終わり、明日の仕込みをしている。
 みんながちょっとだけゆったりしていた。

 料理長のトムさんはスープストックを味見しながら、わたしの相手をしてくれている。
 トムさんの邪魔にならないように注意し、踏み台を使って大きなお鍋の中を覗きこむ、そこにはお肉の塊がゴロゴロ入っていた。

「味見してみるか?」 

 その言葉でトムさんの顔を下から覗きこみ、目を輝かす。

「いいの?! 飲んでみたい!」

「ほれ」

 小さな椀にスープをいれて渡してくれた。

「ここからいろんな料理ができるんだぞ、知っていたか?」

「うん。なんとなくだけど、知ってる」

「ほーぉ。それは、まあ……あれか?」

 スープを飲みながら、軽くうなずく。

 よく考えてみると、知らないはずのことをなんだか知っていたっと、思うことがたまにある。
 そのときになって、あーっ、そうなのかと自分でも気がつく。

 厨房には他の人もいるから『前世の記憶』のことを濁してくれたようだ。

 料理長が作ったスープストックを味見できるなんて、他の料理人からしたら羨ましいだろうけど、みんなやさしく見守ってくれている。
 やはりわたしが六歳で冒険者にならないといけないと、知っているからだろう。
 男の子でも六歳で冒険者になるような子は、この領にまずいない。
 しかもわたしは女の子、早すぎる。


「どうだ、味がわかるか?」

「うん、おいしいよ。お肉の味がすごくするね」


 ふっと急に、前世の記憶が頭をよぎる。

 ばあちゃんにもトムさんと同じように聞かれて、同じようにおいしいと答えた……記憶……?

 不思議? へんな感じ。
 このあとの会話は、たしか……


『ばあちゃん、おいしいけどなんでお鍋の中に、野菜のくずが入っているの? これゴミだよ!』

『バカいってんじゃないよ。これが野菜のくずなんて、思い違いもいいところさ。これは野菜の端のほう! ゴミでもない。これだってキレイに洗えば、立派な野菜になるんだよ。ここには、秘密のおいしさがいっぱい隠れているんだからね』

『本当!?』


 ばあちゃんが笑いながら教えてくれた。
『秘密のおいしさ』なんで急に思い出したんだろう?



「ここに野菜は、今から入れるの?」

 前世の記憶に引っ張られて、ついトムさんに聞いてしまった。

「野菜か? 野菜は、調理するときに入れる。そうしないと崩れて溶けてしまうからな」

「えっ!? そうなの?」

「んっ。なんだ、違うのか?」

 トムさんの片方の眉毛が、ピクンと上がる。

「わたしが知っているスープには、ここに『野菜のくずぽいモノ?』が入っていたかな」

 ばあちゃんに注意されたのを思い出して、野菜のくずを『野菜のくずぽいモノ』に言い換えてみた。
 ばあちゃんが教えてくれたことは、ちゃんと守るからね!
 顔も思い出せないのにスープを思い出すなんて……
 いい加減だけど、きっと大切な記憶なんだと思う。


「野菜のくず? おい、これは餌じゃないぞ。辺境伯家の方たちがお口にする、上等なスープなんだぞ」

 顔を歪めて悪い冗談をいうなと、今にも怒鳴られそうだ。

 あわてて真面目な顔をして言葉を続ける。

「違うよ。冗談じゃなく本当に、野菜のくずぽいモノを入れてたんだよ。トムさんだって、スープには硬いすね肉とか使うでしょ? それと同じことだよ」

 んっ?!
 トムさんの片方の眉がまた少し上がり、アゴをゆっくり片手でなでる。

「……それは、どう使うんだ?」

「小鍋で作ってみる?」

「わかるのか?! やってみてくれ」

 軽くうなずきトムさんに平たいかごを借りて、厨房の中を見て回った。
 後ろからトムさんがついてきて、それを厨房の人たちが遠巻きにみている。
 すごく気になっているみたいだ。

 言葉選びが悪かったのか?
『野菜のくずぽいモノ』って、言葉を選んだつもりだったけど、それでもまだダメだったのかな?

 失敗したかも……

 そんなことを考えながら、野菜を集めて回る。

 タマネギの皮とへたの部分、ニンジンの葉とつけねの部分、ネギっぽいものの緑色した部分、セロリの葉、転がっていた小さなニンニクやその辺にあったハーブ、捨てるためにまとめていた場所から少しずつ拾い集めていく。
 
 集めるあいだは黙ってみていたトムさんが、集められたモノたちをまざまざと見て、一度両目を閉じる。

 ハーッっと、ため息を吐き……

 おもわず声が漏れた。


「……ゴミだな……」














しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...