27 / 221
27. ルート様と手合わせ
しおりを挟む
「未熟者ですが、よろしくお願いします」
「……お願いします」
マークと一緒に辺境伯家の剣や魔法を練習する鍛錬場までやってきた。
ルート様が使う時間は、一部貸し切りになっている。
基本的には野外だが、雨でも鍛錬できるよう端の一部分に屋根が付いていて、そこから扇状に広がる景色は小高い丘へと向かっている。
まわりに草や木はそう生えておらず、茶色い土色が視界の大半を占める。
ちょっと壮大だ。
こんなところがあったのかと感心してしまった。
あとからマークに聞くと、危ないのでわざとわたしにはこの場所を教えなかったようだ。
なるほど……
「マークとパールだったね? 歓迎する。これから週に一度、よろしくたのむよ」
「フンッ。 父上がおっしゃるから付き合ってやるが、まぁ、せいぜい怪我をしないよう……わたしの足を引っ張るなよ」
「……気をつけます」
心の中で……お小遣い、お小遣い、と呪文を唱えた。
ここでの手合わせには、辺境伯様からお小遣いが貰える。
マークがそのお金を、わたしの自由にして良いと言ってくれた。
初めてのお小遣いだから、ちょっとうれしい。
「まずは二人並んで、素振りを五十回してもらおうかな。マークはわたしの隣でわたしの補助ね」
二人並んで素振りを始める。
五十回なんてたいした数でもないし、さっさと終わらせようと思っていたら、横からルート様がボソッとつぶやく。
「はじめから五十回とは、きついなぁ……」
思いもしなかった言葉に思わず、エッ!?
驚いて横をチラッとみると、ルート様に睨まれた。
「よそ見しない。プラス十回!」
嘘でしょう!
ルート様にまた睨まれる、怖い!
落胆しながらも六十回の素振りを終えると、ルート様が鬼のような顔をして怒鳴ってきた。
「足引っ張るなっていっただろう!」
「ひっ、ごめんなさい!!」
チッっと、舌打ちまでされてしまった。
怖いよー
気をつけないと、これは危険だ!
まずはアース様に一通り、軽く剣の型を教えてもらう。
さすがにアース様はピシッと、決まっている。
ルート様は……まだまだかな?
わたしの顔をチラリみて、考えていたことが顔に出ていたのか、ルート様がかみついてきた。
「剣の型はもう覚えている。何度も同じことをするより、せっかく今日はこいつがいるんだ、打ち合いを早くさせてくれ!」
その言葉にアース様がルート様をじっと見つめ、そのあとわたしをチラッとみてから話しだす。
「剣の型で体を慣らすのは、相手を攻撃する技のためだけでなく、それが自然に相手の攻撃を避ける、受けるっという、できて当たり前の動作に繋がってきます。型の繰り返しの稽古には意味があるのですよ」
ルート様が苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それではわたしと、手合わせしてみましょうか。 まずはパールから。ルート様はそこでマークと見学していてくださいね」
そう笑顔でルート様に伝え、一瞬マークをチラッと見てこっちにくる。
アース様はすぐさま木剣を構え、挨拶の礼もそこそこで、わたしに振りかぶってきた。
「はやっ!」
あわててアース様の木剣を身体強化で押さえこむ。
カコーンッ!!
木と木が重なる鋭い音がする。
まだ四歳の子ども相手に、いきなりこんなきつい打ち込みする?
イラッとして、いつもより強めに身体強化をかけてしまった。
そのまま思わず、アース様の木剣を力技で横にそらす。
バランスを崩させて、あとは左右の肩、そして腰。
いち 、 にっ 、 さん!
正面を思いっきり打つために、アース様を追い込んでいく。
「うっ」
今だっ! っと思ったタイミングで、マークに叫ばれた。
「パール!!」
ハッ! として、 一歩下がる。
「……重い 、 剣でしたね……」
アース様はそれだけいうと、くるっと後ろを向きルート様のところに行ってしまう。
「お待たせしました。次はルート様の番ですよ」
「……あぁ。わかった」
二人はしばらく打ち合いをして、休憩になる。
小声でマークに聞いてみた。
「あぶなかった? 大丈夫かな?」
「おまえ、実は短気なんだ……」
聞こえていたけど、無視しておいた。
だって、初めて打ち合う相手、それも四歳児にあれはない。
思わずちょっと強めに身体強化かけても仕方がないと思う。
それから少しルート様とも軽く手合わせをして、初回の剣の練習は無事? 終了した。
帰り際、アース様に声をかけられる。
「パール、あなたの……レベルはいくつ……いや、失礼これは失言……なんでもありません」
人にレベルを聞くことはマナー違反で、特に貴族の人たちにとってレベルは将来を左右する問題になるため、簡単に口にしてはいけないデリケートな事柄にあたる。
平民はもともとレベルが低い人が多いので、それほど気にはしないけど、お貴族様的にはアウトだ。
わたしもレベルを知られたら面倒くさいことになりそうだし、アース様の言葉は聞かなかったことにして、そのまま鍛錬場をあとにする。
小屋に戻るとマークがいつもの特製ハーブティーを入れてくれた。
ひと息ついて話しだす。
「アース様がパールと打ち合う前な、アース様チラッとこっちをみたんだよ。そのときはわからなかったけど、今考えるとパールにああいうことをすると、おれに事前に知らせていたのかなってな」
「えっ 、なんで?」
「ルート様のためだろう。アース様はパールがルート様よりだいぶ強いとわかっていたから、短慮的な人はどんな目に合うのか、よいチャンスだから身をなげうって教えたのさ」
すごい! やられた、さすが専属の護衛だね。
「……お願いします」
マークと一緒に辺境伯家の剣や魔法を練習する鍛錬場までやってきた。
ルート様が使う時間は、一部貸し切りになっている。
基本的には野外だが、雨でも鍛錬できるよう端の一部分に屋根が付いていて、そこから扇状に広がる景色は小高い丘へと向かっている。
まわりに草や木はそう生えておらず、茶色い土色が視界の大半を占める。
ちょっと壮大だ。
こんなところがあったのかと感心してしまった。
あとからマークに聞くと、危ないのでわざとわたしにはこの場所を教えなかったようだ。
なるほど……
「マークとパールだったね? 歓迎する。これから週に一度、よろしくたのむよ」
「フンッ。 父上がおっしゃるから付き合ってやるが、まぁ、せいぜい怪我をしないよう……わたしの足を引っ張るなよ」
「……気をつけます」
心の中で……お小遣い、お小遣い、と呪文を唱えた。
ここでの手合わせには、辺境伯様からお小遣いが貰える。
マークがそのお金を、わたしの自由にして良いと言ってくれた。
初めてのお小遣いだから、ちょっとうれしい。
「まずは二人並んで、素振りを五十回してもらおうかな。マークはわたしの隣でわたしの補助ね」
二人並んで素振りを始める。
五十回なんてたいした数でもないし、さっさと終わらせようと思っていたら、横からルート様がボソッとつぶやく。
「はじめから五十回とは、きついなぁ……」
思いもしなかった言葉に思わず、エッ!?
驚いて横をチラッとみると、ルート様に睨まれた。
「よそ見しない。プラス十回!」
嘘でしょう!
ルート様にまた睨まれる、怖い!
落胆しながらも六十回の素振りを終えると、ルート様が鬼のような顔をして怒鳴ってきた。
「足引っ張るなっていっただろう!」
「ひっ、ごめんなさい!!」
チッっと、舌打ちまでされてしまった。
怖いよー
気をつけないと、これは危険だ!
まずはアース様に一通り、軽く剣の型を教えてもらう。
さすがにアース様はピシッと、決まっている。
ルート様は……まだまだかな?
わたしの顔をチラリみて、考えていたことが顔に出ていたのか、ルート様がかみついてきた。
「剣の型はもう覚えている。何度も同じことをするより、せっかく今日はこいつがいるんだ、打ち合いを早くさせてくれ!」
その言葉にアース様がルート様をじっと見つめ、そのあとわたしをチラッとみてから話しだす。
「剣の型で体を慣らすのは、相手を攻撃する技のためだけでなく、それが自然に相手の攻撃を避ける、受けるっという、できて当たり前の動作に繋がってきます。型の繰り返しの稽古には意味があるのですよ」
ルート様が苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それではわたしと、手合わせしてみましょうか。 まずはパールから。ルート様はそこでマークと見学していてくださいね」
そう笑顔でルート様に伝え、一瞬マークをチラッと見てこっちにくる。
アース様はすぐさま木剣を構え、挨拶の礼もそこそこで、わたしに振りかぶってきた。
「はやっ!」
あわててアース様の木剣を身体強化で押さえこむ。
カコーンッ!!
木と木が重なる鋭い音がする。
まだ四歳の子ども相手に、いきなりこんなきつい打ち込みする?
イラッとして、いつもより強めに身体強化をかけてしまった。
そのまま思わず、アース様の木剣を力技で横にそらす。
バランスを崩させて、あとは左右の肩、そして腰。
いち 、 にっ 、 さん!
正面を思いっきり打つために、アース様を追い込んでいく。
「うっ」
今だっ! っと思ったタイミングで、マークに叫ばれた。
「パール!!」
ハッ! として、 一歩下がる。
「……重い 、 剣でしたね……」
アース様はそれだけいうと、くるっと後ろを向きルート様のところに行ってしまう。
「お待たせしました。次はルート様の番ですよ」
「……あぁ。わかった」
二人はしばらく打ち合いをして、休憩になる。
小声でマークに聞いてみた。
「あぶなかった? 大丈夫かな?」
「おまえ、実は短気なんだ……」
聞こえていたけど、無視しておいた。
だって、初めて打ち合う相手、それも四歳児にあれはない。
思わずちょっと強めに身体強化かけても仕方がないと思う。
それから少しルート様とも軽く手合わせをして、初回の剣の練習は無事? 終了した。
帰り際、アース様に声をかけられる。
「パール、あなたの……レベルはいくつ……いや、失礼これは失言……なんでもありません」
人にレベルを聞くことはマナー違反で、特に貴族の人たちにとってレベルは将来を左右する問題になるため、簡単に口にしてはいけないデリケートな事柄にあたる。
平民はもともとレベルが低い人が多いので、それほど気にはしないけど、お貴族様的にはアウトだ。
わたしもレベルを知られたら面倒くさいことになりそうだし、アース様の言葉は聞かなかったことにして、そのまま鍛錬場をあとにする。
小屋に戻るとマークがいつもの特製ハーブティーを入れてくれた。
ひと息ついて話しだす。
「アース様がパールと打ち合う前な、アース様チラッとこっちをみたんだよ。そのときはわからなかったけど、今考えるとパールにああいうことをすると、おれに事前に知らせていたのかなってな」
「えっ 、なんで?」
「ルート様のためだろう。アース様はパールがルート様よりだいぶ強いとわかっていたから、短慮的な人はどんな目に合うのか、よいチャンスだから身をなげうって教えたのさ」
すごい! やられた、さすが専属の護衛だね。
83
あなたにおすすめの小説
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる